スーパーロボット大戦J ムーンデュエラーズ   作:YSK

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エンディング

──エンディング──

 

 

 

 あれから俺達は、無事安全圏に脱出することができた。

 

 ステイシス・ベッドで寝ていた人達にも大きな被害はなく、目覚めた人達はシャナ=ミアと共に帝政を廃し、議会を作ったのち、連合、プラント政府と交渉し、地球との共存をはかってゆくそうだ。

 

 幸い。というのもなんだけど、自分達との接触の証拠をブルーコスモス達が消し去ってくれていたおかげで、フューリー達が交渉で不利になる。責任を負わされる。ということはなさそうだ。

 フューリーの技術の多くは戦争によって荒廃した自然を再生するのに有効でもあるから、そう悪い待遇になるとも思えない。

 

 まだまだはじまったばかりで、道は険しいだろうけど、この共存はのちのボアザン、グラドスとの和平にも繋がる大きな一歩だから、どうにか実現してほしいものだ。

 

 

 かくして戦いも終わり、俺達はそれぞれの生活へ戻っていく。

 

 

 超電磁チームはエイジ達と外宇宙開発機構の面々と共に、ボアザン星とグラドス星との和平と対話に乗り出すため、宇宙へ飛び立つことになりそうだ。

 もちろんそこには、エイジの先輩、ゲイルさんとその婚約者にして姉、ジュリアさんも一緒だ。

 

 それと、ナデシコの運用も終わり、フリーになった元ナデシコの面々も何人か加わることになるって聞いた。

 

 バルザックとDボウイは戦いから引退した。

 バルザックは待っている人の元に帰り、Dボウイも残っていたアイバ家に戻ったそうだ。

 

 特に、Dボウイはもう変身する必要はない。

 

 また地球に危機が陥った時、変身を望むこともあるかもしれないけど、そんなことないよう、妹のミユキさんとアキさんと幸せになってもらいたいものだ。

 

 ラミアス艦長とムウさんは軍に無事復職した。

 なんだかんだあーだーこーだ言っているけど、この二人はつかず離れずだらだら続く気がしてならない。

 

 ミスマル提督もちゃんと提督に戻ったし、これで連合軍もいい方向に向かうといいな。

 

 アキトさんとミスマル艦長は、ルリちゃんを引き取り、幸せな新婚生活を送っているようだ。

 新婚旅行で事故なども起こらず、ルリちゃんが新たなナデシコの艦長になることもなく、二人は幸せに暮らしたそうな。めでたしめでたし。となるだろう。

 

 アカツキはネルガルに戻り、連合と計画した復興事業を進めている。その評価は上々のようだ。

 

 マサトはゼオライマーを封印し、美久と共に静かな生活をはじめたことだろう。

 キラも同じく、隠遁生活に入るそうだ。オーブを復興するカガリのツテで、南国の方で静かに暮らすのだとか。

 

 アスランはディアッカと共にザフトに戻り、祖国の改革にまい進するそうだ。

 

 勇は、比瑪と静かに暮らしている。もちろんブレン達も一緒に。

 

 一部のブレン隊の面々は、外宇宙開発機構のメンバーとして宇宙に旅立つことも考えているらしい。

 ブレンやグランチャーが、宇宙に興味を持ったからだと言っていた。

 

 甲児も鉄也さんも相変わらず光子力研究所で仲良くしている。

 もちろん、俺とも。

 

 千鳥さんは元と同じく休校から再開した高校にもどった。

 もちろん、護衛としての相良軍曹と一緒に。

 

 クルツとマオさんもいつもどおりバックアップについているはずだ。

 

 ミスリルに戻った獣戦機隊は前と同じく正義の傭兵家業に戻ったって聞いた。

 トゥアハー・デ・ダナンもかわらず幽霊潜水艦を続けているそうだ。

 

 シャッフル同盟の皆さんは、先代の跡を継ぎ、この地球を裏側からひっそりと守るのだそうだ。

 ミスリルとも協力し、彼等が地球を守ってくれているのだから、地球の平和はもう大丈夫だろう。

 

 

 皆、元の生活に戻ったり、新たな門出に立ったりした。

 

 

 そして、皆と共に父さん達を弔った俺達は……

 

 

 

──自宅/カティアエンド──

 

 

 

「カティア、そろそろ準備できたか? 終戦記念式典、午後からだろ」

 

「ごめんなさい、もう少し待ってもらえますか?」

 

 

 あれから一年。

 統夜達は終戦記念式典に出る準備をしていた。

 

 

「なんだ、まだ迷ってるのか?」

 

「ええと、やっぱり上着はこれにしたいから、スカーフが……。もっと明るい方がいいかしら? でも、靴もあるし……」

 

 カティアは、その式典にゆく服を悩み、頭をひねっていた。

 

「いいかげんに決めないと、遅れるぞ。っていうか、いつもそんなに気にしていないじゃないか」

 

 

「統夜君、ちょっと並んでもらえる?」

 

「こうか?」

 

 

 全身鏡に映るよう。統夜はカティアの隣に立つ。

 

 

「ううん。やっぱり、姉と弟に見えちゃうかな……」

 カティアが口の中だけで転がすよう、ポツリとつぶやいた。

 

「え? 今なにか言ったか?」

 

「いえ、なんでもないわ。一年ぶりにみんなに会えるから、お洒落したいな。と思って」

 

「そんなに気合入れすぎても、失敗して笑われるだけだぞ」

 

