──テニア──
ナデシコと二手に別れ、単独でオーブにむかうことになったアークエンジェル。
その戦力補強として、アタシ達もナデシコからアークエンジェルに乗りこむことになった。
ナデシコからアークエンジェルに移り、別行動になるまであと一日。
それまでにアタシは、しなければならないことがあった。
それは、別れるナデシコにおいて、お腹一杯ご飯を堪能すること!
しばらく。下手するともうナデシコのご飯が食べられなくなっちゃうんだから、当然だよね!
「えへへー。お代わりのライス、特盛りにしてもらっちゃった」
どんぶりに山一杯になったライスを持って、席に戻る。
最後なんだから、今までにないくらい食べるよー。
ベルトを外してリミッター解除ってヤツだね!
「よかったね、テニアちゃん」
上機嫌なアタシを見て、メルアも嬉しそうに微笑んだ。
メルアも、アークエンジェルじゃ食べられないっていうデザートをたくさん注文している。
「丼にそれだけって、もしかして、一杯目も?」
丁度ご飯にやってきたさやか(マジンカイザー)が驚いたように聞いた。
「うん! もうちょっとしたらナデシコのご飯食べられなくなるでしょ? だから、今のうちに堪能しておくんだ!」
「お前、よくそんなに食べられるな」
統夜が呆れたように口を開いた。
「あ~、統夜ってそういうこと言うんだ」
「統夜さん、失礼です。女の子がどれくらい食べるかなんて、気づいても気づかないふりをするものなんです」
メルアも即座に援護射撃をしてくれた。
「そ、そうなのか?」
「ええ。そうよ統夜君。そんなことを平気で聞くと、人でなしの烙印押されちゃうわよ?」
さらにさやかも援護をくれた。
そうだよ。人でなしだよ統夜。
これで3対1。統夜に勝ち目はないよ!
「人でなしとまで言われるのか。わかった。次は気をつけるよ。ただ、悪い意味で言ったつもりはないんだよ」
「悪い意味じゃなけりゃなんだってのさ。アタシの体重をネタにしてくだらない冗談言ったらただじゃ済まないからね!」
「言わないって。そうじゃなく、テニアもさ、出会ったばかりの頃は今みたいに食べてなかっただろ?」
「へっ?」
「出会ったばかりの頃は、三人とも家族を失った悲しみで沈んでたし、メルアが部屋から出て来れないこともあった。テニアも、表面上明るく振舞っていたけど、食欲がない時もあった。だから、たくさん食べられるようになって、よかったな。と思ってさ」
言われて、驚いた。
統夜、気づいてたんだ。
表面上は明るく振舞ってたけど、メルアやカティアに心配かけないように、不安を空元気で押し殺してたの……
「食欲がないよりたくさん食べる方がやっぱりいいもんな。人間ていうか、生き物として基本のことだし」
「う、うん……」
い、いけない。
今絶対統夜を意識して顔が真っ赤だ。
まさかそんなとこまで見られていたなんて!
さやかとか統夜、いいこと言った! みたいな顔してるし!
肝心の統夜は別に凄いこと言ったの気づいてないみたいだし!
