スーパーロボット大戦J ムーンデュエラーズ   作:YSK

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第16話 道を選ぶとき 前編

──連合とオーブ──

 

 

 

 連合への反逆者となったナデシコと、逃亡艦となったアークエンジェルの二隻はオーブ(ガンダムSEED)へ身を寄せることとなった。

 しかし、連合はその二隻を入港させたことを理由に、オーブへの攻撃を画策する。

 

 どうあっても飲めない要求を突きつけ、連合に従わぬオーブを殲滅しようとしているのだ……

 

 

 連合軍との戦いは、避けられそうになかった。

 

 

 

──オーブ/格納庫──

 

 

 

 一人の少女が手を組み、じっとなにかに祈っている。

 その姿を見た瞬間、あぁ、また彼女かと、統夜は思う。

 

「……」

 

 彼女はどこか悲しそうに眼を伏せ、じっとどっかに祈りを捧げている。

 それはまるで、懺悔のようであり、おのれの無力さを嘆いているようにも見えた……

 

 

「なにが言いたいんだ? 君は、誰なんだ……」

 

 

 統夜が問いかけるが、その声は夢の彼方にいる彼女には届かない。

 

 

「トウヤ……」

 唇が動いたかと思うと、その声は自分を呼んでいた。

 

 

「俺の、名を……?」

 

 

「トウヤ……」

 

「統夜」

 

 

「統夜君!」

 

 

「うわっ、え? あ、カティア? 俺、今なにしてた?」

 

 

「しっかりしなよ統夜。こんな時に居眠りとか、なにしてんのさ」

 

 カティアと一緒にテニアも後部座席から顔を出す。

 ここは、グランティードのコックピット。

 

 どうやら作業中にうっかり夢を見てしまったらしい……

 

 

(……夢?)

 

「いや、寝ていたつもりはないんだけど……」

 

 

「寝てたよ今! アタシとカティアが証人!」

 

「悪かった悪かった。それより、駆動系の調子は?」

 

 こりゃかなわんと、統夜は話題を変えた。

 それを聞き、しかたなく、二人も後部座席で作業するメルアへ視線を送る。

 

 

「……やっぱり、これが限界です。これ以上タイトにしたら、バランスがとれません」

 ごめんなさい。とメルアが謝った。

 

「そうか……」

 

 

「最近の統夜君の反応速度が速すぎるんです。ある意味、嬉しいことではあるんだろうけど……」

 

「おさえて戦えるような相手じゃないからな。どうにかフォローしてくれ」

 

「あのフー=ルーとかいうのもやばかったもんね。アタシ達も出来るだけ頑張るよ」

「ええ。なんとかフォローしてみるわ」

 

 

「……そろそろ、なんですね?」

 

「ああ。お前達も感じているか?」

 

「うん」

「はい」

 

 それは、アル=ヴァンがかつて言った戦うべき時が近いということだった。

 

 

 統夜も三人も、サイトロンからそれが近いことを感じ取っていた。

 

 時が、迫っていることを……

 

 

 

──戦場へ──

 

 

 

 期日までにオーブから満足のいく回答が得られなかった連合軍は、ついにオーブへの攻撃を開始した。

 

 圧倒的な物量でオーブを攻め立てる連合軍。

 倒しても倒しても、連合軍のモビルスーツはわいて出てくる。

 

 その中には、ドモンの知り合いであるアレンビー(Gガンダム)もいた。

 バーサーカーモードと呼ばれる敵を倒すだけのシステムに操られ、オーブに攻撃を仕掛けていた。

 

 彼女をなんとかしようと、奔走するドモン。

 

 

 多数の兵器が投入される中、現われるのは敵だけではなかった。

 

 バスターガンダムを持ち出したディアッカと、ジャスティスガンダムを駆り現われたアスランは新たに連合より投入された三機のガンダムを撃退し、ブラスター化が可能となったブレードと共に、外宇宙開発機構の面々も駆けつけた。

 

 敵味方が多く入り乱れ、戦いは混迷を増して行く。

 

 

 そんな中、統夜の前にアル=ヴァンが率いるフューリーの軍勢も姿を現した。

 

 

 

 ついに、この時が来たのである……!