「……」

 

「な、なんだよ、その見当違いなこと言ってるって目は……」

 

 

 じとっと、睨まれた統夜は、思わずひるんだ。

 カティアの目は、違う。そうじゃないと訴えていたが、そんな細やかな乙女心、まだ若い統夜にはわからなかった。

 

 

「ねえ、統夜君」

 

「ん?」

 

 

「私は、あなたの支えになれてるかな?」

 

 

「もちろんだよ。カティアがいてくれたから、俺はあの戦いで無茶が出来たし、全力を出せた。それは、カティアがいつも、俺を気にかけて、支えてくれていると感じていたからさ」

 

 だから、弱音を吐かず、あの戦争を戦い抜くことが出来た。

 

 

「そう。なら、よかったわ」

 

 カティアが、微笑む。

 

 

「それが、今いきなりどういう?」

 

 

「いいえ。それを聞けて、私は決心がついたわ」

 

 

「え? なにの?」

 突然決意を決めた目で、カティアは統夜を見る。

 

 

「それ、脱ぎなさい!」

 

「な、なにぃ!?」

 

 

「あなたのことを気にかけて、支えてきた私が言います! 初めて会ってからもう2年も経っているんですから、あなたも、もう少し大人っぽい服を着てもいいはずです!」

 

「な、なんだ。そういうことか……って、いいよ俺は! このままで!」

 

「よくありません! そうすれば私が悩まなくてすむんだから! さあ、こっちに来て!」

 

 

「だあぁっ! 引っ張るな!」

 

 ぐいぐいと統夜の服を引っ張り、脱がそうとするカティア。

 

 

 そこへ……

 

 

「統夜君、カティアちゃん。迎えに来たわよってごごごごめん!」

 

 迎えに来たかなめが、大慌てで回れ右した。

 

 

「カ、カナメさん!? ごめんって、ち、違います! 違うんです。これは……!」

 

 慌てて部屋から出て行くかなめを見て、カティアが言い訳を発する。

 だが、はたから見ると、男の子を脱がそうとしている女の子の姿にしか見えなかった。

 

 

「どうした千鳥、異常か!? まさかトラップが!? 姿勢を低くしてその場を動くな!」

 かなめの急変を感じ取った宗介が急行する。

 

「なな、なんでもないの宗介! 入っちゃダメ!」

 

「……なにもないぞ千鳥。統夜とカティアが二人でいるだけだ」

 

 慌てて止めるが、遅かった。

 宗介が顔を出し、中の二人を目撃する。

 

 だが宗介は朴念仁。現状を見ても別に不思議には思わなかったようだ。

 

 

 だが、その騒ぎ声は、外で待つ友人達に聞こえ、飛び火してしまう。

 

 

「ああ~っ、も、もしかして!」(さやか)

 

「二人っきりで、お前ら!」(ボス)

 

「なんだと!? やいやいやい統夜、てめえなにしてやがった!?」(甲児)

 

 

 宗介の声を聞いた甲児達も部屋に飛びこんできた。

 

 

「な、なにもしてないって!」

 

「そ、そうよ。私はただ、着替えを、その……」

 

 入ってきた友人に、わたわたと二人は言い訳をする。

 だがそれは、余計に怪しい言い訳だった。

 

 

「ずるいずるいずるい! カティアちゃんずる~い!」

 

「カティア……。あ、あんたって子は……まさか、むりやり」

 

 そして、カティアの親友と言える二人も二人の姿を見て絶句した。

 

 

「だから違う! 話を聞けって!」

 

 

 わいわいぎゃーぎゃーと、友人達が騒ぎ立てた。

 これではなかなか話はまとまらない。

 

 

「ちょっと少年少女! いつまで待たせる気?」

 

「早くしないと置いてくぜー! それとも電車で行くつもりかあ!?」

 

 宗介の仲間、マオとクルツが外から声を掛ける。

 大人の二人は彼等を送るため車を出してくれたのだ。

 

 

「あ、は~い! 今行きま~す!」(さやか)

 

「くそっ、運のいい奴!」(ボス)

 

「おい統夜、話は後だ、忘れるな! すぐ来いよ!」(甲児)

 

「もう、先に行ってるからね、カティア!」(テニア)

 

「あとで詳しく聞かせてね」(メルア)

 

 水を差された甲児達は釘を刺し、外へ戻っていった。

 

 

「……まいったな」

 出て行くテニア達を見て、統夜は頭をかいた。

 

「ごめんなさい」

 

「いや、いいけどさ」

 

 

「……」

「……」

 

 

「ふふっ」

「ははは」

 

 

 二人は顔をあわせ、笑いあった。

 

 

「行きましょうか」

 

「ああ。行こう。なあ、カティア」

 

「なんです?」

 

 

「これからも、よろしく頼むな」

 

「……はい!」

 

 

 そうして彼等は歩き出す。

 

 

 

 未来に向かって。

 

 

 

 おしまい。

 

 

 

──自宅/テニアエンド──

 

 

 

「統夜ー、準備できたー?」

 

「あー、……ごめん、まだ」

 

 

 あれから一年。

 統夜達は終戦記念式典に出る準備をしていた。

 

 

「えー? もう、遅いなあ。せっかく終戦記念式典でみんな集まるのに、遅れちゃうじゃない」

 

「ごめん。もう少し待ってくれ」

 

 統夜は一人、鏡の前で四苦八苦していた。

 

