スーパーロボット大戦J ムーンデュエラーズ   作:YSK

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第17話 道を選ぶとき 後編

 

──????/牢獄──

 

 

 

「……ここ、は?」

 目を覚ました統夜にとびこんできたのは、見たこともない素材で出来た壁と格子だった。

 

 端的に言えば、牢獄。

 

 

「ああ、そうか」

 状況を思い出す。

 

 機体とパートナーを救うため、フューリーにあえて投降したのだ。

 

 

 ひとまず格子をがちゃがちゃと動かしてみるが、統夜の力ではどうしようもないとすぐにわかった。

 

 テッカマンやドモンならひょっとすると。と思うが、機体を降りた統夜はただの高校生なのでそれを考えるだけ無駄だった。

 

 

 格子には出入りのための扉がついているが、当然それには鍵がかかっている。

 

 牢屋の中を見回すと、ベッドがあった。

 

 一通り他の壁などもさわり確認するが、つなぎ目さえ見えない一枚岩のようなつくりだった。

 映画やドラマのように壁を掘り進めて。なんてのは期待できそうにもない。

 

 

 今の状況ではなにも出来ない。

 

 そう確信した統夜は、無駄な体力は使うまいとベッドに寝転んだ。

 

 

 戦いに参加した当初なら、こんな状況で一人にされたら泣き叫んでいただろう。

 しかし、拉致は一度経験しているし、これ以上のピンチは何度もあった。

 

 そのせいなのか、統夜は不思議と怖くはなかった。

 

 

 きっとなんとかできる。なんとかなる。漠然としたモノだったが、そんな確信が統夜の中にはあった……

 

 

 

──????/謁見の間──

 

 

 

「アル=ヴァン・ランクス。ただ今戻りました」

 

「戻ったか。アル=ヴァンよ」

 

 謁見の間でアル=ヴァンを出迎えたのは、総代騎士グ=ランドンだった。

 

 

「シャナ=ミア様はどちらに?」

 

「皇女殿下は今、祈りの間にお籠りになられておられる。アル=ヴァンよ」

 

「はい」

 

「なぜ、エ=セルダの息子を連れてきた?」

 

 

「エ=セルダ殿以外の、我等フューリーの同胞であった可能性があったからです。それを確認するため、捕縛してまいりました。それが、まさかエ=セルダ殿の息子であったとは、このアル=ヴァン見抜けませんでしたが」

 

 

「……裏切り者を捕らえた結果、正体はエ=セルダの息子であったと」

「はい」

 

 あくまでアル=ヴァンは、同胞の裏切りを確認するため、統夜をつれてきたと主張している。

 命を救うためではなく、その裏にあるなにかを吐かせるためだと。

 

 グ=ランドンは、そのアル=ヴァンを一瞥すると、短くうなずいた。

 

 

「まあ、見抜けなかったのも仕方がないのかもしれんな」

 

「? どういうことです?」

 

 

「エ=セルダの息子が現われたことで、私は確信した。我等が大願である地球帰還計画を無に返そうとした奴等の企み。その黒幕が誰であったのかを」

 

「それはエ=セルダ殿ではなかったのですか?」

 

 

「否。エ=セルダめを動かし、秘密裏にあの計画を進めていた者。我等フューリー真の裏切り者。それは、シャナ=ミアだ」

 

「なっ!?」

 

 グ=ランドンの告白に、アル=ヴァンの体が揺れた。

 

 彼女はフューリーを統べる者。それが自分達を裏切り、敵側に手を貸したとなれば、そのショックはとんでもないことだろう。

 

 

「正確に言えば、先帝とエ=セルダとが秘密裏に成そうとしていたのをあの方が引き継がれたのだろう。昔エ=セルダが息子をこの地につれてきたことがあると言ったな」

 

「はい。幼いシャナ=ミアにあわせるためだと。同年代の子がおらぬあの方のためと聞いていましたが……」

 

 アル=ヴァンはシャナ=ミアの従兄弟である。

 その時彼は、その場に同席していた。

 

 そしてその後、その共存の可能性として生まれた子は病弱で死んだと聞かされた。

 ゆえに騎士団は、地球人との共存は不可能だと考えた。

 

 しかしその死は、偽りだった……

 

 

「その死の事実が偽りならば、それこそが、あの計画の進行の報告と実現可能であるとの証明を先帝に見せるためだったのだ。先帝の死後、シャナ=ミアはそれを引き継いだ。アシュアリーの設立も、表向きは我等のための戦力増強だったが、裏では計画を進めるためと考えれば納得がいく。すべての黒幕は、我等の真の敵は、あそこにいたのだ!」

 

 グ=ランドンは悔しそうに、玉座を見た。

 

 

「アル=ヴァンよ。私は身を焦がす思いだ。だが、帰還計画は必ず成功させねばならん。しかし、その実現を邪魔するものが我等の頭上にいてはどうなるか。理解が出来よう……」

 

「……まさか!」

 

「私とて苦しい。されど、これは民のためなのだ。わかるな?」

 

「……」

 

 グ=ランドンの視線に、アル=ヴァンは答えを返すことはできなかった……

 

 

 

──????──

 

 

 