 

 

 

「……愚かな。フー=ルーの仕掛けに踊らされたとはいえ、何故かくも同胞同士で殺しあうか。種としての未来を自ら閉ざすか。地球人よ……」

 

 現われたアル=ヴァンが、小さくつぶやいた。

 それは、どこか自戒の念がこもったようにも見える。

 

 

「あはははは。地球人はやはり滅びたがっているのですよ。おかげで俺達は楽が出来る」

 

「……みずから手を汚さぬ戦いを、私は喜ぶ気にはなれぬ」

 

「なるほど、それでこうして最後の仕上げに出てこられる。さすが我が敬愛する師にして主、アル=ヴァン様」

 

「騎士を目指すならば軽口を叩くな」

 

「申し訳ありません!」

 

 

 戦場に現われたフューリー機。

 それを最初に見つけたのは、統夜であった。

 

 

「あの機体! アル=ヴァン!」

 

「統夜か。逞しくなったな」

 

 戦場に雄雄しく立つグランティードの姿を見て、アル=ヴァンはどこか感慨深そうに口を開いた。

 

 

「あんたにそんなことを言われる筋合いはない! 今日こそ聞かせてもらうぞ。俺達の秘密を!」

 

「よかろう。今日は君と決着をつけてやる。ここまで生き延びてきた君だ。私の剣と名誉を賭けるに相応しい。知りたくば私を倒せ。運命の鍵をおのれの手で手にして見せよ!」

 

 

「統夜!」

 甲児が声をかける。

 

 

「みんな! こいつのことは俺に任せて欲しい! こいつだけは、俺がやらなくちゃいけないんだ!」

 

「わかってるよ。回りの奴等は任せろ!」

「オーブのこともな!」

 

 甲児と豹馬。一番最初から共に戦ってきた戦友が親指を立てた。

 

 

(ありがたい)

 そう心の中で思い、統夜はアル=ヴァンの元へと駆ける。

 

 

 

「お前なんかがアル=ヴァン様と勝負だと!? つけ上がるな!」

 

 

 しかし、空気の読めないジュア=ムは統夜とアル=ヴァンの間に入り、ライフルを構えた。

 

 

「邪魔だ!」

 

 

「なっ……!?」

 

 

 だが、ジュア=ムの攻撃が放たれる前に、邪魔と断じた統夜の一撃がジュア=ムのヴォルレントを貫いていた。

 一瞬の出来事である。

 

 統夜のカウンターが、はっきりと決まった。

 

 

 信じられないという表情を浮かべながら、ジュア=ムは機体ごと落下して行く。

 ヴォルレントは小さな爆発を引き起こしながら、転移して撤退して行く。

 

 消える直前、大きな爆発があったように見えたが、それでジュア=ムがどうなったのか、すでに誰も興味はなかった。

 

 

 興味がむくとすれば、一気に間合いを詰める統夜とフューリー指揮官、アル=ヴァンとの戦いだろう。

 

 

「そこまで成長するとは……!」

 ジュア=ムを鎧袖一触のごとく追い払ったのを見て、その成長にアル=ヴァンも感嘆の声をあげる。

 

 

「アル=ヴァン! 勝負だ!」

 

「ぬぅっ!」

 

 

 迫るグランティードがアル=ヴァンのラフトクランズを掴み、ブースターの出力をさらに上げた。

 

 そのままラフトクランズを押し、大きな流星が一つ生まれる。

 それは、アル=ヴァンを戦場から大きく引き剥がすための行動。

 

 一対一の戦いを実現させるための統夜の策だった。

 

 さらにそれは、万一自分が敗北したとしても、そう簡単には戦場へ戻らせぬための浅知恵でもあった。

 

 

 オーブから遠く離れた小島へその流星は到達する。

 

 

 どんっ! と大きな土煙を上げ、二機の巨人はそこへ降り立った。

 敵も誰もいない、たった二機限りの戦場。

 

 かつて見た、未来の風景。

 それが、ここだった。

 

 

「ここなら、誰も邪魔は入らない!」

 

「そのようだ。くるがいい、統夜!」

 ラフトクランズが、ライフルにも変形する大剣を構えた。

 

 

「アル=ヴァン・ランクス、参る!」

 

「来るぞ。サポートを頼む!」

 

 

「ええ!」(カティア搭乗時)

「まかせて!」(テニア搭乗時)

「はい!」(メルア搭乗時)

 

 

 統夜の声と共に、アル=ヴァンとの一騎討ちがはじまった……!

