カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 エピローグっっっっ‼

 アメリカ編、ようやく終わりでございます‥‥長かった(白目)


108話

「なんかあっという間だったなー」

 

 ニューヨーク、ジョン・F・ケネディ国際空港。アメリカに帰国または入国した客やこれから海外へと出かける客が多く行き交うロビーにて、タクトはでかいサンドイッチを頬張りながら大画面の液晶テレビを見てベンチで寛いでいた。

 

 タクトだけでなく行き交う人々も足を止めてテレビの映像をじっと見つめている。大画面の映像には半壊したホワイトハウスを背景に演説をしている大統領のマイケルが映っていた。

 

「たっくん、良かったのか?俺達も何でか大統領から来るように呼ばれていたのに」

「ふっ‥‥カズキ、これは立つ鳥跡を濁さずってやつさ」

「…思いっきり濁してたけど?」

 

 ナオトの言う通り、大統領を連れ回し、CIAから逃げるカーチェイスをし、アメリカの英雄と友達になって、ジーサードの仲間達と一緒に研究所で大暴れし、最終的にはホワイトハウスをぶち壊したのだ。もはや濁すレベルで済まないはずだったのだが、ニュースにも新聞にもそして大統領の口からもタクト達がやらかしたという話は出てこなかった。

 

「まあFBIかなんか暗部みたいな連中が大統領の名を偽って俺達を呼んで後始末するってこともあり得無くねえし、さっさと帰るのがいいんじゃないか?」

 

「ケイスケ!その前にお土産を買わねえと‼」

 

「勝手にやってろ」

 

「そんなこと言うなよ‼俺達、ソウルメイトじゃないか!」

 

 せがむカズキとタクトにケイスケはやれやれとため息をつき、修学旅行じゃないと説教を始めた。そんな彼らのやり取りを見ていたリサはクスっと笑う。

 

「アメリカでも色々ありましたが…丸く収まって良かったですね」

「まあな‥‥事後処理とか大変だったんだろうけどな」

 

 ケイスケは液晶画面に映っている演説を続けているマイケルに申し訳なさそうに苦笑いをした。ホワイトハウスでの戦いの後、FBIやCIA、各軍の連中は大統領が無事であったことや副大統領と戦っていたこと、全ては副大統領の陰謀だったことを知ると大慌てで直ぐに撤収、事態の収拾に取り掛かった。大統領自らの全てを話し、ジーサードが無実であったことが分かり、アメリカ全土に広まっていたジーサードの指名手配は解かれ漸く彼の無実が証明された。勿論、アメリカのメディアも報道もこれらを知っててんやわんやしていたようだ。

 

 リチャードは逮捕、彼が使っていた兵器アイアンブリゲイドは今後誰にも使われないようにとデータも全て削除された。

 事件から数日後、ヤンはいつも通りにテキサス州の武偵校へと帰って行った。何やらAランクからSランクに格上げされたらしい。彼女は大はしゃぎして喜んでいた。またジーサードリーグに入ることを強く希望していたそうだが断られたようだ。そしてヤンはジーサードといつか手合わせする約束をしてヨーロッパで任務を受けている妹の応援に行った。

 

 フランクはすぐにメディアから引っ張りだこになっていたようだ。一体いつ撮ったのだという写真やこの事件で集めたネタを公開するはずだったのだが、全ての写真はマッシュに没収されてしまった。折角集めたのにとぼやいていたがジーサードから貰ったネタに興味を持ち始め、海外へネタのある場所へと向かっていった。今後、フランクは『N』の真相を暴く為に調べるようだ。

 

 ローガンはマイケルから再び戻らないかと尋ねられ、ジーサードから『暇ならジーサードリーグに来ないか?』とスカウトされた。しかしローガンは首を横に振り『自分の道は自分で進む、こう見えて忙しいのでな』と断った。オクラホマ州の山へ帰ったのか、またはた一人で『N』を探る旅に出たのか、追及はしなかった。もしもの時には力になると言ったのできっとまた会えるだろう。

 

 そしてマイケルは大統領が行方不明とアメリカ全土で混乱が起きていたが、事件解決後は一気に支持率が登り上がったようだ。アメリカを守る為、『戦う大統領』として、再び立ち上がった。市民も武偵や警察も軍人も共に手を取り合って、共に助け合い、力を合わせて行けばどんな困難にも乗り越えられる、そう演説するマイケルの表情は普段の時よりもずっと逞しかった。

 

「ま、終わり良ければ総て良しってやつだな」

「よーし、日本に帰ったらさっそくお寿司を食いに行こうぜ‼」

「流石たっくん!帰って祝勝会ってやつか!」

 

「?ナオト様、どうかいたしましたか?」

「‥‥なんか忘れているような気が‥‥」

 

「やっぱり、ここにいた」

 

 タクトとカズキは寿司パーティーとはしゃぎ、ナオトは何かを忘れているような、そんな事を悩んでいる最中、カツェが大きな旅行ケースを引きながら来た。

 

「あれ?カツェ、どっか行くの?」

 

