スーパーロボット大戦J ムーンデュエラーズ   作:YSK

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最終話 冷たい世界 後編

──ナデシコ/ブリッジ──

 

 

 

 エナジーの流動が変わり、それが中枢に流れこんでいるのを確認した統夜達は急ぎ現場となる中枢へ向かっていた。

 

「ガウ・ラの末端。最も外側の部分は、戦艦としての武装区域です。そこからエナジーが吸い取られ、艦の中央部に流れこんでいるようですね」

 

 確認したシャナ=ミアが現在の状態を口にする。

 

 

「グ=ランドンの仕業かな?」

 

「はい。間違いないでしょう」

 

 テニアの質問に、シャナ=ミアはうなずいた。

 

 

「ガウ・ラが飛び立てなくなった今、武装区画は無用の長物。グ=ランドンはその力を集め、ズィー・ガディンを再生し、最後の決闘を挑むつもりではないでしょうか?」

 

「ふむ。もしそうなら、むしろ望むところだ。脱出をはかられるよりはな」

 シャナの推測を聞き、フリーマンがうなずく。

 

 ズィー=ガディンは強力だが、ガウ・ラの中枢そのもののため、そこをおさえられれば大きく弱体化。もしくは無力化されてしまう。

 そうなれば再起も難しいと考え、もっとも戦いやすい場所で統夜達を迎え撃つ作戦に出たのだろう。

 

 

「だったら一気に決着がつけられますね! がんばっちゃいましょう!」

 

 ユリカがやる気満々で声をあげた。

 

「……」

 

 だが、シャナ=ミアの顔はうかない。

 

 

「あれ? どうしたんですか、急に黙っちゃって」

 

 

「武装区画を切り捨てたのは、おそらくズィー=ガディンにエナジーを集中させるため。それは間違いありません。ですが、グ=ランドンがもし、最後の理性をも失っていたとしたら……もし、内核区の、ステイシス・ベッドのエナジーまで欲したとしたら……」

 

「ステイシス・ベッドって、確かフューリーの人達が時を止めて眠っている装置のことですよね」

 メルアが前にも一度出たのを覚えており、そう答えた。

 

 かつて、ブレードの妹、ミユキの症状を抑えるため、それがあれば時間だけは稼げると話したことがあるからだ。

 

「はい。数百万の同胞の時を止めている内核部のステイシス・ベッド。そこは、最も艦内のエナジーを消費している箇所でもあります。もしあの者が、艦内全てのエナジーを一度に使うつもりなら……」

 

 民のことを考える真の騎士ならばそんなことはありえない。

 だが、シャナ=ミアはそれを心配していた。

 

 そうなる心当たりが、あるからだ……

 

 

「なるほど、それは確かに心配だ」

 統夜もうなずく。

 

 

「どういうことだわさ? 時を止めてるだけならただ目を覚ますだけじゃ?」

 ボス(マジンカイザー)が浮かんだ疑問を口にする。

 

 時を止めるベッドの機能が停止すれば、その人の時間が動き出すだけ。当然の話である。

 

 

「問題はそこではないのよ」

 カティアが説明おばさんの登場を待たず、説明をはじめた。

 

「そこに至るまで艦のエナジーを奪ったとするなら、そもそも生命を維持するための環境。気温や気圧、酸素などが維持されていないということになるわ」

 

 最重要のステイシス・ベッドが停止するということは、それらの機能も全て停止することを意味している。

 

「そんな状態で時のくびきから解放され、目覚めるということは、生身で宇宙空間に放り出されるようなもの。ボス君、ただの人間に、その状況で生き残れと言えるかしら?」

 

 

「無理に決まってるじゃないの!」

 

 

 ここは月の中とはいえ宇宙空間。

 人工的な生存環境が維持されていなければ、生命はそもそも生きていられない。

 

 フューリーと言えどもその体は人類と同じ。酸素も必要だし一定の気圧も必要だ。

 

 

 となれば……

 

 

「そういうことを彼女は心配しているの」

「そいつは大変なことだわさ!」

 

 理解したボスが大きく驚いた。

 

 ステイシス・ベッドに寝ているフューリーの数は百万をこえるという。それが一斉に宇宙に放り出される可能性があるとすれば、民を案じるシャナ=ミアは気が気でないだろう。

 

 

「ルリちゃん、目的地まであとどれくらいですか!?」

 

「ナデシコはすでに、母艦中心部です。目標の中枢機関、視認できますけど、その前に、敵です。艦長」

 

「敵。そうですか。いよいよですね」

 

 

「識別フューリータイプ。超大型。ズィー=ガディンと確認」

 

 

「グ=ランドン……!」

 

 目の前に現われた巨大な機体を見て、シャナ=ミアが声をあげた。

 

 

「いよいよ最後の戦いだ。みんな、行こう!」

 

 

 統夜の言葉とともに、全員が出撃に走る。

 

 

 

──冷たい世界──

 

 

 

 ガウ・ラ、中枢を前に、修復されたズィー=ガディンを駆るグ=ランドンの率いるフューリア聖騎士団が統夜達の前に立ちふさがった。

 

 

「もはや、最後だ。星の寿命ほどの時をかけ、培った夢が間もなく潰える……」

 

 出撃した統夜達を確認したグ=ランドンは、ゆっくりと口を開いた。

 

 

「グ=ランドン・ゴーツ!」

 

「皇女か。なぜ、私の邪魔をする。地球人こそ、我等の創った、我等の子である。数億の同胞を失ってこの地に来た、一族の血塗られた歴史を貴様は知らぬ。しかるに見よ! 宇宙のどの敵よりも、奴等は我等フューリーに似て猛々しいではないか! 命を互いに貪りあい、他者を殺して生きる。滅ぼさねばならぬ害悪ではないか!」

