スーパーロボット大戦J ムーンデュエラーズ   作:YSK

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第01話 降ってきた災厄

──???──

 

 

 

 いつからか、よく同じ夢を見ていた。

 

 

 暗闇の中にぽつんと座り、祈るようなしぐさで目を閉じている女の子の夢だ。

 

 そっと塞がれた二つの瞼、かすかに震える睫毛。

 

 

 やがて唇を開いた彼女は、かすかだけどとても綺麗な……そしてとても悲しそうな声で、いつもこう言う。

 

 

 

 許して……どうか許してください……

 

 もう、わたしには止めることができない。

 

 わたしには止められないのです。

 

 滅びるべきはわたしたち。

 

 立ち去るべきはわたしたち。

 

 

 この世界はあなたがた子供たちのものなのに……

 

 

 待ち続けた永き刻の、その暗闇の冷たさがすべてを狂わせてしまった。

 

 

 どうか……力なきわたしを許してください……

 

 

 

 目覚めるといつも、彼女の言葉をほとんど忘れてしまっている。

 

 覚えているのはただ、透き通るような髪のまわりでキラキラ輝く光の粒子と、悲しそうなその声の響きだけ。

 

 

 それが、自分が巻きこまれることになる戦いの前触れだったことを、この時はまだ知るはずもなかった。

 

 

 

──統夜──

 

 

 

 紫雲 統夜(しうん とうや)

 

 それが、俺の名前だ。

 木星トカゲ(ナデシコ)なんて侵略者がいるこんな時代だがけど、その中でも平凡普通の生活を送る高校生だ。

 

 

 時間は朝。

 俺は学校に向かって歩いていた。

 

 同じ方向に向かう生徒達はどこか早足である。

 急がないと遅刻するような時間なのだから当然だった。

 

 でも俺は、それでも走る気にはならなかった。

 

 あの夢を見た日は決まって気分が悪い。

 頭の中に得体の知れないなにかが居座っているような感じで、乗り物酔いのような感覚が体に残っているからだ。

 

 だから、走る気にもなれない。

 

 

「おい、急がねーと遅刻するぞ!」

 

 

 後ろから声をかけられた。

 振り返ると二人乗りのバイクがものすごい勢いで俺を追い抜いていく。

 

 声をかけてきたのはそれを運転する男だ。

 後ろには髪の長い女を乗せている。

 

 男の名前は確か、兜甲児(マジンカイザー)といったか。

 ロボットに乗って色々活躍している学校の有名人だが、俺と知り合い。という間柄ではない。

 

 彼は物怖じせず、ああして誰にでも声をかける男なのだ。

 

 そのバイクの後ろに乗っているのは弓なんとかとかいうどこかの研究所の娘さんだと聞いた覚えがあった。

 

 追い抜きざまに笑顔を見せられたが、こっちは兜以上に詳しいことは知らない。

 

 

 いきなり声をかけられ面食らったが、結局急ぐ気にはならず、彼等が校門をくぐってかなりの時間を経過させてから俺も学校に到着した。

 ギリギリ、遅刻の方は免れたみたいだ。

 

 

「おはようございます」

 

「急ぎなさい。もうチャイムが鳴るわよ。あら? ちょっとあなた大丈夫? 顔色が悪いわよ」

 

「大丈夫です。いつものことですから。おかしな夢を見た日はいつもこうなんです」

 

「あなた、確か前にもそんなことを言っていたわね。一度ちゃんとカウンセラーの先生に相談してみた方がいいんじゃないかしら?」

 

 校門の前に立っていた神楽坂先生(フルメタルパニック)に心配されたが、朝のホームルームが終わる頃には治っているので大丈夫だと答えておいた。

 それにしても、担任でもない生徒の顔はおろか病状まで覚えているなんて、この人はおせっかいだけどいい先生だ。

 

 

 ぎゅーん。ぎゅーん。

 

 

「な、なに!?」

「これって、空襲警報……?」

 

 大きな警報音が街に鳴り響く。

 俺も先生もそろって空を見上げた。

 

 

 空襲警報。

 

 

 木星トカゲと名づけられた正体不明の侵略者が現れてからよく耳にすることになった耳障りな警報だ。

 あの夢を見て気分が悪い時にこの甲高い音は頭に響く。やめて欲しい。

 

 手で頭をおさえ、顔をしかめた。

 

 どこからなにがやってくるのかはわからないが、指示に従って避難場所に身を隠していれば、あとはあの兜や軍の人達がロボットを駆って倒してくれる。

 

 平凡な学生でしかない俺は、素直に避難してこの嵐が去るのを待つだけでいい。

 

 

 それが今の、俺の日常。

 

 

 今回もそれと同じ。

 

 誰もがそう思っていた。

 

 

 でも、俺の場合は、いつもどおりとは違っていたんだ……

 

 

 

──学校/屋上──

 

 

 

 兜甲児は空襲警報が鳴り響いた直後、学校の屋上へ駆け上がってきていた。

 甲児と共に、そのパートナーである弓さやか。自称甲児のライバル、ボスとその子分のヌケ、ムチャも一緒である。

 

「チューリップからじゃないみたい」

 さやかが言う。

 

