スーパーロボット大戦J ムーンデュエラーズ   作:YSK

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第19話 消えない灯火

──ナデシコ/ブリッジ──

 

 

 

 無事元特務分艦隊の面々と合流した統夜とシャナ=ミアは、ナデシコのブリッジへときていた。

 ちなみにだが、グランティード・ドラコデウスで格納庫に戻った時、機体の変化に驚かれたのは当然の話である。

 

 

「私達フューリーは流浪の民。私達は太古の星間戦争に敗れ、原始の太陽系にたどりついた者達なのです。そして地球の衛星軌道上にその母艦。ガウ・ラ=フューリアを固定したのち、民のほとんどはステイシス・ベットで時をこえる眠りにつきました。今でも、そのまま目覚める時を待っている者も大勢います」

 

 ナデシコのブリッジに立ったシャナ=ミアが、フューリーのことを説明する。

 今まで謎だった一団の情報が聞けるのだ。皆、黙って話に耳を傾けていた。

 

 

「そのガウラって艦が、フューリーの本拠地なのか。月の地面に埋まってるってことでいいのか?」

 少し前にフューリーは月の中にいるとマサトから聞いたことを思い出した甲児が、そう口にする。

 

「いえ。埋まっているというより……正確には、ガウ・ラが月になったのです。長い年月を経て、隕石や塵が降り積もり、あの衛星になった……」

 

 シャナ=ミアの説明に、一同驚きを隠せない。

 

 

「念のため聞くけど、それって何年前の話?」

 かなめ(フルメタルパニック)が、聞いた。

 

 

「ここの太陽の公転周期で言うと、およそ14周期だと聞いています。『年』という単位ですと、地球の公転速度も変わっているので、正確には……」

 

「14周期なんてたいしたことなさそうだけどな」

 

「いえ、豹馬さん。太陽が銀河系を一周するのは、約二億八千万年かかると言われています」

 

「に、二億!?」

 コン・バトラーチームの天才少年、小介の説明に、豹馬も驚いた。

 

 

「ですから、大雑把な計算ですけど、フューリー達が来たのは、約40億年前ということになりますね」

 

 

「じゃあ、生命の種をフューリーが地球に蒔いたってアル=ヴァンが言ってたのは……」

 

「あ、それは……」

 

 統夜が口にしたのに、シャナ=ミアはどこか申し訳なさそうにうなずいた。

 

 だが、それもある意味納得のことである。

 なぜなら彼等は、対象をまるで時間が止まったかのようにしてしまえる技術がある。

 

 それを用いれば、40億年の時さえ劣化なく経過することが出来るからだ。

 

 

「一応、生物学上の仮説とも符合しますね……」

 

 

「あら~、なんか、本当っぽいね」

 かなめがぽかんと口を開け、そんな感想を漏らした。

 

 

「すみません……」

 なぜか、シャナ=ミアが謝る。

 

 

「え? いやいや、今謝るところじゃないでしょ」

 

「ですが……」

 

 

「いや、待ってくれ。それより重要なことがある」

 恐縮するシャナ=ミアに対し、デビッド(レイズナー)が割りこんできた。

 

 真面目な顔をする彼に、皆の視線が集まった。

 

 

「問題は、この王女様が、実は40億歳だということじゃないか……?」

 

 

「え?」

 突然の疑問に、シャナもぽかんと口を開ける。

 

 

「何言ってるんだか。女性の魅力は歳じゃないでしょうが」

「そうそう。あ、でもさ、若く見えますね。絶対10代でも通用しますよ」

 

 分艦隊きっての自称モテ男。クルツ(フルメタ)と雅人(ダンクーガ)がコナをかける。

 

 

「あ、あの……」

 

 

 迫る二人に、困惑を隠しきれないシャナ=ミア。

 

 

「このバカ! 真面目な話をしているんだから、バカなこと言うんじゃないよ!」

 超獣機隊の沙羅が三人を叱る。

 

「いやあ、どうも話があまりにでかすぎるもんで」

「ちょっと場を和ませようとしたんじゃない。やだなあ」

 

 デビッド、雅人がてへへと笑う。

 ちなみにクルツはマオ曹長にお仕置きされてます。

 