 

 

 グ=ランドンの慟哭とも、絶叫とも言える言葉が響いた。

 その発せられたプレッシャーに、誰もが思わず身を構える。

 

 

「やはり、ですか……」

 

 その中で、シャナ=ミアは納得するようにうなずいた。

 フー=ルーの言葉を聞き、もしも。と浮かび上がっていた疑念が今、確信に変わる。

 

 

「……どうやら私は、間違っていたようです」

 

 

 シャナ=ミアのその宣言に、場にいた全員が驚き、彼女の乗る機体を見る。

 

 

「ほう、自身の間違いを認める気になったか。シャナ=ミアよ!」

 

 

「ええ。間違っていました。あなたの戦争は、今だ続いていたのですね。私はあの戦争を知らぬ世代ですから、気づくのが遅れました。あなたと私達は、見ている方向が、目指す位置がまったく違っていた……!」

 

「それは、どういう……?」

 

 シャナ=ミアの悔やむような言葉を、統夜が聞き返す。

 

 

「あなたはあくまで、フューリーのためを思い、民草の安全、安寧のため地球の民を排除しようとしているのだと思っていました。ですが、そうじゃなかった。その言葉は、うわべだけだった……」

 

 彼女は悲しそうに、首をふった。

 

「うわべ、だけ?」

 どういうことです? と、ナデシコ艦長ユリカも聞き返す。

 

 

「先の言葉で確信しました。グ=ランドン、あなたは彼等に、かつての敵を重ねているのですね?」

 

「……っ!」

 

 

 はっきりとした指摘に、グ=ランドンが一瞬表情を変えたように見えた。

 

 

「皮肉ですね。彼等を認めないと言うあなたこそが、地球の民と私達の同一性を最も認めていたのですから。同じだと気づいたからこそ、あの戦争を思い起こさせるからこそ、この地の者達をなんとしても滅ぼそうとした……」

 

 この地に住まうフューリーはかつて、星間戦争の果てに破れ、太陽系へと逃れてきた一氏族だ。

 その敗戦のまま、戦時体制のまま眠りについた。

 

 40億年経ち、すでに勝者が滅びていても、彼等の中で戦争の炎はまだ心の中にくすぶっているのだ。

 

 

 そこに、地球人が現われた。

 

 かつての自分達を思い起こさせるその多様性あふれる姿。その猛々しさ。まるで鏡写しであるかのような地球人に、グ=ランドンはかつて自分達を破った敵の姿を見つけてしまったのだ……

 

 だから、認められなかった。

 だから、滅ぼすことにした。

 

 かつての栄光をもう一度取り戻すために!

 

 

「あなたは勝てなかったあの戦いを、彼等を倒すことでやり直そうとしている。だから、いかなる共存の理由も認めなかった。倒すべき敵ありきだから!」

 

「……」

 グ=ランドンは、無言だ。

 

 だが、これが事実だとすれば、グ=ランドンの行動の理由も、説得にまったく耳を貸さぬのも当然だった。

 

 

「父も、エ=セルダも、誰もあなたを止められなかったわけです。地球の民は、あなたの瞳には憎む相手としかうつっていなかったのですから……」

 

 エ=セルダ達、地球との共存を願った者達は未来を見据え、憎むグ=ランドン達は過去しか見ていない。

 かつての憎しみを、地球の者にぶつけることしか考えていない……!

 

 これでは、話がかみあうはずがない!

 歩み寄れるはずがない!!

 

 

「あなたの計画は、民のためなどではなかった。あなたの恨みを晴らす、憂さ晴らしにも等しいモノだった! それが、この戦い全ての原因。あなたの恨みを、怨念を、なんの関係もない人間にぶつけ、かつての溜飲を彼等で下げようとした。あなたは、自分の心の平静のために、多くの者をまきこんだのです!」

 

 

「……だからどうしたというのだ?」

 

 

「っ!」

 

「そこまで理解できたのなら、貴様もわかるだろう。奴等は、我等の敵であると。同じであれば、なおのこと滅ぼさねばならぬと! 今、奴等を滅ぼさねば次に滅ぼされるのは我々! ならば、それを滅ぼしてなにが悪い!」

 

「こいつ……」

「完全に開き直りやがった……!」

 

 甲児と豹馬がグ=ランドンの言葉を聞き、そうもらす。

 

 

「我々は改めて勝利するのだ! さすれば、あの日逃げるしかなかった忌まわしい記憶から解放される! これこそが民のため! すべてのフューリーのためではないか! なぜそれを否定するシャナ=ミア! なぜ負けたままでいいと思える! すべては、すべては散っていった民のためではないかあぁぁ!」

 

 

「違う。違いますグ=ランドン。それは民のためではありません。散っていった臣民のためでもありません。なんの意味もない。あなたの欠けた心を満足させるための、しかも空虚な満足です……」

 

 シャナ=ミアは、悲しそうに首を横に振った。

 

 

「地上に降り、より人間に毒されたか! やはり地球人は害悪極まりない! このまま、滅ぶがいい、貴様等は!!」

 

 

「勝手なことを!」(Dボウイ)

 

「てめえなんぞに終わらされてたまるかよ!」(豹馬)

 

「おじいちゃんが創ったマジンガーがお前なんかに負けるかよ!」(甲児)

 

「父さんが僕に託した使命を実現させるため、ここで負けるわけにはいかない!」(エイジ)

 

「我が師匠より受け継いだ、流派東方不敗とキングオブハートの名にかけて、地球は守る!」(ドモン)

 

「艦尾ミサイル、全弾照準! ヘルダート、バリアント、狙え!」(マリュー)

 

「全軍に通達、総攻撃をかけます! 全機発進してください!」(ユリカ)

 

「残念でなりません、グ=ランドン・ゴーツ。大義を失い、理想を捨てた者よ。それ以上、その武名を恥で穢す前に、あなたはこの私、シャナ=ミアが我が剣を持ってヴォーダの闇へ帰してさしあげましょう。覚悟!」(シャナ=ミア)

 

「グ=ランドン、あんたの願いは叶わない! 父さんがグランティードを俺に残したのは、フューリーも人類も滅ぼさないためだ! 俺が乗っている限り、その意志は俺が継ぐ! だから、お前の野望は決してかなわない!」(統夜)

 

 

「黙らぬかアァァァ!」

 

 

 

 グ=ランドン達、憎しみに過去を縛られた者達との、最後の戦いがはじまった……!