 

 

 

──戦場/オーブ──

 

 

 

 甲児達や、新たに援軍として現われたブレード達の活躍により、連合の第一陣とフューリーの一団を追い返すことに成功した。

 

 しかし、戦いはそれだけでは終わらない。

 

 

 連合軍の送りこんだ第二陣が現われたからだ。

 

 

「くそっ、きりがねえ!」

「統夜、負けんなよ!」

 

 

 

──決着──

 

 

 

「出来る。よい動きだ統夜。その闘志もいい!」

 

「戦いの最中なにを言っている! 余裕でも見せたいのか!」

 

「余裕などではない! その才に驚きを隠せぬだけだ! だが、だからこそ、ここで君を倒しておかねばならぬ!」

 

「自分で待ったくせに!」

 

 

 武器同士がぶつかり、二機は一度間合いを取った。

 

 

 二体の巨人の動きが止まる。

 

 

「……」

「……」

 

 

 じっと、隙をうかがうようににらみ合う。

 

 

「カティア」(カティア搭乗の場合)

「テニア」(テニア搭乗の場合)

「メルア」(メルア搭乗の場合)

 

 

「な、なにかしら……?」(カティア)

「なにさ、あんまり話しかけないで!」(テニア)

「な、なんでしょう?」(メルア)

 

 サブシートに乗るパートナーは汗を流しながら統夜の問いに答える。

 反応速度が大きく上がった統夜をサポートするに精一杯で、口を開く余裕もないのだ。

 

 だが、そのおかげで統夜はアル=ヴァンと互角に渡りあえている。

 

 

「あと一撃でいい。なんとか持たせてくれ。頼む」

 

 

 統夜の言葉と共に、グランティードが、胸からテンペストランサーを取り出し構える。

 同時に、アル=ヴァンもラフトクランズの大剣を構えた。

 

 どちらも、この一撃で決着がつくと理解しているのだ。

 

 統夜には、後部にあるサブシートにいるパートナーがうなずいたのがわかった。

 

 

「参る!」

「行くぞ!」

 

 

 閃光が瞬き、光がクロスした。

 

 

 巨大な音と衝撃が響き、交錯した二機は、大地に足をつける。

 

 

「……くっ」

 最初に膝を突いたのは統夜だった。

 

 

「……見事」

 だが、崩れ落ちたのはラフトクランズであった。

 

 仰向けに倒れ、機体はもう動かない。

 

 この時、アル=ヴァンは自分の敗北を悟った……

 

 

 紙一重の攻防だった。

 それでも、動いているのは統夜の方だ。

 

 

「はぁ、はあ。大丈夫か……?」

 

 一息ついた統夜は、後ろに乗るパートナーに声をかける。

 だが、返事がない。

 

 慌てて振り返ると、そこでは寝息を立てている少女がいた。

 衝撃と疲労で、意識を失ってしまったのである。

 

 機体のチェックと共に、バイタルもチェックする。

 彼女に異常は見られなかったが、機体はいたるところでレッドアラートが鳴り響き、今動いているのも不思議な状態だった。

 

 それを見て、少女の無事に統夜はほっと安堵の息をはく。

 

(……ありがとな。おかげでギリギリ勝てた)

 

 今機体が動いているのは、パートナーである彼女が必死にコントロールしていたからである。

 だから統夜は戦いに専念することが出来た。

 

 だから、勝てた。

 

 

 これ以上の戦闘は厳しいかもしれないが、それでもまだ機体は動く。

 

 

 統夜は倒れたラフトクランズへ振り返る。

 

 

「俺の、勝ちだな。アル=ヴァン。今度こそ聞かせてもらうぞ!」

 

 

「……ああ、そうだな。よかろう。今こそ君に、全てを話そう。我等フューリーの目的は、地球人類の排除……」

 

「……」

 その目的は、おおよそついていた。

 彼等の言動。そしてかつてマサトが言った木原マサキの記憶。その中でも言及されたことだからだ。

 

 

「地球は、我等が民の約束の地であるからだ」

 

 

「約束……? 一体どういうことだ? 地球にはすでに、俺達がいる。それを勝手に排除していいなんて理由はないはずだ」

 

「いや。人類を創世したのが、我々フューリーであったとしてもか?」

 

「なに!?」

 

「岩と水の不毛な惑星に、生命の種を蒔いたのは我々だ。だが、我が師エ=セルダ殿は、その人類を愛してしまわれた……」

 

「生命の種? エ=セルダ。誰なんだそれは!」

 

 

「エ=セルダ・シューン。君の、父上だよ。統夜・セルダ・シューンよ」

 