「……」

 統夜はベッドに転がり眼を閉じていた。

 

 一体どれだけの時間がたったのかはわからない。

 なぜかここでは腹が減ることもなく、排泄をする必要も感じられなかった。

 

 それゆえ、一体どれだけの時間がたったのか、それを判断する材料がなさすぎてまったくわからない。

 

 焦ってはいけない。と思いつつも、このままなにもされないまま放置されれば、精神が参ってしまう。

 こうなったら筋トレでもして時間を潰そうか。なんて考えにいたり、ベットから身を起こそうと考えもした。

 

 

 かちり。

 

 

「……ん?」

 

 なにか格子の方から音がした。

 目を開け、そちらの方へ視線をむけると牢屋を閉ざしていた扉がゆっくりと表に開いていくのが見えた。

 

 鍵が開き、扉が開放されたのだ。

 

 

 あたりに、見張りはいない。

 

 

「……」

 

 

 明らかに、罠だ。

 開いた格子の扉を見て、統夜はそう思った。

 

 

(でも、このままここにいてもジリ貧だ……)

 

 

「ええい、いいだろう。その誘い、乗ってやる!」

 

 開いた者の思惑はわからない。

 だが、ずっとじっとしていてもここからは出られない。

 

 ならば、この思惑を逆に利用してやる。

 

 

 そう考え、統夜は牢屋を飛び出した。

 

 

 通路を走る。

 彼を呼び止めるものも、邪魔をするなにかもなかった。

 

 ただ、進むべき道を示すように長い通路が開かれている。

 意図的に開かれた一本道の通路。

 

 それは、統夜をいざなう悪意の誘導。

 

 

 統夜が走り、たどりついた場所。

 

 

 

 そこは、祈りの間だった。

 

 

「誰です?」

「っ!?」

 

 そこには、一人の少女がいた。

 少女の周囲はキラキラと光る粒子が舞い、天井から一筋の光が少女を照らしている。

 

 

「君、は……」

「あなたは……」

 

 

 統夜は、目の前で祈りを捧げていた処女を知っていた。

 

 いや、知らない。

 でも、知っている。

 

 そこにいたのは、夢の中に現われては消えた少女だったのだ……!

 

 

 

 その様子を監視していたグ=ランドンは、二人の邂逅を見てにやりと笑った。

 

 統夜を牢屋から出したのはグ=ランドンの手引きであった。

 

 

 騎士であるグ=ランドンが皇女を排斥するには理由がいる。

 しかし、あの計画について問いただし排斥するには色々と都合が悪い。

 

 それは、一度潰した計画を蒸し返すということになりかねないからだ。

 

 まだ融和の証明たる混血児が存在する今ではやぶ蛇になりかねない。

 

 

 ならばと彼は策を打った。

 共存計画の要であった混血児。それを使い、皇女を殺すきっかけと、自身の計画を磐石とするために。

 

 乱心したあの混血児が祈りの間へ乱入し、皇女を殺し、そして始末される。

 

 皇女が成そうとした計画の体現者が、その皇女を殺す。

 そうなれば、フューリーの民は地球への憎しみを募らせ、その融和は不可能となる。

 

 その計画を破綻させるのに、これ以上の条件もあるまい。

 

 さらに混血児を受け入れようとした優しき皇女の敵討ちとして彼等騎士団は結束し、忌むべき地球人を一致団結して抹殺することが出来る。

 そしてそのフューリーの頂点に、自分が立つ。

 

 忌まわしい融和の証拠と、目の上の重石を同時に取り去る策。

 

 

 これが、グ=ランドンの描いた簒奪計画だった。

 

 

(よいタイミングでアレをこの地につれてきてくれたものだ)

 計画が思惑通りに進んでいることを確認し、グ=ランドンはにやりと笑う。

 

 

 

 しかし、この二人の出会いは、グ=ランドンでさえ予測し得なかった事態を引き起こす。

 

 

 シャナ=ミアの周囲で輝く光の粒子がさらに大きく光を発する。

 

 皇族として高いサイトロンの適応率を持つシャナ=ミアと、戦いの中サイトロンの適応が高まった統夜の出会いにより、二人の力が共鳴し、あり得ないことが起きたのだ。

 

 瞬いた光の中に、二人の未来が見えた。

 統夜の頭に、この祈りの間へ従士とグ=ランドンが踏みこみ、自分とこの少女を殺す未来が。

 

 サイトロン・システムを搭載した機体がないというのに、未来の断片が見えたのである。

 

 

 見えた未来はそれだけではない。

 統夜が生きのこるための、様々な可能性が頭の中に流れこんできた。

 

 通常ならば、見える未来の断片は一つ。

 それを覆し、多数の未来を垣間見たのだ。

 

 

「くそっ、こんな所で殺されてたまるか!」

 統夜は未来を垣間見た直後、壁に走る。

 

 壁の突起を動かし、隠し通路を開いた。

 

 

「なぜそこに通路があることを!?」

「知っているんじゃない。見えたんだ。サイトロンが、俺に見せたんだよ! あんたには見えなかったのか!?」

 

「私に見えたのは……」

 

 シャナ=ミアに見えたのは、自分を殺しに来る騎士達の姿だけだった。

 最悪の未来。それのみ。

 

 だから彼女は、青い顔をして、身動きがとれない……

 

 

 迷うことなく隠し扉を開き、統夜はそこへとびこもうとする。

 

 だが、立ち止まり振り返った。

 

 

「あんたも来るんだ!」

 

 その手を握り、強引に手を引き通路へと走る。

 

 

「なぜ、私を……」

 

 シャナ=ミアは、統夜が自分を助けようとする理由がわからなかった。

 逃げるにしては足手まとい。

 

 しかも、相手の狙いは明らかに自分だとわかっているはずなのに……

 

 

 味方に裏切られた自分を連れて、足手まといをつれて、一体どうしよういうのだろう……?