「楽しみだね! カガリもオーブから来るって言うし。そうそう、ミスマル艦長、アキトと婚約したんだよね。話、聞かなくちゃ!」

 

 

 楽しそうに、ころころと表情を変え、跳ねたり手を組んだりして楽しみを最大限に表現している。

 そのテニアに、統夜は振り返った。

 

 

「なあ、やっぱり普段着でよくないか?」

 

「ダメだよ! 統夜もアタシも地球人とフューリー両方のゲストなんだよ。ちゃんとしてないと恥ずかしいじゃない」

 

「それを考えると気が重いんだよなあ。みんなに会えるのは嬉しいけどさ。なにか喋れなんていわれたら逃げるぞ、俺」

 

「それなら大丈夫!」

 

 統夜の不安に、テニアは自信満々に胸を張った。

 

 

「大丈夫?」

 

「うん。話すことになっても統夜は大丈夫。だって、アタシと一緒なんだから!」

 

「なんだよそれ」

 

「アタシがついてるってこと。統夜はさ、アタシといれば、無敵でしょ?」

 

 

 にぱっと、テニアは笑った。

 

 統夜はそれを見て、口元に笑みを浮かべる。

 どこか苦笑いをしているようにも見えるが、とてもとても楽しそうだ。

 

「そういえば、そうだったな」

 

 そう言い、統夜はテニアの頭をわしゃわしゃと撫でた。

 

 

「ちょっ、こら! 髪が乱れるだろー!」

 

「ははは。ところでさ、テニア」

 

 

「なによ。むー」

 

 統夜から離れ、頬を膨らませながら髪を整えるテニアが不機嫌そうに聞き返す。

 

 

「お前、ネクタイの結び方知ってるか?」

 

「え? 知らないよそんなの」

 

 

 統夜がさっきから鏡の前で四苦八苦していた理由。

 それがこのネクタイのせいだった。

 

 

「一応出来たんだけど、これであってるかな?」

「……いや、その結び方は違うと思うな。統夜、やったことないの?」

 

「ああ。学校の制服はブレザーじゃないし……」

 

 

 統夜の通っていた学校は私服通学が可能な詰襟の制服だった。

 ゆえに、ネクタイはまだ自分でしめたことはない。

 

 

「ちょっと貸して。ええと、こうかな?」

 

 呆れたテニアが統夜のネクタイをとり結びはじめる。

 

 

「どうだ?」

 

「んー、母さんの見よう見まねなんだけど、んー」

 

 結びながら、なにか違うとテニアは統夜の首元に顔を近づける。

 

 

「統夜君、テニアちゃん。迎えに来たわよってごごごごめん!」

 

 迎えに来たかなめが、大慌てで回れ右した。

 

 

「カ、カナメ!? ごめんて、別にその、なんでもないんだよ!」

 

 慌てて部屋から出てゆくかなめを見て、テニアは必死に言い訳を発した。

 しかし、テニアの今の状況は、はたから見ると統夜の胸元にすがりついて下からキスを迫っているようにも見えなくなかった。

 

 

「どうした千鳥、異常か!? まさかトラップが!? 姿勢を低くしてその場を動くな!」

 かなめの急変を感じ取った宗介が急行する。

 

「なな、なんでもないの宗介! 入っちゃダメ!」

 

「……なにもないぞ千鳥。統夜とフェステニアが二人でいるだけだ」

 

 慌てて止めるが、遅かった。

 宗介が顔を出し、中の二人を目撃する。

 

 だが宗介は朴念仁。現状を見ても別に不思議には思わなかったようだ。

 

 

 だが、その騒ぎ声は、外で待つ友人達に聞こえ、飛び火してしまう。

 

 

「ああ~っ、も、もしかして!」(さやか)

 

「二人っきりで、お前ら!」(ボス)

 

「なんだと!? やいやいやい統夜、てめえなにしてやがった!?」(甲児)

 

 

 宗介の声を聞いた甲児達も部屋に飛びこんできた。

 

 

「な、なにもしてないって!」

 

「そうそう! まだっていうか、ただ、ネクタイを、その……」

 

 入ってきた友人に、わたわたと二人は言い訳をする。

 だがそれは、余計に怪しい言い訳だった。

 

 

「ずるいずるいずるい! テニアちゃんずる~い!」

 

「統夜君。私が言うべきではないかもしれないけど、テニアをお任せするにしても、それなりの節度が……」

 

 そして、テニアの親友と言える二人も二人の姿を見て呆れていた。

 

 

「だから違う! 話を聞けって!」

 

 

 わいわいぎゃーぎゃーと、友人達が騒ぎ立てた。

 これではなかなか話はまとまらない。

 

 

「ちょっと少年少女! いつまで待たせる気?」

 

「早くしないと置いてくぜー! それとも電車で行くつもりかあ!?」

 

 宗介の仲間、マオとクルツが外から声を掛ける。

 大人の二人は彼等を送るため車を出してくれたのだ。

 

 

「あ、は~い! 今行きま~す!」(さやか)

 

「くそっ、運のいい奴!」(ボス)

 

「おい統夜、話は後だ、忘れるな! すぐ来いよ!」(甲児)

 

「先に外で待ってますから」(カティア)

 

「あとで詳しく聞かせてね」(メルア)

 

 水を差された甲児達は釘を刺し、外へ戻っていった。

 

 

「……まいったな」

 出て行くカティア達を見て、統夜は頭をかいた。

 