 

「ふふっ……」

 

 それを見て、シャナ=ミアは思わず笑ってしまった。

 

 

「シャナ=ミア?」

 

「あ、ごめんなさいトウヤ。笑ったりして……」

 

 

「あ~、気にしないで下さい。こちらこそ、すみませんね。能天気な連中ばかりで」

 クルツをお仕置きしていたマオが代表して謝る。

 

 

「ま、謝る必要もねぇってこった。正直そんな昔のことを聞いたところで、なにも感じようがないからな」

 

「うん。別になにも変わらないよね。姉ちゃんが心配するようなことなんてないよ」

 ドモンの友人、チボデーとサイ・サイシーが語る。

 

 

「俺も、そう思いますよ」

 

 

「トウヤ。そう言ってくれる仲間がいるあなたが、羨ましいわ……」

 

 

「今は、シャナ=ミアの仲間でもあるよ。だから、話してもらえますか? フューリーのこと。グ=ランドンのこと。なぜ、命を狙われたのか」

 

 

「はい。お話いたします。我等フューリーの過ちを……」

 

 

「そういえば、僕が木原マサキとしてフューリーと接触した時、確かあなたにはお会いしませんでしたね」

 

 

「はい。そのころ私は、揺監器の中にいたと思います。私はこの地、この時代に生を受けたフューリーの、最初の世代なのです」

 

 マサトの問いに、シャナ=ミアが答える。

 

 

「ああ、それじゃ見かけどおりの歳なのか」

 

「はい」

 

 

 うなずくシャナ=ミアを見て、口にした豹馬はどこか複雑な表情を浮かべた。

 

 

「どないした? 変な表情しよって」

 それを見た十三(コン・バトラーV)が怪訝そうな顔をする。

 

「いや、なんか、ほっとしたような、残念のような……」

 

 

「もう、話の邪魔をしないの! ごめんなさい。シャナ=ミアさん、続けて」

 ちずる(コン・バトラーV)が豹馬をしかりつけ、改めて話をうながした。

 

 

「はい。そのため、私はかつての星間戦争。全星雲のフューリー達が無数の星団に別れて争ったという動乱の時代を、直接は知りません。争いのない世界で生まれ、生きて行けるのならそれが全ての民にとって幸福だと思っています。ですが、地球では戦争が何度もはじまり、グ=ランドンは……」

 

「……地球人を排除しようという考えに至ったのか」

 黒騎士、アランが言う。

 

「はい」

 

 

「異なる文明、異なる種族が二つ以上あると、必ず戦争になる。40億年後もかわらない。だったら、一つを除いて滅ぼしてしまうべきだ。そう考えたわけですね?」

 

 マサトがまとめた。

 

 

「そう考える者もいました。しかし、そうでない者もいたのです」

 

「そうでない者? この争いを止めようとしていた者もいたのか」

「いや、いて当然だな。今は主戦派が多数を占めているようだが、穏健派がいたとしても不思議はない」

 アランの言葉に、フリーマンが答える。

 

 どの組織にも、意見の対立というものは存在する。

 それは木連における和平推進派であり、グラドスにおけるエイジを送り出した者でもあり、ボアザンにおける剛博士一派のことだ。

 

 例え異星の間でも、二つの種族の共存を願う者達は必ずいるのだ。

 

 

「はい。彼等は、地球人と共存できると考えていました。主戦派の面々にとってアシュアリー・クロイツェル社が戦力増強のためだったように、彼等にとってのそこは、地球人と共に暮らせることができるという証明の場でもあったのです」

 

「アシュアリーが……」

 それを聞いたカティアが、驚きの声をあげた。

 

 

「そして、私達がともに歩めるという証が生まれました」

 

 

「それは……?」

 

 

「カティアさん、テニアさん、メルアさん。そしてトウヤ。あなた達です。地球人とフューリー。その、愛の証」

 

 

「それって……」

「エイジと……」

 アンナとシモーヌが、エイジを見た。

 

 エイジが、うなずく。

 

 

 さらに、今は周囲に秘密にしてあるのだが、その秘密を知るボルテスチームとコン・バトラーチームは剛兄弟を見た。

 彼等もボアザンと地球人のハーフだからだ。

 