 チューリップとは木星トカゲを吐き出すモノで、開いた形がチューリップの花に似ているから名づけられた木星トカゲの母艦のようなものと考えられているシロモノである。

 

 彼女と甲児は昨夜遅くまでこの学校の近くに落ちたそれを調べ、今日は遅刻寸前となっていたのであった。

 

 

「なら一体どこになにがでやがったんだ! おいボス、なにか見えたか!?」

 

「か、兜よぅ」

 

 ボスが、空を指差した。

 

 

「あれ? ああ、なにか飛んでるわね。木星トカゲとも機械獣(マジンカイザー)とも違うみたいだけど……」

 

 ボスの指の先を追ったさやかがソレを見つけ、つぶやいた。

 それは、彼女も見たことのない機体だった。

 

 

「そ、そんなことより、ありゃぁこっちに落ちてきてるんじゃねえか?」

 

 どんどん大きくなるソレを見て、ボスがポツリとつぶやいた。

 

 

「……」(さやか)

 

「……」(甲児)

 

「……な?」(ボス)

 

 

「た、大変だ!! 校庭に落ちるぞ! おーい、みんな逃げろぉぉぉー!!」

 

 

 甲児が校庭に向け叫んだ。

 そこにはまだ、登校する生徒達がいたから。

 

 

 学校。

 校門前。

 

 

「え……?」

 甲児の声が聞こえたのかは不明だが、校門の前にいた神楽坂もその落下物に気づいた。

 

 

「先生、伏せて。早く!」

 

 日をさえぎったソレを見て、統夜はとっさに体が動いていた。

 

 

 

 どかあぁぁぁん!!

 

 

 

 校庭に、なにかが落ちた……

 

 

 激しい衝撃音と共に、もうもうと土煙が上がる。

 

 

 

「うわっ、なんてこった。何人か巻きこまれたかもしれないぞ。さやかさん。ボス、ヌケ、ムチャ、いくぜっ!」

 

「まって甲児くん! 木星トカゲが来るわ!」

 

「なんだって!?」

 

 

 さやかが指差す方からは、木星トカゲが出現していた。

 どうやらこの落下によってむこうの注意を引いてしまったらしい。

 

 チューリップから次々と木星トカゲ。通称バッタと呼ばれる機動兵器が姿を現した。

 

 

「か、兜!」

 

「今度はなんだよ!」

 

 

 ボスが別の方を指差した。

 それは、校庭に落ちた機体が来た方向だった。

 

 

「なんだ? 木星トカゲじゃない。あんな人型のマシン、見たことないぜ」

 

 

 そこには、三体の正体不明のマシンが浮いていた。

 甲児もさやかも見たことのないシルエットのマシンだ。

 

 少なくとも木星トカゲの仲間ではない。

 

 なぜならそれに向かって木星トカゲが敵対の姿勢を見せていたからだ。

 

 

 

「チッ。しとめそこねたと思ったら、余計なものがうじゃうじゃと……」

 正体不明のマシンのリーダー機に乗った青年がうんざりしたようにつぶやいた。

 彼は、ジュア=ム(Jオリジナル)という名である。

 

「どうやら、あれと我々の戦闘行動に反応したようです」

「どうしますか、準騎士殿」

 

 ジュア=ムの部下である従士が問いかける。

 

「片付けるのは簡単だが、こんな所じゃすぐ軍が出てくるな。相手をしてやってもいいが、まだ許可が下りていない。引き上げるぞ」

 

「しかし、騎士様にはあれを捕獲か破壊しろと……」

 

「ふん。あれに乗っているのは仕留め損ねた生き残りだけだ。マガイモノじゃ動かすのもせいぜいでマトモに戦えやしない。あの無人兵器が片付けてくれるならそれでいい」

 ジュア=ムはどこか見下したように校庭に落下したソレを見る。

 

「ですが……」

 

「うるさいなぁ。ここで勝手に派手な戦闘をはじめちまう方が問題じゃないか。それともなんだ? 貴様が責任をとってくれるのか?」

 

「は、申し訳ありませんでした」

 いらついたジュア=ムの言葉に、部下である従士は大人しく引き下がる。

 

「それに、アル=ヴァン様の方も気になるんだよ。あの方が遅れをとるとは思わないが、裏切り者は“大戦”の英雄で、かつてはあの方の師でもあった騎士だからな。しかもどっちの機体もオリジナルだ。アル=ヴァン様が勝っても『アレ』が破壊されちゃ大変だろう。あんなとるにたらないマシンと生き残りより、そっちの方がよっぽど重要だ。行くぞ」

 

「はっ!」

 

 

 三体は光に包まれ、そして突如としてそこから消える。

 

 

 

「き、消えたーっ!?」

 突如として消えた正体不明のマシンを見て、屋上の甲児達は驚きの声をあげた。

 

「お父さまからプラントも新しい人型兵器を開発しているらしいって聞いたけど、もしかしてザフト(ガンダムSEED)かしら……」

 さやかが心当たりを考える。

 

「で、でもよぉ。ザフトってんはプラントの自衛のための軍隊って話じゃねぇか。なんでこんなところに出て来るんだよ」

 ボスが意味わからんと、首をひねった。

 

