SKO41に入った鮮血帝だけど、なにか質問ある?   作:ごはんはまだですか?

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SKO41の中身は大体NPC。ウルベルトだと中身デミウルゴスのつもりで書いてる。つまり弐式さんが大惨事。


第18話 一狩りいこうぜ

 

 仕事を終え帰宅した鈴木悟は、食事などの諸々の用事をすませると、いそいそとユグドラシルを起動させる。繋いだニュートロンナノインターフェイスが動き出すわずかな時間をじれったく感じているうちに、意識はいつしか仮想世界の中に入っていた。

 

△ナザリック地下大墳墓 円卓の間

 光をやわらかく受け止める白亜の壁と、シャンデリアの灯りを夜空のごとく天板に映し出す黒曜の円卓がログインしたオーバーロードをいつものように出迎えてくれる。先ほどまでみていた自室の毛羽立ち全体的に黄ばんだ壁にシールの剥がし跡が目立つ机と比べれば雲泥の差だ。というか比べること自体が烏滸がましい。

 

 ログイン場所であり、なにかを決める時に話し合う場であり、一番長くいることになる場所だからと、温かみがあり長居しても寛げるように設計した部屋は、確かに毎ログインする度にほっとした気持ちを覚えた。それは他のメンバーも同じようで、わざわざ違う部屋に移動するのが手間というのもあるのだろうが、ここで駄弁っている姿をよく見かける。

 

 42人分の椅子が並ぶ机は馬鹿でかく、かつてギルドきっての問題児るし★ふぁーの提案で全員が敵のバトルロワイヤル・ドッチボール大会が開けたほどだ。

 最後に残ったウルベルトさんとたっちさんとの対決は燃えたなぁ。そんな出来事を思い出しながら、視線を巡らせれば机に隠れるようにして身を寄せ合う3人の姿をみつけた。

 

 侍と忍者と皇帝が、胡坐をかいて地べたに座っている。

 身をかがめて円座をつくっている後姿に、なにをしているのかと興味を持ち、モモンガは邪魔をしないようにと足音をひそめて近付くと、たまたま手前に座っていた武人建御雷の手元を覗く。彼が弄っていたのは博物館に並ぶような昔の携帯用ゲーム機だった。巨体を屈めて小さなゲーム機を操る様は、心がこそばくなる微笑ましさがあった。なんというか、いつまでも見守りたいような、全力で撫でくりまわしたくなるような気持ちで、萌えという言葉が一番しっくりとくるだろうか。

 

 弐式炎雷とジルクニフもみれば同じゲームをしていた。

 

「脚引きずったけど、しっぽが切れないな」

「討伐覚悟で切るか?」

「はちみつ下さい」

 

 液晶画面の中では3人の操るキャラクターが赤いドラゴンと戦っている。著作権が切れたゲームをユグドラシル内で出来るようにしたのだろうか。つくづくアインズ・ウール・ゴウンには暇な技術者が揃っている。

 感心と呆れを含んだ目線で見ていると、覗かれていることに気が付いた武人建御雷が画面から目を離すことなく、こちらに話しかけてきた。

 

「ギルマス、用事ならば、もう少しで狩れるので待っていてもらっていいか」

「ただ見ているだけなので、ゆっくりでいいですよ」

 

 気を散らせてしまっただろうかと、心配している内に、電脳世界の中にある更に小さな電脳世界の中の3人は翼を広げるドラゴンを追いつめてゆき、やがて倒した。口から炎を漏らしていたドラゴンが大地に崩れ落ち、高らかに勝利のファンファーレが鳴り響く。

 

「紅玉でねー、マラソンもう一周!」

「骨髄さえ出ないとは」

 

 勝利を祝うかの如く明るい音楽が流れる中、わいのわいのと騒ぎながら報酬を分け合う姿はユグドラシルのクエスト終了時の彼らとさしてかわらない。しかし、彼らはなぜゲームの中で別のゲームをしているのだろうか。

 そのゲームは何回かコラボイベントがあったことも大きいが、ユグドラシル以外にはソリティアぐらいしか他のゲームをしないモモンガでも知っているほどの有名なタイトルだ。リメイクを含めてかなりの数が出ているシリーズには、ダイブもあったはずだ。素朴な疑問を聞いてみると、ジルクニフたちは互いに顔を見合せると、言葉を交わさずに意志を通じ合わせて頷いた。