 

「アタシ達が……?」

「フューリーと、地球人のハーフ?」

 テニアとカティアが驚く。

 

 

「そうか。これであの機体を君達だけしか動かせない理由も納得がいくな」

 説明で腑に落ちたフリーマンがうなずいた。

 

 

「あなた達の存在こそが、共存できるという確固たる証でした……」

 

 

「でした……?」

 マリューが首をひねる。

 

 

「あの日、最終的にサイトロン・コントロール・システムの実験を持って、共存の証を公表することになっていました。あのシステムは、フューリーである証明の証みたいなものですから」

 

 つまり、サイトロン・システムが使えれば、その血は間違いなくフューリーと同じということになる。

 結果は、明確な証となるはずだった……

 

 

「ですが、それを察知したグ=ランドンにより、アシュアリーは壊滅させられました。共存を願っていた者達もろとも……」

 

「そんなっ……!」

 メルアが悲痛の声をあげる。

 

 

「じゃあ、アタシの父さんと母さんを殺したのは……!」

「その、グ=ランドンという男なのね!?」

 テニアとカティアの怒りがあふれる。

 

 

「……いいえ。それは、止められなかった私も同罪です。ですから、責めを負うのは私。その怒りを私に向けるのは、当然のけん……」

 

 

「それは違う」

 統夜が、シャナ=ミアの言葉をさえぎった。

 

 

「君は、ずっと後悔してきた。ずっと止められない自分の弱さを嘆いていた。そりゃ止められなかったのを悔やむのは仕方がない。でも、君はずっと共存のため努力してきたじゃないか!」

 

「どうして、それを……?」

 統夜の言葉に、彼女は驚きを隠せない。

 

 ずっとずっと一人で抱えてきたそれを、他人に話すことの出来なかったその悩みを、統夜が知っていたからだ……

 

 

「君の事を、夢で何度も見てたんだ。多分、サイトロンのせいなんだと思う。君はずっと、助けを求めてた。地球人もフューリーも助けたいと願ってた。俺達は、君を助けにきたんだ。シャナ=ミア。だから、自分ばかりを責めるな」

 

「トウヤ……」

 

 

「そう、ね。あなたを責めてもなにも変わらないわ。むしろ、あなたの立場を利用して、手を下した人達にきちんと天誅を与えないと気がすまないわ」

 

「そうだそうだ。むしろ、アンタがアタシ達に力を貸すんだ。アタシ達と、あんたで、そいつらを失脚させてやればいい!」

 

「そうです。悪いと思うのなら、お父さんとお母さんの意志に報いてもらいます! だから、一緒に戦いましょう! ね、統夜さん!」

 

 

「ああ。シャナ=ミア。あんたが地球人と共存を願うなら、俺達共存の証を伴って、暗殺されかけたお姫様としてあそこへ戻ればいい。そうすれば、奴等の大義は欠片もなくなる。逆転も可能のはずだ。あとは、シャナ=ミア次第だけど、どうする?」

 

 

 彼女達は、復讐ではなく、その両親の想いを継ぐことを選んだ。

 憎しみでフューリーと戦うのでなく、共存のため彼等の想いを受けて戦いをとめるために戦おうと言ってくれたのだ……!

 

 

「トウヤ。カティアさん、テニアさん、メルアさん……ありがとう、ございます……」

 

 

 少女は、思わず涙ぐんでしまった。

 

 しかし、涙を拭い、きっと表情を引き締める。

 

 

「私はこれよりガウ・ラに戻り、あなた達と共に共存が可能であることを宣言します。あの場では無理でしたが、今度こそ、この星を巻きこんだ争いの根源を断ち切らねばなりません。ですから、力を貸してください。トウヤ!」

 

「もちろん!」

 

 

「おいおい、統夜だけいい格好はさせねえぜ」

「そうだぜ。俺達もまぜろよ!」

 

 甲児と豹馬も声をあげる。

 

 

 それを聞いた統夜が、シャナ=ミアに周囲にもっと人がいるとうながした。

 

 

「……皆さん。私に、力を貸してください!」

 

 