 

 

「ごちゃごちゃ考えてうるさいな。あんたを人質にすれば逃げられる確率が上がるかもしれないだろ。それはゼロじゃない。それに、そう、あんたなら機体のあるところに案内できるだろ!」

 

 シャナ=ミアが困惑のまま、口にしていないことも統夜は理解して口を開いた。

 あえて、シャナ=ミアを連れて行く理由を語る。

 

 考えるままに機体を動かすサイトロン・システム。

 

 それは、搭乗者間での意思の疎通も可能にする。

 

 それと同じことが、この場でも起こったのだ。

 

 

(会ったばかりでこのようなことが起きるなんて……)

 

 

「……いや、違うな。そんなことはどうでもいい。あんたはずっと、助けを求めてた。ずっと俺達に謝ってた。そんな人、放って置けないんだよ! あんたと俺は敵かもしれないけど、今はどちらも命がかかっているんだ。俺が味方になってやる。だから、力を貸せ!」

 

 言葉がまとまらないまま、シャナ=ミアの手を引きながら統夜はまくし立てた。

 

 言葉に出さずとも、シャナ=ミアにもその気持ちは伝わっていた。

 統夜が彼女の困惑がわかるように、シャナ=ミアも統夜の考えが理解できたからだ。

 

 

「……わかりました。格納庫まで案内しましょう」

 

 

 シャナ=ミアの案内で、統夜は格納庫を目指す。

 グランティードがなくとも、同じコントロールシステムを積んだ機体があれば動かせる可能性があるからだ。

 

 

「この先が、格納庫です!」

 

 あともう少しで格納庫。

 

 

 しかし、格納庫ではなにか動くものがいた。

 

 それは、リュンピーと呼ばれる従士の乗るフューリーの汎用機だった。

 

 その巨体が、格納庫への通路に立ちふさがり、彼等がそこへ立ち入るのを塞いだ。

 

 

「通路が!」

 

 

「お前達がここに来るしかないというのはわかっていた」

 

 さらに統夜達の後ろ。

 そこに従士を従えたグ=ランドンが姿を現す。

 

 

「お前は!」

「グ=ランドン!」

 

 統夜もその顔を知っている。

 未来の断片で自分達を殺した男だったからだ。

 

 

「グ=ランドン、なぜこのようなマネを?」

 

 シャナ=ミアが一歩前に立ち、首謀者であるグ=ランドンに問う。

 

 

「知れたこと。あなたこそが真の裏切り者と判明したからです。表では我等の行動を認可しておきながら、裏ではあのような計画をエ=セルダと共に進めてきた。ならば、我等に排斥されても文句はあるまい!」

 

「そ、それは……」

 グ=ランドンの言葉に、シャナ=ミアは反論することが出来なかった。

 その表情。その反応は、グ=ランドンの言葉を認めているのと同意である。

 

 彼女は人類抹殺の帰還計画も許可し、裏では人類と共存する計画も推し進めていた。

 早い話、どっちかずでもあったのだ。

 

 

「ふん。決断も出来ぬ小娘が。どちらにも甘い顔をしたツケが回ってきたと知れ。だが安心するがいい。あとは私が民を導いてやる」

 

 

「この人は姫様なんだろう! そう簡単に殺すとか、そんなことできるのか!?」

 

 

「ふっ。皇女を人質にと考えたのだろうが残念だったな。表向き皇女は、乱心したお前に殺されるのだ」

 

「なにっ!?」

 

「事を成したお前は、駆けつけた私に始末される。そこに残るのは地球人との共存は不可能という、貴様等との深い溝のみだ。我等は混血児を受け入れようとした心優しき皇女の敵討ちとしてより強固に結束し、地球の者どもを一掃するのだ!」

 

 

「なんてことを……!」

 

 シャナ=ミアが声をあげる。

 そうなっては、今までいた共存派さえ人類の抹殺に傾き、それこそどちらかが全滅するまで戦いが止まらなくなってしまう。

 

 

「あなたは団結の礎としてここで死んでゆくのです」

 

 

 グ=ランドンが手を上げる。

 同時に従士が銃らしきものを持ち上げた。

 人としての装備の観点から、その使い方も同じと見ていいだろう。

 

 すなわち……

 

 

「そこまでして戦争になだれこみたいのですか!? グ=ランドン」

 

「いや、戦争はまだ、続いているのです。まだ終わっていないのだ!」

 

 

「戦争が……?」

 グ=ランドンの言葉に、統夜は違和感を感じた。

 

 しかしその言葉の意味を考える暇はない。

 

 

「さあ、死……」

 

 

 どぉんっ!

