SKO41に入った鮮血帝だけど、なにか質問ある?   作:ごはんはまだですか?

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説明回
私は歌詞を作中に書いているわけではない。ただ、そろそろ終わるという事実の確認を復唱させているだけだ。


第3話 一歩進んで前ならえ

 今日はウルベルトさんと一緒に魔法マクロの見直しをする約束をしていた。時計を見ると予定の時間までは少しばかりあった。珍しく残業がなくまっすぐにアパートに帰れたので、ナザリックの自室に放り込んだままであったドロップアイテムを片付けても、まだ余裕がある。

 もっとも片付けたとは言っても、種類ごとに山を分けただけだが。

 可視化すれば少しはやりやすいかと思いついて実行してみたが、おもちゃ箱をひっくり返したかのような、この部屋の中で竜巻が荒れ狂ったかのような、空き巣に入られたような、雑然とし、どこから手をつけたらいいのかわからないほど途方に暮れるほどの荒れようとなっただけだった。小人閑居して不善を成す。便所のカレンダーに書かれていた名言が心に刺さる。

 一瞬、諦めて見なかったことにしようとも考えたが、流石にこのままにしておくわけにはいかず、また時間が余っていることから逃げる言い訳のしようもなく、モモンガは過去の自分を恨みながら分類し始めたのだった。

 

「こういう時にメイドが片付けてくれたら楽なのにな」

 

 なんということをしてくれたのでしょう。自分が引き起こした悲劇的ビフォア・アフターから目をそらして、アイテムの一時収納箱として部屋の片隅に立たせているソリュシャンを眺めながら、しょんないことをつらつらと考えれば、一定時間の視線を感知した彼女は「どうぞご用命を」とばかりにスカートの端をつまんで軽く腰を下げた。広がる布のやわらかい揺らぎも、動くに合わせてわずかに浮くシルクのような金髪も、冷静で有能なメイドらしさを、ほんのわずかなしぐさの中で表現されていた。

 今日だけで何度も見た仕草だが、目にするたびにメイド三人集の本気をひしひしと感じる。もうお前らメイドと結婚しろ。……と言ったところで「はい、喜んで!!」と某居酒屋の掛声が返ってくるだけだ。表情が変わらないユグドラシルであっても、満面の笑みでサムズアップしている様が脳裏に浮かぶようだ。

 

「これも頼む」

 

 消耗アイテムの類を拾い上げると、ソリュシャンに預け入れる。重量制限のある武器や防具と違って、消耗品は各アイテムの個数制限まで所有することができる。つまり無限鞄と同等の能力 ―機能というとメイド三英傑に殺される。PKではなく殺される― があるソリュシャンにならば、回復薬10個に回復薬グレート10個、こんがり肉10個、生命の粉塵3個、砥石20個etc.を持たせることができるのだ。ここまでならば普通にも思えるのだが、グミは30個までなのにテントならば99個持ち運べる。ゲームの不思議なところだ。

 

 装備は頭や腕など場所ごとに棚を分けて、データクリスタルは別の棚に入れて、最後に預けておいた物を自分のアイテムボックスにしまい込む。おおざっぱながらこれでどうにか形にはなった。

 あとは時間のある時にしよう。

 いつまでも片付けられない人間の思考に陥っていることに気が付かないモモンガは大きく伸びをすると、見えないものに蓋をする後ろめたい気持ちを抱えながらそさくさと逃げるように部屋から出ていった。

 無論、ソリュシャンを開放するのを忘れずに。メイドの独り占め ―もしくはそうみられる行為― をしたら最後、メイド三羽烏に仲間認定され熱烈な歓迎のハグをされることだろう。数日前のジルクニフのように。

 本人は戦力の解析のためだ。と言い張っていたが、聞く耳を持たないメイド三兄弟に最後は神輿のように担ぎ揚げられてわっしょいわっしょいとどこかに連れ去られていった。

 

 ……その後、彼の行方を知るものはいない。

 

 

 