まずい。このままじゃアタシのいろんななにかが暴落しちゃう。
アタシはいろんなモノを誤魔化すため、即座に行動に移った。
「統夜のおかずもーらい!」
「あ、こら!」
「テニア、それはやりすぎよ!」
「カティアが怒ったー」
──それは、明らかな照れ隠し。
でも、それについて誰もなにかを言うことはなかった。
それは、ナデシコに乗り込んだ頃の彼女達を知るものからすると、見違えるように元気になったと思える一幕だからだ……
──砂漠の虎──
ナデシコと別れたアークエンジェルは、大暴れして敵をひきつけるナデシコの影に隠れるようにしてアフリカを横断し紅海を目指す。
大半のザフト軍は派手にチューリップを破壊したナデシコに目をひきつけられ、アークエンジェルには気づかず、統夜達は順調に航海を進めているように見えた。
しかし、砂漠の虎と異名を持つアンドリュー・バルトフェルドはナデシコの行動をアークエンジェルを逃がすための陽動だと見抜き、ナデシコを欠いて戦力が低下したアークエンジェルへ攻撃を仕掛けてくる。
バルトフェルド隊の襲撃をなんとか退けることに成功するアークエンジェルであったが、最初に放たれた不意打ちの一撃はアークエンジェルの動力部を傷つけており、修理できるまで身動きがとれなくなってしまった……
──テニア──
元レジスタンスのカガリから、レジスタンスからミスリルの獣戦機隊まで武器の調達に利用してた商人がいると聞き、そこで部品を調達することになった。
一緒に、アタシ達に必要な日用品も買出しすることにする。
ヘリオポリスの崩壊で突然放り出されたフレイ達は軍の支給品しか持ってない状態だからね。
部品調達の人達とは街の入り口で別れ、必要な日用品を買って回る。
色々買って、その途中休憩でドネルケバブを食べていると、陽気なおじさんとカガリとでヨーグルトソースかチリソースか、どっちをかけるのが美味しいかで喧嘩がはじまったんだ。
正直アタシはオススメされたらどっちも食べるからどうでも良かったんだけど、白熱した二人はもみあって、ソースをぶしゃっと飛ばしちゃったんだからたまらない。
アタシとシモーヌ。おまけでカガリがソースまみれになっちゃったんだ。
でも、驚かされたのは、それだけじゃなかった。
それ以上に驚かされたのは、その陽気なおじさんが砂漠の虎だったこと。
気のいいおじさんは、ザフトで、アタシ達の敵だったんだ……
砂漠の虎。アンドリュー・バルトフェルドの屋敷でドレスを着せられたり、歓迎されたけど、喜んでいられる状況でもなく、無事帰してもらえても複雑な気持ちだった。
ムウさんからは敵のことなんて忘れちまえって言われたけど、そう簡単には忘れられないよ……
アタシ達はこれから、あの人と、顔を知ってる敵と戦わなくちゃいけない。
……そっか。キラやエイジは、こんな気持ちをずっとずっと抱えながら、ザフトとグラドスと戦っているんだ。
しかも、一度顔をあわせただけじゃない、よく知る人間が相手なんだから、もっと辛いんだろう。
あの二人は、本当に凄いな……
動力部の修理も無事終わり、アークエンジェルは再びアフリカ横断を再開した。
どうかまた砂漠の虎には会いませんように。と祈りながら進んでいると、ラダム樹に飲みこまれ、人が住めなくなったという街から救難信号が出ているのをキャッチしたんだ。
罠かもしれないし、先を急ぐアークエンジェルはもちろん関わりたくないみたいだったけど、命からがらそこに避難している人がいる可能性もあるし、放っておくわけにもいかないということで、アタシ達とDボウイの外宇宙開発機構チームとレイズナーチームで探索兼救出にむかったんだ。
ホントに救助を待つ人がいるなら、助けなくちゃいけないからね!
街に着いたら、Dボウイが街には一人で行くと言い出して譲らない。
なにか感じ取ったのかもしれないけど、アタシ達にはまったくさっぱりわからなかった。
結局Dボウイに押し切られて、通信だけつないで入ってもらうことにしたんだ。
そうしたらそれは、Dボウイことテッカマンブレードをおびき寄せるためのテッカマンダガーの罠で、Dボウイはそれに気づいて、アタシ達を巻きこまないようにあえて一人で飛びこんだんだよ。
でも、その罠はDボウイをテッカマンに変身(テックセットって言うんだって)することを封じる罠だったんだ。
テッカマンブレードに変身できないDボウイを、あのダガーって奴が追い詰める。
それを察したアタシ達は、どうにかしてDボウイを助けようと、街の外に設置してあったナントカって装置(スペクトル発生装置)を壊したんだ。
それで、Dボウイも見事テッカマンブレードに変身できて、街の外に出てきたテッカマンダガーを一緒に撃退したんだ。
もう、無茶して心配したんだからね!
でも、そのテッカマンダガーとの戦闘はザフト軍に察知されていたんだ。
ラダムを撃退した直後、今度はあのヘリオポリスを襲撃したあのガンダム達(3機地上に降りてきてたんだ)とバルトフェルドの挟み撃ちを受けちゃったんだ。
挟み撃ちだから、逃げるに逃げられない。
仕方なしに戦うんだけど、アタシ達にザフトの接近を知らせにきてくれたアークエンジェルはデュエルガンダムに狙われて墜とされそうになるし(キラがなんだか不思議な雰囲気になって助けた)、砂漠の虎は地上戦艦がやられても単機で戦いを挑んできた。
あの人は、結局負けが確定しても引いてはくれなくて、モビルスーツの爆発の中に消えていったんだ……
どちらかを全滅させるまで戦うなんて間違っているに決まっているじゃないか!