 グ=ランドンが手を下ろそうとした瞬間、格納庫に陣取っていたリュンピーが爆発した。

 

「なっ!?」

 突然のことに、グ=ランドンも銃を構えた従士の動きも止まる。

 

 

 爆煙の影から現われたその姿。

 それは、アル=ヴァンのラフトクランズだった。

 

 

「撃て、殺せ!」

 はっとしたグ=ランドンが従士に命令を下すが、遅かった。

 

 従士から光が飛ぶが、統夜とその間に、ラフトクランズの盾が割りこんだからだ。

 その攻撃は全て、その盾によって防がれた。

 

 

「逃げるのだ、統夜!」

 

 

 アル=ヴァンの声が響く。

 

「アル=ヴァン!?」

 

 

「奥にヴォルレントが置いてある! 今の君なら動かせるはずだ。行くのだ!」

 

 アル=ヴァンの声に従い、統夜はシャナ=ミアの手を引き格納庫へ入った。

 

 

「あれか!」

 格納庫にある紫を基調としたヴォルレントのコックピットが開いているのが見えた。

 

 

「さらに奥に転移装置がある。そこに飛びこめば地球へ行けるようにしておいた。シャナ=ミア様をつれ、仲間の元へ戻るのだ!」

 

「アル=ヴァン!」

 

「シャナ=ミア様、今はお逃げください!」

 

「行くぞお姫様!」

「は、はい」

 

 

「アル=ヴァン、貴様ッ! 共存派に利用されたというのになぜこやつらをかばう!」

 

 グ=ランドンが怒りの声をあげる。

 

 かつて子供の統夜をアル=ヴァンに見たというのは、彼等騎士を油断させるための策略であった。

 それを実現させたのは、この真面目な騎士の証言。

 

 彼の言葉がなければ、かつて共存の証が存在し、病死したというのは誰も信じなかっただろう。

 

 そうして共存派に利用されたというのに、なぜその共存派の親玉をかばうというのだ!

 

 

「それこそが私に与えられた役目だからだ! 主たる皇女と、一騎打ちで私を倒したあの方の後継と言える存在に全てを託し、従うのは当然のこと!」

 

 アル=ヴァンは共存の象徴たるエ=セルダの子である統夜と一騎打ちで戦い、正々堂々たる戦いの上で敗北した。

 さらに自身の主たる皇女の真の望みは、共存であった。

 

 確かにアル=ヴァンは共存派に利用された形だろう。

 だがそれは、アル=ヴァンだから出来たという大きな信頼からの行動ともとれた。

 

(あの方はあの時、未来の希望を彼に託した! あえて私に倒されることで!)

 

 それはある種、自分を信頼していたという証でもある!

 ならば、敗北した騎士たる自分になにが出来ること。自身に問いかけた答え。

 

 

 それが、未来のために種を飛ばすことだった!

 

 

「おのれっ! 貴様も結局我等を裏切るか!」

 

 

「否! 裏切り者というのならば、それはむしろ我々全てのことを指す言葉だ! 我等騎士団こそが、主を、守るべき民を裏切った!」

 

「相変わらず融通のきかぬ男だ。ならば、奴ごと排除しろ! それで本望だろうからな!」

 

 格納庫から他のリュンピー達が動き出し、統夜達へ殺到しようとする。

 しかし、それに、アル=ヴァンが立ちふさがる。

 

「いかせん!」

 修復もままならぬラフトクランズを駆り、アル=ヴァンは統夜を逃がすため盾となる。

 

 

 紫色のヴォルレントに統夜は乗りこむ。

 それは、副座タイプの特別な機体だった。

 

 

「動かし方は、同じか。俺一人で、いけるか……?」

 

 コックピットに座り、サイトロン・システムによりそれを立ち上がらせようとする。

 だが、普段はパートナーに任せっぱなしのところもあるからか、不思議と上手く起動させることが出来なかった。

 

 

「あれ? いや、これが……」

 

 起動に四苦八苦する統夜を見て、シャナ=ミアは後部にあるサブシートへ腰を落とした。

 

 

「シャナ=ミア?」

「お手伝いします。私にも心得がありますから、サポートくらいは出来るはずです」

 

「頼む」

「はい!」

 

 シャナ=ミアのサポートもあり、起動に成功したヴォルレントが立ち上がり、ふわりと浮かび上がった。

 

 

「アル=ヴァン!」

 

「私のことはかまうな! 行け!」

 

 

「……わかった。アンタにはまだ聞きたいことがたくさんあるからな!」

 

「アル=ヴァン! 私は必ず戻ってきます。だから、だから、死なないで!」

 

 

(シャナ=ミア様のことは任せたぞ。統夜=セルダ・シューン!)