 

「なっ!?」

 

 

「君だけではない。カティア・グリニャール。フェステニア・ミューズ。メルア・メルナ・メイア。彼女達もまた、その身体にフューリーの血を流す者達だ……」

 

 

「ちょ、ちょっと待て……」

 統夜は困惑する。

 

 混乱するように頭をおさえ、ぐるぐると巡るその事実を受け入れようと努力する。

 

 

 否定したかった。

 だが、そう仮定すれば、様々なことがぴったりと合致した。

 

 してしまった……

 

 

「あの三人もフューリーの血を引いている……? なら、なんでその両親を殺した! 彼女達にその血が流れているなら、その親はお前達の仲間じゃないか!」

 

 

 必死に整理した情報の中で、一番の疑問。それをアル=ヴァンにぶつけた。

 フューリーの目的は地球人の排除。

 

 そして地球に移り住むこと。

 

 

 ならばなぜ、その仲間を殺した!

 

 

「それは、君達が存在してしまったからだ」

 

 

「な、に……?」

 

 

「アシュアリーは元々、我等の戦力を整えるため作られたところだ。だが、裏の目的は、地球人と我々が共に暮らせるかという実験の場でもあったのだ。結果、君をふくめた4名もの子供が生まれた。それはすなわち、地球人とフューリーの共存が可能ということを証明している……!」

 

「……っ! だ、だから殺したのか! 家族もろとも!」

 

「そうだ。彼女達の存在は、我等の帰還計画を根本から揺るがす。その計画を直前に察知した我々は、民に知られる前にアシュアリーを……」

 

 

 襲撃し、皆殺しにした……

 

 

「だが、我々にも予想外が二つあった。一つは、君という存在がいたこと」

 

「……俺?」

 

「エ=セルダ殿はこのような事態を予測し、君を表向きは死亡したとしていた。いざという時の、切り札として」

 

 

 万一彼女達があそこで殺されていたとしても、統夜がいることで地球人との共存の証明はまだ可能となる。

 それが、予想外の一つ目。

 

 

「そして、もう一つはラースエイレムキャンセラー。これにより、君達は我々と戦う術を得た。おかげで、我々の計画は大きく狂った……」

 

「こいつを……?」

 ラースエイレムキャンセラーとは、統夜の乗る機体のことだ。

 

 混血児が連合軍に保護されるだけなら大きな問題にはならなかっただろう。

 彼等とフューリーにはっきりとした違いはない。

 ただの生存者として処理されて終わりだ。

 

 だが、これがあり、動くことにより、地球人はフューリーの軍勢を撃破しうる力を得た。

 

 それはある意味、混血児よりも厄介な存在である……!

 

 

「そして君にも、私を殺す資格がある……」

 

「? どういうことだ……?」

 確かに何度か命を狙われたが、直接両親を殺されたあの三人とは違い、統夜がアル=ヴァンを殺す理由はない。

 

 資格などと言われても、わからないことだった。

 

 

「それは……」

 

 アル=ヴァンが核心を話そうとしたその時だった……

 

 

「アル=ヴァン様ご無事ですか!? 今従士一隊がそちらに向かっております!」

「アル=ヴァン様なき戦線はすでに支えられません。残るは我々だけです。撤退いたしましょう!」

 

 アル=ヴァンのラフトクランズに部下から通信が入った。

 その言葉は、統夜の耳にも入る。

 

「っ!」

「いかんな。逃げろ統夜。いくら君とはいえ、今の状態では分が悪すぎるだろう。私が倒れたと知れば、間違いなく攻撃される」

 

 

「くそっ」

 悪態をつきながら飛ぼうとするが、上手く出力が上がらず、浮かんですぐ地面に降りてしまった。

 

「こんな時に……!」

 

 アル=ヴァンを倒したとはいえ、機体に受けたダメージは大きすぎた。

 

 パートナーも気絶している今、この状態ではやってくる敵からは逃げ切れない。

 

 元分艦隊の皆の救援は望めないだろう。

 フューリーと違い、オーブを攻撃する連合軍とも戦わねばならないからだ。

 

 

「こうなったら、やってやる。諦めてたまるか!」

 

 

「……待て、統夜。私と共にこい」

 

「なに?」

 

「その機体を海に隠し、私と共に来るのだ。その機体は破壊命令が出ている。それは私にも止められない。だが、機体を破壊し、君を捕らえたと言うならば、その娘と機体は助かる。その娘を巻きこみ機体を破壊されるか、私と共に来るか。どちらかを選べ」

