カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼ 作:サバ缶みそ味
「その…デュ、デュ…デュラハンナイトってなに?」
「おい、なんでそうなるんだよ」
「聖剣とか…かっけぇー‼」
「‥‥」
カズキはさっそく間違え、タクトはその名前の響きに目を輝かせて
「鋼を軽く両断し、この世に斬れぬものはないと言わしめる剣を持つ騎士の名だ。地方によっては『魔剣』とも呼ばれている」
「うおおおっ!?ますますかっけぇーんだけど!?」
「ていうかそんな情報や依頼、どこで誰に頼まれたんだよ」
さらに目を輝かせているタクトをよそにケイスケはジョージ神父の話を聞いて疑問に思った。先日の『始末屋』の件もそうだがどうやってそんな情報を手に入れるのか気になっていた。そんなケイスケの疑問に気づいたのかジョージ神父はにこやかに答えた。
「私は世界各地の教会を旅しているからね、そういう知り合いもできるのさ。今回の『
電話で二つ返事したのかよ、とケイスケは口をあんぐりとあけて呆れていた。しかもそれを自分たちにやらせようとしているのだから増々呆れるしかなかった。ケイスケに対し、カズキとタクトは興味津々で神父の話を聞いていた。そんな中まったく興味を示さなかったナオトが口を開く。
「…それでデュランダルさんはどういう姿をしてるの?」
「それについては教えてくれなかった。なにやら事情があったようだ」
「おま、ふざけんなよ!?見たこともない奴を見えない危険から守れってバカじゃねえの!?」
ジョージ神父の話を聞いてケイスケは怒声を上げた。何も情報がないまま訳の分からないものから守れというのは無理がある。だから見つけろっていうことかと納得しながらもケイスケは苛立っていた。
「だが、一つ手がかりはあるぞ?」
「ホント!?教えて教えて‼」
「教え―てしーんぷさーん♪」
ドヤ顔でニッコリする神父にタクトとカズキは何処かの山脈の少女の歌を歌いながらワルノリして聞いた。そんなワルノリにケイスケが更に苛立っているのは二人は知らずに歌い続けた。
「どうやら当代は女性らしい。時折先代が『彼女』と口をこぼしていたからね」
「そんなんでいいのかよ先代」
意外とガードが甘い先代さんにケイスケは呆れた。黙って話を聞いていたナオトは黙々とメモを取っていた。鋼を斬る剣を持ち、女性、最後にお腹空いたと余計なことも書いていた。そのメモを見てナオトは難しい顔をして唸った。
「…情報が足りない」
「そこはくまなく探すのが俺達だろ?」
「日本全国、世界各地に剣を持ってそうな女性を探そうってのか?」
「たっはーw」
カズキの意見がケイスケにばっさりと切られ、無理があると感じたカズキも苦笑いをしてその話を流した。どんな女性で、何処にいるのか、手がかりが足らず振出しに戻ってしまいカズキ達は悩んでいた。
「…デュランダル、ですか?」
そんな時、料理を終えてリビングのテーブルに運んでいるリサがカズキ達の話を聞いて興味を示していた。
「…リサ、聞いたことがあるの?」
ナオトが尋ねるとリサは話していいのか少々おどおどしながらも悩んでいたが口を開いた。
「はい…『イ・ウー』にいた頃の話ですが、その中に『
「マジで!?『イ・ウー』やばすぎるんですけど!?」
カズキ達は驚愕した。まさかこんなところに重要な手がかりがあるなんて思ってもいなかった。タクトは嬉しそうにはしゃぎながらリサに聞いた。
「それでそれで?」
「すみません、お会いしたことがないのでどのようなお姿をしているのかは分からないです。ただ…強力な能力を持つ超偵を攫う誘拐魔だと聞いています」
「競艇?」
「超偵つってんだろクズが」
カズキに厳しいツッコミをケイスケは入れた。超偵とは超能力捜査研究科、通称SSRに所属する武偵の中で攻撃的な超能力を持つ者の総称である。そんな話を聞いてタクトはドヤ顔で自分を指をさす。
「つまり…俺の事だな?」
「たっくん、それはない」
「お前は何を言っているんだ?」
「…ありえん」
3人に即否定されてタクトは「おまえら…」と悲しい顔をしてしょんぼりとした。タクトもSSRの生徒でもあるが…3人はそれほど期待をしていないようだ。しかしこれまでの話を聞いてジョージ神父は納得する様に頷いた。
「なるほど…当代のデュランダルは『イ・ウー』の一員だから詳しいことを話さなかった…いや、話せなかったのか」
「でもなんで今なんだろうなー」
「…なんとなくわかってきたかも」