ガチャリ

 白っぽいのが良いとの要望を受けて設置された、自然があふれていた時代に戻っても現実では作ることが出来ない、177cmのモモンガが余裕をもってくぐれるサイズの柳の一枚板の扉を開けて廊下に出ると、そこには、元気に廊下で踊るジルクニフの姿が……。

 

 一瞬、いやかなり長いことモモンガは状況が理解できずに、ドアノブを握ったまま固まっていた。

 金貨色のビーストマンがリズムカルに手を体の前で回し、一歩前に進んでは上半身を揺らさないまま綺麗に膝を曲げて腰を落としポーズを決めてから速やかに起立に戻る動きを繰り返しながら、活発で好印象を覚えるよく通る声で高らかに歌っている。

 これが彼一人であれば、メイド教に脳をやられたかと納得しただろう。だが、一人ではなかった。それどころか2・3人ではすまず、数十人もの様々な異形が踊っていた。

 

「そろそろ終わりかな。そろそろ終わりかな」

 

 重油を固めたような黒い液体も、白銀の鎧に身を包んだ大男も、メイド服を基調とした鎧をまとう夜会巻きのデュラハンも、人間ではありえない角度に曲がった猫背のNINJYAも、悪の戦闘員に抱えられたペンギンも、プレイヤーもNPCも指の先まで気を張らせ、プログラムされたロボットのように一糸乱れぬ動きで機敏に踊る集団は、なんのスキルも使っていないのに圧倒されるオーラVを放っていた。

 

「そろそろ終わりかな」

 

 声と動きに一層力が入る。

 なにも知らないモモンガもこれが最後なのだと、自然と頭ではなく心で理解した。

 

 右手は上に、左手は添うように横に。

 彼らは両手で天と地を表していた。高々と天を指す右手にはどこまでも終わりのない高みを目指す気高き志があり、水平に掲げられた左手には遍く広がるユグドラシルの9つの地平すべてはアインズ・ウール・ゴウンの下で一つだと、力を伴っているが上の慈悲深い宣言があった。

 一歩前に進む形で止まった右脚は、未来へ進む一歩。地に根ざした力強い左脚は今を支える過去の連なり。

 筋の通った背中は、隣を歩む友の荷を背負うために空いている。広く開いた胸は、自信と誇りに充ち溢れている。

 

「終わりっ!」

 

 全員の声が綺麗に重なる。

 彼らは肉体のすべてで、自分自身を、アインズ・ウール・ゴウンを表現していた。

 

 

 

 あいかわらずモモンガが固まったままでいると、踊り終えた面々が先ほどまでの緊張感に満ちた雰囲気を払拭して、わいわいと雑談を始めて普段の雑然とした空気が戻ってくる。

 その緩んだ空気に、ようやくモモンガは我を取り戻して動くことができた。

 

「い、今のはなんだったんですか?」

 

「あれ、モモンガお兄ちゃん、見てたの~?」

「こんちは、ギルマス」

 

 ぞろぞろと歩き去ろうとしていた集団の中から、声が聞こえた何人かがこちらの呟きに気が付き反応すれば、残りの面々もつられて集まってくる。

 先ほどは、あまりのインパクトに頭が働かなかったが、落ち着いてみれば踊っていたのはNPCを除けば剣士しかりタンクしかり前衛職のものがほとんどだと気が付く。

 

「前線ってタイミング合わせにシビアじゃない? だから動きを合わせる訓練」

「すぐ目の前に敵がいるのに、隣も後もみて、状況みて周りみて仲間みて、タイミングあわせて攻撃してすぐに退いて、忙しいったらありゃしない。まあ好きだからやるけどwww」

 

 モモンガは魔術職としてフィールド全体を俯瞰しながら、戦闘中の彼らがまるで一つの生命のように連帯して動くのに常々感心していたが、まさかこんな努力が隠されていたのか。いったいどれだけ練習を繰り返してきたのだろう。

 彼らのストイックな姿勢に頭が下がる思いだった。

 

「そういえば、どうしてメイドや守護者までいるのですか?」

「おっさんが過半数とかむなしいから」

「え?」

「おっさんが大半とかむさ苦しいから」

 