 

「わからねぇ。そんなことより、ヤバイのは木星トカゲだ。くそっ。今からじゃ戻っている時間もない。こんなことならパイルダーに乗ってくるんだったぜ」

 甲児の言うパイルダーとはマジンガーZと分離して飛ぶことの出来るコックピット兼脱出装置みたいなもののことだ。

 

「ええ。このままじゃ軍が来る前に……」

 

 

『甲児くん聞こえる!?』

 

 

「この声はローリィさん!?」

 

 通信が入る。

 光子力科学研究所からの通信。その声は、その一員である双子のローリィからだった。

 

 学校の近くに、パイルダーが姿を現す。

 乗っているのは、その双子のもう一人、ロールだ。

 

 

「甲児くん聞こえる? パイルダーを持ってきたわ。近くにマジンガーも持ってきたから、急いで!」

 

「わかった!」

 

 屋上に降りたパイルダーに乗りこみ、甲児は近くに運ばれたマジンガーZを目指す。

 

 

(少しだけ大人しくしていてくれよ!)

 

 

 甲児は願った。

 マジンガーZが到着するまで、街に被害がでないことを。

 

 

 だが……

 

 

 バッタ達は動き出す。

 

 校庭に落ちたソレを狙い。

 その周囲にある建物ごと破壊するように……

 

 

 

──統夜──

 

 

 

 学校、校庭。

 

 

 もうもうと土煙があがる中、俺は目を開いた。

 

 体に触れてみるが痛いところはない。どうやら助かったようだ。

 しかし、一体なにが落ちてきたんだ……?

 

 土煙に咳きこみながらも目を凝らす。

 

 

 すると、土煙の中心にソレはあった。

 

 

「ロ、ロボット!? これが落ちてきたのか……」

 

 

 そこにあったのは、見たこともない巨大な人型。

 いわゆるロボットだった。

 

 

 ごごぅん。

 なにかが開く音が響いた。

 

 

「ああもう! こんなトコに落ちちゃどうにもなんないよ! 追っ手の次は木星トカゲなんて! なんであいつらまでこっちにくるのさ!!」

 

「追撃隊が引き上げたのもそう判断したからかもね」

 

 

 コックピットと思われるところが開き、中から赤い髪の少女と黒髪の少女が顔を出した。

 黒髪の少女は落ちてきた方の空を見て、赤髪の子が言った言葉にうなずいている。

 

 中にはさらにもう一人、金髪の少女がいる。

 彼女はコックピット内でなにかを操作しているようだ。

 

 全員俺と同じくらいの年齢だ。

 

 軍の機体かと思ったが、彼女達はとても軍人には見えない。

 年端もいかないと言ってもいい女の子がこんなロボットに乗っているなんてどういうことだ?

 

 

「な、なんなんだお前達は!」

 

 いろんな疑問がわいてきたが、出た言葉はそれだけだった。

 俺の言葉に、二人は俺の方を振り返る。

 

 

「ごめんなさい。危ない目にあわせてしまって。でも私達もわざとやったわけではないの」

 

「それより、そこで倒れてる女の人を連れて逃げたほうがいいよ」

 

 一応の謝罪をもらえたが、あっちも俺の方にかまっていられるわけじゃないようだ。

 

 それより、そこで倒れている女の人?

 

 視線を向けると、倒れている人がいた。

 神楽坂先生だ。

 

 慌てて駆け寄って抱きかかえる。

 呼吸も普通。頭に怪我らしい怪我もない。

 

 どうやら目を回してただ気絶しているだけのようだ。

 

 

「メルア。はやくオルゴン・エクストラクターを安定させて! 早く立ち上がらないと、木星トカゲがこっちにきたらやれちゃう!」

 

 小柄な赤髪の少女が中の金髪の少女。メルアに叫んだ。

 

「今やってます。でも、わたし達だけじゃ出力が安定しない。立ち上がっても逃げ切れないよ……」

 コックピット内をいじるメルアと呼ばれた少女が、すこし焦ったように涙をにじませながら答えた。

 

「諦めちゃダメだよ。あの人と約束したじゃない。これは絶対に壊させないって!」

 

「そうよ。諦めちゃダメ。それに、この場所に私達が導かれたのはなにか意味があるはずよ」

 

 

 なにかワケありのようだ。

 聞いている限りそんなことだけは察することが出来た。

 

 でもただの学生でしかない俺に、できることはなにもない。

 

 

 そう、思っていた……

 

 

「え?」

 コックピットの中のメルアが驚きの声をあげた。

 

 

 直後、コックピット内の機器が大きく輝きだす。

 暗かった内部の壁に光がともり、今まで作動していなかったモノが動き出したようにも見える。

 

 それは、今まで感じられなかった力強い輝きだった。

 

 

 コックピット内からあふれた光を浴びた二人が、一斉に俺の方を振り返った。

 

 

「カティア……」

 

「ええ。やっぱり意味があったんだわ」

 

 カティアと呼ばれた黒髪の子が、俺を見てうなずいた。

 

 

 一体、なんなんだ……?