 

 

 

──戦闘前会話/統夜──

 

 

 

「統夜! 貴様等とて我等が憎いはずだ! 貴様の父、エ=セルダを殺したのは我々なのだからな!」

 

「ああ。確かに憎い! いや、憎かった!」

 

「なにっ!?」

 

「聞いた時は確かに憎いと思ったさ! でも、父さんの想いを知り、共存を願った人達の願いを知り、俺は憎むのでなく、この戦いを止めフューリーとの共存を模索する父さん達の想いを受け継ごうと思った! 俺達は復讐するために戦ってきたんじゃない。お前達を、止めに来たんだ!」

 

「我等を止めるだと!? 裏切り者のこ倅ごときがなにをほざく! フューリー以外の種族など否定して当然! 古の戦いがそれを我等に教えた! 貴様も同じはずだ! お前達は、滅びるべきなのだ!!」

 

「同じと認めておきながら! お前の言葉は矛盾している! その憎しみが、フューリーさえ滅ぼすとなぜわからない!!」

 

「黙れと言うのがわからんかあぁぁぁぁ!」

 

 

 

──戦闘前会話/カティア、テニア、メルア──

 

 

 

 誰か一人メインパイロットになっている場合、会話が発生。

 

 

カティア「あなたが何者だろうともう関係はない! 地球を滅ぼすというのなら、それを阻止するだけよ!」

 

メルア「お父さんの願い、その未来は、わたし達が叶えます!」

 

テニア「いくよ、みんな! アタシ達は、負けない!」

 

グ=ランドン「きよるか! 裏切りの象徴め! 貴様等さえいなければ!」

 

 

 

──戦闘前会話/シャナ=ミア──

 

 

 

 メイン、サブ、どちらでも会話が発生する。

 ただし、統夜のサブの場合は統夜の会話が優先され、三人娘がいる場合そちらが優先される。

 

 

「グ=ランドン! 過去の中に閉じこもり、未来を見ようとしない者よ! その絶望を、私が切り払います!」

 

「誰が、貴様などにいぃぃ!!」

 

 

 

──ズィー=ガディン撃破──

 

 

 

 統夜達の猛攻を受け、ついにグ=ランドンの乗るズィー=ガディンも致命的なダメージを受けた……

 

 

 その衝撃を持って、ズィー=ガディンが動きを止める。

 

 

「やったのか……?」

 カガリが言った。

 

 だが、なにかがおかしい。

 皆が警戒する。

 

 

「……民が……同胞が、死んだ……」

 

 動かなくなったズィー=ガディンの中、グ=ランドンがつぶやいた。

 

 

「星団を出る時、既に半数……この銀河にたどり着いたのは、さらにその一握り……」

 

 

「おい、様子が変だぞ?」

 警戒しながら、甲児聞き耳を立てる。

 

 

「この地で眠りについたのは、このガウ・ラ=フューリア……ただの一隻のみであった!」

 

 

 突然ズィー=ガディンが再起動し、さらに形を変えはじめた。

 変形である!

 

 

「エネルギー反応再び上昇。敵本体を中心に集中していきます」

 モニターしていたルリが報告する。

 

 

「まさか……!」

 シャナ=ミアが、それに気づいた。

 

 

「私は、私は憎い! 我が偉大なる星団、祖国の民を滅ぼした者が! 既に奴等もまた、時の果てに消えていった。そう知った今でも、憎まずにはおれん! もはや宇宙におらぬからこそ、以前にも増して!!」

 

 

 変形したズィー=ガディンは、最奥にある中枢へと移動し、それと融合した!

 

 

「ゆえに、奴等を滅ぼす。憎き地球人を! 私が。すべてを!」

 

 

「グ=ランドン・ゴーツ! あなたは、そこまで! 我等の民の命を吸ってまでしてなにをなそうというのですっ!」

 

 

 ズィー=ガディンの鎮座した中枢に、エネルギーが集まる。

 収束する。

 

 流れこむ!

 

 

「エネルギー反応、急速に増大!」

 アークエンジェルの方でもその膨大なエネルギーの流れをキャッチした。

 

 

「やめなさいグ=ランドン! あなたは、あなたは本気で!」

 

「まさか、懸念していたことが……?」

 

 シャナ=ミアの叫びに、フリーマンが気づいた。

 ここに到達する前彼女が懸念したステイシス・ベッドのエナジーまでも自身に回す。

 

 グ=ランドンは、それを実行してしまったのだ!

 

 

「グ=ランドンは母艦と同化し、艦全てのエナジーを集めようとしています! このままでは、ステイシス・ベッドのエナジーまで!」

 

 自身の恨みで動いているなら、民のことも考えず行動するという可能性をシャナ=ミアは考えていた。

 だが、仮にも彼は総代騎士。そんなことはしないと心の底では思っていた。

 

 信じていた……!