 社会人ギルドであるので多少年齢がいっているのも、異形種ギルドなこともあり女性が少ないことも仕方がないことだ。だから中の人がおっさんが過半数を占めていても、仕方がない。と自分に言い訳をしてみても、改めて見つめ直せばドキ☆ほぼおっさんだらけのギルド。とか地獄絵図だ。なにをポロリするというのだ。モラルか。命か。

 二十歳を越え、通りすがりの小学生におっさん呼ばわりされたことが、いつまでの心の棘になっているモモンガだった。

 

「ちなみに、俺らこれからサンドバッグ殴りッス。マジックキャスターはお留守番よろ」

「お土産楽しみにしといてー」

 

 完全魔術無効を持ち、攻撃力も防御力もHPも高いが、かなり遅い動きのせいでサンドバッグになり下がっている高レベルモンスターである電車サイズの芋虫は知っているが、魔法詠唱者なモモンガは一度も対峙したことはなかった。

 油断をしなければ一方的に攻撃できるのだが、桁違いのHPのため討伐時間がかなりかかるうえにドロップも普通なので、効率がよくないことから人気は低く非アクティブ状態で、もしょもしょと草を食べているのを時々みかける。でかいので目立つのだ。芋虫モンスターには様々な色がおるので、モモンガは密かに占いに利用していた。黄色は金運UPで、緑は健康運だ。

 

「じゃーね、ギルマス」

「ジルジルと仲良くしとけよ」

 

 口々に別れの言葉を告げて前衛職が去っていき、NPCは元の配置に戻れば、先ほどまでにぎやかだった廊下に平穏が戻った。汚れるはずのないデーター上の場所なのに、人が多かったせいかどこか埃っぽい空気が残っているように思えた。

 モモンガが時計をみれば、まだ約束には早い時間を指していた。フレンドリストも確認したが、ウルベルトの名前は半透明になっておりログアウト状態だった。

 さて、どう暇つぶししようかと、片付けの続きという言葉を無理やりに脳内の奥に押し込めると、モモンガは唯一残ったジルクニフへ向き直る。

 

 

 

 そう、踊りのインパクトで吹っ飛んでいたが、彼だけは前衛職ではない。

 

 ジルクニフの職業は召喚術師(サーモナー)と指揮官を中心に、支援系の補助ビルドだった。

 バフ、デバフ等のステータス支援魔法は便利で、どこかのギルドに所属していなくても勧誘の嵐でパーティ組みに困ることはないし、常にちやほやされ回復などの待遇でも優遇されがちだし、いいことづくめにもみえる。

 だが補助職は保護職といわれるぐらい打たれ弱い。Lv.10の差があれば勝敗は決するユグドラシルにおいて、自分の半分以下のレベルの敵とて苦戦するし、中級者向け以上のフィールドを一人で歩くのは自殺行為にも等しいし、パーティを組まなければまっとうにゲームをすることが出来ないのだ。故に支援系や同じく打たれ弱い回復系の補助職は、ちやほやされたい姫か、人助けが好きな仏が多い。

 戦闘は面倒くさいから、友達と役割分担したから、とかもいないわけではないが、戦闘フィールドの流れを読み、常に味方の状態に気を配らなければいけなく、かなり忙しく神経を使うので、明確な理由がないと長く続かず、どのMMOでも常に人手不足な職業だ。

 

 

 

 そんな支援職だが、ジルクニフは姫でも仏でもない。

 

 皇帝だ。

 

 召喚にはいくつかの種類があるが、ジルクニフの使うのは魔力をかなり多く使うが、一度召喚すれば術を解除するか戦闘不能にならない限り、付き従い続ける術だった。

 彼のメイン種族のビーストマンは肉体的ステータス ―特にヒットポイントが― が上がりやすい代わりに、魔術系の上昇率はよくない種族だ。それを逆手にとりHPとMPを逆転させる装備をつけ、純粋な魔法詠唱師と比べても桁違いのMPで小隊並の大量の召喚獣を侍らせて身を守り、万が一、自らに攻撃が届いたとしてもHPは低いが種族故の固い耐久値でワールドエネミークラスでなければ一撃死は防いでみせた。一瞬が稼げれば、あとはバフが掛けられステータスの上昇した彼の親衛隊達が攻撃・防御・回復とそれぞれ動き戦線を元に戻す。