ナオトは書き足したメモを見ながら納得していた。『イ・ウー』の一員で、強い能力を持つ超偵を誘拐するという情報も加えるとケイスケも何か閃いたようで口を開いた。
「アドシアードか…」
「おおっ?そうか国際競技大会だもんな。世界各国から選手も来るし外部の人もわんさか来るぜ!」
アドシアードは各国から競技に参加する生徒もいる。また報道や一般の人等、外部の人間が入ることができる。デュランダルはこの隙を狙って超偵を誘拐しにやってくるはず。
「…誘拐を計画しているなら、もう下見に東京に来ているかもな」
「つまり…どういうことだってばよ!?」
「たっくん、話を聞いてた?」
「デュランダルはこの東京に潜んでいる。しかしわかんねぇな…」
未だに疑問が残っている。どうして犯罪組織『イ・ウー』の一人でしかも誘拐犯を守らなくてはいけないのか。彼女を捕まえる武偵から守るのかまたはた別の何かから守るのか、分からないことばかりだった。そう深く考えるとナオトの腹の音が低く響いた。
「…お腹すいた。先に飯にしようぜ?」
「そうだぜ!ジョージ神父もリサの作る御飯を食べたいって言ってたんだ。食べようぜー‼」(`∀´ )
「私もお腹が空いたようだ。リサの作った夕食を頂こう」
「はい!腕によりをかけて作りましたので食べてください!」
今はリサの美味しい夕食をいただくことを優先し、依頼のことはその後にしておいた。話は盛り上がったのだが、デュランダル探しをどうするかジョージ神父がウキウキ気分で帰った後に思い出した。
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「エクスカリバーさーん?いませんかー?」
誰もいない工事中のビルの中をカズキはP90を構え辺りを警戒しながら叫んだ。しかし返事はなくカズキの声だけが木霊した。カズキの隣でAK47を構えているナオトは呆れていた。
「…デュランダルだろ。ここも外れだな」
ナオトは地図を取り出し赤いペンで今いる場所に×印をつけた。あの後、タクトはアドシアードのオープニングセレモニーや衣装を生徒会と話をしなければならないし、ケイスケも救護科で打ち合わせもあるということで二手に分かれることにした。カズキとナオトがデュランダル探しをし、タクトとケイスケは情報集めということになった。
「しっかし、見つからないなぁ。これで8件目じゃんか」
「…カズキがバラバラで探すからだろ。もっと効率よく探せよ」
空きビルだけではなく廃屋や廃工場、公園のトイレなどカズキのここにならいそうなんじゃね?という山勘で探しているのだが、これまで全て外れ。自分の勘がすべて外れてカズキは少々イライラしていた。
「くそー‼エクスカリボルグの野郎はどこに居やがるんだ‼」
「だからデュランダルだって…‼」
ナオトが言い直そうとしたとき、はっとした顔をしてカズキの口を塞ぎカズキを引っ張って柱の陰へ隠れた。
「ちょ、ナオト。何しやがる!?」
「静かに…誰か来た」
ナオトがカズキに静かにするよう注意した。カズキも口を閉めて静かにしていると、コツコツと誰かがこちらにやってくる足音が聞こえてきた。カズキとナオトは気配を消す様に柱の陰から顔を覗かせると、武偵高校の制服を来た長いピンクのツインテールをした小柄の少女がいた。二人はその少女に見覚えがあった。
「あれって…アリアじゃん」
同じ武偵高校の生徒で、ナオトと同じ強襲科に所属し、女たらしで有名な遠山キンジのところで居候しているSランク武偵の神崎・H・アリアだった。
「なんであいつがこんなところに来てんだ…?」
「…なんだか何かを探しているみたいだな」
ナオトが観察していたとおり、アリアは2丁のコルト・ガバメントを構えて辺りをキョロキョロとしていた。しばらく見回した後、アリアはため息をついてガバメントをホルスターに戻す。
「やっぱり、こんな所にはいそうにないわね…」
ひらりとツインテールをなびかせてその場を去っていった。人の気配が完全になくなってからカズキとナオトは柱の陰からでて一息ついた。
「あいつ、一人で何してたんだろうな?」
「…さあ。それより次はどこを探す?」
なぜアリアが1人でこんなところに来たのかはひとまず置いておき、デュランダル探しを再開した。
「それじゃあ今度はこのラーメン屋に行こうぜ‼」
「…俺、豚骨よりもしょうゆのお店がいい」
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「はぁ~…ほんとにどうしようかなぁ…」