 

 

 カティアが機体を降り、俺の方へとかけてきた。

 同じルートを通り、赤髪の子もやってくる。

 

 

「お願い。あの機体に乗って私達と戦って! 私達だけではどうにもならないの!」

 

「あれを壊させるわけにはいかないの。でも、アタシ達だけじゃ動かすのが精一杯でとても戦えない。だから、アタシ達と一緒に……」

 

 

「は? いきなりなにを……?」

 いきなりそんなことを言われて、はいそうですか。とロボットに乗りこめるわけがない。

 

 俺は車も運転したことのないただの学生なんだぞ。

 

 

「大丈夫。操縦したことないというのなら、私達も今日初めて乗ったのだから」

 

「アタシ達がフォローするから、大丈夫だよ!」

 

 

「はぁぁ!? それなら落ちてきたのも納得だけど、なおさらだろ!」

 

 初めて乗ったというのが本当なら余計に乗ってどうするんだ。

 素人が二人乗ってなんになるっていうんだ!

 

 

「大丈夫。あなたと私達なら出来る。私達にはそれがわかるの。あなたも乗ればきっとわかるわ」

 

 黒髪の子が、真面目な顔で俺を見る。

 その瞳は嘘を言っているとはとても思えない。

 

 でも……

 

 

「待て待て! もう少しすれば軍や兜達が助けに来てくれる。俺達が無理に戦う必要なんてないだろう!」

 

 そうだ。ここにはあの兜がいる。

 しばらくすれば連合軍も来る。

 

 大人しくこの機体を捨てて避難すれば誰も傷つかない……

 

 

「あるよっ!!」

 

「っ!?」

 

 俺が拒絶しようとした瞬間、赤髪の子が声を荒げた。

 

 

「今すぐじゃないと間に合わない! その人達が来るまでに、学校や街がやられてもいいっていうの!? 人が、人が死ぬんだよ!!」

 

 

 その言葉は、異様な重みと迫力があった。

 まるで、街への被害を、いや、人の死を恐れているような……

 

 

「お願いだよ。アタシ達だけじゃなく、この学校と街を救えるのはアンタだけなんだ!」

 

 

 今度は俺に、すがりついてくる。

 その、必死な姿に俺は……

 

 

「ええい、わかったよ。やってやる。やればいいんだろ!」

 

 

 俺は彼女の迫力におされ、自棄になって答えを返した。

 

 でも、心の奥底では思っていた。できるのならやってやりたいと。

 兜のように奴等に立ち向かいたいと。

 

 だから、俺ならできると言われて、ほんの少しやる気になったとしてもおかしくないはずだ。

 

 

「メルア、ここはたきつけたアタシが乗るよ。カティアと残ってこの女の人を移動させて」

 

「はい!」

 

 俺の背中を押してせかす赤髪の子とメルアと呼ばれた金髪の子が入れ替わる。

 彼女は俺をコックピットに押しこみ、前後に座る前の方へ座らせた。

 

 ここがいわゆる、メインシートなんだろう。後ろが、サブシート。

 

 座ってみたところで、画面に映っている文字の意味もコンパネの意味もさっぱりわからない。

 

 

「俺は動かし方なんてわからないぞ」

 

「大丈夫。ここに座ってくれれば大丈夫だから! さあ、街を、学校を守ろう。アタシも、二人も、もうあんな思いは嫌なんだから!」

 

(あんな思い?)

 それは後にわかることなのだが、今の俺にはわからないことだった。

 

 

 赤髪の子が後部座席に乗ると、またコックピット内が大きく力強く輝き出した。

 

 

「っ!?」

 俺の頭の中に、なにかが入ってくるのを感じる。

 

 これは、朝の夢を見た時のような感覚……

 

 

「え? なんだ? フェステニア……? もしかしてお前の?」

 

 頭の中に、後ろに座る赤髪の子の名前が浮かぶ。

 一度も聞いたことがないというのに、なぜかそれがわかった。

 

 

「そうだよ統夜! アタシはフェステニア・ミューズ。この機体の動かし方は、サイトロンが教えてくれる。だから、アタシと統夜で戦えるんだよ!」

 

 サイトロン・コントロールシステム。

 俺の考えを読み取り、機体を自在に動かすマン・マシン・インターフェイス。

 

 この機体の名前は、グランティード。

 

 知らないことだというのに、そんなことがスラスラと頭に浮かんだ。

 

 

 納得する。

 だから今日初めて乗りこんだというあの子達がこの機体を動かせたのか。なぜ、乗ればわかると言ったのかも。

 

 

「サイトロン・コントロールのリンゲージ率もアタシ達だけのときよりこんなに高い。エクストラクターの出力も十分。統夜と一緒なら戦えるよ!」

 

「戦えるからって勝てるわけじゃないだろ」

 

「いいから、来るよ!」

 

 

 立ち上がると、木星トカゲはもうそこまで迫っていた。

 

 

「ぶ、武器は? なにかないのか!?」

 

 直後、頭の中に武器の存在がいくつか示された。

 これがあれば、戦える……!