「うん。ホントに」

 

 

「……」

「……」

 

 

「ぷっ」

「ははは」

 

 

 二人は顔をあわせ、笑いあった。

 

 

「行こっか?」

 

「ああ、行こう。なあ、テニア」

 

「なに?」

 

 

「これからも、一緒だからな」

 

「うん!!」

 

 

 そうして彼等は歩き出す。

 

 

 

 未来に向かって。

 

 

 

 おしまい。

 

 

 

──自宅/メルアエンド──

 

 

 

「統夜さん、まだ行かないんですか~?」

 

「まだ大丈夫だよ。終戦記念式典は午後からだし、甲児達も迎えに来るって言ってたじゃないか」

 

 

 あれから一年。

 統夜達は終戦記念式典に出る準備をしていた。

 

 

「ふふっ、だって、楽しみじゃないですか。一年ぶりにみんなと会えるんですから」

 

「ああ、そうだね」

 

「カガリさんもオーブから来るって言うし。あ、そうだ! ミスマル艦長とアキトさん、婚約されたんですよね。お話聞かなきゃ!」

 

 

 楽しそうににこにこするメルアを見て、統夜はどこかほのぼのした。

 だが、メルアの手元を見て、首をひねる。

 

 

「ところでメルア、そんなに大きなバッグ持って、どうするんだ?」

 

「あ、これですか? 式典のあとはパーティーだって聞きましたから、お菓子がくさんあると思って」

 

 

 そのバッグを持ち、もの凄くいい笑顔を見せた。

 

 

「……もしかして、それに詰めて持って帰る気か?」

 

「はいっ!」

 

「恥ずかしいからやめなさい」

 

 笑顔の即答に、統夜も呆れつつ即答を返す。

 

 

「ええ~~っ!? どうしてですか~!」

 

 統夜の制止に、メルアはぷくっと頬を膨らます。

 

 

「どうしてじゃないよ。俺達一応、地球とフューリー両方のゲストなんだぞ。それがこんなことしたら、いろんな人に迷惑がかかかるだろ。シャナ=ミアとか、ラミアス艦長とかに」

 

「むうー」

 

 だが、統夜の言葉を聞いたメルアはさらに頬を膨らませた。

 

 

「だからお前も、今日は行儀良く……メルア?」

 

 その様子に、統夜も気づいた。

 

 メルアはどこかすねたようにつん。と唇を尖らせ。

 

 

「……やっぱり統夜さん、ああいう大人っぽい人が好きなんですね」

 

 

 ふん。と不満そうに統夜から顔を背けた。

 

 

「え? ち、違うよ!」

 

「どうせ私は、お行儀悪くて子供っぽいです!」

 

「そういう意味じゃないから。機嫌直せって」

 

「ふんだ。許してあげません」

 

 

 つーんと、頬を膨らませ、統夜とは目をあわせようともしない。

 そのしぐさが子供っぽいんだ。と統夜は思ったが、さすがに火に油を注ぐだけなので口には出さなかった。

 

 統夜は、小さく息をはき。少し困ったように、頬をかいた。

 

 

「……もう、俺達が会って、2年になるんだな」

 

「……?」

 

「その2年の間に、メルアがどれだけ成長したか、俺は知っているよ。だから、そんなこと言うなって」

 

「統夜さん……」

 

 

 驚いた顔をし、メルアは嬉しそうに頬を染めながら、統夜の方を振り向いた。

 

 

「ねえ、統夜さん。それじゃあ私、あれから少しは大人っぽくなってますか?」

 

「ああ。なってる」

 

「本当に?」

 

「本当だ」

 

 統夜は力強くうなずいた。

 

 

「そうですか……ふふ、嬉しいです。統夜さん」

 

「だからこのバッグは、今日は置いて行くぞ」

 

 

 にっこり統夜は微笑み、メルアの抱えるバッグをとりあげた。

 

 

「ああ~~っ! ダ、ダメです~!」

 

「お、おい! こらメルア、離せって!」

 

「いや~~~っ!」

 

 

「統夜君、テニアちゃん。迎えに来たわよってごごごごめん!」

 

 迎えに来たかなめが、大慌てで回れ右した。

 

 

「カナメさん? ごめんって、あっ! こ、これは違うんです!」

 

 慌てて部屋から出てゆくかなめを見て、メルアは必死に言い訳を発した。

 しかし、はたから見ると、バッグを持ち上げた統夜にすがりつくメルアは、まるで激しく抱きしめあっているようにも見えなくなかった。

 

 

「どうした千鳥、異常か!? まさかトラップが!? 姿勢を低くしてその場を動くな!」

 かなめの急変を感じ取った宗介が急行する。

 

「なな、なんでもないの宗介! 入っちゃダメ!」

 

「……なにもないぞ千鳥。統夜とメルアが二人でいるだけだ」

 

 慌てて止めるが、遅かった。

 宗介が顔を出し、中の二人を目撃する。

 

 だが宗介は朴念仁。現状を見ても別に不思議には思わなかったようだ。

 

 

 だが、その騒ぎ声は、外で待つ友人達に聞こえ、飛び火してしまう。

 

 

「ああ~っ、も、もしかして!」(さやか)

 

「二人っきりで、お前ら!」(ボス)

 

「なんだと!? やいやいやい統夜、てめえなにしてやがった!?」(甲児)

 

 