学園島の公園にてタクトはため息をついていた。衣装や演出の草案を持って自信満々に生徒会へ向かったのだが、生徒会長の星伽白雪さんがいなかったことと他の生徒会の人達に却下されたダブルショックでしょんぼりとしていた。生徒会が言うには『予算が足りない』とのことだった。
「ミラーボールに幸子並みの大掛かりな衣装をつけて…100人のバックダンサーと一緒にギターを奏でる…まさにこの俺の完璧でサイキョーのナイスアイディアだったのにー…」
もっと良くするにはどうすればいいか、去年は生徒会長の星伽白雪さんに聞いてアドバイスをもらったのだが肝心の彼女がいなかったので生徒会からもう一度考え直してと言われ、生徒会室でタクトの話を聞いて呆れていた綴先生にも出直して来いと言われ追い出されてしまった。
「やはりここは…匠の出番だな!」
通称、腐った匠と呼ばれているタクトは気を取り直して新たな衣装とパフォーマンスを考えようと張り切ったとき、海沿いの道を見覚えのある人が歩いているのを見かけた。長い銀髪にサファイアの瞳、フランス人形のような白い肌の少女、先日コスプレショップで出会った少女だった。
「やっほー‼また会ったね~‼」
タクトは大はしゃぎで少女の方へ手を振りながら駆け寄った。少女はタクトを見てぎょっとして驚いていたが一回咳払いをして堅い笑顔でタクトを見た。
「ま、また会ったな…」
「先日ぶりだねー!観光はどう?‥‥あれ?ここは武偵校のとこだから一般の人は来るのは難しいんじゃ…」
喜びを一転しタクトは頭にハテナを浮かべさせて首を傾げていた。銀髪の少女はというと額に汗をかいて目を見開いていたが、そんなことも気にせずタクトは一人で納得した。
「そうか!外国からきた武偵の生徒で日本へ観光してるんだ!」
「あ、ああ…パ、パリの武偵校から来たんだ…」
「パリ…どこ?パリパリ王国?」
「フランスだ!…本当にお前は変わった奴だな…」
怒られてもなぜ怒られたのか首を傾げているタクトに少女はため息をついた。タクトはにこやかに少女に話を続けた。
「で、どうどう?日本の武偵高校は?」
「う、うむ…いい所だな。ここには
「でへっへへ~。俺とか?」
「…お前は別の意味ですごいよ」
明らかに褒めていないことにもかかわらずタクトは照れていた。ふとタクトは気にしていたことを口にした。
「そういえば、名前は?」
「…えっ?」
少女はピクリと反応ししばらく考えて悩んでいたようだったが、タクトはまったく気にしていなかった。
「わ、私は…ジャンn‥ジャン…ジェ、ジェーンだ」
「ジャンジャン・ジェ・ジェーン?」
「違う、ジェーンだ‼」
なるほどねーとタクトはニシシと笑った後、ドヤ顔でポーズを決めて自己紹介をしだした。
「この俺は…武偵高校の漆黒の堕天した真紅の稲妻で有名な菊池タクトだー‼」
「うん、黒いのか赤いのかはっきりできないのか」
絶対に褒めてないのにタクトはさらにドヤ顔で決めた。ジェーンはため息をついて苦笑いをした。
「せっかく会えたのにすまないな、タクト。私はこれから用事があるんだ」
「そっかー、用事なら仕方ないね。観光、楽しんでって」
ジェーンは手を振って踵を返して去ろうとした。するとタクトは思い出したようにジェーンを呼び止めた。
「そうだ!ジェーン、来週に武偵校で『アドシアード』が開催されるんだ。まだ観光してるならぜひ来てくれよな!」
「そうかアドシアードか…
タクトはニシシと笑って手を振って去っていった。タクトの姿が見えなくなったことを確認したジェーン…『イ・ウー』の一員であり『
「あの男…一体何なんだ…」
自分の計画のために武偵高校に潜入してあれこれ細工をしていた。変装もばれず、変装を解いても武偵に見つかることなく抜け出すことができていたのでザル警備だなと思っていたところ、タクトに出くわしたのだった。
「警戒すべきなのかそうでないのか…まったく読めない」
ジャンヌはもしバレたのなら瞬殺してやろうと殺気を密かに放っていたのだがその殺気にも気づいていないのか勝手に自己完結し勝手に決めつけて去っていった。タクトの訳の分からない行動にジャンヌは戸惑っていた。
「ま、まあいい…このまま計画を進めよう」
あいつは脅威にならない。そう判断したジャンヌは自分の計画を進めることを優先し動こうとした。その時、再び誰かに見られている気配を感じた。辺りを見回したが誰もいない。先日と同じ気配をしたのだがやはり気のせいだとジャンヌはそう考えた。
『‥‥おのれ‼下衆な輩め…我が姫になんたることを…‼』