 

 

「グ=ランドン、やめなさい! やめて! 全ての未来が滅んでしまう!」

 

「例え未来を焼き尽くそうとも、地球人を滅ばずにおかぬ! 奴らを宇宙に残しておいて、われらフューリーの世界など来ないぃぃぃっ!」

 

 

 だが、シャナ=ミアの叫びは憎しみに狂った男には届かない。

 全てを滅ぼし、民さえ失った未来になにがあるというのだ。

 

 彼はすでに、それさえわからなくなっていた……

 

 

「全機に告ぐ、全ての火力を集中! 一刻も早く、目標を破壊せよ!」

「フューリーの皆さんを、死なせないために!」

 

 両艦長が、命令を下す。

 ガウ・ラのエナジーがすべて吸いとられる前に決着をつける。

 

 この解決は、それしかなかった……!

 

 

 

 しかし……

 

 

 

「再生した!?」

 

 ダメージを受けた直後、ズィー=ガディンの傷が一瞬で消えた。

 再生したのだ。

 

 フューリーの機体が用いるオルゴン・エナジー。それはマテリアライゼーションで結晶化し物質化する。

 

 その応用なのか、有り余るエネルギーを使い、ダメージを受けた瞬間、ズィー=ガディンは体を再生したのだ……!

 

 

「くくく……効かん、効かんよ! もはやこのガウ・ラは、我がズィー=ガディンと一体となった! 我が同胞の血の一滴、肉の一片が刃となり貴様等を切り裂くであろう! 我と一体化できるのだ。喜べ! 滅べ! く、くくくく……くはーっはっはっはっはっはっは!」

 

 

 グ=ランドンの笑い声が響いた。

 このままでは、グ=ランドンは倒せない!

 

 

「そんな……そんな……」

 シャナ=ミアが絶望の表情を見せる。

 

 

「滅びを甘受せよ、地球人共ぉ! ガウ・ラの胎内にて死ねぇ、そは安らぎなりぃぃぃ!」

 

 

「誰が、甘受などするものか! 諦めるものか!!」

 

 

 その中で、統夜の声が響いた。

 

 

「なにか手はあるはずだ! 俺達は今まで、何度もこんな状況を覆してきたじゃないか!」

 

 

「統夜……! その通りだぜ! 俺達はまだ、負けちゃいねえ!」

「ああ。まだ終わるわけにはいかん!」

 

 甲児と鉄也が、拳を握る。

 

 

「ふっ、かっこいいセリフ言いやがって! 偉くなったな、統夜!」

 ガイも。

 

 

「当たり前だ! 誰が諦めてなるものか!」

 ブレードが。

 

 エイジが、キラが、忍が、宗介が。

 

 皆、欠片も諦めてはいなかった!

 

 

「ルリちゃん、どこか弱点みたいなもの見つかった!?」

 

「オモイカネが探しています。がんばって……みんな、がんばってるから」

 

 

「皆さん……」

 シャナ=ミアが、顔を上げる。

 

 

「その意気やよし! ならば、私も民を守るため力を貸さん!」

 

 空間に、声が響いた。

 

 

「この声は!」

 統夜は、この声に聞き覚えがあった。

 

 

 中枢部の広間に、一機のフューリー機が現われた。

 

 

 それは、ラフトクランズ。

 乗る者の名は……

 

 

「アル=ヴァン!」

 

 

 統夜の声とともに、現われたラフトクランズがライフルを構える。

 

「統夜、奴のエナジーの源を断つのだ!」

 

 

 言葉とともに、ラフトクランズは広場にあったオルゴンエクストラクターと呼ばれるオブジェクトへライフルを放った。

 

 直撃を受け、それは一つ動きを止める。

 

 

「源……そうです! ズィー=ガディンが破壊できずとも、エナジーを取りこんでいるガウ・ラの方を破壊すれば!」

 

「そうか、レイ、分析しろ! 本体じゃない。その周囲だ!」

 

 シャナ=ミアの声に、エイジがレイズナーのコンピュータAI、レイに命じる。

 

「分析完了。周囲ノ特殊ブロック二エネルギーノ集積ヲ確認、敵本体へ中継装置ト思ワレル」

 

「オモイカネ確認。間違いありません、艦長」

 

 

「やったあ! みなさん、聞こえましたか!? 攻撃目標、変更です!」

 

 

 ユリカの号令に、皆攻撃目標をズィー=ガディンから中継器であるオルゴンエクストラクターへと変えた。

 合計4基存在し、すでに1基失われたそれに。

 

 それは、中枢と周囲のブロックを繋ぐ中継器。

 

 それが破壊されれば、いくら周囲からエナジーを集めようと、ズィー=ガディンに届くことはない!

 

 

「アル=ヴァン」

「幽閉されたと聞きましたが、どうしてここに?」

 

「……はい。シャナ=ミア様。フー=ルーが、最後の戦いの直前に私の元へ赴き、扉を開いたのです。せめてもの、償いだと。そして、私にある程度の事情を話してくれました」

 

「フー=ルーが……」

 

 彼女も、己の欲を満たすため主を裏切り続けるというのは気が咎めたのだろう。

 せめてもの贖罪として、シャナ=ミアの力となるアル=ヴァンを解放していたのだ……

 

 

「シャナ=ミア様。話は聞かせていただきました。フューリーの民を守るため、私にも力を振るわせてください。これが、私に出来る、せめてもの償いです」

 

「よしなに。その力、存分に振るいなさい!」

 

「はっ!」

 

 

 返礼とともに、アル=ヴァンのラフトクランズは残るエクストラクターの元へと飛翔する。

 かつて何度も剣を交え、その実力を知る統夜達だからこそ、アル=ヴァンの助力はこれほどにない心強いものだった!