 宗介の声を聞いた甲児達も部屋に飛びこんできた。

 

 

「な、なにもしてないって!」

 

「統夜! あんた、シラを切るつもり!?」

 メルアの親友であるテニアが掴みかからんばかりに語気を強めた。

 

「違うのテニアちゃん。統夜さんがわたしのこと、子供っぽいって言うから。だから、その……」

 

「こらメルア! よけいややこしくするんじゃない!」

 

 

「統夜君。私が言うべきではないかもしれないけど、メルアをお任せするにしても、それなりの節度が……」

 

 もう一人の親友、カティアが呆れるように言う。

 

 

「だから違う! 話を聞けって!」

 

 

 わいわいぎゃーぎゃーと、友人達が騒ぎ立てた。

 これではなかなか話はまとまらない。

 

 

「ちょっと少年少女! いつまで待たせる気?」

 

「早くしないと置いてくぜー! それとも電車で行くつもりかあ!?」

 

 宗介の仲間、マオとクルツが外から声を掛ける。

 大人の二人は彼等を送るため車を出してくれたのだ。

 

 

「あ、は~い! 今行きま~す!」(さやか)

 

「くそっ、運のいい奴!」(ボス)

 

「おい統夜、話は後だ、忘れるな! すぐ来いよ!」(甲児)

 

「もう、先に行ってるからね、メルア!」(テニア)

 

「後で詳しく聞かせてもらいますからね」(カティア)

 

 水を差された甲児達は釘を刺し、外へ戻っていった。

 

 

「……まいったな」

 出て行くカティア達を見て、統夜は頭をかいた。

 

「あの、ごめんなさい……」

 

 

「……」

「……」

 

 

「うふふ」

「ははは」

 

 

 二人は顔をあわせ、笑いあった。

 

 

「ねえ、統夜さん」

 

「なんだい?」

 

 

「昔、お母さんに聞いたことがあるんです。お父さんはどうしてずっと月にいるのって……」

 

「なんて答えたんだ?」

 

「とても大切な、地球の未来に関わる仕事をしていて忙しいからと……お母さん、きっと、気づいていたんですね」

 

「そっか」

 

 どこか遠くを見たメルアを見て、統夜も同じ方向を見た。

 

 

「わたし達、お父さんとお母さんの想いを無事繋ぐことができましたよね?」

 

「当然じゃないか」

 

 

 それが、この終戦記念のパーティーだ。

 

 フューリーも、グラドス人も、ボアザン星人も、木連の人達も。ザフトも連合も地球人も、みんな一緒で乾杯できる。

 それはきっと、メルアだけでなく、みんなの両親が願った結果だ。

 

 だから統夜は、胸を張って彼女の疑問にイエスと答えることが出来た。

 

 

「だから、行こうメルア。俺達も、その想いを繋ぎに」

 

「はいっ!」

 

 

 そうして彼等は歩き出す。

 

 

 

 未来に向かって。

 

 

 

 おしまい。

 

 

 

──祈りの間/シャナミアエンド──

 

 

 

「シャナ=ミア? ああ、ここにいたのか」

 

「トウヤ」

 

 

 あれから一年。

 統夜は終戦記念式典に出る準備をし、共に出るシャナ=ミアを探し、ガウ・ラ=フューリアにある祈りの間に顔を出した。

 

 

「そろそろ時間だけど、大丈夫か?」

 

「はい。もう祈りは終わりましたから」

 

 そう言い、シャナ=ミアは手を解き立ち上がった。

 

 

「なにを祈ってたんだ?」

 

「この平和が、ずっと続きますように。と」

 

 統夜の問いに、シャナ=ミアは笑顔で答えた。

 

 

「そっか。いい願いだね」

 

 統夜は、シャナ=ミアの隣に立った。

 

 ここは祈りの間。

 フューリーの創世神に祈りを捧げる場所だ。

 

 そこでの祈りは、不思議なことを引き起こすこともある。

 

 例えば、遠く離れた少年の夢に、少女の姿を映し出す。とか。

 

 

「もう、あれから一年も経ったんだな」

 

「はい。皆さんにまた会えるの、楽しみですね」

 

 

 この一年は、フューリーにとって激動の一年であった。

 連合と交渉し、プラントとも交渉し、様々な難題にぶち当たり、それをみんなで解決してきた。

 

 今では多くの民が地球に移り住み、いろいろあって荒廃した地球を多くの人と共に再生している。

 

 

 今や、統夜の父やシャナ=ミアの父。そしてカティア達の親が夢見た世界がそこにあるのだ……

 

 

「……シャナ=ミアは、凄いな」

 

「へっ? い、いきなりなんです?」

 

 ぽつりとつぶやいた統夜の言葉に、さすがのシャナ=ミアも驚いて声をあげてしまった。

 

 

「いや、大勢の人達の前で演説したり、説得したりして多くの人の心を動かせるんだからさ」

 

 するとシャナ=ミアは、その統夜をきょとんとした目で見返した。

 

 

「シャナ=ミア?」

 

 

「ふふっ、トウヤったら」

 くすくすと笑った。

 

 まるで、統夜の言っていることに初めて気づいたというかのようだ。

 

 

「私が凄いというのなら、トウヤだって凄いということですよ」

 

「? どういうことだ?」

 

 

「私が臆することなく皆の前で話が出来るのは、あなたがいてくれるからです。いついかなる時もトウヤが守ってくれると信じられるから、どんな時も恐れず前に進むことが出来ます。あなたがいるから、あの私がいるんですよ」