望遠鏡でジャンヌの行動を観察していた者がいた。その者は悔しそうに歯ぎしりをし、望遠鏡を強くにぎりバキリと真っ二つに握り潰した。
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「ったく、役に立たねぇもんばっか」
医務室にてノートパソコンとにらめっこをしているケイスケはため息をついた。デュランダルの明確な情報を得るために、諜報科のレポートやSSRで占いや預言をしている奴から情報を集めていた。
しかし、どのところからもデュランダルはいる『かもしれない』だったり、いる『だろう』だったりと曖昧なものばかりで仕舞には「それって都市伝説だろ?」なんていう輩もいた。ため息をついているケイスケにリサはケイスケ専用のマグカップにコーヒーを注いで渡した。
「中々見つかりませんね…」
「仕方ない、相手は姿を隠している。そう簡単にいかないもんだ」
デュランダルは存在する。自分たちが持っているのはその情報だけ。連中にそんなことを話しても混乱するだけであり、逆にこちらがなぜ知っているか聞かれてしまう。
理子がいればな…とケイスケは思い浮かべた。理子なら正確な情報をすぐに手に入るだろう。しかし、肝心の彼女は長く欠席しているらしい。先ほどカズキから見つからないと文句のメールが送られてきた。これからどうすればいいかケイスケは悩んでいた時、ノックもせずに医務室に生徒が入って来た。
「よっす、ケイスケ‼ちょいとサボタージュさせてくれね?」
どうどうとさぼらせてくれと元気よく聞いてきた彼はタクトと同じ教室の生徒でありクラスメイトの武藤剛気だ。車輌科の生徒でケイスケのかつての愛車だったSVRの整備などをしてくれたこともあった。そんな武藤にケイスケは鬼のような形相で睨み付けた。
「ほほぅ?俺のいる前で堂々と仮病と称すか…?」
「ちょ、ケイスケ先生…?めっちゃ怖いんだけど…って、おおっ!?金髪の美女だ‼ケイスケが美少女の助手を雇ったって噂は本当だったのか!?」
ケイスケの威圧に圧された武藤はアセアセとしている中、リサを見てわざと話を逸らせようとした。リサは武藤にスカートの裾をつまんで笑顔でぺこりと会釈したがケイスケは手をぽきぽきと鳴らし般若のお面をつけて武藤に近づく。
「ありとあらゆる関節を外してベッドで寝かすことができるが、どうする?」
「い、いやそれはやめとく!そ、そうだ!切ったんだ‼指に切り傷がついちゃったんだった!」
ちっ、と舌打ちをして消毒処置をして絆創膏をつけてやった。消毒してくれてるリサに武藤は照れていたがケイスケはぶっきらぼうに手当をしてやった。
「500円払え」
「これも取るのかよ!?やっぱり鬼だなお前!?」
「しかし…今年のアドシアードの準備はやけに手こずってんな」
しぶしぶと500円を払う武藤にケイスケは気になることを話した。今年のアドシアードの準備が完了するまでやけに遅すぎるのだ。去年の今頃はもう準備ができており、出場する生徒は自主練に没頭し、そうでない生徒は出店などの準備をしていたりと賑やかだったのだが、今年はあちこちでどたばたとしている。
「ああ…生徒会でも話が中々進まなくてな」
「生徒会が?いつもなら白雪が指揮してスムーズに進んでるだろ」
生徒会の生徒会長であり、ケイスケとカズキと同じクラスメイトである星伽白雪がてきぱきと指揮を執って作業は難なく行われているはずだ。しかし、武藤は苦笑いをして首を横に振る。
「いや…白雪さんは今頃、キンジの部屋にいる」
「はあ?何してんだあのバカは」
ケイスケはそれを聞いて呆れた。あの女たらしは何してくれているのか、今まで気にしていなかったがさすがのケイスケもそれを聞いてため息をついた。
「キンジは今、アリアと一緒に白雪さんのボディーガードをしているんだ」
「ボディーガード?変態からか?」
白雪は才色兼備、大和撫子と綺麗で可愛く料理も勉学もできて他の生徒からとても人気がある。ポスターやどこで撮ったのかというような写真まで売られているほどだ。ついに手を出す変態が出てきたのかと思っていた。
「違うみたいだぜ?噂じゃ白雪さんを誘拐する脅迫状が来てたとか…たしかアリアが言うには…デュランダルとかなんとか…」
デュランダル。そんな単語を聞いたケイスケは即座にガッと武藤の両肩を掴み、般若のお面で威圧した。
「おい…その辺詳しく話せ」
「あ、アッハイ…」
武偵高校ってピーチ城なみにザル警備だなーと思う所がありますね。たぶん、気のせいだったらいいな(コナミ感