カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 新章、突撃です

 戦役後の理子りんの絵が何かとエロ可愛い気がする
 ここからはかなり独自展開が進展いたします(焼き土下座


7 Days Crisis
109話


DAY:0

「なんで呼ばれたんだろ‥‥」

 

 カズキは欠伸をしながら武偵校、教務科棟の廊下を歩いていた。折角の春休みを最後までだらだらと寝過ごしたかったのに、突然の御呼ばれの電話で仕方なしに武偵校までやって来たのだった。

 

「吹雪ぃ!三時間も遅れて来るたぁいい度胸してんじゃねえか…?」

 

 カズキが向かった先にある教員室、その入り口の前で蘭豹が額に青筋を浮かばせ腕を組んで待っていた。蘭豹はイライラしながらカズキに怒鳴るが当の本人は全く気にせずに眠たそうにお辞儀をする。

 

「あ、蘭豹先生おざまーす‥‥そんなに怒ると化粧崩れますよ?」

「誰のせいで怒ってると思ってやがんだコラ‼電話で早く来いって言ってただろ‼」

 

 カズキに電話を掛けたのは蘭豹だった。内容は詳しく教えてくれなかったが、『大事な事がある。一時間で武偵校の教員室へ来い』と言われたのであった。カズキはのんびりと今日の晩御飯は何かなと考えながら向かい、結果かなり遅れてやって来たのだ。

 

「ほら、かの剣豪も決闘に遅れてやって来たじゃないですか」

「てめえはそんなにあたしを怒らせてえか‼」

 

 堪忍袋の緒が切れたようで蘭豹はカズキにアイアンクローをお見舞いした。ミシミシと頭を思い切り掴かまれたカズキはようやく目が覚めた。

 

「あだだだだ!?すんません、すんませんでしたあぁぁぁっ‼」

「けっ、目が覚めたか?さっさと行くぞ」

 

「え…?どちらへ?」

「校長室だ。緑松校長がお前に用があるんだそうだ」

 

 手を放した蘭豹はそのままカズキを校長室へと連れて行く。カズキは何で校長が自分を呼んだのか理由を考えていたがいくら考えても思いつかなかった。考えているうちに校長室へと辿り着く。蘭豹はノックし、ポケーっとしていたカズキを後ろから蹴って校長室へと入れた。

 

 

「やあ、カズキくん。待っていましたよ」

 

 何処にでもいるような中年男性の姿をした緑松校長がにこやかにカズキを迎えた。これで会うのは3度目になるが緑松校長がどんな男性だったのかやはり思い出せない。『見える透明人間』という名の通り、本当によく分からない。きょとんとするカズキに緑松校長は話を進めた。

 

「カズキくん、君を呼んだのは進路についての話です。率直に言いましょう。君は今、()()()()()()()()()

 

「‥‥へ?」

 

 校長から告げられた留年という言葉を聞いてカズキは石像の様に固まった。まさか自分が留年するのかとだらだらと冷や汗が流れ、ちゃんと単位を考えて授業を受けたはずなのに何処かミスがあったのかと心の中がザワザワとどぎまぎしていた。緑松校長はカズキの通信簿を確認してカズキを見つめた。

 

「単位は残念ながらほんの僅差で足りていない。本来ならば、留年なのですが‥‥君は運が良かった」

 

 それはどういう事なのか、そして留年『しかけている』という意味が何なのかカズキは混乱していた。

 

「イギリス政府や女王陛下から、そしてアメリカ大統領から君達の活躍がかなり評価されているのですよ。国の窮地から救ってくれたと。勲章を授与、Rランク武偵へと昇格させる予定だったとか」

 

「お前ら、外で何やらかしたんだ?」

 

 何をやらかしたと言えばイギリスでは国を包んでいた腐食の霧を操っていたブラックウッド卿と戦って霧を晴らし、アメリカでは大統領を助けて国を乗っ取ろうとした副大統領と戦った。カズキは主にたっくんが魔法で大暴れし、たっくんがホワイトハウスに車で突っ込んだ事ぐらいしか思いつかなかった。

