SKO41に入った鮮血帝だけど、なにか質問ある?   作:ごはんはまだですか?

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第10話 イエェェェーイ!

「ジャスティス!!」

 

 謎の口上を述べたジルクニフは決めポーズでしばし固まっていたが、こちらに気が付くとつまらなさそうに鼻を鳴らした。

 

「ふん、なんだ。たっち・みーだったか」

「なんだと言われましても、そちらこそなんなんですか?」

 

 出会い頭で、それなりに長い文句を勢いそのままに熱く叫ばれては、こんにちわ今日はスモッグも薄くいい天気ですね。といつものように挨拶して流すことなどできなかった。

 彼らがいるのは円卓の間だ。他のギルドメンバーの多分にもれず、初期ログイン場所として登録していた たっち・みー が寝るまでの空き時間にログインしたところ、辻切りに似た唐突さで静止なぞ許さぬと言った勢いで好青年という言葉がよく似あう声を嗄らしながら先ほどの口上を述べられたのだった。

 

 突然、叫ばれたこと事態も気になることは気になるが、戦隊ヒーローっぽいことが一番気になっていることだった。しっかりと逃さないようにチェックをしていたつもりでしたが、新しいヒーローでも出てきていたのだろうか。

 そわそわと期待する気持ちでたっち・みーは聞くが、返ってきたのは知りたい答えではなかった。

 

「罰ゲームだ」

「罰ゲーム」

 

 困った顔文字(アイコン)をジルクニフは浮かべると、自身の左手に目を落とす。そこにはリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンのほかにはなにもないのだが、まるで彼には別の“指輪”が見えているようであった。

 

降誕祭(こうたんさい)に演習を途中で抜けだした罰ゲームだ」

「ふ、降誕祭……クリスマスのことですか」

「ああ、クリ……その単語を口にするのも禁止されている」

 

 多少、煽った自覚はあるが、そこまで大ダメージを与えたつもりのない二人は禁止用語にそろって首をかしげるが、ユグドラシルの運営年数と同じだけの数の仮面を所持している者たちにとっては、ただの致命傷だった。

 その後、意気投合したアインズ・ウール・ゴウンと千年王国の間で仮面同盟という謎の組合が出来ていたり、たびたび(リア充抹殺)祭が開かれたり、情報(モテテク)交換が行われたりもしたのだが、彼らの誰も事の発端を語ろうとはしなかった。

 

閑話休題

 

 顎に手を当てて少しばかり思考を巡らせた たっち・みー は、考えてもよくわからなかったので、ひとまずそれは横に置いておいて、まずは目の前の出来ることから始めることにした。

 

「罰ゲームでしたら、私もすべきでしょうね。……どんな内容なのですか?」

「ギルメン全員に先ほどのセリフを言うだけだ。これがウルベルトに渡された紙だが、中身は多少変えてもよいそうだ」

 

 天敵の名前が出て思わず身構えたが、紙に書かれているのは偽悪主義が混じってはいるがこのギルドの所業を羅列しているだけであった。うまく韻も踏みゴロがよく、いいできばえだと思う。作成にはウルベルトだけではなく、ほかのメンバーも噛んでいるのだろうか。

 これならば、恥ずかしい思いはするが、楽しく罰ゲームを敢行できるだろう。そもそも罰ではなく“罰ゲーム”といっているのだから、後々までしこりが残るようなものが出るはずはなかった。

 紙の下にある名簿にはすでにいくつも線が引かれている。

 

「戦隊ものっぽいですし、どうせですから台詞を交互で言ってみません?」

「ただ二人で合唱するよりも、そちらの方が面白そうだな」

 

 電子ホワイトボードを呼びだすと、紙の中身をそちらに移し、文句の一行一行に名前を書いて担当を振り分けていく。

 白銀の鎧に赤いマント、金色の鬣に黒と赤のトーガ。色合的にはバランスが取れているし、並べばあとから参戦する系の追加ヒーローぽかった。それか後を任せて始めに離脱する先輩役か。客観的に己のアバターをみた たっち・みー は嬉しそうに数度頷くと、あとでスクリーンショットを撮ろうと心に決めた。

 

 

 何度目かの練習をしたのち、打ち合わせをしている最中に、帰還(アウト)をしめすサインが出てきた。

 ギルドのメンバーが現れるタイミングを測り、まずはジルクニフが大きく息を吸い込んでから口を開く。

 

「空前絶後のォォォォ!」

 

 続きたっち・みーが声を出すことになれた張りある叫びを、腹の底から響かせる。

 

「超絶怒涛の極悪ギルド!!」

 