 簡単なことに思えるかも知れないが、全ての状況に対応できる単行本一冊分にも相当するような膨大なマクロを組むか、その場その場で数十人に的確な指示を個別に出していくか、どちらにしても手と知恵の込んだ技術が必要だった。

 かつてどのように召喚獣を操っているのかを尋ねた際には「禁則事項です」と答えられた。命綱である戦術について秘密にすることに納得はしたが、偶然、近くで話を聞いていたペロロンチーノと熱い握手を交わしていたので何かのネタだったのかもしれないと心に引っ掛かっている。どの道、質問をはぐらかされたことには変わりはないのだろうが。

 

 ちなみにジルクニフの召喚獣だが一匹一匹名前がついており、特に強い4体をまとめて四騎士と呼んでいて、多くの手下を従わせる偉そうな態度、隠しクラスであるカリスマエンペラーを取得していることを合わせて彼が厨二皇帝とあだ名される由来になっている。

 

 

 

「ジルクニフさんは、どうして前衛の皆さんと一緒に踊っていたんですか?」

 

 仲良くしておけという言葉があったからではないが、なんとなく気まずい沈黙を破るためにモモンガは無難な話題を振る。まさかたびたび数十人が連なって淡々と居室のすぐ外で踊っている事案には驚きはしたが、別に踊ろうが歌おうが個人の勝手であるし、害はないのだから止めさせることもないだろう。……誘われなかったのは少しばかり寂しいが。

 そうだ、寂しいのだ。

 前衛職の訓練だとしても、みんなが一緒に楽しんでいるのに、知らされずに一人でいたことが。

 

 なぜ、同じ後衛のジルクニフが誘われ、俺は誘われなかったのか。

 

 心の奥底でくすぶる悋気が声色に浮かばないように抑え込む。

 声と動きしかアバターに反映されない世界は不便で、便利だ。感情が伝わるようにテキストボックスに(笑)やwwwを入力することもあるし、感情アイコンもよく使う。

 逆に感情を伝えないようにするのも意識して行えば簡単だ。

 事実、ジルクニフはこちらの暗い感情に気が付かないで、質問に答えている。

 

「私は脳波デバイスで繋いでいるから、ナノと比べればどうしても反応が遅れる不利がある。それを埋めるためだ」

「どうしてそんな旧式のものを。そういえば、楽園(ニライカナイ)は自然派コミュでしたっけ」

 

 以前、少しばかりそんな話をしたことがある。

 アーコロジーの話なんて住む世界が違いすぎて、聞いても共感できず羨むしかないのであまり話題にしないのだが、ジルクニフのいる場所は百年前の生活を守る変わったところだという話を戦闘待ちの暇つぶしに触れる程度の軽い話をしたのだ。

 確か、生命が脅かされない限り、人工心肺やナノデバイスなどの肉体改造の類は行われず、食糧は人の手で作っているのだという。土に埋まっているものや、死んだ動物を食べるなんて気持ち悪くないのだろうか。

 

「本当は前衛で強くなりたかったのだが、身体に異物を入れる勇気が出なくてな」

「はは、メガネ愛好者がコンタクトを怖がるのと同じ台詞を言ってますよ」

 

 劣悪な環境で生まれ、物心ついた頃にはすでに内臓のいくつもが強化したものに置き換わっている鈴木悟としては、肉体の改造に忌避感を覚える気持ちはわからなかった。むしろ、安くはない金額を出してくれた親の愛情を感じるぐらいだ。

 

 空っぽな笑いが過ぎれば、沈黙が滞る。

 いつもならばNPOやギルドメンバーが忙しなく往来する廊下なのだが、先ほどまでの賑やかさが去ってから誰も通りかからず、ただ二人きりが世界から切り離されたように残されていた。豪奢な装飾が今日ばかりは虚構の虚しさを感じさせる。