 

「これだけの評価を貰っているのに単位が足りないという事で留年させるのは私も少し悩みました。そこでカズキくん、救済措置として君には課題をやってもらう事にしました」

 

 救済措置と聞いてカズキの表情が明るくなった。これぞ地獄に仏、鶴の一声、神様仏様、カズキは緑松校長をありがたやありがたやと拝んだ。

 

「明日から7日間、2年生とチームを組んで足りていない単位を獲得してください。勿論、授業は同じチームのクラス、2年生と一緒にそのまま受けてもらいます」

 

 いわば半分留年し、7日間の間に単位を稼げば進級できるという事。それはアメとムチの措置だった。武偵校には上下関係が厳しく、留年となれば今まで見下していた下級生から冷たい視線が集中され、これまでやられた『御礼』もされ兼ねない。

 

 しかし、カズキにとっては全く気にはしていない事だった。

 

「まっかせて下さいよ‼俺にかかればチョチョイノチョイですぜ‼」

 

 ドヤ顔で自信満々に答えたカズキに蘭豹は何処からそんな自信があるのかと呆れて頭を抱え、緑松校長は満足して頷いた。

 

「それは良かった。それではカズキくん、明日から頑張ってくださいね」

 

「ほんまにこいつはアホや‥‥吹雪、明日から2年C組や。チームは適当に組ませる。変装は‥‥お前下手くそだからせんでええわ。後しばらくは寮で過ごしてもらうからな」

 

 明日から頑張っていくぞとカズキは蘭豹の話を全く聞かないでフンスと張り切っていた。大丈夫だろうかと蘭豹はため息をついた。

 

___

 

「それで、何で俺を呼んだんですか?」

 

 最近新しくできた喫茶店でケイスケはコーヒーを啜りながら本題を尋ねた。オープン当日でしかも女性客が多く賑わっている。人混みの多さと少し機嫌の悪いケイスケの雰囲気に隣に座っていたリサは緊張していた。

 ケイスケの相席に座っていたのは武装検事の黒木だった。黒木はケイスケと同じようにコーヒーを啜り、営業スマイルを見せる。

 

「まずはケイスケくん、リサさん、進級おめでとうございます。これからもっと精進してくださいね」

 

 とりあえずは留年は避けられたとケイスケは内心ほっとした。今は自分とリサだけ進級の確認はできたがカズキ達がどうなっているのかは気になっていた。

 

「他のメンバ―の方にもお掛けしたのですが、連絡が取れたのはケイスケくんだけのようです…」

 

 どうやらカズキ達は今連絡が取れない状況になっているようだ。何か変な事に巻き込まれてなければいいのだがとケイスケは心配をする。だが今は自分の状況を気にしなければならない。

 

「ここで長く待つのはよろしくないですね。本題に入りましょう…まずは伊藤マキリの件について」

 

「あっ…」

 

 ケイスケはその名前を聞いてハッとした。そうだ、自分達は国際武装警官になる為の最初の試験として伊藤マキリを追ってイギリスやアメリカへ渡っていたのだった。イギリスでは捕え損ねたが、アメリカではすっかりその事を忘れてしまっていた。道理でナオトが何か忘れていると悩んでいたわけだ。しかも報告すらしていないとなると非常にマズイ。ケイスケは恐る恐る黒木に尋ねた。

 

「え、えっと結果は‥‥?」

 

「報告が無くてずっと気になっていたのですが、MI6の方から伊藤マキリと戦って捕え損ね、彼女を追ってアメリカへ渡ったとお聞きしましたよ。アメリカにはいなかったようですが‥‥アメリカで大統領を救助したと別の報告がありましたので及第点といたしましょう」

 

 にこやかに答える黒木にケイスケは冷や冷やしたと息を漏らした。一応はギリギリ合格らしい。

 