 

 そういい、シャナ=ミアは屈託のない笑顔を統夜にむけた。

 

 

「……」

 素直に向けられた笑顔と言葉に、統夜は恥ずかしくなりぽりぽりと頬をかいて、視線を明後日の方に向けた。

 

「ふふふ」

 くすくすと、照れた統夜を見て、シャナ=ミアはまた笑う。

 

 

「あ、そうだ」

 視線をシャナ=ミアから祈りの間にむけた統夜が、ふとなにかに気づいた。

 

「どうしました?」

 

 

「シャナ=ミアと子供の頃、はじめて会ったのもここだったよな」

 

「え?」

 

 シャナ=ミアが驚く。

 再会した時のことを言っているのではない。

 

 統夜は今、子供の頃と言った。

 

 シャナ=ミアだけが鮮明に覚えていた、あの子供の頃の宝物の記憶のことを。

 

 彼女が驚くのは無理もない。だってそのことは、統夜は忘れていたはずだ。

 

 

「逃げる時は必死で、ちゃんとここを見ている余裕なかったけど、改めて見て、思い出したよ」

 

 

 統夜は視線を改めて、シャナ=ミアに戻した。

 

 

「あの時の君も、ここで祈っていたよね」

 

 

(ああっ……)

 

 シャナ=ミアは、あの日のことを思い出す。

 今でも鮮明に思い出せる。あの宝石のような日々のはじまりの時を……

 

 

「あの時も俺、こう思ったんだ。君は、綺麗だって」

 

 

「きれっ!?」

 突然の宣言に、彼女はさらに驚いた。

 

 そりゃ、そんなことを好きな人に言われたら、驚くに決まっている。

 

 

「だから、君にはずっと笑っていて欲しい」

 

 

 統夜は、ずっと夢で見てきた。

 悲しそうに懺悔する、一人の少女を。

 

 夢に見る彼女は、いつも辛そうな顔をしていた……

 

 

 ずっとずっと見てきて、いつか守ってあげたいと思った。

 

 

 その夢の少女。

 

 それが、シャナ=ミアだ……

 

 

「俺が側にいて、その助けになっているのなら、嬉しいな」

 

「……はいっ!」

 

 

 素敵な笑顔が、統夜の視界にとびこんできた。

 

 

 

 ──ある日、小さな少女はこの閉じこめられたような狭い世界が嫌になり願いました。

 

「私を広い世界に連れ出してくれるお友達が欲しい」

 

 と。

 

 

 お祈りを聞いた神様はその時、その半分だけをかなえてくれました。

 

 

 その少女の前に、お友達が現われたのです。

 狭い世界にいるのは変わらなかったけれど、寂しさは消え去りました。

 

 

 そして彼女はそのお友達と約束します。

 

「大きくなったら、外の世界へ連れ出してね」

 

 と。

 

 

 その約束は、お友達の死という結末で儚く破られたかに思われました。

 

 時が経ち、少女は多くのことを諦め、日々誰かに謝るしか出来ませんでした。

 神様は、もう願いをかなえてくれません。

 

 ですが、約束は守られました。

 

 

 死んだと思っていたそのお友達が現われ、大きくなった少女を外の世界へ連れ出してくれたのです。

 

 

 お友達に連れられ、少女は広い世界を見て回りました。

 少女は願いをかなえてくれた神様に感謝します。

 

 そして、新しい願いが生まれました。

 

 

(ありがとう。神様。私のことを、いつも見守ってくれて……)

 

 

 少女はその日、祈りを捧げました。

 ですがそれは、自身の願いをこうためではありません。

 

(この願いは、私自身の力でかなえますから)

 

 少女は神様に誓います。

 

 

(だってそれは、私が彼に与えなければ意味がないから……)

 

 

 強くなって戻ってきた少女に、神様の手助けはもう必要ないのです。

 

 

(かわりに、私以外の人々を助けてあげてください)

 

 

 少女は祈ります。

 世界の平和を。

 

 人々の安寧を……

 

 

(私はもう、大丈夫だから……)

 

 

 なぜなら彼女の傍らには、彼女を守る立派な騎士がいらっしゃるから……

 

 

「ねえ、トウヤ」

 

「なんだい?」

 

 

「あなたに会えて、本当によかった」

 

 

「俺もだよ。さあ、行こうか」

 

「はいっ!」

 

 

 そうして彼等は歩き出す。

 

 

 

 未来に向かって。

 

 

 

 おしまい。

 

 

 

──自宅/ノーマルエンド──

 

 

 

「カティア、このダンボールここでいいのか?」

 

「ええ。そこに置いてもらえれば」

 

 

 戦乱が集結し、カティア、テニア、メルアの三人は家に帰れる機会を得た。

 

 しかし、家族のいなくなった場所で一人暮らすというのは、寂しさしか生まなかった。

 住み慣れた場所に愛着はなくもなかったのだが、そこはもう、自分の居場所ではなくなったのだと実感をしてしまった……

 

 ゆえに、彼女達は集まり、ルームシェアして共に住むことを決めたのである。

 

 新たな住まいに選んだのは、もう慣れ親しんだ日本。

 

 かつて特務分艦隊としてすごした土地の方が、三人にとって都合がいいということになったのだ!