 

「防御は任せて! オルゴン・クラウドを展開するわ! 統夜は攻撃に集中して!」

 

 オルゴン・クラウド聞いたこともないけどわかる。

 簡単に言えばバリアだ。

 

 それをまとい、木星トカゲに向かい俺は突撃していった。

 

 

 数は6。

 

 街と、学校を守るための、俺の初陣がはじまった……!

 

 

 

 

 ……

 

 

 …………

 

 

 ……………………

 

 

 

 ……

 

 

 

「……はぁ、はあ」

 

 なんとか、街も学校も守り通した。

 

 何度もバッタの体当たりや砲撃を食らったが、機体の装甲のおかげで大きなダメージにもならず、がむしゃらに攻撃した結果、なんとか木星トカゲを全部破壊することに成功した。

 勝てたのはきっとこの機体のおかげなんだろう。

 

 ものすごく長い時間戦っていたような気もするけど、実時間はほとんどたっていない。

 

 

「やった! すごいよ統夜!」

 

「はぁ、はあ。ただ、がむしゃらにやっただけだよ。でも、よかった……」

 

 

 ふう。と一息をつき、シートに体を沈めようとする。

 

 

 ……その時だった。

 

 

 ビー。ビー!

 警報が鳴り響く。

 

 

「敵が!? なにこれ。木星トカゲじゃない!?」

 

「なんだって!?」

 

 フェステニアの声にそっちを振り向く。

 

 

 

 そこには、機械の化物がいた。

 

 

 

 機械獣。

 Dr.ヘルと呼ばれる悪の科学者が生み出した街を襲う怪物。

 

 

 さっき襲ってきた木星トカゲとは違い、ずらりと並んだその巨大な獣達はとてつもない威圧感があった。

 

 

 生身で例えれば、あのバッタ達は昆虫を相手にしていたような感覚だったが、今度は凶暴凶悪な獣が現れたような錯覚を覚える。

 素人が数匹の熊や狼に囲まれたと言えばわかりやすいだろうし、怖気づいてもしかたがないとわかってもらえるだろう。

 

 今が、そんな状況だ……

 

 

 迫る機械の獣に、俺の心がくじけかけた、その時……!

 

 

 

「待たせたな!」

 

 

 

 逆光の中現れたのは、大きな人型のシルエットだった。

 

 光に黒光りするその姿は、まさに、鉄の城。

 

 

 俺でさえその名前は知っている。

 

 

 

 マジンガーZ。

 

 

 

 兜甲児が駆り、あの機械の獣を倒す正義の味方だ!

 

 

 ロケットパンチが、ブレストファイアーが、光子力ビームが機械獣へ飛ぶ。

 

 恐怖の存在に見えた機械の怪物達がひるんだのがわかる。

 

 

 その姿。それはまさしく、スーパーロボットというに相応しい姿だった!

 

 

 これほど心強い援軍は存在しないだろう。

 

 

 

 俺は、マジンガーZという強力な味方を得て、兜甲児と協力して機械獣を撃退することに成功する。

 

 

 

 

──光子力研究所──

 

 

 

 戦いも終わり、統夜と甲児達は落ちてきたロボットに乗った三人に事情を聞くため、一度光子力研究所へと足を運んだ。

 

 あの場で連合軍を待ってもよかったようだが、弓さやかの父、弓教授も彼女達の事情を聞きたいと言ってきたので彼等は教授の待つ研究所へむかったのである。

 

 

 光子力研究所のハンガーにグランティードを置き、統夜達は光子力研究所に降り立った。

 

 

 降りた統夜に、甲児が近づく。

 

 

「まさかあのロボットはお前のもんだったなんてな。木星トカゲに立ち向かってくれて助かったぜ」

 甲児は学校が無事だったことを素直に喜び、統夜の背中をバンバンと叩いた。

 

 統夜はどこか困惑したように眉毛を八の字に下げた。

 

 

「あれは俺のものじゃないし、乗ったのは成り行きだよ」

 

 

「へえ。じゃあいきなり乗ってあの活躍かよ。すげぇな」

 

「そういうシステムみたいなんだ。詳しいことはあいつらに聞いてくれ。俺はなにも知らないし、これきりだ」

 

「そうか。そういうことならわかったぜ。でも、今回は大活躍だったのは誇っていい。お前のおかげで何人助かったかわからないからよ」

 

「……」

 

 もう一度バンバンと背中を叩き、甲児は去っていった。

 統夜は立ち止まり、ハンガーにおさまったグランティードを振り返った。

 

 

(街をいつも守っている彼等に褒められるのは悪い気分じゃないな。まあ、次もまたやれっていうのは流石にごめんこうむるけど)

 

 この貴重な経験も、今回で終わりだ。

 

 

 統夜はそう、思っていた……

 

 

 

 一度、いわゆるミーティングルームに彼等は集められた。

 

 

 もちろん、空から降ってきた理由を彼女達に説明させるためである。

 

 

「それで、なにがあったのかね?」

 この研究所の責任者、弓教授が問う。

 

 彼の前に、黒髪の少女、カティアが前に出た。

 どうやらこの三人の中で彼女がリーダー格のようである。

 

 

「私はカティア。この子はメルア。そしてこっちはフェステニアといいます。私達は、あのロボットで月のアシュアリー・クロイツェルから来たんです……」

 

