──統夜──
火星の生存者を探しにやってきた俺達は、百余名あまりの生存者を救出することに成功した。
でも、その過程で木星トカゲの猛攻からシェルターの盾となったナデシコは大気圏離脱も出来ないほどのダメージをエンジンに受けてしまった。
せっかく生存者を救出できたというのに、このままでは地球に帰れない。
俺達は修理のためのパーツがある可能性のある火星のネルガル工場を目指すこととなった。
そうして方針が決まり、進路をそちらにむけた俺達に、更なる困難が襲い掛かる。
火星の大気圏外から地上めがけて降下してくる機動兵器群。
エイジの使うレイズナーと同じSPTと呼ばれる人型兵器がナデシコにむけ降下してきたのだ!
それは、グラドス人の駆る有人機。
しかもその先頭にいたのは、エイジの先輩だというゲイルという軍人だった。
エイジ、お前、そんな親しい人と戦わなければならないのかよ。
俺も、他のみんなもその事実に驚きを隠せない。
だがエイジは、目の前に現われたゲイルを説得しようとした。
地球人もグラドス人も争う必要はない。兵を引いて欲しいと。
だが、それは聞き入れてもらえなかった。
グラドス軍の猛攻がはじまる。
俺達はナデシコを守り、なんとかゲイルを撃退し、さらに現われたゴステロという男も追い払った。
ついに姿を見せたグラドス軍に戦慄と脅威を覚えながら、俺達はナデシコのパーツがあるだろう北極のネルガル研究所を目指す。
その道中、北極も近づいた氷の層のある場所で、かつての戦いでチューリップに飲みこまれて消えたクロッカスという護衛艦を発見した。
どうしてそんなものが火星にあるのかと思ったら、あの医者。イネス・フレサンジュ(ナデシコ)が説明を買って出た。
この人、何故なにナデシコもノリノリだったし、ひょっとして説明するのが好きなのか?
イネスさんの説明によれば、チューリップは一種のワームホール、ゲートであると考えられるのだという。
無尽蔵にバッタやカトンボを吐き出すのも、そうして別の場所とそこを繋いでいるからだ。
ゆえに、地球で飲みこまれた艦がこの火星に出てきていても不思議はないということだった。
フクベ提督発案の元、それを調査することになった。
ブルーアースを使ってそこにとりつき、中を調べるとその艦は氷づけとなり、まるで長い時間そこで放置されていたかのようだった。
俺達がそれについて疑問に思っていると、再びあのSPT部隊の襲撃を受ける。
迎撃の準備をするため、調査を一度中断し、ナデシコに戻って来る調査隊。
しかし、フクベ提督だけは一人クロッカスに残り、その艦を起動させようとした。
この艦が動けば、戦力の足しになるとの理由からだった。
再び、俺達の前にあのゲイル先輩が現われた。
もう一度エイジはなんとか地球との戦いをとめたいと訴え、彼を説得するが、その言葉に耳を貸してもらえることはなかった……
エイジがあれだけ必死に言っているというのに……
でも、むこうからすればエイジの方が裏切り者だ。
だからといって、火星の人達を皆殺しにする奴等に従えるわけもない!
迫るグラドス軍。
俺達は仕方なく、戦う以外になかった。
もう一度、現われたグラドス軍を撃退することに成功した。
最後にゲイルが残っていたけど、彼ももう戦えないだろう。
このまま撤退してくれるのならそれでいい。
そんな甘いことを俺は考えていた。
でも、そこにまたゴステロが現われた。
あいつはボロボロになったゲイルの機体を攻撃し、これを機にあの人を始末しようとしたんだ!
俺達よりも進んだ文明を持つなんて言って、やってることは外道以下じゃないか!
エイジが叫ぶ。
ゲイルを助けたいと。
俺達の誰も反対するものはいなかった。
いや、一人くらいはいたかもしれない。
でも、ここであの人を見捨てることなんて俺達には出来ない。
そんなことより、味方さえ殺そうとするその非道が許せない。
俺達は一致団結し、気絶して地面に倒れたゲイルを守り、ゴステロを逆に叩き返した!
誰がお前なんかに、この人を殺させるか!
