SKO41に入った鮮血帝だけど、なにか質問ある? 作:ごはんはまだですか?
「第1回、円卓をコタツにするか否か会議!」
ドンドンぱふぱふー。高らかに るし★ふぁー が宣言すれば、用意されていた楽器が場を盛り上げるために鳴らされた。
ギルド:アインズ・ウール・ゴウンは何かを決める際には、どうしても集まれない場合を除き全員で話し合うことと制定されていた。この度もナザリックの改装について提案があると声をかけられて、ギルド一のトラブルメーカーの呼びかけに警戒しながら集まったのだった。
42人が座れるテーブルは広く大きく、仮想空間では可能だが、現実であれば対角線上の相手と会話をすることは難しいだろう。
議論がヒートアップして拳をぶつけても壊れないように強度を高めた机は、下手をしたらアルベドを差し置いてナザリック1の防御力を持っているかもしれない。何度も破壊される、そのたびに強化をしていった成れの果てだ。製作陣の意地があったのだろうが防御力UPや各種耐性の希少クリスタルを2桁も注ぎ込む必要があったかは疑問が残る。
万が一9階層にまで敵プレイヤーが攻めよせてきたら、この机を盾にすれば攻撃特化の神器級の武器が相手でも5分は持ちこたえるだろう。問題は大きすぎて扉から出せないぐらいか。
さて、改めてその卓に目を落としてみよう。
黒曜石の輝きを放つ巨大な円卓は顔が写るほど艶やかに磨きあげられているが、冷たさよりは不思議とあたたかさと和らぎを感じさせる重さをしていた。
天板の上には読みかけの雑誌が開いていたり、トランプが散っていたり、飲みかけのマグカップが置いてあったりする。そこまでマジメではない会議ではよくみられる光景だ。
では足元をみてみよう。
地位に差をつけないために均一に揃えられた椅子は、古代神殿の
意匠揃いの椅子にオーバーロードや半魔人やハルピュイアなど様々な違う種族が座れば、大きさや形の違うが浮き彫りになりそうなものだが、それごときの些事なぞ、まるごと包容する大きな円卓と椅子のおかげで、違うからこそのまとまりが出来ていた。それはまるで色とりどりのガラス片がモザイクに並べられ、一枚の大きな絵を作り上げるステンドグラスのようであった。
瑞々しい蔦の彫刻が這う麗しの猫足の間に並ぶ、スライムの垂れた下部、金属製のブーツを履いた鳥の足、中身のない鎧の脚部、サンダルから覗く骨のつま先、普段であればテーブルの下を見れば思い思いの恰好で投げ出されたそれらは、今は厚いコタツ布団に隠されていた。
「会議とか言いながら、もう実行してるじゃないですか」
「寝バザーでコタツ外装が安売りしてたら、使うしかないよね☆ミ」
「事後承諾とか社会人失格だぞー」
「ホウレンソウ守れ、腐れゴーレムクラフター」
「くたばれ^^」
異語同音にメンバーが責める言葉を投げかけるが、その足はコタツに入っていた。
「堕落させるのもするのも悪魔の仕事ですね」すっぽりと肩までもぐりこんだウルベルトも、
「買収でもされましたか?」隣の席の者とジェンガに興じる たっち・みーも、
「みてみてミカンが浮きました~」誰かが飲み物を口にいれた瞬間を狙って笑いをとりにいくペロロンチーノも、白い縁どられた臙脂色で分厚いだけが取り柄のようなコタツ布団に入りこんでいる。
「くっ、負けてなるものか」
「そうは言っても肉体は正直なようだぞ」
「ぐへへ、上の口では嫌がっていても、下の足は喜んでコタツを離そうとしないじゃねーか」
馬鹿な会話をしている女性3人も、コタツの上にポットや菓子を次々に広げて長居する気満々である。
つまりはみんなが皆、コタツを謳歌しているのだ。魔導王軍だのラスボスの巣だの散々に恐れられている極悪ギルドの異形種たちが、庶民の味方であるコスパ最強の暖房器具、超巨大コタツに潜り込んでいるのだ!