 

 

 転移装置に向かう彼等を見送り、アル=ヴァンは二人の無事を祈った。

 

 

 統夜は転送装置。艦でいうカタパルトデッキにあたる場所へ向かう。

 

 そこにはすでに、二体のリュンピーが回りこんでいた。

 

 

「悪いが倒させてもらうぞ!」

 元々はシャナ=ミアの臣下であるから、統夜はそう一声かけ、ヴォルレントのエネルギーソードを引き抜いた。

 

 二体も同じく接近用のソードを取り出し、迫るヴォルレントを迎撃しようとする。

 

 

 二度、機体が交差し、二体のリュンピーは膝を通路に落とした。

 

 

(二機を一瞬にして。これが今のトウヤの力……)

 

「くそっ、反応が鈍い。俺とじゃフィッティングがあわないのか? これならグランティードに乗った方がまだマシだな。ないものねだりだけど……」

 

「え?」

 統夜の言葉に、シャナ=ミアは驚いた。

 

 

(この動きで反応が鈍い? これは副座の特別仕様とはいえ、ヴォルレントは準騎士が乗る機体。それに乗ってそんなこと……)

 

 

 ヴォルレントとは、将来騎士となりえる優秀な者に与えられる機体である。

 純フューリー製の機体に乗って、機体の性能に振り回されることがあったとしても、機体の方が反応に遅れるなんてことは通常あり得ない。

 

 思考を感じ取り、思うまま動かせるサイトロン・システムでそうなるということは……

 

 

(いえ。むしろ彼の力にヴォルレントすらついていけないんだわ。彼のサイトロン・コントロールはすでに、騎士並。いえ、ひょっとするとそれ以上なのかもしれない)

 

 騎士の位にあるものといえども、ヴォルレントに乗って不満を口にするのはまれだ。

 アル=ヴァンを一騎討ちで破った統夜は、すでにそのレベルまで上り詰めていたのだ。

 

 しかし、並の者が相手ならば、動きが鈍いと感じながらも十分に渡り合える。

 

 

 問題は、同レベルの存在。

 騎士が現われた時である……

 

 

 一縷の不安を抱えながら、統夜達は転移装置へ飛びこんだ。

 

 

 

──ナデシコ/格納庫──

 

 

 

 ここはナデシコの格納庫。

 

 統夜がフューリーに連れ去られてからオーブと連合の間でもいろいろあり、そこから脱出したナデシコとアークエンジェルはオーブ近海を航行することとなっていた。

 

 

 カティア達は、統夜の無事を信じ、グランティードの整備をしている。

 

 急ピッチで修理も進んだことにより、アル=ヴァンとの戦いでボロボロになったそれは、綺麗に修理が完了していた。

 反応速度も少しだけあげることに成功しており、あの時の統夜が乗ってもまた理論上は十分に戦えるハズである。

 

「ふう。これで、統夜がいつ戻っても大丈夫だね」

「ええ」

 

 最後の仕上げを終えたテニアとカティアが一息ついた。

 

 

「お疲れ様。テニアちゃん、カティアちゃん。なにか食べる?」

 

 メルアがバスケットと水筒を手にやってきた。

 二人に声をかけるため、コックピット内に入ったその時だった。

 

 

 コックピット内に、光が瞬き、三人の脳裏に、未来の断片が映し出された。

 

 

「これはっ!」

 三人は顔をあわせ、うなずきあう。

 

 

「行かなきゃ!」

「ええ。行きましょう!」

「はい!」

 

「ブリッジ、カティアです。今すぐグランティード、出ます。ハッチ開けてください!」

 

「ど、どういうことです!?」

 

 ナデシコの通信士メグミが困惑したように返した。

 

 

「統夜さんが!」

「統夜が戻ってくるんだ。迎えに行かないと! 急がないと!」

「追われているみたいなんです。だから!」

 

 

「なにか見えたんですね! わかりました。ルリちゃんオープンしちゃって!」

「はい」

 

 艦長命令で、格納庫の扉が開く。

 

 彼女達は格納庫を飛び出し、一直線にそこを目指した。

 

 

「せ、せめて目的地をー! すぐに彼女達を追ってくださいー!」

 

 

 それを追い、二つの戦艦も彼女達を慌てて追う。

 

 だが、最初から全速力で飛び出していった彼女達を追うのは、容易なことではなかった……

 

 

 

──オーブ近海──

 

 

 

 転移の光を抜けると、そこはまさしく、統夜の知る地球だった。

 

 青い空が広がり、青い海に太陽の光が降り注ぐ。

 

 

「ここは……?」

 

 

 サイトロンが統夜に告げる。

 

 

「……オーブ近海か。なら下手すると連合軍やザフトと遭遇しかねないな」

 

 オーブの関係者に見つかれば安全だが、それ以外とも遭遇することもあり得る。

 統夜がフューリーに連れて行かれたあとのことは統夜にはわからないが、ひとまずオーブまで戻れれば皆と合流できる可能性が高いと判断した。

 

「オーブの方向は……」

 

 

「統夜ー!」

 

 オーブの方向を探ろうとあたりを見回した直後、テニアの声が耳に響いた。

 

 

「テニア!?」

 

「わたし達もいますよ!」

「統夜君!」

 

 

「メルア、カティア! どうしてここが!?」

 

 

「見えたんだ。統夜がここに来るって!」

 

「サイトロンか!」

 

 未来の断片は自分だけでなく彼女達にも見えると思い当たった統夜が声をあげた。

 