「もちろんだぜ! 可愛い女の子に頼まれたら、断れねえよな!」

「ああ!」

 甲児と豹馬が、いの一番に声をあげる。

 

 その後、シャナ=ミアの笑顔に鼻の下を伸ばした二人は、さやかとちずるに耳を思いっきり引っ張られるが、それは別の話。

 

「……阿呆やなぁ」

 十三が呆れていた。

 

 

「これで敵の全貌がわかったのはいいが、今の俺達は地球からも追われる身。フューリーの企みを警告も出来ないのが辛いな」

 アークエンジェルからこの会議に参加しているムウが言う。

 

 フューリーが人類を抹殺するため色々裏で活動しているようだが、連合にもザフトにも伝える術も信じてもらえるツテもなかった。

 ミスリルによって広めてもらえたとしても、それはほんの一部にだけだ……

 

「なにより、肝心の月は今グラドスの勢力下だ。月に行くのさえ容易じゃないぞ」

 

 

 フューリーにグ=ランドンの悪逆を訴えようとしても、今の勢力図では簡単に到達さえ出来ない状態だった。

 

 

「そうだ! 統夜が逃げてきた時使ったあの機体なら、その本拠地へ直に転移できるんじゃないの!?」

 ボス(マジンカイザー)がひらめいたと声をあげた。

 

 

「いえ。さすがにガウ・ラ側で転移の拒絶を行うでしょう。今私達がガウ・ラに入るには、軍団の門と呼ばれる入り口に向かうしかありません。そこならば、私の権限を持って入れるでしょうから」

 

 それはいわば、船に通じる直接の通り道。

 そこは、王であるシャナ=ミアの血に反応するので、どれだけ拒絶させようとしても開くことが可能なのである。

 

 

「座標はどこだかわかります?」

 

「ええと、あなた達のいうところで、このあたりになりますね」

 

 ユリカの指示で、ルリが地図を出し、シャナ=ミアが場所を示した。

 

 

「……観測で予測されたグラドス軍本陣の真下ですね」

 

 

「おいおい」

 つまり、グラドス軍をどうにかしないとフューリーに対して手も足も出ないということだった。

 

 ちなみにフューリーはオルゴン・クラウドによる空間転移があるので、出入りに関しては問題ない。

 転移以外の入り口がそこしかないだけだ。

 

 むしろこの状態では、グラドス軍がフューリーの門番として機能してしまっている。

 

 どちらも意図したことではないのだろうが、非常に厄介なことだった……

 

 

「これは、山積みの問題を一つずつじっくり片付けていくしかないようだな」

 呆れたようにノアルが声をあげた。

 

 

「でも、その通りですね。千里の道も一歩から! まずは、木連との和平交渉から片付けましょう! 木連との戦争を止めることが出来れば、戦争ばかりするという人類の汚名も少しはそそげますし、私達だってやれば出来るって証明もできますから!」

 

 ユリカが、ひとまずの目標をぶち上げた。

 

 木連との和平が成功すれば、次はグラドスとの交渉が可能になるかもしれない。そうなれば、月のグラドスを撤退させ、そしてフューリーの本拠地へ乗りこむことが可能となる!

 

 

「そうですね。一つ一つ片付けて、フューリーとも和平です!」

 メルアが声をあげた。

 

 フューリーに対する怒りは確かにある。

 だが、彼女は志半ばで散ったその両親の意志を継ごうと決めたのだ。

 

「ええ。その通りね」

「その前に一回親玉ぶん殴るけど!」

 カティアとテニアも同意する。

 

 

「そうだそうだ」

「やってやろうじゃねえか!」

 

 皆が、声をあげる。

 

 

「……」

 それを見たシャナ=ミアは、どこか呆然としているようだった。

 

「どうした?」

 気づいた統夜が、声をかける。

 

 

「皆さん、すごいですね。こんなにもエネルギーにあふれて。私達フューリーは、時間さえ操る技術を手にして、閉じた世界で生活することで、こうして前に進むことを忘れてしまったのかもしれません……」

 

「なら、思い出させてやろう。俺達の手で」

 

「トウヤ……そう、ですね!」

 

 

 一つの大きな目標が定まった。

 

 

 