意識を取り戻し、自分が無事だと知ったゲイルは、俺達に降伏勧告をしてくれた。
10分の猶予。
それが過ぎれば、再びグラドス軍の一斉攻撃がはじまるのだと言う。
降伏。
命が助かる唯一の手段。
でも、その選択肢はありえなかった。
確かにあのゲイル先輩個人は俺達の降伏を認めてくれるだろうが、その上の存在は俺達地球人を生かしておく理由がない。
その理由があるとすれば、火星の人達は皆殺しの憂き目になどあっていないのだから……
絶体絶命かと思われた時、後方で置き去りになっていたクロッカスが動き出した。
あ、そういえばフクベ提督が残っていたんだっけ。
なんて思い出したのもつかの間……
「艦長、ナデシコをそこのチューリップへ突入させたまえ」
なんとフクベ提督がクロッカスを動かし、ナデシコを攻撃しながらそんなことをのたまわったのだ。
言いたいことはなんとなくわかった。
チューリップは一種のワープゲート。ならば、そこに入れば別の場所へ出られるということ。
総攻撃によって全滅するより、そこに入った方がまだ生存の可能性はある。
ミスマル艦長が決断した。
グラドスの攻撃がはじまる今、選択肢はもうそれしか残されていなかった。
俺達は、生残るため、チューリップの中へと突撃する!
グラドスの一斉攻撃がはじまった。
チューリップに飛びこんだのはいいが、グラドスの攻撃はとまらない。
入り口さえ閉まればいいらしいのだが、そのみじかな時間がとてつもなく長く感じる。
クロッカスがナデシコの盾とりチューリップの前に陣取った。
やはりあの人は、俺達を逃がすために砲撃してきたのだ。
あと一歩。というところで戦艦クロッカスは沈み、その攻撃がナデシコに届こうとする。
皆が祈る。
だが、その祈りは……
「フッ、まったく世話がやける。統夜、お前ばかりにカッコいいマネはさせないぜ!」
突然、ガイさんの声が響いた。
あの人はそうカッコつけ、重武装のエステバリスに乗ってナデシコの後方へ飛び出したのだ。
その瞬間、あの人がかつて口にした言葉を思い出した。
『正義をつらぬく男には、ふさわしい生きざまと死にざまってもんがあるのさ!』
俺は嫌な予感がし、思わず手を伸ばした。
待ってくれ。俺はそんなつもりで、シェルターの人達を助けようとしたわけじゃないんだ!
だが、その手が艦の外にいるガイに届くわけがない。
あの人は重武装タイプのフレームを敵艦にぶつけ自爆させ、その隙にナデシコは離脱させる作戦を考えていた。
それは成功し、チューリップの口は閉まるのだが、肝心のガイさんはナデシコに帰還する術がなく、そのまま外へ取り残されてしまう……
「ガイさーん!」
「ガイー!」
俺と、アキトさんの声と共に、ナデシコは光に飲まれた……
──地球圏──
気づけば、ナデシコは地球近海の宙域を漂っていた。
地球圏に戻ってきた。生き延びたと喜ぶ彼等に、更なる試練が襲い掛かる。
警報が鳴る。
近隣で連合軍の部隊が何者かと戦闘している音だった。
その相手は、木星トカゲでもザフトでもない、まったく異質な正体不明の生命体。
その生命体は、連合軍を全滅させたのち、目標をナデシコに変え襲いかかってきた。
火星でのダメージが残るナデシコはそれを振り切れない。
正体もわからず、彼等はそれと相対することとなる。
出撃する統夜達。
しかしアキトはガイの死によって戦いによる死への恐怖が甦り、エステバリスをまともに動かせないまま謎の生命体(ラダム獣)の方へと流されてしまう。
そこに現われ、アキトを救ったのはアカツキ・ナガレ(ナデシコ)というネルガルから来た男だった。
不調のアキトをナデシコに運び、彼は戦線に加わる。
ついでに彼は、今彼等を襲うのはナデシコが火星に向かっている間にあらわれたエイリアンだと説明する。
その戦闘の最中、謎の人型パワードスーツのようなもの(テッカマンブレード)が乱入してきた。
エイリアンのみを狙うそれと共に、それの撃退に成功するが、その小型の人型は最終的にエイリアンに撃墜され、ナデシコが回収することとなる。
回収し、格納庫へ運ぶとそれは突然人間に変化した。