 

「ならちょうどいい。グランティードに乗り換える。こっちに来てくれ」

 

 

「え? 追ってくるのはわかってるけど、みんなが来る方に逃げた方が早いんじゃ?」

 

 

「いや、相手は転移が使えるから間に合わない。間違いなく追いつかれるだろう。なら、こいつよりグランティードの方が戦いなれているからな」

 テニアの疑問に、統夜は答えた。

 

 双方隣接し、ハッチを開く。

 

 すると、ヴォルレントの中にシャナ=ミアがいることに三人は気づいた。

 

 

「誰っ!?」

 

 

「説明はあとだ。『パートナー選択』は俺と一緒に。二人はこっちに移ってくれ」

 

 事態が事態なので、さすがにそれ以上の追求は出来ず、選ばれなかった二人はヴォルレントの方へ移った。

 

 

「俺から離れるな。みんなが来るまで、時間を稼ぐ」

 

 相手は転移が使える。ならば、共に戦った方がいいという判断だ。

 仮にも彼女達は統夜と共に戦い抜いてきたのだ。互いにフォローできれば、仲間が来るまで耐えられるはずだ!

 

 

 

──カティア搭乗時──

 

 

 

「……」

「どうかした?」

 

 グランティードに乗りこみ、敵の出現が迫ったその時、統夜はどこか感慨深そうにグランティード内部を見ていた。

 

 

「いや、座ってみて、やっぱりこっちの方がしっくりくると思ってさ」

 

「ふふっ。ちゃんといつ戻ってきてもいいようにしておいたのよ」

 

「ああ。俺の根拠もない約束を信じてくれて、ありがとな」

 

 統夜は、後部座席にいるカティアに笑いかけた。

 

 

「……あ、あたりまえでしょう。私達は、パートナーなんだから!」

 

 

「そうだな。カティアは信じてくれるって言ったもんな。じゃあ、もう一つ乗り越えて、みんなのところに帰ろう」

 

「ええ!」

 

 

 

──テニア搭乗時──

 

 

 

「……」

「どうかしたの?」

 

 グランティードに乗りこみ、敵の出現が迫ったその時、統夜はどこか感慨深そうにグランティード内部を見ていた。

 

 

「いや、座ってみて、やっぱりこっちの方がしっくりくると思ってさ」

 

「当たり前だよ。統夜がいつ戻ってきてもいいようにちゃんと直したんだから!」

 

「俺の根拠もない約束を信じてくれて、ありがとな」

 

 統夜は、後部座席にいるフェステニアに笑いかけた。

 

 

「あ、あたりまえだよ! アタシ達、パートナーなんだから! そう思うなら、ナデシコに帰ったら火星丼おごってよね!」

 

 

「大盛り、お代わりは一度までな」

 

「特盛り二回!」

 

「お代わりは一回! ほら、来るぞ!」

 

「わーいとくもりー!」

 

 

 

──メルア搭乗時──

 

 

 

「……」

「どうかしました?」

 

 グランティードに乗りこみ、敵の出現が迫ったその時、統夜はどこか感慨深そうにグランティード内部を見ていた。

 

 

「いや、座ってみて、やっぱりこっちの方がしっくりくると思ってさ」

 

「はい。統夜さんが戻ってきて、この子も喜んでますよ」

 

「そうか。メルアも、俺の根拠もない約束を信じてくれて、こいつを直しておいてくれて、ありがとな」

 

 統夜は、後部座席にいるメルアに笑いかけた。

 

 

「ふふっ。当然ですよ。だって私達、パートナーじゃないですか」

 

 

「そうだな。じゃあ、約束を完全に果たすために、なんとしてでもみんなのところに帰ろう!」

 

「はい!」

 

 

 

──グランティード・ドラコデウス──

 

 

 

 海上の空間が一瞬ゆがみ、フューリーの一団が転移して現われた。

 

 

 その中に、深紅で塗られたラフトクランズの姿もあった。

 それは、統夜達ははじめて見る機体。

 

 だが、シャナ=ミアはそれに見覚えがあった。

 

 

「グ=ランドン! 直接出てくるとは、彼は本気で私達を消すつもりのようです……」

 

「そうはいくか。俺達は必ずみんなのもとに帰るんだからな!」

 

 

 

「……あのユニットを積んだ機体までもが健在とは。アル=ヴァンめ、偽りの報告までするとは、騎士の風上にも置けぬ奴よ」

 

 逃げた副座ヴォルレントを守るようにして存在するグランティードを見て、主を裏切った総代騎士がぬけぬけと口を開いた。

 

「かかれ。奴等を生かしておいては我等の大願の邪魔となる。必ず抹殺するのだ!」

「はっ!」

 

 グ=ランドンの命に、共に現われた従士達は武器を抜き、グランティードへ迫った。

 

 

「誰がっ!」

 

 迫るリュンピー。ガンジャールを即座に破壊する統夜。

 

 ヴォルレントに乗った時に比べ、さらに鋭さを増していた。

 

 

「くそっ。グランティードもか……!」

 

 しかし、その動きに、統夜は不満を感じる。

 

 