「アシュ……?」

 

「ネルガル重工と同じような機械のメーカーだったと思うわ。確か建築機械を作ってるって聞いた覚えがあるもの」

 カティアの口から出たその名に、甲児が首をひねりさやかが答えを出した。

 

 弓教授も、さやかの言葉にうなずく。

 

 

「それが、なぜロボットを?」

 当然の疑問を弓教授が口にする。

 

 

「私達の両親はアシュアリーの社員で、一週間くらい前、月へ来てって言われて……」

 

 

「それで、あのロボットを?」

 

 

「いいえ。アシュアリー・クロイツェルは、何者かに突然襲われて……あちこちで爆発があって、気づいたら生き残っていたのは私達だけだったの……」

 

 

「っ!?」

「なっ!?」

「え?」

「なにっ!?」

 場にいた全員の表情が驚きに変わった。

 

 弓教授は椅子から立ち上がり、ミーティングルームの内線をとり、その事実を確認するよう通話相手に指示を出す。

 

 

「それで、助けてくれた人にあのロボットに乗せられて。でも追いかけられて、彼はあの機体と私達だけを逃がして、自分は追っ手を食い止めるために残ったの。きっと、もう……」

 

 

「……それが、あんたらを追ってきた奴等か」

 甲児が屋上から見た正体不明のマシンを思い出す。

 

「その時、私達はあの人と約束したの。あれは絶対に破壊させちゃいけない。絶対に奪われてはいけないって……」

 

 

「ならば、君達のご両親は……?」

 最も聞きにくいことを、弓教授があえて聞いた。

 

 両親がアシュアリーの社員ならば、そこに彼女達の両親もいたに違いないからだ。

 

 

「……」

「……」

「……」

 

 三人はうつむき、代表のカティアが首を横に振った。

 

 それはつまり、その襲撃で生き残ったのは自分達だけであるということを示していた……

 

 

(なんだ、なんだよ、それ……)

 

 統夜はカティア達の状況を聞き、愕然とした。

 

 テニア(フェステニア)があの場であれほど感情を爆発させたか、その理由もわかった。

 必死に自分に助けを求めた理由も。

 

 

(だから、学校が襲われそうになった時、あんなにも取り乱したのか……)

 

 

 両親の死も目の当たりにした後なのだ。人の死に敏感になっているのも当然の話だろう……

 

 

 コンコン。

 ミーティングルームの扉がノックされた。

 

 中に入ってきたのは、兜甲児より少し年上の男女。

 

 剣鉄也(マジンカイザー)と炎ジュンだった。

 

 

「あ、鉄也さん達も戻ってたのか」

 

「あの程度の機械獣どもにてこずるグレートじゃない」

 光子力研究所には二体のマジンが存在する。

 

 マジンガーZとグレートマジンガー。

 そのグレートマジンガーもまた、別の場所で暴れた機械獣の撃退に出ていたのだ。

 

 その剣鉄也が、鋭い目を統夜へ向ける。

 

 

「それにしても、兜と一緒に木星トカゲや機械獣を撃退したのがこんな奴とはな」

 

「おいおい、統夜は普通の学生なんだぜ。一回きりのピンチヒッターだ。そんな言い方ないと思うぜ」

 

「ふん」

 

 

「悪いな統夜。鉄也さんは厳しい言い方をする人だけど、根はいい人なんだぜ」

 

「兜!」

 

「へへへ」

 まるで二人は兄弟のように、叱られているというのに甲児は笑った。

 

 

「弓教授」

 ジュンが持ってきた紙の束を弓教授に渡した。

 

 どうやら先ほど頼んだアシュアリーの調査の報告のようだ。

 

 

 彼はものすごい速度でその紙をめくる。

 内容が把握できるのかと心配するほどの速度だったが、三分の二ほど進んだところでぴたりと手が止まった。

 

 

「……もう一度確認するが、アシュアリーを襲ったのは正体不明のマシンなんだね?」

 

「はい」

 

 紙の束から視線をあげた弓教授が、改めてカティア達に聞いた。

 

 

「どうやら、裏で厄介な事態が進んでいるらしい。アシュアリーを襲撃したのは、連合が把握している限りでは木星トカゲの仕業ということになっている」

 

「「「え!?」」」

 三人は弓教授の言葉に驚きを隠せない。

 

「ど、どういうことですか!? あの時アシュアリーは木星トカゲに襲われたんじゃありません。あの機動兵器に……!」

 

 

「連合が隠蔽したということですか?」

 

「その可能性もあり得るが、襲った者達が木星トカゲの仕業と偽装した可能性もある。ここからじゃなんとも判断できないね」

 

 

 やれやれと、ため息をついた。

 

 

「これはとても厄介な問題だよ」

 

「そうですね」

 弓教授のつぶやきに、鉄也が同意する。

 

 

「どういうことですか?」

 

 統夜が聞き返す。

 

 

「連合がやったとすれば、あの機体を動かしたお前達はもう普通の生活には戻れないということだ。連合が消したいと思うほどの機密に触れてしまったのだからな」

 

 鉄也が三人と統夜に向けて説明をはじめる。

 