 

「ダイブをやったことはありますが、なにか違う気がします」

「ああ、モンハンは実機に限る」

「友と喋りながらやるのが面白いな」

 

 弐式炎雷が床に置かれて余っていたゲーム機を持ち上げると、ほいとモモンガの方に渡してきた。

 受け取ったゲーム機は両手に余るぐらいの大きさで、明るいピンク色をしていた。先ほど覗いた武人建御雷のキャラクターはゴツゴツした鎧姿だったのに、画面の中に映る女性キャラクターは可愛らしいメイド服を着ている。どんなつもりでコレを渡してきたのかと、思わず遠い目になるのも仕方がないだろう。

 こちらの様子に気が付いた弐式炎雷が慌てて無罪を訴えてきた。

 

「ソレ、るし★ふぁーの物です」

「るし★ふぁーさんのですか?」

「途中まで一緒にやってたのだが、ふらっとどこかへ行ってしまったのだ」

 

 言われて改めて画面を見る。銃を背負った女キャラの頭上に浮かんでいる名前は、ゴーレムの額に書かれるemethとあった。確かにファンキーなところを含めて彼らしいがある。納得して頷くと、気まぐれな るし★ふぁーを責めながらも、声音ではどこか楽しそうにしている3人をみる。先ほどまでは変わった組み合わせだと思っていたが、厨二病(ジルクニフ)戦闘狂(武人建御雷)ドS(弐式炎雷)愉快犯(るし★ふぁー)が本来の集団だったようだ。羅列してみれば意外とまとまっている気がして不思議だ。

 

「モモンガさんも、一狩りいかないか?」

「装備固いし、初心者でも大丈夫だ」

「ライトボウガンであれば、遠くから攻撃するので3乙まではいかないだろう」

 

 みんなに誘われれば断るのは難しく、モモンガは簡単に操作方法を教えられて、いない者のゲーム機を借りて参加することとなった。10分も弄れば、カメラ操作にもたつきはするがモンハン持ちも形にはなってきた。

 ユグドラシルでは魔法詠唱者しかやっていないので、ガンナーというのも新鮮で面白い。

 

「で、倒したアプトノスに近づいて○ボタンで剥ぎとり」

「生肉と……竜骨【小】が出ました」

「基本は良さそうだな。ならば狩りに行こうか」

「は、はいっ!」

 

 じんわりと掌に滲んだ汗を拭うとゲーム機を握り直して、温泉の近くで待っている他の3人のキャラクターの元へと歩いて行く。始めてやるゲームなのでとても緊張していた。サポートをしてくれると言っていたが、足を引っ張らずにちゃんと出来るといいのだが。

 

「安心するといい、初心者でもクリアできるクエストを選んだからな」

雑魚(バギィ)を25頭狩るだけだ。寒さに気をつければ難しい事はないぞ」

「進め!凍土調査隊!」

糞強いモンスター(イビルジョー)が出ます。

 

 

***

 

 エ・ランテル要塞都市に夜の帳が下りる。

 瞬く地上の星のようだった灯りは、一つまた一つと消えてゆき街が少しずつ眠りについていく。

 陽が落ちたばかりの頃にかかり始めた月が、中天に昇るころには起きている人間は数えるほどになった。詰所の夜警、路地裏を忍び歩く者、金を数える商人。それに郊外に広がる電照菊の温室で働く農家ぐらいだ。今でこそ大陸のあちらこちらでみられる電照菊であるが、発祥の地はこのエ・ランテルである。貴賓に人気のあった食用菊を、どうにかして通年供給できないか試行錯誤した努力の結果、特殊な魔法光を当てることで可能になったのだ。育て方は長いこと門外不出の独占技術ではあったが、秘密は漏れるもので、そのうち王都や貴族の居城近くでは当たり前のように作られるようになり、いまでは庶民の食卓を飾るまでになっていた。それでも電飾菊の第一人者の誇りは忘れず、最近はエディブルフラワーという他の花も食用に品種開発したものも次々と出て、古くさいと伝統食を敬遠していた若者たちの間にも人気をはくしている。

 もし鳥になり高いところから見下ろすことができるのならば、竜の背鰭のように険しい山の先に、灯台に似た明るい光をみられるだろう。それは城塞を囲うようにつくられたいくつもの温室に灯る人々の叡知と努力の証だった。

 