 身動きせず静かにしていれば、耳の奥で沈黙が鳴り続ける。それは音声を発する前のスピーカーの無音と同じだった。低く音にはならない不快な音が、心の重さとは裏腹に空気に浮かんで二人の間に軽く存在している。

 

 今度の沈黙を破ったのはジルクニフからだった。

 

「アイ、――モモンガさん、よければ自己練習に付き合ってはくれないか?」

「練習、ですか?」

 

 このビーストマンはよく噛むなと思考をそらしながらも返答をする。この気まずい静けさから逃げるためであれば、どんなことでもするつもりだが、召喚術師と魔法詠唱者とでなんの練習をするというのだろうか。

 

「この後、ウルベルトさんとの約束がありますので、あまり長い時間は付き合えませんが、私でよろしければ付き合いますよ」

「ああ、5分もかからない」

 

 すぐに用意するといって、ジルクニフは金色の毛並みで覆われた獣の手で壁面に仮想ディスプレイを設置し、なにかの映像データを選択し再生する。

 よく磨かれたガラス板に映されたのは時代を感じさせる荒い平面映像であった。

 そして、スーツを着た男二人が高らかに歌い踊るそれは、一度聞いただけでうろ覚えだったが、先ほどまで仲間たちが踊っていたソレだった。

 

「もう少し動きの練習したかったのだ。なに、簡単な動きだからモモンガ殿であれば、すぐに覚えられるだろう」

 

 こちらの暗い気持ちに気が付かなかったなんて、嘘だった。

 隠し通せていたなんて己の自惚れだった。

 

 すべては見過ごされて、文字通り、見た上でなんでもないように過ごしていてくれたのだ。

 

「ふん、勘違いするなよ。これは我が強くなるためにした事に過ぎないのだからな」

 

 寂しいと、仲間外れにされて悲しいと。その気持ちを汲み、次からは踊りに参加できるように教えてくれるつもりでいるのだ。彼は。

 

「それでも、ありがとうございます」

 

 ジルクニフからの返事はなかった。

 明るくスローテンポな曲が終われば、場に静けさが戻る。だが、今度の沈黙は冷たく重い、気まずいものではなかった。正反対に温かくこそばゆい、いつまでも味わっていたい。そんな空気だった。

 

「礼などよいわ。それよりも、ちゃんと覚えただろうな」

「はい、もう大丈夫です」

 

 鋭い爪の生えた指が画面をタップすれば、また同じ映像が流れ出す。

 さっさと右を向いたジルクニフに合わせて、あわててモモンガも同じ方向、彼の背中を向く。

 

「一歩進んで」

 

 流れる音楽に合わせて体を動かせば、もう一つの自分である骨のアバターも軽々と動く。まっすぐに腕を伸ばして、次は腰に当てて、ひっくり返って。聞いていればゆっくりだった曲も、実際に動いてみればなかなか忙しかった。横に歩いて腰をひねり、向き直ったら手をかき、しゃがんで立ち上がって。

 

 次々と出される指示に必死になって従っているうちに、1分強の短い曲は終わった。長くも短い時間が終われば、若干の疲れと物足りなさが残る。

 

「あの、もう一回いいですか?」

「ああ、我が友の頼みならば、もちろんだとも」

 

 友。

 そうだ、彼は、彼らは友達なのだ。

 わがままを言っても許される仲間なのだ。

 

 背中を向けたままのジルクニフへ、見えないとわかりながらも笑顔のアイコンを送る。アイコンのポップ音は、ギターの軽快な音がかき消してくれた。

 モモンガは気恥ずかしさをごまかすように、踊りに集中する。頭上に浮かんだままの笑顔はなかなか消えてくれなかった。

 




モモンガ「問題解決の手順を明確化した行進 終わりー!」
ジルクニフ「男のツンデレなぞ、一文の得にもならん! 終わりー!」
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