「逆に、連合が偽装に騙されていたとすれば、あの木星トカゲも倒す機体は連合が喉から手が出るほど欲しがるシロモノだろう。あれは明らかに我々にとって未知の技術が使用されている。軍は是が非でもそれを解析したがる。一旦拘束されれば、すべての事情が明らかになるまで開放されることはあり得ない。軍の連中は組織的な後ろ盾のない者には容赦をしないからな」

 

 

「そんな……」

 

「どちらにしても拘束されて尋問されるだけじゃないか!」

 

 

「家族を失った挙句自由まで奪うってのかよ」

 鉄也の言葉を聞いた甲児も、それには大きな理不尽を感じた。

 

 

「待ってくれ。別に素直に名乗り出なくてもいいはずだ。あの機体のシステムなら、俺じゃない誰が乗ってもいいはずなんだから!」

 統夜が訴える。

 

 

「残念だが、そうもいかない。悪いと思ったが、俺とジュンで調べさせてもらった」

 鉄也が統夜の訴えに首を振った。

 

 

「結果は、俺達では起動さえさせることができなかった。これはたとえ兜がやろうと結果は変わらないだろう」

 

 それはつまり、動かせるのは統夜とサポートの三人だけということになる。

 

 

 この結果はむしろ残酷だった。

 軍はなにがなんでも四人を拘束し、あの機体の動かし方を解析するからだ。

 

 その方法が、人道的かは別として……

 

 

「アタシ達が、なにをしたっていうんだよ……」

「テニアちゃん……」

 

 テニアが涙ぐんだ。

 

 命からがら逃げてきただけだというのに、保護すべき軍が信用できないなんて……!

 

 

「フェステニアさん……。ねえお父さま。なんとかしてあげられないの?」

 

「このままここにいては、軍の追求を逃れるのは難しいだろう。しかし、一つだけ手がないわけでもない」

 

「お父さま、それは?」

 

「うむ。紫雲 統夜君と言ったね。君のご家族は?」

 

「……いません。母は俺が小さい頃病気で。父は三年前月で事故にあい他界しています。幸い十分なお金は残してくれたから、一人でなんとかやってますけど……」

 

 

(じゃあ、統夜君ももう家族がいない……?)

 

 それを聞いたカティアが、思う。

 

 

「そうか。ネルガル重工は知っているかね?」

 

「そりゃ、名前くらいは聞いたことありますよ。さっきも少し話題に出た、あの巨大グループですよね?」

 

「そう。あのネルガルグループの本体といえるのが、ネルガル重工だ。つい先日、ネルガル独自の技術を導入した戦艦が完成した。これはネルガルが私的に使用する。つまり、民間の戦艦ということになっている」

 

「戦艦ということは武装しているはずだ。そんな新造艦を民間で? よくそんなこと認められましたね」

 弓教授の説明を聞き、鉄也が驚きの声をあげた。

 

「連合に対してそれだけ影響力がある。ということだろう。そしてネルガルは、連合に秘密にしているある目的のため、この戦艦へ乗りこむクルーを探しているんだよ。実は私のところにも以前から協力依頼の打診があってね。彼等は独自に木星トカゲと戦えるだけの戦力を求めているのだ。マジンガーZやグレートマジンガーのようなね」

 

「そんな話、はじめて聞いたわ」

 弓教授の娘であるさやかも驚きを隠せない。

 

「断るつもりでいたからね。だが、彼女達がネルガルの戦艦に乗りこむとなれば、連合もそう手は出せなくなる。むろんネルガルも多大な興味を抱くだろうが、あくまで民間の企業だ。連合軍よりは幾分マシなはずだと私は思う」

 

「へぇ。いいんじゃないか?」

 甲児がうなずく。

 

「すみません。その目的というのはなんなんですか?」

 カティアが戦艦を用いる目的を聞いた。

 

 

「火星だよ」

 

 弓教授が上を指差す。

 

 

「火星!?」

 テニアが驚いた。

 

「君達も知っての通り、連合軍が火星会戦で破れ撤退して以来、火星の状況はまったく把握されていない。だが火星は多くの植民者がいた。連合が見捨てる形となったそれら取り残された人々はどうなったのか。ネルガルはそれを確認し、可能ならば生存者を救出するというのだよ。ネルガルが火星に進出していたことも無関係ではないだろうがね」

 

「今は地球圏の防衛だけで手いっぱいだから、軍はあてに出来ないってことか」

 甲児がそういうことかと納得する。

 

「だが、新造艦とはいえわずか一艦で火星に向かうなど正気の沙汰じゃない。でなければ……」

 

「その戦艦に使われている技術が普通じゃない。ということね。ネルガルは1艦でも目的を達成する自信があるのよ」

 鉄也が疑問をあげ、ジュンが続きを推測した。

 

 弓教授がうなずく。

 

 

「そうだろう。いずれにしても、ネルガルの戦艦で地球圏を出てしまえば連合も一切君達に干渉できなくなるだろう。むろん相応の危険は伴うが、どうかね? 君達さえよければ私の方で手配するが……」

 

 

 カティア、フェステニア、メルアは顔を見合わせた。

 

「どう?」

「アタシは賛成。どうせもう行くところもないしさ」

 

「そうですね。家に帰ってももう、誰もいませんし……」

 

 

 三人はうなずいた。

 

 同時に、その視線は統夜に集まる。

 

 あの時戦えたのは統夜が乗ったからだ。

 すなわち、彼がいなければ戦えない。

 

 彼女達はそれを、サイトロンを通じて理解していた。

 

 ネルガルが求めているのは木星トカゲと戦える存在。

 統夜のいない、戦えないソレに、価値は欠片もない。

 

 

「……」

 

 

 統夜はその視線を受け、黙ってしまった。

 

 

(くそっ。当然のことだけど、行きたくなんてない!)