 眠らない花と同じように、場末の冒険者向けの宿にも眠らない者がいた。

 部屋の中だというのにくつろげそうにない揃いの漆黒の全身鎧を身につけた男が二人(・・)、まるで鏡越しのようにそれぞれのベッドに腰かけて向かい合っていた。椅子ではなくベッドに座っているのは、単純にこの安い部屋には荷物入れとベッド以外の家具がないからだった。

 

 物差しを背中に指したようなまっすぐ座る男と、気疲れしたかのように少し背を丸めて座る男。向かいあう兜を外した顔もそっくり同じだった。

 うっかりと部屋を間違えて入った客がいれば、死を具現化したかのような不死者たるオーバーロードが2人もいることに絶望の叫びをあげるだろう光景が、薄汚れた宿の片隅にあった。

 

 とはいっても、彼らの片方は能力で姿を変えた二重の影(ドッペルゲンガー)だ。

 男たちの名前はモモンガと、彼の子であるパンドラ・アクター。ナザリックの支配下にあるこの街に身分を隠して、ただの親子として来ていた。

 

 荷ほどきも終われば、睡眠不要の身に夜は長かった。粗悪な窓枠の向こうに視線を向ければ、遠くの地平は明るいが、それは魔法光でしかなく日の出はまだ遠い。

 外を見るふりをしながらモモンガはパンドラの様子をこっそりと窺う。眼孔の炎が時折不安定に揺れていた。緊張しているのだろう。彼がここに来た目的は単純に冒険者として楽しむためと、まだどこかぎこちない関係を円満にするためだった。

 

「パンドラズ・アクターよ」

「はい、なんでしょうか」

 

 名を呼ばれたパンドラは胸に右手を当て、仰々しいしぐさで続きの言葉を待つ。

 自分の姿で芝居かかった仕草をされる羞恥で精神が揺れ動き、すぐに抑圧される。このまま全てを諦めて布団の中に逃げたい思いをねじ伏せると、モモンガは一つ咳払いをしてから続きを紡ぐ。

 

「これから親子……、にすぐになるのは難しいだろうが、少しずつでもいい気心がしれた親しい関係を築いていきたいと私は考えている」

「はい、我が創造主たるモモンガ様の望みでしたら、いくらでも答えましょう」

 

 ベッドから降りたパンドラが跪いて告げる盲目的な肯定に、モモンガは苦笑を返す。

 命令して親しくなったのでは、本当の信頼は得られないだろう。モモンガは作った子を愛しているし、パンドラも親を敬愛している。だけど、今の関係は一方通行にすれ違った愛情でしかない。

 彼が望んでいるのは、仲良く笑いあい、時に喧嘩しても離れることのない、強い絆で互いに結びついたあたたかい家族。辛い時にも悲しい時にも、失ったあとでも雨を防ぐ傘みたいに心の支えとなる、そんな関係をパンドラに与えてやりたかった。

 

「立つがいい」

 

 モモンガは懐からとあるものを二つ取り出すと、片方をパンドラに渡す。

 それはかつて友と遊んだ携帯ゲーム機だった。

 

 初プレイでボロボロにされて不貞腐れていたところに、るし★ふぁーも含んだ4人連名で、黒い本体に銀のスカルが描かれたモモンガ専用のゲーム機がプレゼントされた。

 それ以降、誘われてちょくちょく彼らとゲームをするようになった。はじめのうちは卵運びに泣いたりもしたが、鬼畜クエストに連れ出されているうちに段々とこなせるようになり、いつしか肩を並べても恥ずかしくないほどの腕前に成長していった。ユグドラシルやソリティアのプレイ時間と比べれば少ないが、多くの時間を狩りに費やしてきた。そしてそれは友達と遊んだ記録でもあった。目を閉じれば、大剣を振るう武人建御雷や双剣で乱舞する弐式炎雷、ガンランスを構えるジルクニフや仲間に回復弾や硬化弾を撃ち込むるし★ふぁーの姿がまるで昨日のことのように瞼の裏に浮かんだ。

 

 電源を入れれば、フードを被ったカボチャ装備のもう一人の自分が現れる。

 モモンガは狩猟笛を背負うキャラクターから目を上げると、目の前のパンドラに笑ってみせる。自分がゲームを通して仲間たちと親しくなったように、彼とも仲良くなりたいと願って。

 

「一狩りいかないか」

 

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