 

 

「よし、これで最後だ!」

 健一の天空剣が最後のエクストラクターを切り裂いた。

 

 4基のエクストラクター全てが破壊される。

 

 

「これでズィー=ガディンの再生は封じられた。いける!」

 

 分析したマサトが確信を持ってそれを口にする。

 

 短い時間での破壊であったため、中核部はまだ生きている。

 

 

 あとは、ズィー=ガディンを倒すだけだ!

 

 

「何故だ……何故、我らは滅ぶ……! 憎い! 憎いぞおぉっ! 栄え、営み、生きる! 全ての種族の存在がぁぁぁっ!」

 

 

 再生の力が失われたグ=ランドンは叫んだ。

 その瞳にはすでに、理性の光はない……

 

 

「全てを滅ぼすっ! いなくなった……いなくなてしまったフューリーと共にぃぃぃっ、全ては宇宙から消えて無くなれぇぇ! 我は、我は滅びなりぃぃぃぃっ!!」

 

 

 変形し、ガウ・ラの中枢と融合したズィー=ガディンによる無差別攻撃がはじまる。

 

 オルゴンを用い、ラフトクランズやヴォルレントの模倣機を生み出し攻撃し、バラバラになった腕や体を飛ばし、プロヴィデンスのドラグーンのようなオールレンジ攻撃さえ行う。

 

 死角のないような弾幕の中、それをかいくぐり、統夜達はありったけの力をこめ、ズィー=ガディンに向け必殺の兵器を放って行く。

 

 

 エステバリスのゲキガンフレア。

 

 レイズナーのV-MAX。

 

 マジンカイザーとグレートマジンガーのダブルバーニングファイヤー。

 

 ゼオライマーのメイオウ攻撃。

 

 Gガンダム達のシャッフル同盟拳。

 

 テッカマンブレードのブラスターボルテッカ。

 

 コン・バトラーVとボルテスVの超電磁スピンVの斬り。

 

 ジャスティスとフリーダムのコンビネーションアサルト。

 

 ダンクーガの断空光牙剣。

 

 ウルズチームのウルズストライク。

 

 ブレン達のチャクラエクステンション。

 

 

 そして、最後は……

 

 

 

──カティア搭乗時──

 

 

 

カティア「統夜君……」

 

統夜「カティア、動けるか」

 

カティア「ええ、まだ大丈夫よ」

 

統夜「次で、最後だな」

 

カティア「悔いはないわ。あなたについてきて、よかった」

 

統夜「カティア……」

 

カティア「行きましょう」

 

統夜「ああ、行こう! グ=ランドン・ゴーツ、俺達の最後の力だ! 受けろおおおおっ!」

 

グランドン「おおおおおぉおお、統夜ーーーーっ!」

 

 

 

──テニア搭乗時──

 

 

 

フェステニア「統夜……」

 

統夜「テニア、動けるか」

 

フェステニア「うん、まだ大丈夫だよ」

 

統夜「次で、最後だな」

 

フェステニア「悔いはないよ。統夜についてきて、よかった」

 

統夜「テニア……」

 

フェステニア「行こう、統夜」

 

統夜「ああ、行こう! グ=ランドン・ゴーツ、俺達の最後の力だ! 受けろおおおおっ!」

 

グランドン「おおおおおぉおお、統夜ーーーーっ!」

 

 

 

──メルア搭乗時──

 

 

 

メルア「統夜さん……」

 

統夜「メルア、動けるか」

 

メルア「はい、まだ大丈夫です」

 

統夜「次で、最後だな」

 

メルア「悔いはありません。あなたについてきて、よかった」

 

統夜「メルア……」

 

メルア「行きましょう、統夜さん」

 

統夜「ああ、行こう! グ=ランドン・ゴーツ、俺達の最後の力だ! 受けろおおおおっ!」

 

グランドン「おおおおおぉおお、統夜ーーーーっ!」

 

 

 

──シャナ=ミア搭乗時──

 

 

 

シャナ=ミア「トウヤ……」

 

統夜「シャナ=ミア、動けるか」

 

シャナ=ミア「はい、まだ大丈夫です」

 

統夜「次で、最後だな」

 

シャナ=ミア「悔いはありません。あなたと出会えて、本当によかった」

 

統夜「シャナ=ミア……」

 

シャナ=ミア「行きましょう、トウヤ」

 

統夜「ああ、行こう! グ=ランドン・ゴーツ、俺達の最後の力だ! 受けろおおおおっ!」

 

グランドン「おおおおおぉおお、統夜ーーーーっ!」

 

 

 

──決着!──

 

 

 

 グランティード・ドラコデウスの、インフィニティキャリバーがズィー・ガディンの体を刺し貫いた……!

 

 

「……これ、が……死……私が、死ぬ、のか……? ここで、消える……?」

 

「そうだ、消えるんだ。永遠に。今度こそ終わるよ。辛い旅は……」

 

 うめくグ=ランドンに、統夜が、優しく語りかける。

 

 

「みと、めん……! なにもっ、か……あぁぁぁぁぁ!」

 

 最後の慟哭が響き、ズィー=ガディンが砕けて行く。

 

 

 ボロボロと崩れ、それはついに、塵となった……

 

 

「目標消滅。残敵数はゼロ。周囲探敵。適性コード、確認されず。戦闘終了です。艦長」

 

「終わった、のか?」

 ルリが周囲の状況を改めてモニターし、それを聞いたエイジが小さくつぶやいた。

 

 

「ああ、そうだぜエイジ、俺達は勝ったんだ!」

 

 甲児が声をあげる。

 

 

「終わりましたよ、師匠。見ていてくれたかい、キョウジ兄さん……」

 