気絶している彼を、困惑しながらもメディカルルームに運ぶのだった。
謎の魔人騒ぎがひと段落すると、アカツキによって地球圏の現状を知らされる。
なんと今は、ナデシコが火星で消えてから約8ヶ月たっていた。
つまり、今はナデシコが月を出てから9ヶ月たっている計算となる。
それを聞いた甲児達は驚きを隠せなかった。
イネスの説明によれば、チューリップが稼動する時、周囲に光子、ボース粒子など“ボソン”の増大が観測される。
仮にコレをボソンジャンプと呼ぶとすると、そのボソンジャンプとは、ナデシコがチューリップで地球まで飛んだことを指す。
そのさい、ボソンジャンプをした物体が瞬間移動をしているとは限らない。
最近消えたはずのクロッカスが凍るほどの昔から火星にあったように、ナデシコもまた、8ヵ月後の地球圏へ時間移動してきた。ということだった。
ネルガルにも連絡がつき、改めて確認したところやはり彼等の時間より8ヶ月たっていたことが確認される。
さらにネルガルを通じて世界中にグラドスの存在が伝えられた。
しかし戦争状態の今、地球が一丸となってグラドスに立ち向かうというのは難しいと言わざるをえないようだった。
さらに先ほどナデシコを襲ったエイリアンは、地球に降り立ったあとまるで植物のように根を張り、森を造っていた。
今は直接害はないようだが、人の住む地域を脅かしはじめているのだという。
このような状況のため、現在ネルガルは方針転換をしており、連合と共同戦線をとることになっていた。
過去のいきさつは忘れ、ナデシコも連合軍へ編入されることとなったのだ……
「火星への任務も終わりますので、改めて契約の更新ということになります。もちろん、降りる選択をしても誰も責めませんよ」
プロスペクターが補足する。
「ちょっと待ってくださいよ。オレ達はどうなるんです?」
「私達はあくまで協力者ってあつかいでしょう?」
契約という点で、ナデシコとは別の甲児とさやかが口を挟んだ。
これは、豹馬達コン・バトラーチームや外宇宙開発機構の面々もそうだ。
「その通りです。初期の予定も終わりましたから、皆さんはそれぞれの所属する場所へ帰っていただいて結構です。お疲れ様でした」
「お疲れ様って、ここで放り出されても困るぜ」
豹馬がおいおいと眉を下げる。
「もちろんそんなことはいたしませんよ。我々はひとまず中立国オーブの衛星都市コロニー、『ヘリオポリス』へ入港してナデシコの修理を行い、その後地上へ降下する予定です。東アジアへ向かいますので、皆さんはそれまで乗艦が許可されます」
「了解了解。そいつは楽でいいや」
プロスペクターの返答を聞き、豹馬もホクホクと答えに納得した。
「ってことだ。統夜、オレ達は地上まで一緒に行ってから研究所に戻るつもりだが、お前達はどうするんだ?」
「その前に、私達はどういう立ち位置になっているの?」
「弓教授からの紹介ですからね。光子力研究所からの協力者ということになっておりますよ」
カティアの問いかけに、プロスペクターが答えを返した。
「残るとなれば、今度はネルガルのスタッフというあつかいになります。ですから、仮に軍の指揮下に入ることになったとしても、早々好きにはさせません」
それは少なくとも軍に突き出すようなマネはしないということだった。
「てことは、俺達と一緒に光子力研究所へ帰っても問題ないわけだな。あれからもう九ヶ月もたってるんだ。軍もあの時の機体なんて探してる余裕もないだろ」
「そうね。戦争もはじまってしまったから、そんな余裕あるわけないわ。それにお父さまも戻ってきた時のために色々手を回してくれているでしょうし」
甲児の推測に、さやかもうなずいた。
「他の問題も弓教授に頼めばなんとかしてくれるだろうし、俺達と一緒にDr.ヘルの野望をぶっ潰そうぜ!」
甲児が統夜にむけ、ぐっと拳を握った。
「そういうことならウチに来てくれてもいいぜ。お前達なら大歓迎だ」
光子力研究所に勧誘するのを見て、コン・バトラーチームの豹馬も統夜達を勧誘する。
「ネルガル側としては引き続き力を貸してくれることが望ましいですねぇ」