アタシ達にとって、ナチュラルもコーディネイターも同じ人間なのに、どうしてこうまで争わなくちゃいけないんだよ……
地球が狙われていて、こんなこと、してる場合じゃないっていうのに。
戦闘後、改めて食べたドネルケバブに、今度はヨーグルトソースをかけて食べた。
悔しいけど、美味しかった……
同じものを食べて、同じく美味しいって感じられるのに、なんでなのかな……
統夜が、アタシの頭を撫でて、そばにいてくれた。
カティアもメルアも、そばにいてくれた。
アタシはそのまま、涙を浮かべながらそのドネルケバブを食べたんだ……
──燃える砂塵の中で──
激闘の末、テッカマンダガーを退けたブレード。
しかし、無茶をしすぎた結果か、Dボウイのテッカマンへの変身クリスタルが砕けてしまった。
クリスタルを失ったDボウイは、テッカマンに変身するすべを失ってしまうこととなる。
「俺はもう、ラダムとは戦えない……」
と失意の底に沈むDボウイ。
そのDボウイを見かねた外宇宙開発機構の面々は、彼を連れて北米にある機構の本部を目指しブルーアース号で先行するのだった。
──深海を発して──
無事インド洋に抜けたアークエンジェルは友軍である海上戦艦であるノヴィス・ノヴァ(ブレンパワード)と合流し、補給を受けることになった。
その際、海底7000メートルに存在するオルファン(ブレンパワード)から伊佐未勇という少年がブレンパワードと共に逃亡してくるのに出くわす。
海上に現われたグランチャー部隊を彼と共に撃退し、アークエンジェルはさらにオーブに向かい前進する。
ちなみに伊佐未勇は戦闘後どこかへ行ってしまい今は仲間にならなかった。
──蒼き流星となって──
順調に航海を進め、オーブ近海までやってきたアークエンジェル。
その前に、木星トカゲを伴ったグラドス軍のSPTが姿を現した。
ついにグラドスが正体を現し、その地球侵攻が本格的に開始されたのだ!
アークエンジェルの前に降り立ったSPTの中には、エイジの先輩、ゲイルの姿もあった……
──テニア──
火星で見たあの無人機。そして、あのSPT! ついにグラドス軍が本格的に地球へやってきたんだ!
しかも、一番前にいるのは火星でも見たことのあるあの機体。グライムカイザル。
また、エイジの先輩、ゲイルって人がアタシ達の前に立ちふさがったんだ。
顔見知りと戦うのだって嫌だったというのに、それがお兄さんになるかもしれない人だったなんて、もっと辛いはずだ。
それでもエイジは下がらず、グラドスと地球の争いをやめさせるため訴え続ける。
地球のために、必死に戦ってくれる。
確かにゲイルさんが言ったとおり、ラダムが来てグラドスが攻めてきているのに地球人同士で争っているのは愚かだと思うよ。
でも、それだからって火星の人を皆殺しにしていい理由にはならないし、暴力で侵略していいわけがない。
だからアタシは、エイジを応援するよ。
統夜だって、カティアだってメルアだって力を貸してくれる。
だから……
きっと……!
……っ!
……エイジが、ゲイルさんを撃墜した。
あの人は強すぎて、手加減なんて出来なかった……
エイジのレイズナーを追い詰めたグライムカイザルは、レイズナーが突然蒼い光に包まれた(V-MAX発動)かと思った途端、その反撃で大破し、海の底へ沈んでいってしまった。
撃墜したエイジでさえ、なにが起きたのかわかっていないみたいだった。
動けなくなってしまったエイジをアークエンジェルが収容する。
当然だよ。今は戦わなくていい。
あとは、アタシ達に任せてくれればいいから!
グラドス軍のあと、またあのガンダム達が水中用モビルスーツと一緒に来たけど、全部撃退してやった。
あいつ等もうしつこい!