(統夜君の反応がまた上がってる。せっかく直したグランティードなのに、このままじゃ……)(カティア搭乗時)

 

(統夜の反応がまた上がってる。せっかく直したグランティードなのにこのままじゃ!)(テニア搭乗時)

 

(統夜さんの反応速度がまた速く。これじゃわたしもこの子もいずれついていけなく……!)(メルア搭乗時)

 

 

 さらに迫る機体を撃墜したところで、グ=ランドンはそれに気づいた。

 

 

「なかなかやる。さすがエ=セルダと奴等の子供達だけはある。そこだけは認めよう。だがっ!」

 

 深紅のラフトクランズがオルゴン・クラウドを用い転移する。

 

 

「その反応から次この角度の攻撃への対応に、一瞬の遅れが出ているぞ!」

 

 

「くっ、わかっているのに!」

 

 グ=ランドンは見抜いていた。

 グランティードが統夜の反応についてきていないことに。

 

 統夜の速すぎる反応に、機体の動きが遅れていることに!

 

 

 思考に対し遅れる反応。

 

 そのタイムラグにより、ほんの少し生まれる隙。

 実力に差があれば問題とならない時間。

 

 しかし、実力が近しい者にとっては、それは致命的過ぎる大きな隙だった!

 

 

 深紅のラフトクランズの大剣が、グランティードを捕らえる。

 

 

 それにひと目で気づき、さらにそれを即座に実行するのだから、やはりグ=ランドンは総代騎士の名に恥じない実力の持ち主だった。

 

 

「くうぅ!」

 その衝撃に、グランティードの態勢が大きく崩れる。

 

 

「これで、とどめだ!」

 

「くっ、そ!」

 

 

 深紅のラフトクランズが大剣を振り上げる。

 

 統夜はその攻撃にも反応している。

 危機を察知し、かわそうと頭で指令を出している。

 

 しかし、肝心のグランティードがその反応についてこれないでいた。

 

 

 態勢が崩れたまま、迫るラフトクランズの一撃に、なすすべがない。

 

 

 ただ、迫るそれを見ているしかできないのだ……

 

 

(こんなところで、こんなところで死んでたまるか。死ぬわけにはいかないんだ!)

 

 声さえ出せぬ刹那の時間、統夜はそう念じる。

 

 

 どくん。

 

 

(このままじゃ……! 私はまた、見ているしかできないというの……!? そんなの。そんなの、嫌っ!)(カティア搭乗時)

 

(このままだとっ! アタシはまた、なにもできないの!? やだよ。そんなの、嫌だっ!)(テニア搭乗時)

 

(また。このままだと……! そんなの。そんなの嫌です! このままなにもできずにいるなんて、絶対……っ!)(メルア搭乗時)

 

 同時に、統夜と共に乗るパートナーも、強く想った。

 

 

 どくんっ。

 どこかで、なにかが反応した。

 

 

『我を、呼べ』

 

「っ!」(統夜)

「っ!!」(パートナー)

 

 極限の最中、声が、聞こえた。

 

 

『聞こえているだろう。我が、声が。この力に相応しい者ならば、聞こえたはずだ。我が、名が……! さあ、呼べ。我が名を……! 示せ。その資格を……!』

 

 

 その声に、統夜達は大きくうなずく。

 

 

(ああ。そうだ。俺達はまだ死ねない。こんなところで、負けられない! お前が何者かは知らない。でも、なにかはわかる。今の俺に必要な力。俺の声に答えろ──!!)(統夜)

 

(そうよ、統夜君。こんなところじゃ私は、私達は死ねない。だから、だから答えなさい。私の声に──!!)(カティア搭乗時)

 

(そうだよ! こんなところじゃ死ねない。アタシ達は死ねないんだ! だから答えて。アタシの声に答えて──!!)(テニア搭乗時)

 

(そうです! わたし達はこんなところじゃ死ねません! 死ねないんです! わたしの声に答えてください──!)(メルア搭乗時)

 

 

 

 ──バシレウス!!!!

 

 

 

 彼等は刹那の瞬間で、祈り、願い、そして、叫んだ。

 

 その願いは。

 

 

 その想いは……!

 

 

 サイトロンを通じ。

 次元も、時空も、なにもかもをこえ、バシレウスに届いた!

 

 

 

 その純粋な呼び声に、ひたすらな想いに、天は、バシレウスは答える!

 

 

 

 空が、空間が割れる!

 それは、次元を引き裂き突然現われた。

 

 現われたのは、巨大な獣。

 

 竜の姿をした、鋼の巨竜だった。

 

 

「ギャオオォォォォ!!」

 刹那、それはとどめをささんと大剣を振り下ろす深紅のラフトクランズへ体当たりを行い、それを大きく吹き飛ばした!

 

 

「なっ!?」

 

 突然の奇襲に、グ=ランドンも驚きを隠せない。

 

 だが、驚くのはむしろこれからだった……!

 

 

「あれは、竜神バシレウス……?」

 その姿を見たシャナ=ミアも驚きの声をあげる。

 

 彼女は現れた鋼の巨竜を知っていた。

 それは、フューリーの創世神話で語られる、龍の神。

 

 統夜と彼女がばったり会った場所。

 シャナ=ミアが祈りをささげていたそこ。

 

 あの場は、この龍へ祈る場なのである!