「彼女を追い詰めたという事は非常に評価しています…そこで、君達にある捜査をやってもらいたい」

 

 黒木のにこやかな表情が一転、真剣な表情に変わった。これから重要な事があるとケイスケはごくりと息を呑んだ。

 

「伊藤マキリが日本に戻って来たと報告がありました。彼女が何を企んでいるのか捜査し、できれば阻止をしてもらいたい」

 

 黒木は懐から一枚の写真を取り出してケイスケに渡した。その写真には貨物船が多く停泊している港の風景が写っており、遠くで見えにくいが伊藤マキリが軍用のトラックに乗り込む瞬間が写っていた。そのトラックには猿の顔の紋が描かれている。

 

「そのトラックは『猿楽製薬』が所持している物です」

 

 猿楽製薬と聞いてケイスケは眉をひそめる。猿楽製薬は医薬品、健康食品を製造している製薬会社だが、私設軍隊を所有している異色の会社だ。その猿楽製薬が伊藤マキリと何か関係があるのか、ケイスケは一層深く考えた。

 

「伊藤マキリも含めて、この猿楽製薬も調べろってか‥‥」

 

 黒木は静かに頷いた。束の間の休息だったが早速厄介事に巻き込まれた、ケイスケはやれやれとため息をつく。しかし、カズキ達と連絡が取れないとなるとこれを自分とリサの二人でやるしかなくなる。果たしてできるのかとケイスケは悩んだ。

 

 そんなケイスケの悩みを察したのか、黒木は再びにこやかな表情に戻る。

 

「確かに今の段階ではカズキくん達と連絡が取れない以上、お二人にやってもらう事になるのですが‥‥今回は助っ人をお呼びいたしました」

 

 そろそろ来るのですがと黒木は腕時計を確認する。ケイスケは助っ人と聞いて嫌な予感がしたが、それはすぐに実現してしまった。手を振りながらこっちに来る人物を見てケイスケは項垂れた。

 

「お前‥‥マジかよ‥‥」

 

「もー、ケーくんがっかりしすぎー‼理子はガチャでいえばウルトラレアですぞー?」

 

 黒木が言っていた助っ人、それはバスカビールの峰理子だった。まさか理子と組むことになるとは思いもしなかった。項垂れるケイスケを他所に黒木は営業スマイルを見せる。

 

「それではケイスケくん、峰理子さんと一緒に捜査をよろしくお願いいたしますね」

 

「ブ、ラジャー‼理子とケーくんが組めば鬼に金棒だよー♪」

「早く帰りたい‥‥」

 

 はしゃいでケイスケと腕を組む理子を他所にケイスケは遠い眼差しをしていた。リサがジト目で不機嫌そうにケイスケを見つめていたのにはケイスケも気付かなかった。

 

____

 

「ごめん、道に迷った」

 

 ナオトは学園島の海沿いの公園にいた。ナオトは電話でここの公園に来るように言われたのだが、案の定道に迷って迷子になっていた。長い事待たされていたのか、彼が来るのを待っていた電話の主は苦笑いで頷く。

 

「まあナオトくんの事だから絶対に道に迷うと思ってたよ‥‥でも、寄り道はしてたんだね」

 

 ナオトに電話を掛けた人物、クラスメイトの不知火亮は苦笑いしてナオトを見つめる。ナオトの片手にはたい焼きが、もう片方には和菓子の紙袋を持っていた。

 

「イチゴ大福には目が無いから‥‥食べる?」

 

「い、いやいいよ」

 

 首を横に振る不知火にナオトは「美味しいのに…」と残念そうにしながらたい焼きを食べ終わるとイチゴ大福を食べ始めた。

 

「それよりナオトくん…君に謝らなきゃいけない事があるんだ」

 

「‥‥?机の中に隠してたカズキのカレーパン食べた事?」

「それはタクトくんが‥‥って、そういう事じゃなくて」

 