 そこは、弓教授やネルガルなど、彼女に協力してくれるものも多く、さらに戦友も多く残っていたからだ。

 

 フューリー側に行くという選択肢もあったが、二つの愛の結晶である彼女達こそ地球に受け入れられてナンボ。ということで、そう決まった。

 

 他に、深い意味は決してない。ないのだよ?

 

 

 そして今日が、その引越しの日なのだ。

 

 

「よっこらせっと。ふぅ、これで残り、どれくらいだ?」

 荷物を運び終え、一区切りついた甲児が腰を叩きながら聞いた。

 

「ちょうど半分くらいでーす」

 甲児の問いに、メルアが答える。

 

「まだ半分かよ! 三人分だと引越しも大変だな」

 手伝いに来ていたボスがそれを聞き、少々げんなりしながら声をあげた。

 

「ごめんね。手伝ってもらっちゃって」

 その言葉に、テニアが謝罪する。

 

 

「なーに、いいってことよ。なにしろこれからお前等は俺達の学校の後輩だからな!」

 

 甲児がにっと笑い、親指を立てた。

 

 日本に住むにあたり、彼女達も学校に通うことになったのだ。

 場所はもちろん、戦友が多くいるところだ。

 

 戦争も終わり、休校から再開するのにあわせての留学というわけである。

 

 ちなみに甲児の言う後輩というのは、学年的な意味ではなく、先にいたからという意味での先輩後輩である。

 

 

「おい、そういや宗介のヤロウ、どこ行った? あのヤロウサボるつもりか?」

 

 人手の不足を感じたボスが、一人いない男を目ざとく発見した。

 傭兵でもある宗介はパワーもある。ゆえにもっと手伝えという意味もあるのだ。

 

 

「呼んだか?」

 

 呼ばれた宗介が、にゅっと現われる。

 天井裏から。

 

 

「きゃっ!」

「うわっ!?」

 

 メルアとテニアが驚いた。

 

 

「天井でなにやってたの!?」

 

「盗聴器が仕掛けられていないか、チェックしておいた。一応安全のようだ。後は玄関に24時間監視カメラ、ベランダに侵入防止用電圧ネットを取り付ければ、取りあえず安全だろう」

 

 カティアの疑問に、宗介がスラスラと答える。

 

 

「き、気持ちは嬉しいんだけど……」

 

 それを聞き、カティアが口元をひくつかせた。

 

 

「油断するな、ここは戦艦の内部ではない。日常の安全は……」

 

「それ以前に、もうここは戦場じゃないっ!」

 

 

 すぱーん!

 

 どこから取り出したのか、かなめがハリセンで宗介の頭をしばいた。

 

(本当に、どこから出したんでしょう)

 メルアは思うが、その疑問に答えをくれる人はここにはいなかった。

 

 

「痛いぞ、千鳥」

 

「ったく。ちょっと目を離すとこれなんだから」

 

 まったく。とかなめはため息をつく。

 

 

「遅れてごめんなさい。ちょっと学校に行ってたから」

 

「学校?」

 

 かなめの言葉に、統夜が聞き返す。

 

 

「うん。これを預かってきたのよ」

 

 かなめは大きな袋から、小さな袋を取り出した。

 

 

「これは?」

 

「うちの学校の制服よ」

 

 カティアの疑問に、かなめが答える。

 

 

「ええっ!? 制服。も、もらっていいんですか?」

 メルアが驚く。

 

「うん。うちの生徒会長が、“転入生に渡しておきたまえ、サイズは心配ない”だって」

 

「サイズ……って、かえって心配にならないか?」

 

 かなめの回答に、甲児が冷や汗を流す。

 

 

「あ、あはは。ま、まあまあ。悪い人じゃないから大丈夫よ。受け取ってもらえる?」

 

 

「ありがとうございます。二人とも、制服だって」(カティア)

 

「わあ、ありがとうございます」(メルア)

 

「わぁい!」(テニア)

 制服の入った袋を受け取り、三人は喜んだ。

 

 

「そうだ統夜、着て見せてあげよっか!?」

 

 

「ええっ!? べ、別にいいよ!」

 

「またまたー。このこのー!」

 

 自分の提案に驚く統夜に、気をよくしてわき腹をつつくテニア。

 

 

「わたし達の制服姿、気にならないんですか?」

 

 

「そ、そういうことじゃなくて! そ、そうだみんな、新聞見たか!?」

 

 

「統夜、その話題そらしちょっと強引過ぎるぜ」

 

「うんうん」

 

 甲児とボスがやれやれとうなずいた。

 

 

「いいから、これを見ろ!」

 

 今日の朝刊を掴み、場に広げた。

 

 その朝刊の見出しには、こうある。

 

 

『地球圏連絡会議、フューリー受け入れへ』

 

 

「『地球圏連絡会議は今月1日、フューリー自治議会との会談の結果、戦役後、難民に指定されていたフューリー324万人の、地球圏に受け入れることで合意した』……なるほど、うまくいっているようだな」

 

 宗介が代表しその内容を読み上げた。

 

 

「ようやく、一歩進んだんだ」

 

「ええ。これは朗報ね」

 

 統夜の言葉に、カティアがうなずいた。

 

 

「また、会えるかな」

 

「会えるわよ、きっと」

 

 しんみりとしたテニアに、さやかが答えた。

 

 

「よ~し! わたしもがんばります!」

 メルアが拳を握り、勢いよく立ちあがった。

 

 

「がんばるって、なにをさ?」

 

「えっと、とりあえず、引越しの続き!」

 