──ガウ・ラ=フューリア──

 

 

 

 統夜の新たな機体により退けられたグ=ランドンは、ガウ・ラに戻ってきていた。

 

 

「グ=ランドン様、ご無事で!」

 準騎士が駆け寄る。

 

 

「おのれ……! おのれシャナ=ミア。エ=セルダの息子め!」

 悔しさのあまり、拳を握る。

 

 

「こうなればしかたがない……! こうなれば、ズィー=ガディンの封印を解く」

 

「し、しかし、あれは……!」

 

「今このガウ・ラ=フューリアの主は私だ!」

 

「はっ!」

 

 グ=ランドンの命令に、準騎士は素直に従った。

 

 

「そう、今の主は私だ。私しか、いない。民を守れるものは、私しか。私しか守れぬのだ……! だから、滅ぼさねばならぬ。奴等を!」

 

 

 準騎士達は気づかなかった。

 グ=ランドンの瞳の奥で、憎悪の炎が今だ、燃えくすぶっていることに……

 

 

 

──ナデシコ/ブリッジ──

 

 

 

「そういえば、みんななんでこんなところにいたんだ? こんなに早く合流できるとは思わなかったよ」

 

 シャナ=ミアからの説明も終わり、統夜がふと感じた疑問を口にした。

 統夜の認識では、連合とオーブの争いの真っ最中のはずだからだ。

 

 すると、全員が表情を暗くするのがわかった。

 

 

「そうだな、ちゃんと説明しないとな」

 

 甲児が悔しそうに拳を握る。

 

 

「なにかあったのか?」

 

 

「オーブはな、なくなっちまったんだよ……」

 

 

「なんだって!?」

 

 衝撃の告白に、統夜は驚きを隠せなかった。

 

 

 ぽつぽつと、統夜にいきさつを説明はじめる。

 

 

 

 統夜がフューリーに連れ去られたあとも、連合からの攻撃はやむことはなかった。

 

 その中、いっそ敵の大将を撃破しにこちらからうってでようという案が出た。

 

 

 やるのはもちろん、元特務分艦隊の面々だ。

 

 

 大気圏外から地上まで自由落下をしても無傷なマジンカイザー。

 それと同じ材質で出来た、グレートマジンガー。

 

 のちに、ほぼ単体でボアザン星を制圧、解放することになるボルテスV。

 それと同様のシステムをもつコン・バトラーV。

 

 獣を超え、人を超え、そして今神になるとさえ言われるダンクーガ。

 

 ブラスター化という手段を経て、人間サイズでは考えられない火力を持つテッカマンブレード。

 常識の枠を超えた戦闘力を持つガンダムファイター。

 

 水中だろうがドコだろうが自由に移動、攻撃が可能なブレンパワード。

 現代科学では発見不能な光学迷彩を持つミスリルの部隊。

 

 さらに、Yユニットを接続し、相転移砲を装備したナデシコ。

 

 極めつけは、次元連結システムを持ち、ほぼ無限のエネルギーでメイオーし放題のゼオライマー(グレート)

 

 

 これらの面々を敵陣につっこませ、暴れて暴れて連合軍の旗艦をとりに行くという案もあった。

 

 しかし、そんなことをすればどれほどの被害が出るのかわからない。

 このまま戦い続け、そんな途方もない数の被害者を出すのは良くないと、オーブのトップ、ウズミはその案を跳ね除けた。

 

 かわりにウズミは、みずからの命をもってオーブを終わらせることにより、戦闘の理由を消失させる。

 結果、大勢の命が救われることとなったのだ!

 

 

「ウズミさんは、自分の命を持って、大勢の命を救ったんだ……」

 

 

 それを聞き、統夜は思わず涙を流しそうになった。

 

「さすがウズミさんだ。そうそうできる判断じゃない」

 

 

 こうして、アークエンジェルとナデシコはオーブを脱出することとなり、その道中で統夜を回収したというわけなのだ。

 

 皆はウズミの志を継ぎ、出来ることをやるため和平交渉の場を目指していたのである。

 

 

 

──ナデシコ/格納庫──

 

 

 

 フューリーの説明も終わり、オーブが滅び、元分艦隊は再び流浪の身となったことを聞かされたあと、統夜は一人、格納庫に来て新たな姿となったグランティード・ドラコデウスを見上げていた。

 

(……父さん。あんたもあの三人の親と同じで、フューリーだったんだな?)