「はぁい多数決採るよ、コタツに反対の人は手をあげてね☆」
るし★ふぁーの問いかけに上がる腕はひとつたりともなかった。コタツに入っていたために。
「は、反対したいのに、ぬくもりにからめとられて手が布団から出せない」
「うぅ……反対したいのに、これでは決定されてしまう。反対したいのに」
強気なことを口ではいいながらも、手も足も厚手の布団にもぐりこんでぬくぬくとした温もりを堪能しきっている。その姿からは、昨日、暇つぶしがてら初心者狩り狩りをしてきたついでに、彼らの所属ギルドを潰し跡地でキャンプファイヤーを囲いマイムマイムを一踊りしてきた様にはみえなかった。
「くくく、体から暗黒面に堕とす、これこそがコタツの魔力よ」
「KOTATU……7つの大罪の一角、怠惰の名を担うにみあった力というわけか……」
ぐだぐだと話しているうちに、悪ふざけが始まるのはアインズ・ウール・ゴウンの常であった。るし★ふぁーが悪そうな声を作って笑えば、悪にこだわる男ウルベルトが素早く反応を返す。
「大罪のあとの6つはなんでしたっけ?」
「諸説ありますが、強欲・暴食・憤怒・色欲・嫉妬・傲慢ですね」
「……他の担当はわかりませんが、暴食はジルクニフさんだと思いますよ」
先日、骨出汁ラーメンのレシピ本と寸胴鍋を抱えたジルクニフに追いかけ回されたモモンガが、にこやかながらも底に怒りを含んだ口調で言えば、同じ様な目にあった面々がうんうんと頷き味方をした。
「源次郎や音改も候補にあがるが、やはりここは執着心が強く不要なアイテムまで溜め込む、我らがギルド長を“強欲”に推薦させていただこう」
タブラと共にそれぞれ錬金術と召喚術でもってミカンを次々に生み出していたジルクニフが手を止め、売り言葉に買い言葉で言い返せば、それをきっかけに釣られたように聞いていた他の者たちも好き勝手に挙げ始めた。
「たっち・みーは傲慢だな」
「そういうウルベルトさんは嫉妬ですかね^^」
いつも仲が悪い二人が、いつものようにじゃれ合っているが、いつものことなので誰も仲裁に入ろうとしたり気を悪くしたりしない。逆に下手に間に入れば、ワールド・チャンピオンとワールド・ディザスターの両方を同時に相手することになり危険が危ないこととなるので、君子危うきによらずとばかりにスルーするのが暗黙の了解になっていた。
さすがに程度が過ぎれば仲を取り持つことはあるが、それはほとんどがギルドマスターであるモモンガの仕事であった。そんなお人好しで不運なオーバーロードは4日前にも仲裁に入って、結果、吹き飛ばされて空を飛んでいた。合掌。
「いいや、たっち・みーは憤怒だと思う(キリッ。でも、タブラもやまいこも茶釜もモモンガも憤怒っぽいし」
「怒られすぎだろ問題児」
そんなわけで今日も今日とて、口論程度ならミカンを食べたり雑誌をめくったりと誰も気に留めていなかった。
「最後の色欲は……「「ペロロンチーノ」」」
「ひでぇ、否定できねーけどwww」
わいわいと騒ぐ彼らはコタツに入っていた。
仲の良いものも、仲の悪いものも、そろって一つのコタツに入っていた。
「NPC用のコタツも作らない? みんな、揃って入っていたら可愛いと思うの」
「ウチのコキュートスを仲間ハズレにする気か」
「ガルガンチュアだってがんばっているんですよ」
「で、出た~
寒い冬も、暗い世界も、そんなんどうだっていいから、今は蚊帳の、いやコタツの外だとばかりに、ただぬくもりに包まれて42人は暖かい時を過ごしていた。