 

 

 どうして俺がと叫びたい気持ちはあった。

 でも、それは彼女達も同じ。

 

 むしろ、襲撃され両親や知り合いまで失った彼女達の方こそどうして私がと叫びたい気持ちで一杯だろう。

 

 

 なにもかもを失い、彼女達に残されたのは助けてくれた人との約束。それだけ。

 

 

 それだけを頼りに、彼女達はこの過酷な状況を受け入れている。

 

 それしか、すがるものは、残されていないから……

 

 

 そんな彼女達を前にして、どうして俺をまきこんだんだなんて罵れるわけがない。

 境遇で言えば、彼女達の方がもっと酷いのだ。

 

 その彼女達が必死に我慢しているというのに、そこでそんなことが出来るなら、彼は立派な人でなしだ。

 

 

 しかし、だからといって彼女達と一緒に行けるかと言われれば即答はできない。

 統夜はこの生活に未練があるし、死にたくもないからだ。

 

 同意するということは、連合軍に追われることとなった挙句、その連合軍をも撤退させた木星トカゲがいるところへ一緒に行くということになる。

 

 そんなのほんの少し前までただの学生だった彼が悩まないわけがなかった。

 

 

 誰もがそれを理解している。

 強制など出来るわけがない。

 

 だからこそ、誰も統夜に声をかけるものはいない。

 

 答えは、彼自身が出すしかないからだ……

 

 

 

 ぴー。ぴー。

 

 

 統夜が悩んでいると、内線がなった。

 

 弓教授がそれを取り、内容を確認する。

 

 

「状況は余り芳しくない。連合軍と東アジア共和国政府(現在日本が属する共同体)から機体と、君達の引渡し要請が来たようだ。いずれここにも直接踏みこんでくるだろう」

 

 

「……」

 それを聞き、統夜は頭を抱えた。

 

 

 そんな統夜を見て、三人の少女達は顔を見合わせ、うなずいた。

 

 

「……ごめんなさい。私達が無理矢理巻きこんでしまったから」

 

「もういいよ統夜。アタシ達が軍に行けばすべて丸く収まるからさ」

 

「そうです。統夜さんはなんの関係もないんですから」

 

 

「っ!」

 

 統夜は驚き、抱えていた頭を解き彼女達を見た。

 その彼女達の表情は、どこかあきらめを感じさせた。

 

 家族もいなくなり、もうなにもかもどうでもよくなっているかのようだった……

 

 

「ちょっと待ちなさい。本当にそれでいいの!?」

 諦めた彼女達に、さやかが食って掛かる。

 

「そうだぜ。方法は他になにかあるはずだ。こんな理不尽、まかり通っていいはずがねえ!」

 同じく、甲児も。

 

 統夜を人でなしと罵ってもよかったはずだが、彼等はそうしなかった。

 

 むしろ他の方法を模索しようとしている。

 

 

 ほんの少し関わっただけだというのに、甲児達の方が彼女達に親身になっていた。

 

 

「……統夜とか言ったか」

 見守っていた鉄也が口を開いた。

 

「お前は、連合軍も苦戦する木星トカゲや機械獣を倒した。それは事実だ。あの正体不明の戦闘メカを動かしたのも。それはいくら誰かが否定し、隠蔽しようとも、その事実は変わらん。そしてその事実は、いつか漏れる。いい加減、覚悟を決めろ」

 

「……」

 

「お前に選べる道は三つしかない。一つは彼女達と一緒にネルガルの戦艦に乗るか、連合軍に拘束され自由を奪われるか。そして最後は、彼女達を犠牲に、いつばれるかと怯えて元の生活に戻るかだ。お前は、どれを選ぶ?」

 

 

「俺は……、俺は……!」

 統夜は鉄也をにらみつけた。

 

 だが鉄也は、その視線を平然と受け止める。

 

 

「ちくしょう。わかった。わかったよ。一緒に行ってやる! 行ってやるよ!!」

 

 

 そもそも選べる答えは最初から決まっていた。

 それ以外、どう選べというのだ。

 

 鉄也はその心情を見抜き、あえて厳しいことを言ってその背中を押したのである。

 彼はあえて、憎まれ役を買って出たのだ。

 

 

 諦めに染まった彼女達の顔が、希望に変わった。

 

 

 手を取り合い、統夜へ感謝の言葉を述べる。

 

 

 

 こうして、統夜の戦いは、はじまったのだ……

 

 

 

 

 第1話終わり

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