プロスペクターもすかさず残留を提示する。
彼の場合人情というだけではない。
彼等の機体を制御するサイトロン・システム。
なにも知らない素人に操作方法を一瞬で教え、戦闘を可能にさせるそれ。
それが解析できれば、エステバリスに使われるIFS(イメージフィードバックシステム)が更なる進化を望めるのだから、ネルガルとしても放っておくわけがないだろう。
「え、いや……」
三方から詰め寄られた統夜は、どこか困ったように後ろにさがった。
「おっと、突然過ぎて混乱させてしまいましたかね。まだ時間はありますから、ゆっくり考えてみてください」
プロスペクターが性急過ぎたと気づき、この勧誘合戦を終わらせた。
「他の皆様も、今後に関わることですから、じっくりとお考えください」
こうして、一度解散となり、ナデシコはヘリオポリスに向けて出発する。
──ナデシコ/展望室──
ヘリオポリスに向け舵を切ったナデシコ。
戦争状態とはいえ、過酷な火星から地球圏に戻り、地球に帰れるとわかったナデシコの中は、大きくわき、明るい空気が流れていた。
そんな中、統夜は一人、ナデシコの展望デッキから外を見ていた。
外は小さな星の輝きしか見えない、漆黒の闇。
まれに見える小さな輝きを、統夜はただ、ぼーっと見ている。
その瞳にうつるのは、その小さな輝きなのか、窓に映る自分の姿なのか……
「統夜?」
そこに、テニア達三人が顔を出した。
自分を呼ぶテニアの声に、統夜は振り返る。
「お前達か。どうしてここが?」
「アキトさんにここにいるって聞いてきたんです」
「そっか」
メルアの答えに、納得したようにうなずいた。
「アキトさんとなにか話しをしたの? さっきまであんなに動揺していたのに、なにかつき物が落ちたみたいだったわ」
アキトは先の戦闘で戦闘恐怖症が再発していた。
それについて心が沈み、皆に心配されていたが、カティア達がさっき会った時はやる気を取り戻していた。
統夜の居場所を知っていたことから、なにか話をしたのではないかとカティアは思ったのである。
「ああ、さっきガイさんのことを話していたんだ」
ガイの名前が出ると、彼女達三人の表情にも影が落ちた。
アキトの不調の原因。それはガイがその身を持ってナデシコを火星から逃がしたからだ。
「あの人とフクベ提督のおかげで今の私達があるものね」
「アキトさんに、あの人のことは忘れないって伝えたんだ」
先客は不調に悩むアキトだった。
誰もガイのことを気にかけず、地球に帰れることを喜ぶことに不満を感じていた。
そのアキトに、統夜は思いのたけをぶつけたのである。
「あの人のおかげで俺達は帰ってこれたと感謝を伝えると、アキトさんはなにかに気づいて、ガイさんのために戦うって言ってた」
「そう。だからどこかすっきりしたような顔をしていたのね」
納得がいき、カティア達はうなずいた。
アキトの悩みも少しだけ解消され、彼も戦う意味を見つけたようだ。
「それで、お前達はなにしにきたんだ?」
「あ、そうそう。これからどうするのか考えにきたんだよ!」
「わたし達だけじゃグランティードは動かせませんから」
「そうだな……」
「……?」
統夜の表情を見て、カティアはどこか違和感を覚えた。
「俺は、お前達が守れれば降りるも残るもどっちでもいいよ。俺はもう、覚悟を決めたんだ」
三人に向け、統夜は微笑みかけた。
「っ!」
だが、三人は統夜の肩が小さく震えているのを見逃さなかった。
震えている。
怯えている。
彼女達は、統夜に感じていた違和感がなにか、気づいた。
統夜も本当は怖いのだ。
彼もまた、アキトと同じくガイと提督の死を目の当たりにして、今度は自分かもしれないと気づいてしまった。
だが、統夜の中には天涯孤独となり追われる身となった三人を守らねば。という使命感が生まれていた。
その上自分を指名してカッコつけて死んでいったガイの言葉を聞き、この先ガイの代わりとして戦わねばならないと思ってしまったのだ。
自分のせいで、ガイが死んだと責任を感じているのだ……
「だから……」
「……違うわ統夜君」