 アル=ヴァンが同胞と言っていたのだから、それはきっと間違いない。

 

 だが……

 

 

(ならなんで、俺はあの日、アシュアリーに呼ばれなかったんだ……?)

 

 

 もっともな疑問が浮かび上がっていた。

 あの時、他の誰もがフューリーについて衝撃的過ぎて、そのことを疑問に思っていなかったようだが、統夜だけはなにかひっかかるものを感じていた。

 

 

「……トウヤ」

 

「シャナ=ミアか?」

 

 後ろから声をかけられた。

 振り向くと、統夜が予測したとおりシャナ=ミアが立っていた。

 

 

「どうしてここに?」

 

「あなたを探していました。あなたにだけ、話したいことがあったので」

 

「俺に、だけ?」

 

「はいあの時、彼女達の前でこのことを伝えるのははばかられましたから」

 

「はばかられる? それは、どういう……?」

 

 疑問に首をひねるが、シャナ=ミアは優しく微笑んだ。

 

 

「覚えていますかトウヤ。あなたと私は、幼い頃一度会ったことがあるんですよ」

 

 

 そう言われ、統夜は首をひねった。

 

 しかし……

 

 

「ごめん、覚えてない」

 

 統夜は、申し訳なさそうに頭を下げた。

 

 

「そうでしょうね。私はそのあと、あなたは体が弱く、病で死んだと聞かされました」

 

「え?」

 

「あなたが生きていることは、私にさえ伝えられていませんでした。あなたは、共存派にも秘密の、切り札だったのです」

 

 

「それは、どういう……?」

 

 何度首をひねっただろう。

 この言葉は、二度目の登場だ。

 

 それほど、意味がわからないことの連続だった。

 

 

「あなたの死と私の謁見は多くの意味があったようです。あなたが私が顔をあわせた時、あの場にはアル=ヴァンもおりました。ですから、あなたを死んだと思わせて、強硬派には共存は夢物語であると思いこませたのです」

 

 地球移住計画は、当初の段階では地球人との共存という形で進んでいた。しかし、戦争に敗れ、この地にやってきたフューリーは戦時の状態が引き続かれていた。

 軍部が大きな力を持ち、総代騎士であるグ=ランドンは、その力を持って計画を歪め、共存ではなく殲滅による地球帰還を果たすようにしたのである。

 

 そのため、共存の可能性が強硬派に流れれば、間違いなく潰されてしまう。

 その目くらましのため、共存計画の要、地球人との混血は表向きは病弱ですぐ死んでしまうと強硬派に思わせたのである。

 となれば共存派の計画は机上の空論であり、強硬派は自分達の考えが正しいとし、他の三人の存在に目が行かなくなる。というわけだ。

 

 ゆえに、その証人として真面目なアル=ヴァンが選ばれ、統夜の存在を知ることとなった。

 

 

 裏ではもちろん、先帝であるシャナ=ミアの父に計画は順調であるとその健康ぶりをみせつけたのである。

 

 

 さらにもう一つ、統夜の死の偽装には意味があった。

 万一その三人が殺され、共存派の希望が潰えそうになった時、最後の切り札として、表舞台に舞い戻るという役割が。

 

 

「結果、計画はあと一歩のところで強硬派に察知され、共存派の多くはアシュアリーにいた地球の方と共に殺されることとなりました……」

 

 シャナ=ミアは申し訳なさそうに顔を伏せた。

 

 

「それが、みんなの前で話すことになんの問題があるんだ?」

 

 シャナ=ミアが今説明したことは、さっき説明したのを詳しく説明しなおしただけだ。

 これはさっきの説明に統夜の役割が加わっただけで、別にはばかりある内容ではなかった。

 

 シャナ=ミアは、統夜の言葉に首を横に振った。

 

 

「トウヤはエ=セルダのことはどれくらい知っていますか?」

 