「やったなキラ!」

「ムウさん!」

 

 

「ハイネル兄さん、地球は。地球は守ったよ、俺達の手で」

 

 

「ミスマル艦長、お疲れさま」

 

「はいっ! みなさん、お疲れさまでした! そして、ありがとうございました!」

 

 マリューとユリカが、艦同士の通信で言葉を交わす。

 

 

 皆、勝利を喜んだ。

 

 

 だが……

 

「……」

 

 一人、難しい顔をしている男。フリーマンがいた。

 

 

「それじゃ、全員帰還して……」

 

「待ちたまえ、ミスマル艦長」

 

 

 喜びの声をあげるユリカを制止する。

 

 

「へ?」

 

「なによチーフ? もう、一人だけマイペースなんだから」

 レビンがせっかくの喜びに水を差され、少し頬を膨らます。

 

 

「気になることがある。シャナ=ミア皇女、ガウ・ラ中枢部へのエナジー流入は納まったかね?」

 

 

「え? ……い、いえ。まだ続いています! コントロールが失われている!?」

 

 フリーマンの確認に、安堵していたシャナ=ミアが慌てて確認し、そして驚きの声をあげた。

 

 

「ええええええっ!? そ、そんなあ!」

 

「どうやら、喜ぶのは少し早いらしい」

 

 

 戦いは終わった。だが、まだ全ては終わっていなかった……!

 

 

 

──過去から未来へ繋ぐ絆──

 

 

 

 グ=ランドンの乗るズィー=ガディンは倒れた。

 しかし、それが失われたことにより、ガウ・ラ中枢のコントロールも失われてしまった。

 

 あの時、中枢からズィー=ガディンへのエナジー流入は阻止した。だが、その時なされた命令が今だに潰えていないのだ……!

 

 艦の全体からエナジーを集めるその命令は暴走し、全てのエナジーは中枢のエナジーユニットへ収束しようとしている。

 

 

 このままでは、中枢は臨界をむかえ、ガウ・ラはおろか月は崩壊。その結果、地球の生命もその欠片によって死滅することとなるだろう……

 

 

 

「シャナ=ミア様」

 

「わかっています。こうなれば中枢のユニットを破壊し、この暴走を止めねばなりません。アル=ヴァン、あなたのラフトクランズは、碇の鍵でしたね?」

 

「はい」

 

 アル=ヴァンの乗るラフトクランズはガウ・ラを動かすために必要な鍵の一つであり、エネルギーを調整するために必要な機体だ。

 彼のそれを使えば、暴走するガウ・ラのエネルギー上昇をおさえられる。

 

 あとは中枢ユニットへ近づき、それを破壊するだけだ。

 

 

「じゃああとは、中枢を破壊する人が必要なんですね?」

 ユリカが察し、問う。

 

「そうだ。だが、帰還はかなり難しい。一人は私として、もう一人は……」

 

 

「わかりました。じゃあ、みんなで行きましょう!」

 

 アル=ヴァンの説明をさえぎり、ユリカがそう言い切った。

 そしてそれを聞き、他のパイロット達も大きくうなずく。

 

 

「ま、待つんだ! 帰ってこれる保証はまったくないんだぞ!」

 

 予想外の彼等の回答に、アル=ヴァンは慌てる。

 犠牲になるのは自分だけでよいと考えていた彼は、まさか全員で行くことになるとはと大慌てだ。

 

 

「アル=ヴァン。悪いんだけど、ここではそういうの通じないんだ……」

 

 あはは。と統夜が苦笑しながら言った。

 

 この部隊は、たった五人の仲間を救うため死地に飛びこむバカばっかなのだ。

 ならば、たった二人を死地におもむかせるくらいなら、全員でむかって全員で帰還する。

 

 それを選ぶのが彼等なのである!

 

 

 ちょっと前に一人で行こうとして恥ずかしい思いをした統夜は、本当に苦笑するしかできなかった。

 

 

「行こう。ミスマル艦長。今は一分、一秒でも惜しい」

 

「はい!」

 

 統夜の言葉に、ユリカはうなずいた。

 

 

「アル=ヴァン。行きますよ」

 

「シャ、シャナ=ミア様まで!?」

 

 

「トウヤが言ったでしょう。ここではそういうのは通じないと。彼等は、不可能を可能にする部隊なのです。そして、アル=ヴァン。罪を感じているのなら、生きて償いなさい。死しての贖罪など、この私。シャナ=ミア・エルテナ・フューラの名が許しません」

 

 にこりと、シャナ=ミアは微笑んだ。

 それを見たアル=ヴァンは、ぽかんと口を開け動きを止めてしまった。

 

 彼の知るシャナ=ミアは、もっと儚くて自信のない気弱な少女であった。

 

 

 それが、ガウ・ラを飛び出すことになった短い時間の間に、こうも成長していたのだ。

 

 

 それは嬉しくもあり、自分には出来なかったという、寂しさもあった……

 

 

(……どうやら、統夜に任せて正解だったようだ)

 

 そう思い、ラフトクランズを動かし彼等の後を追った。

 ちなみに、中枢をラースエイレムで止める。というのは同じフューリー製の中枢には通じないので無理な相談である。

 

 

 

 ナデシコとアークエンジェルは、すぐ攻撃できるよう一部機体を甲板の上に乗せ、中枢エナジーユニットの元へとむかう。

 

 

 

「統夜、よい戦友を持ったな」

 

 甲板にて隣り合って立つ統夜に、アルヴァンが話す。

 

 

「ああ。みんな大切な仲間だ。なにもできなかった俺を、いつも助けてくれた」

 

「汝、戦友の真義に背くこと無かれ……フューリア聖騎士団の誓約の一つだ。しかし、私は……」

 

「アル=ヴァン?」

 

「……君の父上を殺めたのは、私だ。あの日君に言えなかったのは、このことだ。私はこの手で、我が師でもあったエ=セルダ殿を……」

 

「知っていたよ。シャナ=ミアに聞いた」

 

「すまぬ」

 

「その話は今はやめよう。それより、見えてきた。あれがそうじゃないのか?」

 

 統夜はすでに、アル=ヴァンに対するわだかまりはない。

 父の仇を討つより、もっと大切なことがあると知っているからだ。

 

 そのために今、統夜はここにいる。

 

 彼のパートナーも、その仲間も、ここにいる。

 

 

 フューリーの未来を守るため、皆の未来を守るため!