 

 

 その龍が。

 フューリーを守護し、祝福する神が、統夜の想いに応え、この場に現れた。

 

 すなわち……!

 

 

 現われた巨竜バシレウスが、態の崩れたグランティードを受け止めるように舞う。

 

 

「統夜(君、さん)!!」

 

「ああ!」

 

 サイトロンによってその正体を理解した統夜が声をあげた。

 

 グランティードとバシレウスがバラバラに分離し、一つの機体へ合体する!!

 

 

 二人の心を一つにし、今、ここに、新たなグランティードが姿を現す!

 

 

 現われたのは、巨大な竜をその内に秘めた姿。

 それは、フューリー創世の神話に現われる、ドラゴンの神を思わせる、信じられないほどに神々しい姿をしていた。

 

 

「バッ、バカな……エ=セルダは、復元に成功したというのか。フューリー星団全てを統べる王のみが乗ることを許されたと言われる、伝説の玉座機を!」

 その真の姿を見たグ=ランドンが、思わず声をあげた。

 

 それは、一つの伝説。

 その龍に認められ、その力を授けられたもの。

 

 それこそが、フューリーの皇としてふさわしい存在とされている伝説だ。

 

 

「オルゴン・エクストラクター連結完了! 出力正常。システムオールグリーン! これなら、あなたの力をすべて出し切れるわ!」(カティア搭乗時)

 

「オルゴン・エクストラクター連結完了! わっ、出力が倍に。システムもオールグリーン! これなら、統夜も全力がだせるよ!!」(テニア搭乗時)

 

「オルゴン・エクストラクター連結完了! 出力正常。システムも問題ありません! これなら、統夜さんでも全力を出せます!」(メルア搭乗時)

 

 

「ああ!」

 

(わかる。今、グランティードが真の姿になったことが。お前の使い方も、動かし方も、全部! 行くぞグランティード。いや、グランティード・ドラコデウス!)

 

 

 統夜の反撃がはじまった。

 

 新たな剣を得た統夜は、まさに、一騎当千だった!

 

 

 彼の思うがままに動くようになったそれは、迫る敵を瞬時に倒し、攻撃する暇さえ与えず(カウンター)、機体を無力化させる。

 

 まさに鎧袖一触。敵が動けば敵は倒れ、統夜が動けば敵が倒れる。

 

 

 せまる敵をすべて倒し、グランティード・ドラコデウスは深紅のラフトクランズに迫った。

 

 

 この時、パートナーの搭乗回数が20回を超えている場合、グ=ランドンのラフトクランズのHPを一定以下にすると撤退前にイベントが発生し最強武器、インフィニティキャリバーが放たれ、以後使用が解禁される。

 ※2周目以降ですでに条件を満たしている場合は乗り換え直後から使用が可能。

 

 

 グランティード・ドラコデウスの一撃が、深紅のラフトクランズをとらえた!

 

 

「おのれ……!」

 

 しかし、完全破壊には至らず、ボロボロとなった深紅のラフトクランズは転移し、戦場から姿を消した。

 同時に、残っていた従士達も撤退して行く。

 

 

「……グ=ランドン」

 消えた深紅のラフトクランズを見て、シャナ=ミアが悲しそうにつぶやいた。

 

 最も信頼できるはずの総代騎士がみずから自分を抹殺しに来たのだから、その悲しみは、他者にわかるものではないだろう……

 

 

「統夜、無事か!」

 少し遅れ、ナデシコとアークエンジェルが到着した。

 

 彼等の到着が遅かった。ということは決してない。ただ、真の力を解放したグランティード・ドラコデウスが圧倒的過ぎただけなのだ。

 

 

 統夜の無事な姿を確認し、皆喜びの声をあげた。

 

 

「ああ。みんなただいま。それと、艦長達に伝えてくれ。フューリーについて伝えたいことがあるって」

 

「おう。敵陣から逃げてきたんだもんな」

 甲児がうんうんとうなずく。

 

「いや、むしろ、紹介する人がいるんだ」

 

 

「はじめまして皆さん。私はシャナ=ミア・エルテナ・フューラ。フューリーを統べる女でした……」

 

 モニターが切り替わり、シャナミアの姿を映し出す。

 

 

「な、なんだってー!?」

 

 その姿を見た全員が、驚きの声をあげた。

 

 

(驚くのも無理もありませんね)

 皆の驚きに、シャナ=ミアも当然だと思う。

 

 なんせ、敵の親玉がいきなり顔を出してきたのだから。

 

 

「統夜がもう一人綺麗な女の子はべらせてきたー!」

「四人目、四人目なのー!?」

 

 わいわいがやがやと、通信が大騒ぎになる。

 

 

「……」

 

 流石のシャナ=ミアも、これには唖然とするばかりだった。

 

 

 

「……バカばっか」

 わいわいがやがやと大騒ぎの中、誰かの決め台詞で、ひとまず統夜の帰還はひとまず幕を閉じる。

 

 

 ナデシコ達の現状や、シャナ=ミアからの事情説明は、また次回。

 

 

 

 第17話終わり

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