「父さん? いや、エ=セルダとしてのことは、本名がエ=セルダ・シューンということくらいしか……父さんとは、年に数回会うか会わないかの生活だったから。あの人はなにも語らず、数年前に死んでしまったから」

 

「そうですか。数年前に死んだと。あなたの前からそうして去ったエ=セルダですが、その死は偽りで、実は生きていました」

 

「なんだって!?」

 

「そう、あの日までは、生きていたのです……」

 

 驚く統夜から視線を外し、彼女はどこか遠い目をし、格納庫の天井を。いや、もっと遠くを見上げた。

 

 

「あの日……?」

 

「はい。あの日。アシュアリーが襲われたあの日。あなたの父、エ=セルダは、三人の少女を救い、逃がし、そしてあの場に残って命つきるまで戦ったのです……」

 

 

「なっ……!?」

 

 

 連続して襲う衝撃の事実に、統夜は驚きを隠せない。

 混乱に、思考がぐるぐると回る。

 

「父さんが……」

 頭がごちゃごちゃして考えが整理しきれない。

 

 今まで死んでたと思った人がやっぱり生きてて、結局死んだというのだ。

 しかもその死は、知り合いの三人を救ってというのだから……

 

 ただ、冷静な心の内で、確かにそれは、彼女達三人の前で話せない事実だ。ということだけが思い浮かんだ。

 

 

「あなたの混乱もわかります。ですが、一つだけ覚えておいてください。エ=セルダは、決してあなたのことを疎ましく思っていたわけではないと。むしろ、出来る限りの愛を注いでいたと……」

 

 フューリー側に死を偽装し、統夜は死んだ存在となっていた。

 その存在に年に1度でも会いに行くということは、共存の計画を脅かす危険な行為。

 

 下手をすればそれで計画は破綻する。

 

 それでも年に数回顔を見に来たというのは、その計画以上の感情を統夜に感じていなければ説明がつかない……

 

 

「まさか、そのせいで?」

 

 はっと、気づいた。

 自分のせいで、共存派の計画が強硬派にバレてしまったのではないかと。

 

「いえ。それならあなたの存在が強硬派に知られていないとつじつまがあいません。それに、エ=セルダは数年前にみずからを死んだとして接触も断っています。それは、あなたの身を案じたからでしょう」

 

「……そうか」

 

 どこか、ほっとしたように統夜は胸を下ろした。

 

 

「これが、あなたに伝えなければならないことです。結果的にあなたを巻きこみ、家族も奪いました。それは私の責任。いかような責も、私が甘んじて受けましょう……」

 

 

「責、任……そう、か。だからアル=ヴァンはあの時、ああ言ったのか」

 

 しばしの時間がたち、頭の整理がついたところでポツリとつぶやいた。

 アル=ヴァンを一騎討ちで倒したあと、彼は「君にも、私を殺す資格がある」と言った。

 

 それは、このことだったのだ……

 

 

「……」

 統夜は、黙りこむ。

 

(勝手だ。みんな、本当に勝手だ。好き勝手なことを望んで……!)

 

 

「ずるいな。そんなこと知らされたら、憎むに憎めないじゃないか……」

 

 

「憎むなら、私を憎んでください。すべては私の不徳が招いたことですから……」

 

 

「無理だよ。この憎めない気持ちは、父さんだけにじゃなく、君にも当てはまる。結局俺は、子供で、なにも知らずに、ずっと守られて生きてきたんだ。それに感謝することはあっても、憎むことはないよ。できないよ……」

 

 この戦いに身を投じる前の統夜なら、なんでだよと叫んでいただろう。

 だが、彼はこの戦いを投じて、もっと過酷な運命を背負った友を知っている。仲間を知っている。

 

 その彼等を見て、自分を省みて、それを受け入れられないということはなかった……!