 

 

「うむ。あれだ。統夜、皆、我が愛機にてエナジーを抑える。その間に、あのユニットを破壊するんだ!」

 

「ああ! みんな!」

 

「おう! 任せろ!」

 甲児が代表して答えた。

 

 

「行くぞ! 母なる船、ガウ・ラ=フューリア! 我が愛機を捧げる、今一度眠れ!」

 

 

 あふれるエナジーがおさえられ、その周囲を取り巻くエネルギーの膜が消える。

 

 

「今だ、撃て!」

 

 

 ナデシコのグラビティブラストが。

 

 マジンカイザーのファイヤーブラスターが。

 

 グレートマジンガーのサンダーブレークが。

 

 テッカマンブレードのボルテッカが。

 

 ダンクーガの断空砲が。

 

 フリーダムガンダムのハイマットフルバーストが。

 

 ゼオライマーのメイオウ攻撃が。

 

 

 そして、グランティード・ドラコデウスのオルゴンドラコスレイブが。

 

 

 エナジーユニットに突き刺さった!

 

 

 

 激しい衝撃と、爆発があたりを揺らす。

 

 

 

「や、やったか!」

 

「うむ。見事だ。中枢ユニットは破壊された。まもなくこの場所も吹き飛ぶだろう。我が機はここに残し、誘爆を少しでも抑える」

 

 それは、ステイシス・ベッドのある中核部への影響をおさえるために必要なことだった。

 

 

「じゃあアル=ヴァンさんはナデシコにうつってください。これで、みんな脱出できます!」

 

 

「ああ」

 

 アル=ヴァンもユリカの提案に素直に従う。

 シャナ=ミアに生きて償えと言われていなければ、自身は残ると言い出していただろう。

 

 だが彼も、すでにここで死ぬつもりはない。

 生き恥をさらし、みずからの犯した罪を償い続けると決めたからだ。

 

 ラフトクランズのコックピットからアル=ヴァンは飛び出し、ナデシコへうつった。

 

 

 あとは、中枢破壊によりあふれたエネルギーの放出から脱出するだけである!

 

 

「いざとなったらディストーションフィールドで盾になります。みなさんしっかり捕まっていてください。機関全開! 全速離脱!」

 

 ナデシコとアークエンジェルは反転し、アル=ヴァンのラフトクランズが誘爆を抑えている間にその場から脱出をはかった。

 

 

 後方で、大きな爆発が起きるのが感じられた。

 アル=ヴァンのラフトクランズが抑えていた力がついにあふれ、エネルギーの津波が発生したのだ。

 

 

「後方から高圧エネルギー接近!」

 アークエンジェルのサイが報告する。

 

「大丈夫。これなら逃げ切れます」

 

 ルリが距離と速度を計算し、そう断言した。

 

 

「なら大丈夫です! ルリちゃん、そのまま速力を維持して!」

 

 

「よかった。どうやら無事脱出できそうだ」

 

 ナデシコの甲板に機体を固定する統夜も、安堵の声をあげた。

 

 

 だが……!

 

 

『逃がさん……!』

 

「え?」

 

 

 どこからともなく、声がした。

 

 それは、グ=ランドンに似た、怨嗟の声。

 

 

「っ! アークエンジェル、速力低下! なにかに引っ張られてます!」

「ナデシコもです。原因不明。このままでは逃げ切れません」

 

 

『逃がさん。貴様等だけは……!』

 

 

「これは……!」

 

 それは、アークエンジェルとナデシコにまとわりつくようにしてそこに現われた。

 

 うすらぼんやりとしたなにかが、二隻の戦艦を掴み、その進行を阻んでいるのだ!

 

 

「グ=ランドン……!」

 

 その声。その憎しみに歪む姿は、その名の男のように見えた。

 

「いや、それだけじゃない!」

 二隻にまとわりつくのは、それだけではなかった。

 

 統夜は。そして、彼の仲間達は見た。

 

 

『逃がさぬぞ、エイジ!』

『エイジイィィ!』

「ル・カイン、それにゴステロ!?」

 

『くくくくくく、はははははは、はーっははははははは!』

「クルーゼ!?」

 

『貴様等さえ、貴様等さえぇぇい!』

「コルベット!?」

 

「アズラエル……!」

 

「シャピロ!」

 

「あれは草壁じゃないか!」

 

「あしゅら男爵、Dr.ヘルまで!」

 

 

『逃がさねぇ。絶対に逃がさねぇぇぇ!』

 

 そして、ジュア=ム。

 

 

 それは、過去に刻まれ、サイトロンによって呼び起こされた、亡霊達だった。

 グ=ランドンの強い怨念が、サイトロンを通じ、これらを呼びこんだのだ!

 

 死してなお、強く残った恨みと憎しみをサイトロンがひきつけ、統夜達をひきずりこもうとまとわりついてきたのだ!!