「‥‥カズキのイスにブーブークッション仕掛けた事?」

「それもタクトくんが‥‥うん、話が進まないからもう言うね?君を嵌めるつもりじゃない。君に会いたい人達がいるから呼んだんだ」

 

 不知火が申し訳なさそうに見つめる。その時、ナオトは『囲まれている』ことに気づいた。誰かにつけられている気がしていたが、囲まれている気配は察せなかった。ナオトの周りにはツメエリの少年、カッチリとスーツを着た男性、和服を着た丸坊主の巨漢、砂漠色のトレンチコートを着た鋭い目つきの男性、そして黒いコートを着て左腰に2本の刀を提げた口元までフードを覆った男がいた。黒いコートの男はゆっくりとナオトの前まで歩き、じっとナオトを見つめた。

 

「よう‥‥久しぶりだな」

 

 ナオトはその男を見て目を丸くした。そのまま時間が流れ、緊張と静寂が包まれる。ナオトはじっと見つめていたがゆっくりと口を開いた。

 

「‥‥‥‥誰だっけ?」

 

 その一言で不知火と黒いコートの男は盛大にズッコケた。ツメエリの少年はポカンとし、丸坊主の巨漢は大笑いし、スーツの男は呆れ、鋭い目つきの男は苛立ちながらため息をつく。どうやら緊迫した雰囲気は崩壊したようだ。

 

「おい!?忘れたのかよ!?俺だ、『妖刕』の原田静刃だ‼」

「‥‥あー…」

 

 ナオトはやっと思い出して納得した。黒いコートの男はかつてドイツで戦い、共にドイツに現れたゾンビを退治し、イタリアでも一緒に戦った原田静刃だった。しかしナオトはハテナと首を傾げる。あの時イタリアで静刃はアリスベル達と共に未来へ帰ったはず、どうしてこの日本にいるのか。

 

「獅堂さん、本当にこんなガキンチョに手伝ってもらうんですか?ランキングにも乗ってないのに」

 

 スーツの男は呆れながら獅堂と呼ばれた目つきの悪い男性に尋ねた。獅堂は苦虫を嚙み潰したような視線でナオトを見つめていた。

 

「遠山は19位だったが、この『くそったれ4人組』は色々とやらかしてきた‥‥こいつらの場合、ランキングなぞ無意味だ。中でもこいつは本気で戦えば遠山や可鵡偉と並ぶ‥‥くそったれ共の中でそれなりにまともだ」

 

「まあ獅堂さんの威圧に全く動じてませんしね…」

 

 ツメエリの少年は納得して頷く。獅堂はずかずかと歩み寄りナオトをじろりと睨んだ。ナオトは不思議そうに首を傾げる。

 

「江尾ナオト‥‥お前にはこれまでお前らがやらかした『ツケ』を少しの間払ってもらう」

 

「????」

 

 ナオトは理解しておらず終始頭にハテナを浮かばせて首を傾げる。こいつ絶対に理解してないと獅堂は思いながらも話を進めた。

 

「お前らも伊藤マキリを追っているだろ?今回は共同捜査となる‥‥原田と俺達公安0課と手を組んで追う。拒否権はねえ、いいな?」

 

「‥‥わかった」

 

 ナオトは有無言わず頷く。ツケとなるときっとカズキかタクトが何かしでかしたのだろう、怒られる前に自分がやるしかないとナオトはそう考えて承知したのだった。

 

「はっ、物分かりがいい奴で少し安心したぜ。どっかのガキは反発して戦ってきたがなry」

「ところで伊藤マキリって誰だっけ?」

 

 その一言に獅堂以外の周り面子が盛大にズッコケた。

 

___

 

「やっほー‼お待たせ―‼」

 

 タクトは元気一杯で扉を開けた。タクトは武偵校から反対の方角にある高層ビルの一室にいた。そこはミーティングルームのようで高級そうなソファーやテーブルが置かれている。