「まあな。ジョージ神父から戻るよう伝言が来てな、あたしはこれからジョージ神父のいるイギリスへ戻るぜ。神父からの情報じゃ、ようやく色金を巡る戦役が終わりそうだってさ」

 

 ジョージ神父からの話によれば数日前、イギリスでキンジとアリアはホームズと再会し覇美のいる鬼の島へと向かったという。今頃、キンジとアリアは色金の最後の戦いでもしているだろう。漸く肩の荷が下りたとカツェはほっと安堵していたが、肝心のカズキ達はキョトンと首を傾げていた。

 

「いろかね?何それ?」

「というかまだ戦役してたのか」

「…そんな事あったんだな」

「お寿司は回らない所がいいな!」

 

「ああ、やっぱりお前らの事だから絶対に忘れてるだろうと思ったぜ」

 

 カツェは呆れて頭を抱えた。確かに彼らは今、【十四の銀河】の秘宝を探し、『N』と戦いを繰り広げている。どちらかというと彼らが次の戦いへ一歩先に進んでいるだろう。戦役は終われどまだ何が起こるか油断はできない。

 

「ところで、お前らフライトの時間は大丈夫なのか?」

 

 カツェは気になっていたことを尋ねた。こいつらはいつからこのロビーにいたのか、今から飛行機に乗るとならば時間を気にしていなかった事が気になっていた。

 

「あー、まだまだ余裕。何ならここに住みたいってレベルだぜ」

「チケットはちゃんとケイスケが持ってるしな!」

 

「は?俺は持ってねえぞ?」

 

 ケイスケの言葉にカズキとタクトは凍り付いた。今まで喧しいテンションだったのが一気に落ち込み、何やら焦り始めた。

 

「え、ちょ、ケイスケが持ってないのか?」

 

「だから俺じゃねえって。確か‥‥ナオトだったはず‥‥」

 

 ケイスケはごくりと生唾を呑んで恐る恐るナオトの方へ視線を向ける。ナオトはガサゴソと鞄の中を漁っていた。まさか無くしてはいないだろうか、3人の表情が険しくなっていた。鞄の中を漁っていたナオトはドヤ顔で封筒を取り出した。

 

「ここに入れておいた」

 

「よっしゃ‼流石はナオトだぜ‼」

「あっぶねー…冷や冷やさせやがって」

「それで、時間は?」

 

「待ってろ、飛行機の時間は‥‥あっ」

 

 チケットを確認したナオトはただ一言こぼして固まった。明らかにこれはヤバいやつだという雰囲気は確定的に明らか。じっとこちらを見てくるカズキ達にナオトは無言で渡す。

 

「時間は‥‥ってお前‼あと10分しかねえじゃねえか!?」

「はあああっ!?ナオト‼なんでこんな時間にしたんだよ!?」

 

「仕方ねえだろ!確認する暇がなかっただよ‼」

 

「お前…お土産買う時間がないじゃんか‼」

 

 より一層喧しく騒ぐ4人にカツェはやっぱりと呆れて肩を竦めた。4人組を他所にリサはカツェにペコリとお辞儀をする。

 

「それではカツェ様、私達はお先に失礼しますね」

「ああ、あのバカ4人を頼んだぜ?」

 

 カツェはニッと笑い、急ぎサンドイッチを口に放り込むカズキ、荷物を両手で抱えて走るナオト、お土産を買いたいと駄々をこねるタクトを引っ張るケイスケを見つめた。

 

「ふぁふあふぁふぇ、もふぁふぁふぉうふぇ‼(訳:じゃあカツェ、また会おうぜ‼」

「リサ、荷物持つの手伝って‥‥‼」

「ほら行くぞたっくん‼お土産はあっちでも買えるからいいだろ‼」

「いやだああああ!ここで買うんだあぁぁっ‼」

 

 嵐の如く、カズキ達は出国ゲートへと急ぎ走って行った。彼らを見送ったカツェはやれやれと苦笑いをした。始めから終わりまで尽きぬことなく騒ぐ彼らとドンパチするのは悪くはない。

 

「というか‥‥あいつら、勿体ないなー」

 

____

 

「ったく‥‥あのバカ共、やっぱり帰りやがったか」

「タクト先輩達だもん、帰る時は台風の様に物凄い速さで帰るからね…」

 

 ホワイトハウスでの大統領の記者会見、ジーサードとかなめは大統領の演説を裏方で見守っていた。大統領はタクト達にホワイトハウスへ来てくれるよう頼んだのだが、やはり彼らは来なかった。

 

「ま、あの騒がしい4人組らしいっちゃらしいな」

「けど、タクト先輩達勿体ないよねー‥‥」

 

 大統領がカズキ達を呼んだ理由、それは大統領の命を守り、副大統領の陰謀を阻止し、そしてアメリカを守ったことにより彼らをSランク武偵より上位のRランク武偵へと昇格及び勲章を授与する予定だったのだ。

 それを彼らはまさかのドタキャンをしたというのだから、本当に勿体無い。ジーサードとかなめは苦笑いをした。

 

「終わり良ければ総て良しだな‥‥それじゃあ行くぞ」

「?何処に行くの?」

 