 

「……」

 統夜は一瞬考えた。

 

 しかし、答えはすぐに出る。

 

 

「わかった。あんたを信じるよ」

 

 

 悩んでいる余裕はない。

 悔しいが、それ以外の方法で機体を守るすべはなかった。

 

 味方にのみ届くよう救難信号を出し、統夜は機体を海に沈めた。

 ボロボロだが、コックピットに浸水はない。

 

 統夜は沈み行く機体のコックピットを閉じる時、今だ気絶から覚めないパートナーにポツリと一言つぶやいた。

 

 

 その言葉は、背後で響いた爆発により、誰の耳にも入らなかった。

 

 アル=ヴァンが、ラフトクランズの武器を自爆させたのだ。

 

 これをもって、統夜の機体を破壊したと言うのだろう……

 

 

 倒れたラフトクランズからアル=ヴァンが姿を現し、統夜を後ろ手に拘束した。

 

 

(……やはり、あの方の面影があるな)

 その背を見て、アル=ヴァンは思った。

 

「なんだよ?」

 

 自分をじっと見つめるアル=ヴァンの視線を感じ、いぶかしむ。

 

 

「なんでもないさ。今は、生き残ることだけ考えろ」

 

 

「当たり前だよ。絶対に、生きて戻ってくる……!」

 

 これは、諦めの投降ではない。

 生きて皆のもとに戻るための投降なのだ。

 

 

 アル=ヴァンの部下が駆けつける。

 

 

 こうして、統夜は、フューリーに捕らえられることとなった……

 

 

 

──オーブ近海/戦闘跡──

 

 

 

 連合軍の仕掛けた波状攻撃を凌ぎ、一時休戦状態となった隙に統夜の救出へ向かった甲児達が見たのは、主を失い、気絶したパートナーを守る機体の姿だった。

 

 救難信号が出ていた海の中から引き上げられ、現したその体はボロボロ。

 二人いるはずのコックピットには、一人しかいない。

 

 残された二人が、慌ててコックピットに飛びこんで行くが、その中にいるはずのもう一人が見つかることはなかった。

 

 

 しかし、彼女達はすぐなにが起きたのか理解する。

 サイトロンが。いや、機体がここでなにが起きたのかを、サイトロンを通じて彼女達に伝えたのだ。

 

 

 機体とパートナーを守るため、統夜は一人、フューリーの手に落ちたと!

 

 

 そのことを告げられ、重い沈黙が、場にのしかかった。

 

「くそっ!」

 甲児が機体の装甲を叩く。

 

「俺達がもっと早く、連合の連中を追い返していれば!」

「甲児君……」

 

 悔やんでも悔やみきれない。

 一騎討ちに勝利しても、捕まってしまったらなんの意味もないではないか!

 

 

「いえ、心配はないわ……」(カティア搭乗の場合)

「大丈夫だよ。慌てなくても」(テニア搭乗の場合)

「いいえ。大丈夫です」(メルア搭乗の場合)

 

 

 統夜と共に戦い、気絶していた少女が震える腕で体を持ち上げながら言う。

 

 

「彼は、私に向けて言ったわ。必ず戻るって。だから、必ず戻ってくるわ。むしろ、いつ戻ってきてもいいように、この機体を直さないと……!」(カティア)

 

「統夜は、アタシに言ったんだ。必ず戻ってくるって。だから、絶対に戻ってくるよ。それより、早くグランティードを直さないと。統夜が戻ってきて、すぐ戦えるように!」(テニア)

 

「統夜さんは最後こう言いました。必ず戻ってくるって。だから、わたしはそれを信じます。だから、統夜さんがいつ戻ってもいいようにあの子を直してあげないと」(メルア)

 

 

 疲労困憊で、体を支えるのがやっとだというのに、まるでなにか確信があるかのような断言の言葉だった。

 

 朦朧とした意識の中、彼女は聞いていた。

 コックピットを去る統夜の言葉を。

 

 その、彼女が言った。

 統夜と常に席を共にし戦ってきた彼女が言うのだ。

 

 

 それを、信じなくてどうする!

 

 統夜を助けに来た者は皆、顔を見合わせうなずいた。

 

 

「急いでオーブに運ぶぞ。統夜が戻ってきた時、いつでも戦えるようにしてやらなきゃな!」

 

 

 

 第16話終わり

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