 テニアの冷静なツッコミに、メルアは元気よく答えた。

 

 

「あらら……」(ボス)

 

「おう。それじゃさっさと片付けて、みんなでどっかに遊び行こうぜ!」(甲児)

 

「賛成!」(テニア)

 

 

 こうして、統夜の話題そらしは成功し、引越しは再開された。

 

 

 引越しは、順調に進む。

 

 

「……」

 

 そうして引越しを進める三人を、統夜はぼんやりと見ていた。

 

 

「なにをぼんやり考えてるのかな、統夜君?」

 

 それを、かなめが見つけ、ニコニコしながら声をかけてきた。

 

 

「ん? 別に、なんでもないよ」

 

「そう? 『こいつらは俺が守ってやろう』なーんて考えてなかった?」

 

 かなめが、にしし。と笑う。

 

 

「ま、まさか! 嫌だな、そんなこと考えるわけないだろ」

 

 統夜は否定する。

 だが、その焦りから明らかに図星をつかれたというところだった。

 

 

「いやー、あたりか。似たような奴一人知ってるからなんとなく言ったんだけど、あたりかー」

 

 

「ええっ!? そうなの統夜?」

 

「あら……」

 

「本当ですか統夜さん!?」

 

 

 運悪くというかなんというか、三人もかなめの言葉を耳にしていた。

 

 

「当たりじゃないって! 違うからな!」

 

 統夜必死の言い訳。

 だが、言い訳になっていなかった。

 

 

 ピンポーン。

 

 そこに丁度、来客を知らせるインターホンがなる。

 

 

「あ、お客さんだ! 俺出てくる!」

 

 

「あーっ、逃げた!」

 

「ちょっと統夜君、その態度はよくないわ。はっきりしなさい!」

 

「統夜さん、待ってー!」

 

 

 統夜、逃げる。

 

 しかしそれは更なる惨劇の幕開けだった。

 

 

 ピンポーン。

 もう一度、インターホンが鳴る、

 

 

「はーい、今出まーす!」

 

 統夜が扉を開けた。

 こうなれば、お客様の前でさっきの件を追求するわけにはいかない。

 

 

 統夜の勝ちであるかのように見えた。

 

 

「あら、トウヤ。今日はこちらにいらしたのですね」

 

「へ?」

 

 そこにいたのは、後ろに二件分の引越し蕎麦を持ったアル=ヴァンを携えたシャナ=ミアだった。

 

 

「シャナ=ミア!?」(統夜)

 

「シャナ=ミアさん!?」(カティア)

「シャナ!?」(テニア)

「シャナ=ミアさん!?」(メルア)

 

「なになに!? なんで元皇女様が!?」

 声を聞き、甲児達もどたどたやってきた。

 

 

「はい。フューリー受け入れが決まったのは知っていますね?」

 

 シャナ=ミアが、笑顔で答える。

 

 

「え、ええ。さっき新聞で」

 

「皇族でもなくなった私は、地球で言えば正式な大人ではないそうです。地球ではこの年齢だとまだ勉学に励む年だとか」

 

「ま、まあ、確かに」

 

 

「ですから、受け入れの一環として地球のことを学びに参りました!」

 

「昨日の今日で!?」

 

 あまりに堂々とした発言に、なにがおかしいとかツッコム余裕もなかった。

 とにかくわかるのは、この隣にシャナ=ミアが引っ越してきたということだけである。

 

 

「そ、それはわかったけど、どうしてここに?」

 地球と言っても、留学先はもっといろいろある。オーブとか、外宇宙開発機構のある北米とか。

 

 

「そうでもない。この東アジア。特に日本という土地は地球の中でも極めて特殊な場所だ。これだけ狭い地域の中に、光子力研究所、南原コネクション、ビックファルコンにラストガーディアン。そしてネルガル重工と我々にない技術を持った特別な施設が数多くある。共存のため技術協力を進めるため、彼等と面識のあるシャナ=ミア様がここに来るというのは間違ってはおるまい」

 という建前。

 

「……なんか言葉の後に変な注釈が入った気がする」

「気のせいだ。統夜」

 

 しかし、フューリーに議会が生まれ、地球と共存するのであれば、確かに未成年の指導者というのは座りが悪いだろう。

 元皇女としての役割を果たすならば、フューリーの象徴として地球へ留学し、新たな共存の証として存在した方がどちらにしても都合がいいのかもしれない。

 

 という建前だ!

 

 それはともかく。

 

 

「はい。そういうわけですので、よろしくお願いいたしますね、トウヤ」

「あ、ああ」

 

 戸惑いながらも、伸ばされたシャナ=ミアの手をとった。

 

 握手握手。

 

 

 じーっ。

 

 

 みんなの視線が統夜に突き刺さる。

 

 

「統夜君?」

「統夜ー、どういうことさ!」

「答えてください!」

 

「俺に聞かれても知るわけないだろ!」

 

 

「とりあえず統夜。一発ぶん殴らせろ」

「なんでだよ!」

 

「お前ばかり羨ましいんだわさ!」

 

「だからなんでだ!!」

 

 

 わいわいがやがやと騒ぎが広がる中、シャナ=ミアは楽しそうに笑っていた。

 その笑いは、他の者達にも広がってゆく。

 

 

 どうやら、まだしばらくは統夜の波乱の人生は続くようだ。

 

 

 

 めでたしめでたし。

 

 

 

 おしまい。

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