「兄貴から、いやアリアから連絡が来た。色金を宇宙へ帰すから運ぶの手伝えってな」

 

 一仕事終えたと思いきやまた別の仕事が入って来た。ジーサードはくたびれたようにため息をつくが安堵の表情を浮かべていた。

 

「サード、楽しそうだね」

「まあな、やっとひと段落つけそうだ」

 

___

 

「‥‥」

 

 マイケルは一演説終えてカズキ達が来るのを待っていたが一向に来ない。どこを見回しても彼らの姿は見えず、彼らの喧しい声も聞こえてこない。もう彼らは帰ってしまったのだろうかとマイケルは遠くを眺めた。

 

 報道陣はマイケルが『命の恩人』の話をしていたのだが途中でやめてしまったことに戸惑いの声を上げていた。もしかしたらここに呼んできているのかもしれない、彼らの登場を待っているのかもしれない、もしかして台詞を忘れたのかとざわつき始める。

 

 その時、大統領のポケットに入れていた携帯がメール受信の音を鳴らす。本当は此処で携帯を確認すべきではないのだが、マイケルは携帯を開きメールを確認した。内容を見たマイケルはふっと笑った。

 

【大統領、バーーーイ‼ PS.ホワイトハウス壊してゴメンネ!】

 

 送り主はタクトで、簡単な文章とカズキ達が映っている写真が添付されていた。大統領が友達で、気さくにメールを送り、ホワイトハウスにダイレクトアタックした人物は世界中を探してもきっと彼しかいないだろう。

 

「あ、あの大統領‥‥貴方が言う『命の恩人』とは一体誰なのですか‥‥?」

 

 報道陣の一人がマイケルに質問をした。マイケルは彼らの名前を言おうとしたが、途中で止めた。大統領はタクト達と出会った時から彼らとハチャメチャな逃走劇をし、強大な敵と戦い、共に力を合わせて戦い抜いた場面を思い出す。

 

 マイケルはあの時、タクトが自分に言ってくれた言葉を思い出した。

 

「一言で言えば‥‥ソウルメイトですね」

 

 彼らが言うには、どんな困難をも乗り越えるサイキョーの絆で繋がれた親友、だそうだ。

 

 

____

 

「はー、やっぱ畳が落ち着くわー‥‥」

「俺、畳の化身になるー‥‥」

 

「いい加減起きろオラ。掃除の邪魔だ」

 

 ケイスケは掃除機を持って和室で寝転がるカズキとタクトを蹴とばす。アメリカから帰国し、数週間が経過した。カツェが言っていたとおり、戦役は既に終わったようでドンパチ騒ぎが無く何処か静かになっていた。カズキ達は時差ボケと眠気と戦いながら普通に授業を受け、普通に何事もなく学校生活を過ごした。今は春休み終盤、それにも関わらずカズキとタクトはたれぱんだのようにだらけきったように寛いでいた。

 

「ったく、お前らは吞気すぎるだろ。もうすぐ俺達は3年になるんだぞ?」

 

「へーき、へーき」

「俺は無敵だっ」

 

 カズキとタクトはだらだらと寝転がりながらリビングへと移動する。本当に大丈夫なのかとケイスケはため息をついた。自分達は3年生になる。それは武偵校での生活で最後の一年になるのだ。3年生となると進路いう存在に悩まされる。身分を隠し一般の大学へ進学する者、防大または防衛医大へ進学する者、独立して個人事務所を経営する者、武偵企業に就職する者、色々な道がある。2年次に結成したチームがバラバラになるのは当たり前で固まって同じ道に進むのはごくまれと聞く。

 

「本当に大丈夫かっての‥‥リサ、ナオトは?」

「ナオト様は縁側でうたた寝をしてます。時折、何か考え事をしているようで‥‥」

 

 リサは和室の縁側で日向ぼっこしながら何か考えて腕を組み、眠たそうにしているナオトを見つめる。いつも通りなのか、または本当に悩んでいるのかよく分からないがナオトなら大丈夫だろうとケイスケは考えた。

 

「うーん…やっぱなんか忘れてるよな…?」

 

 ナオトは思い出せそうで思い出せない事にモヤモヤしていた。何か誰かに頼まれごとをしていたような、大事な事を忘れているような気がして気になっていた。

 

 その時、ほのぼのとした空間を遮るように、携帯を着信音が鳴り響いた。

 

「おい、携帯鳴ってんぞ?」

 

「おお…ん?鳴ってるのは俺だけじゃないな。おいナオトー!お前のも鳴ってるぜ!」

 

「‥‥ん。ケイスケとカズキのも鳴ってる」

 

「むっ!俺にも見える!俺の携帯が鳴ってるぜ‼」

 

 カズキ達はそれぞれ自分の携帯を取り出して電話の掛けてきた相手を確認し、電話のスイッチを押した。

 

「「「「もしもし?」」」」

 

 

 まさかこれが新しい戦いの幕開けになるとは4人共思いもしなかった。




 たっくん、大統領とソウルメイトになる。

 戦役が終わり、次なる『N』との戦いが始まる‥‥!といいなぁ‥‥

 好きな言葉は 終わり良ければ総て良し です

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