 ログインした途端に、二人から謎の手厚い歓迎を受けたヘロヘロは戸惑い辺りに視線を彷徨わせるが、助けになりそうなものは見当たらなかった。まだ、るし★ふぁーがカメラを構えていればよかった。まだ、行っているのが茶釜とペロロンチーノの姉弟だったらよかった。そうしたら、なにやってるんですかと笑いながら答えられたのに。

 

「冷酷・残虐・悪辣非道!」

「全ての嘆きの生みの親!」

 

 口をはさむ隙を与えずに、彼らは真剣そのものにポーズを決める。

 

「そう我らこそはぁぁぁ!」

「アインズ・ウール・ゴウン」

 

 一度、溜めてから、指先をそろえた手をきびきびと動かし、片手は腰に、もう片手は高々と天を示す。鏡のように左右対称に伸びたふたつの手はしっかりとクロスしていた。

 

「「いえぇぇぇーい! ジャスティス!!」」

 

 最後のポーズを決めたジルクニフとたっち・みーの背後に爆発が見えた気がする。

 ヘロヘロはあんぐりと口を開けたまま、驚きに目を何度も瞬かせた。そうしてしばらく驚きに動きを固めていたが、何度瞬きしても変わらない現実に、これは疲れのあまり見た夢だと結論付けて、自分を納得させようと頷きながらログアウトしていった。

 

「そうだ、転職しよ」

 

 あんな激務続きの仕事なんてやめて、もっといい会社に羽ばたこう。幸い、かつての先輩が起業したところに誘われている。8時間勤務残業なし完全週休二日制の24時間年中無休のホワイト企業だっていうし、転職しよう。

 

 

 

 その後も順調に名簿の名前を消していった二人だったが、どこかその顔は晴れないでいた。

 まあ、これでも飲んで落ち付きなさい。とやまいこに貰った茶を飲みながら険しい表情で――アバターの表情は変わらないが、気配やオーラ的なものが険となっていた――ホワイトボードを睨みつける。ジルクニフが手でもてあそんでいたペンを置くと、たっち・みーは湯呑を机の上に置いた。

 

「あと3人、仲間が欲しいですね」

 

 戦隊ヒーローを名乗るのならば、ここはやはり5人組でありたかった。2人や3人、はたまた7人でもいいのだが、5人という鉄則をできれば守りたいところである。望むのならば色も揃えたい。銀と金というイレギュラーカラーよりも、赤や青や黄色にピンク、茶色白色紫、人それぞれ好みはあるけど、どれもみんなキレイだね。

 

「赤ですと武人建御雷さんだとか、ノリもいいし参加してくれそうだな」

「青の弐式さんもつられて来てくれそうですね」

 

 好き勝手に仲間のテーマカラーを割り振っては、わいわいと盛り上がるワールドチャンピオンとビーストマンの元に新たなギルメンがログインしてきた。タイミングがいいのか悪いのか。ギルメンと書いて“犠牲者”とも“生贄”とも読む人物は、何も知らずににこやかにあいさつをする。

 

「たっち・みーさんにジルクニフさん、こんにちは~」

 

「なるほど、黒もありだな」

「そうですね、かつて黒レンジャーがいたこともありますし」

 

 憧れの人と、仲の良い友人が揃っていることに思わずご機嫌になったモモンガの耳に不穏な台詞が聞こえてきた。ドキッ☆問題児だらけのDQNギルドで潤滑油となっているのは伊達じゃない。衝突のぶつかる挟間に立ち続けた危機管理能力が警告するまま、逃げようとするが、時すでに遅し。

 

 ぽんと、両肩に置かれた手は大きくあたたかいのに、安心ではなく不安しか感じさせなかった。

 

「逃がしませんよ^^」

 

 

 

 順調に仲間を増やし、いえぇぇぇーい! ジャスティス!!などと繰り返し叫ぶ彼らは知らない。本当はウルベルトがたっち・みーにだけはもっと恥ずかしい罰ゲームを用意していたことも、暇を持て余したギミック好きの錬金術師が密かに自らの管理権限でいじくれるNPCすべてに、空前絶後のォォォォという単語に反応して動きだす仕組みをしたことも、彼らは知らなかった。知るすべもなかった。

 

「そう我らこそはぁぁぁ!!アインズ・ウール・ゴウン!!」

 

 それを知ることになるのは、開き直ってやけくそに叫ぶオーバーロードただ一人だろう。

 

 

 

 

 

「「「「「いえぇぇぇーい! ジャスティス!!」」」」」

 

 だが、もしかしたら

 

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