 

「おかえり、バカ息子ーっ‼」

「タクト!お前、アメリカで何やらかした!?」

 

 そんなタクトを来るのを待っていたのはタクトの母の菊池サラコと父の菊池雅人だった。サラコは大喜びでタクトを撫で、雅人は焦りながらタクトを掴んで揺らす。言わずもがな、このビルは母サラコの所有するビルであった。

 

「へへ、母ちゃん父ちゃんただいまー!」

 

「やっぱうちのタクトは天才だわー、もう最高。どんどんやっちまいな!」

「天災だよ!?ホワイトハウスに突っ込んだと聞いて寿命が半分以下に縮むかと思ったぞ‼おかげで事後処理が大変だったんだからな!」

 

 片方は嬉しそうに、片方はプンスカしながらタクトに話す。タクトを呼んだのは母のサラコだった。

 

「ところで母ちゃん、俺を呼んだのは何か用事?」

 

「そうね、あんたを呼んだのは話をしたいって人がいるから呼んだのよ」

 

 サラコは後ろへ振り向きその人物に視線を向けた。タクトも同じように視線を向け、目を丸くした。そこのいたのはイ・ウーのリーダーであり、ジョージ神父の弟、そしてアリアの曾お爺さんであるシャーロックホームズだった。そしてシャーロックの隣にはセーラがジト目でタクトを見つめていた。タクトは嬉しそうに手を振った。

 

「シャーロックさん、セーラちゃん‼ひっさしぶりー‼」

 

「やあタクト君、久しぶりだね」

「私は会いたくなかったけど‥‥」

 

「そんなこと言うなよセーラちゃーん。俺との仲じゃないかー」

「ちょ、こらっ!抱き着こうとするな!」

 

 ハグしてこようとするタクトをセーラは押し返す。その光景にシャーロックは楽しそうに笑い、サラコは何度も写真を撮った。

 

「もしかして俺に用事ってシャーロックさん?」

「私も、その話を聞いてない…無理矢理連れてこられた」

 

 セーラはムスッとしてシャーロックをジト目で睨む。シャーロックは頷いて話を始めた。

 

「今回は重要な事だから、皆に黙っていたんだ。これはタクトくん、そして菊池サラコさんに頼みたい事なんだ」

 

 シャーロックはそう述べると真剣な眼差しでタクトを見つめた。これはもしかすると一大事になり兼ねない事態なのだろうとセーラは緊張して息を呑む。

 

「タクト君‥‥君に、次のイ・ウーのリーダーになってもらいたい」

 

「え?」

「はぁっ!?」

 

 タクトはキョトンとし、セーラは驚愕した。まさかシャーロックからリーダーになってくれという言葉は聞いたこともない、もしこれが漏れればそれはまさにどったんばったん大騒ぎのレベルじゃなくなる、

 

「きょ、教授‼それ本気なの‥‥!?」

 

「本気だとも。今後のイ・ウーを導けるのはタクト君、菊池財閥に任せてみようと思う。今のイ・ウーは二つに別れている」

 

 今のイ・ウーはシャーロックが『死亡』という事で一時抜けてしまったため、世界に対して侵略行為を行う『主戦派』と教授の気質を継ぎ、己を鍛錬する『研鑽派』に分裂してしまった。イ・ウーの組織は消滅しても戦役後、その二派にわかれて存在し続けている。

 

「イロカネの一件は一時解決したし、これ以上混迷させるわけにはいかないからね…」

 

「し、しかし…!彼に任せるとなると大問題になる‥‥!」

 

 セーラは焦る。今までシャーロックについてきた。それが急遽タクトにバトンタッチとなると他のイ・ウーのメンバーは大反発し、彼を殺しにかかるに違いない。

 

「教授殿、僕も彼女の意見に賛成する‥‥」

 

 ずっと黙っていた雅人が口を開いた。セーラはタクトの父親が反対するとは思いもしなかったが、少し安堵した。

 