 

「なんて執念。なんて恨みなんだ!」

 

 

「誰がお前等なんかに!」

 

 マジンカイザーのファイヤーブラスターが火を噴く。

 しかし、相手は形を持たぬ亡霊。

 

 その炎はすり抜け、まったく無意味だった……!

 

「嘘だろ!」

 

 

 だが、ナデシコもアークエンジェルも引っ張られる。

 

 それどころか……

 

 

『兜、甲児! 貴様だけは……!』

 

「うわっ、くそっ!」

 

 まとわりつくそれがさらに強力になる。

 

 二隻の戦艦だけでなく、その上に乗る機体にさえまとわりつき、地獄の底へと引きずりこもうとしているのだ……!

 

 

「くそっ、こんなところで!」

 

 統夜もうめく。

 形を持たぬ、理不尽の塊の力に、グランティード・ドラコデウスの制御が利かない。

 

 

「統夜君、このままじゃ!」(カティアルート時)

「統夜、このままじゃ!」(テニアルート時)

「統夜さん、このままだと……」(メルアルート時)

「トウヤ、このままでは!」(シャナ=ミアルート時)

 ※フラグ非成立の場合最終話に乗ってた子。

 

 

「っ!」

 守る者が、いる。

 

 統夜はそれを、思い出した。

 

 

「こんなところで……!」

 

 諦めかけた心に活を入れる。

 

 

「こんなところで!」

 

 気合と共に、生きる理由を思い出す!

 

 

 

「こんなところで、俺達は、死ぬわけにはいかないんだあぁぁぁ!!」

 

 

 

 その瞬間。

 統夜の強い意志が、その扉を、開いた……!

 

 グランティード・ドラコデウスのサイトロン感応器が光り輝く。

 

 強大なサイトロンの光。

 

 

 それが、奇跡をよび起こす……!

 

 

『もう、大丈夫だ。統夜……』

 

「え?」

 声が、聞こえた。

 

 グ=ランドン達の発する、怨嗟の声ではない。

 

 優しく、統夜達を包みこむような暖かい声……

 

 

 それが、統夜の背後から、横をすり抜け、まとわりつく亡霊へむかうのがわかった。

 

 統夜はその背中を、知っている。

 

 

『カティア……』

「え?」

 

『テニア』

「この、声……」

 

『メルア』

「う、そ……」

 

『シャナ=ミアよ……』

「おとう、さま……?」

 

 

 それぞれの背から、その人達はやってきた……!

 時の彼方から、愛しい者達を救うため、還ってきた!

 

 

『過去の亡霊に、未来の種は奪わせはしない!』

 

 

 機体にまとわりつくそれに、彼等はむかう。

 

『貴様、貴様等ァ!』

 

 グ=ランドンの亡霊が、恨みの声をあげる。

 

 

『タカヤの未来を、奪わせしない……!』

「父さん、シンヤ、ケンゴ兄さん! ゴダート、フォン、フリッツ、モトロフまで……!」

 

『豹馬。お前はまだ、こっちにきちゃいけないぜ』

「川上っ!」

 

『あなた達は、だから私がいないとダメなんです……』

「ナタル……また、叱られてしまったわね……」

 

『アスラン。君を、僕が守るよ……』

『フッ』

「ニコル、ミゲル……!」

 

『マサト、あなたは、生きるのです』

「幽羅帝!」

 

「ハイネル兄さん。母さんまで……」

 

「キョウジ兄さん、師匠!」

「シャッフル同盟の方々」

 

「ウズミさん」

 

「南原博士!」

「おじいちゃん!」

 

「フー=ルー……」

 

 

 死してなお、彼等は仲間を救うため、サイトロンに導かれやってきたのだ!

 ※この時、生存フラグが立たず、散っていった者達も、彼等を救うためこの場に姿を現す。

 

 

『彼等は、私達が連れてゆく……!』

 

 

 彼等の想いが、彼等の愛が、まとわりつく過去の亡霊を統夜達から引き剥がす!

 

 

『ヴォオォォォダアァァァ……!』

 

 断末魔が響き、機体が自由になる。

 その瞬間、統夜は叫んでいた。

 

 

「父さん!!」

 

 

『統夜、皆と、幸せにな……』

 

 

 その声と共に、光が、あふれた。

 

 

 

 ……

 

 

 

 …………

 

 

 

 ……………………

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 

 ──コズミック・イラ71年、9月27日。

 

 第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦により、地球・ザフト両軍ともその戦力の大半を喪失。

 プラント和平派による停戦の申し入れを受け、地球連合とプラント連合は和平のテーブルにつくこととなった。

 

 これに先立って行われたリクレイマーの解散宣言、またこの半年後に実現した、木星圏反地球同盟との休戦条約。

 

 これらによって後世『第一次地球圏争乱』と称される混乱の時はようやく終わりを告げる。

 

 各陣営の主戦派だった人物がほぼ同時に死亡していた事実につき、クライン派、元連合軍の反乱部隊、ネルガル重工の私設戦艦らによる非正規軍の存在を主張する研究者も多いが、歴史的評価が下されるのは、おそらく遥か先の話であろう。

 

 ともあれ、木星圏における優人部隊の無血クーデター。地下に潜行したブルーコスモスの中核、ボアザン星の人民革命など、なお混乱の種子をはらみつつも、人類は滅亡の危機を逃れ、束の間の平穏を取り戻したのである……

 

 なお、ヤキン・ドゥーエ会戦から3日後、各国の機関によって、月における大規模な地震が観測されたという。

 現在の月に活動の可能な火山は存在せず、天文学者らによってこの地震についての様々な議論がなされたが、原因は未だ不明のままである。

 

 

 そしてまた、少しの時間が流れた……

 

 

 

 最終話 終わり

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