言葉を続けようとした統夜の言葉を、カティアが遮る。
彼女は首を横に振り。
「もう、いいのよ。強がらなくて」
カティアは統夜の正面に立ち、うつむいたその顔を前に向けさせ、自分をしっかり見るようにしながら、優しく微笑んだ。
「っ!?」
「そうだよ。統夜。アタシ達のことでそんなに必死にならなくていいんだよ」
「そして、ガイさんのことも、すべて一人で抱えこまなくていいんですよ」
テニアとメルアが、統夜の手を優しく握った。
「あなたはずっと、一人ぼっちになった私達のことを気にかけてくれた。統夜君だって巻きこまれたはずなのに、ずっと私達を支えてくれた」
「ガイさんのことは悲しいことです。でも、それを重荷に感じては、あの人も報われません。ガイさんは、統夜さんに戦いを背負わせようとしたんじゃありませんよ」
「アタシ達は地球に帰ってきた。統夜はもう、無理に戦わなくていいんだよ……」
「でも……」
弓教授の助力で逃げる必要がなくなったとしても、彼女達には命の恩人と交わした最後の約束がある。
なにもかもを失った彼女達にとって残された、唯一といってもいい絆。
あの機体を奪われるなという。破壊されるなという約束。
統夜が戦わなくなり、降りてしまえばその約束は果たせなくなる。
「信頼できる人に預ければいいの。それなら奪われるわけでも壊されるわけでもないわ。だから統夜君。もう、無理しなくていいの……」
「今度はわたし達があなたを守ります。だから、もう我慢しなくていいんです! 自分のことを考えてください!」
「アタシ達を気にして、守ってくれて。統夜だっていきなり理不尽に巻きこまれたのに、それでもがんばって、無理して。そんなのしなくていいんだよ!」
「俺は、俺は……!」
統夜の双眸から、ポロポロと涙がこぼれた。
「本当は、戦いたくなんてなかった……! ずっとずっと、あんなの放り出して逃げ出したかった! でも、お前達は家族も失って、行く場所もなくて。俺まで嫌だなんて言い出したら……!」
統夜の口から弱音が吐き出される。
今までずっと我慢していたものが、ついにあふれ出した……!
「俺とは関係ないと何度も言いたかった。でも、そんなこと口に出す勇気は、俺になかったんだ……!」
統夜は、臆病だった。
臆病だからこそ、逆に嫌だとは言い出せなかったのだ……!
泣き出した統夜を、三人は優しく抱きしめる。
「ありがとう、統夜。アタシ達のために、ずっと頑張ってくれて」
「でも、これからはもう、そんな我慢をしなくていいんですよ……」
「だから、降りましょう。元の生活に、胸を張って、戻りましょう……」
そこには、統夜の嗚咽だけが響いた……
……
…………
……
「……情けないところ見せちゃったな」
平静を取り戻した統夜が、ぽりぽりと頬をかいた。
「いいえ。そんなことありませんよ。むしろこれで、前より距離が縮まった気がします」
メルアが嬉しそうに手を叩いた。
自分達に弱さを見せてくれたことで、ヒーローだった統夜が、そうではないただの男の子だとわかったからだ。
「そうだよ。かわいかったよ」
「かわっ!?」
テニアの発言に、統夜は思わず赤面した。
「テニア!」
「てへへー」
「ったく。ははっ」
カティアに叱られたテニアを見て、統夜は笑った。
泣いてすっきりして、そう言われても平気でいられる余裕が出たのだ。
「ふふっ」
「うふふ」
統夜の笑顔を見て、彼女達も笑い出す。
展望室に、笑いがこだました。
統夜の顔に、暗いものはもうない。
この時、統夜と彼女達三人の関係は、はじめて対等になったと言っていいだろう。
守り、守られる関係に……
こうして統夜達は、光子力研究所に戻り、あれを弓教授に預け、降りることを決めた。
機体の研究に協力はするが、もう戦わないと決めたのだ。
そもそも彼等は元々使命もないただの学生。
これ以上命をかけて戦えというのも酷な話だった……
……しかし、彼等の宿命はそれを許さない。
そう簡単に、この戦いから降りることは許されないと、彼等は気づくこととなる。
しかしそれは、もう少し先の話……
第4話終わり