こんなところでキラまで悩ませるなぁ!(イージスガンダムに乗った友達ってのはいなかったみたいだけど)
格納庫に戻っても、エイジはレイズナーのコックピットにこもったままだった。
アタシ達は、エイジにかける言葉が見つからない。
「ねえ統夜、アタシ達もなんとかしてあげられないかな?」
「今は、なにも出来ないと思う。だから、いつ出てきてもいいように、暖かいものを用意しておいてあげればいいんじゃないか?」
「それなら、スープを用意しておこうよ」
一緒に心配していたアンナが言い出した。
それはいい案だと思う。
「アタシも手伝うよ!」
「そんなにたくさんの人で作っても仕方ないかもしれないぞ。量多くなるだろうし」
「その時はアタシが食べてまた新しいの作るからいいの!」
こうしてエイジがコックピットから出てきた時、温かいスープをアンナが渡せたんだ!
アタシ達にはこれくらいのことしか出来ないけど、アタシ達はエイジの味方だからね!
──テニア──
なんとかオーブに入港できた。
最初オーブの国民であるヘリオポリスの住人乗せてるのに入っちゃダメなんて言われた時はどうなるかと思ったけど、なんとかなるものだね(ガンダム作ってたくせに今度はザフトからの圧力が怖かったらしい)
それにしても、カガリがお姫様だったなんてね。
「なんだ?」
「ううん。なんでもない」
じっと見てたら変な奴だって言われちゃった。
人は見かけによらないや。
オーブに入ってヘリオポリスの人や火星で助けたデビッド達をオーブで降ろす。
これで、ひとまず頼まれたお仕事は完了!
あとは日本に戻るだけなんだけど、なぜかもう少しオーブにいてアークエンジェルと共に行動していろって言われちゃった。
カティアいわく「ネルガル側になにか思惑があるみたい」ってことみたいだけど、アタシにはよくわかんないや。
むしろ早く戻ってナデシコのご飯が食べたいよ!
アキトの火星丼とチキンライスが恋しいよー!
オーブで降りる人。そしてアークエンジェルに残る人、様々だ。
その中でもヘリオポリスの人達はほとんどここで降りるだろう。
みんな、元々はただの学生だったんだから。
アタシ達も似たような境遇ではあるし、地球圏に戻ってきたばかりの頃は降りることも考えていたけど、今はもう違う。
地球の現状を見て、あいつらと戦って。
アタシ達は、統夜と一緒にグランティードで戦う力を持たない人達を守るって決めたから!
オーブでひと時の休息を得るのもつかの間。またラダムとグラドスが攻めてきた。
特にラダムはブレードを出せって。ここにはいないんだから無理だってのに、欠片も信用しなくて暴れるんだから迷惑だよ。
街を守るために出撃していたら、そこに降りていいはずの人達が続々と戻ってきた。
一緒に、オーブを守り、また戦うと言ってくれた。
みんな、本当にバカだよ。って言ったら、アタシ達に言われたくないって言われちゃった。
そりゃ確かに、みんなと同じような立場だけどさ!
ラダム獣とテッカマンダガーが街に迫る中、クリスタルの力をぺガスってロボットに移したDボウイと外宇宙開発機構のノアルさんとアキさんもやってきて、Dボウイは再びテッカマンブレードに変身したんだ。
変身したブレードのボルテッカがダガーをとらえ、執拗に狙ってきたダガーとの決着がついについたんだ。
アタシ達は改めてSPTに乗ったデビッドやロアン。ストライクガンダムに乗ることを決めたキラ達と力をあわせ、ラダムもグラドス軍も追い払い、見事オーブの街を守ることが出来たんだ!
戦いが終わり、補給も終わった後、アークエンジェルの次の任務地は司令部のアラスカじゃなく、ナデシコのいる日本だった。
なんでも、連合の戦力が弱い東アジアに強力なロボットを集めた遊撃隊を作るんだって。
それにはナデシコや、光子力研究所をふくめた名だたる研究所も力を貸すことになってて、アタシ達もネルガルの所属としてそれに加わるから、アークエンジェルと一緒に日本に来いだってさ。
だから、しばらくオーブにいてアークエンジェルと一緒にいろってことだったのか。
やっと、納得できた。
軍の管轄に入るってのはちょっと嫌だけど、またみんなと戦えるのは嬉しいな!
──こうしてアークエンジェルは、一路東アジア、日本を目指す。
それは、新たな任務。
彼等の新しい戦いのはじまりでもあった……
第6話 アークエンジェルに乗艦するルート 終わり