 

 

「トウヤ……」

 

「でも確かに、このことはあいつらには秘密にしとかないとな。下手に責任を感じさせては、かわいそうだ……」

 

 彼女達は、自分達の存在のせいで両親が死んだと思っているだろう。

 そこにさらに、統夜の父が死んだ原因であったと知ったらどうなることか。

 

 そんな残酷なこと、統夜にはできなかった。

 

 

「……あなたは優しいですね」

 

 

「……ちょっとカッコつけたいだけだよ。本当の俺は、臆病で情けない男なんだから」

 

「いいえ。カッコいいと思いますよ。私は」

 

 

 ね。と、シャナ=ミアは統夜に微笑みかけた。

 

 その視線に、統夜は照れ、それを見て、くすくすと朗らかに笑うシャナ=ミアの姿がそこにあった。

 

 

 

 ちなみに、格納庫のカドに身を潜め、その会話に聞き耳を立てている者がいるのはお約束である。

 

 

 

──四人娘メインパイロット化──

 

 

 

「そうそう、トウヤ。もう一つ伝えることがありました」

 

「ん? なんだい?」

 

 視線を統夜からグランティード・ドラコデウスの隣にあるヴォルレントへむけたシャナ=ミアが思い出したように口を開いた。

 

 

「私も、トウヤと共に戦うことにしました。共に、機体に乗って」

 

 

「……は?」

 いきなりのことに、ぽかんと口を開ける統夜。

 それくらいしか、反応が返せないほど衝撃的な発言だった。

 

「みずから行動を示さず、私の言葉は届けられないと判断しました。共にでなくても構いません。ガウ・ラの脱出に使った機体に乗ってでも! 頼りないかもしれませんが、精一杯がんばります!!」

 

 ふんす。と少女は両拳をにぎり気合を入れる。

 

 

「え? ちょ、ちょっと待って……」

 

「安心ください。ちゃんと艦長からも許可はいただきました!」

 

 

「もっと待って!!」

 

 違う、そういうことじゃない。

 そういうことじゃないのだが、言葉に出来なかった。

 

 

「あの機体を遊ばせておくのはもったいないと、こう、二つ返事で認めてくださいましたよ?」

 

 ぶい。と手をあげ誇らしげに胸を張る。

 

 

(しまったー! あの人じゃ許可して当たり前だったー!)

 ミスマル艦長が今のシャナ=ミアと同じようにVサインをしているのが思い浮かんだ。

 

 先行して言っておかなかった自分の迂闊さを呪う統夜であった。

 

 

 こうして、シャナ=ミア、およびカティア、テニア、メルアの三人もヴォルレントのメインパイロットとして戦うことが可能となった。

 メインパイロットに座らない子は、サポートとしてグランティード・ドラコデウスかヴォルレントのサブパイロットとしても乗せかえが可能である。

 

 それでも結局、一人はお留守番になるが、それは仕様なので諦めよう。

 

 

 

──ガウ・ラ=フューリア──

 

 

 

「……うっ、ここは……?」

 

「目覚めたようね、ジュア=ム。あなたは撤退に失敗し、長い時間寝ていたわ」

 

 ベッドの上で目を覚ましたジュア=ムにフー=ルーが優しく声をかけた。

 

 

「俺は……そうか。あの時、奴に……っ! そ、そうだ! アル=ヴァン様は!?」

 

 

「あの方は、幽閉されました。あなたとはもう会うこともないでしょう」

 

 

「なっ!? 何故です! まさか、俺を見捨てられたのですか!?」

 

「益体もない。アル=ヴァン殿は、グ=ランドン様の不評を買い、我等騎士団からおはずれになっただけよ。皇女殿下をかどわかされた責任をとってね」

 

「う、嘘だ。嘘です! そんなことない。あの方がそんなことをするわけが!」

 

「残念だけど、事実よ」

 

 

「そんな……グ=ランドン様が。アル=ヴァン様を、騎士から追われた、そんな……」

 

 

「今後、神聖騎士団はこのわたくしがまとめます。あなたの位階も変わるわ。新しい機体も用意されているから、今後はそれをお使いなさい。仔細は、追って」

 

「……」

 

 うつろな目をするジュア=ムの肩を叩き、フー=ルーは去っていった。

 

 

「アル=ヴァン様が……くそっ、あいつか。全部、あいつのせいだ……! あいつのせいでアルヴァン様はおかしくなっちまった。全部あいつが悪い。あいつがあいつがあいつが……! くそーっ! 必ず殺してやる。必ず!」

 

 

 怒りの声が、メディカルルームに木霊した……

 

 

 

 

 第19話終わり

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