「タクトは武偵だ‥‥タクトにイ・ウーを引き継ぐメリットは何もない。組織そのものに混乱を招き共倒れするだけですよ?」 

 

「僕も考えたよ…じゃあ、タクトに秘書官、パートナーとしてセーラを付けてあげよう」

 

「教授!?」

 

 突然の発言にセーラはギョッとした。雅人も驚き首を横に振る。

 

「きょ、教授殿‥‥それは押しつけがましいのでは?それに何のメリットもry」

 

「母ちゃん、俺リーダーになる!なんかかっこいいしワクワクしてきた‼」

「やったね、タクト‼明日に式を挙げなきゃ‼もしもし、おばあちゃん‼タクトにお嫁ができたわーっ‼」

 

 タクトは大喜びし、サラコは大歓喜していた。セーラと雅人は盛大にズッコケる。

 

「ちょ、サラコ!?」

「そう焦んなさって、私もそれなりに考えてるわよ。イ・ウーはそもそも超人の育成機関、人材の宝庫。ビジネスにはもってこいだわ。私のやろうとしているプランに丁度いいじゃないの」

 

 サラコはにんまりとゲスそうな笑みをこぼす。初めて見るサラコのその笑顔にセーラはぞっとした。菊池サラコ、武器商を始め世界中に様々なビジネスを広げている人物。裏ではボンゴレやキャバッローネといったマフィアやら色々とパイプがあり、イ・ウーでも要注意人物として知られていた。

 

「プランって‥‥『学校』のことか。まあそれを言うなら仕方ないけどさ。でも教授殿、タクトにリーダーを頼む本当の理由を隠しているのでは?」

 

 雅人はため息をついてシャーロックに尋ねた。シャーロックはご名答と言わんばかりに嬉しそうに頷く。

 

「その通り、実は条理予知で僕は死ぬかもしれない事がわかったんだ…」

 

 それを聞いたセーラは更に驚愕した。シャーロックが死ぬかもしれない事、その予知を弱々しく述べるシャーロックを初めて見た。

 

「だからもしもの事があるかもしれない、僕がいない間任せられるのはタクト君、そして菊池財閥しかないからね。遠山くんと同じように僕の条理予知を覆した一人だ」

 

 あまり過大評価しすぎではとセーラはドヤ顔するタクトをジト目で睨む。彼は褒めれば褒める程調子に乗ってやらかす。まさか自分をタクトのパートナーにさせたのはタクトの暴走を止めるストッパー役をしてもらうからではないだろうかと思えてきた。

 

「教授がそこまでいうならやる‥‥でも、変な事したらすぐに解消させてもらう」

 

「これで全員承諾ってわけね。それじゃあタクト、頑張んなさいよ?あとおばあちゃんとおじいちゃんが早くひ孫の顔を見たいってさ!」

 

「ふっ…今日から俺がリーダーだ‼セーラちゃん、俺についてこい‼」

 

 セーラの話も聞かず、タクトは『リーダー』という言葉にかなり満足し、大はしゃぎをしていた。人の話を聞かないタクト、更にあれやこれやと勝手に進めるサラコ、暴走する二人に頭を抱えている雅人、菊池家の人間はフリーダムすぎる。

 

「‥‥色んな意味でまずい‥‥」

 

 (仮)であるがタクトがイ・ウーのリーダーになってしまったら明日にでも崩壊してしまいそうで怖い。ジャンヌや理子、アリアがこの事を知ってしまったらどうするだろうか…セーラは半ば諦め気味で遠くを見つめた。





 さっそくバラバラになった4人組、果たしてどうなる…!なんやかんやで合流する気がする(オイ

 猿楽製薬…かのカオスな4人組が一話だけですがゲストとして声優をし、主題歌を歌ったSFオカルトホラーアニメ、『影鰐』から。ストーリーは短いですが、UMAとかが好きな人は好きかも。

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