カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 緋弾のアリア27巻が25日に発売するようですね…これは楽しみ‼

 


111話

原田静刃は何度目かのため息をついた。もう数えるほどの回数は余裕で超えているだろう。厄介なやつと同棲しているのにこれほど早く帰りたいと思った事もない。

 

「原田さん、いつになったらアパートに帰れるんですか…?」

 

 同行していた可鵡偉さえもくたびれていい加減早く帰りたい様子であった。それもそのはず、可鵡偉は両手に野菜が沢山詰め込まれた袋を提げていた。そして自分は片手に大物の鰆が3尾も入っている発泡スチロールを抱えている。これ以上油を売るわけにはいかない、静刃は痺れを切らした。

 

「おい、いつまで長話をしている。さっさと帰るぞ」

 

「ん?もうそんな時間か?」

 

 肉屋の店主と長話をしていたナオトを呼び止める。ナオトはかれこれ10分ほど店主の愚痴をただ聞いて頷いていただけだった。これでやっと解放されると静刃と可鵡偉はほっと安堵する。

 

「じゃあミンチと豚ローススライスを4人前で」

「まいど!ナオトちゃん、亭主の愚痴を聞いてくれたお礼におまけしておくわよ!」

「ん、請求書は公安0課に」

 

「おいこらやめろ」

「?減るもんじゃないしいいだろ?」

「よくねえよ!?獅堂を怒らせるつもりか!?というかこれで何度目だ!」

 

 静刃と可鵡偉は今後の活動のためにナオトを墨田区錦糸町にあるアパートへと連れて行くはずだったのだが、商店街へ通りかかると八百屋の店主がナオトの顔を見て呼んだのを始め、魚屋や惣菜屋、パン屋、和菓子屋と次々に呼び止められてナオトと長話をしたのであった。そのたびにナオトは何かを買い、気が付けば抱えきれない程の買い物をしてしまっていた。老人から子供までこの商店街の誰もかれもがナオトの顔知っているようですぐに声を掛けてくる。

 

「お前、なんで人気者なんだよ」

「んー…単位稼ぎによくここでクエストをやってたから」

 

 ナオト曰く、留年にならない為にもこつこつとこっそりと店番から子供のお守りやら店内の掃除まで小さいクエストをやり続けていたのだ。

 

「はぁ…原田さん、呼ぶ人を間違えたんじゃないですか?」

「そんな気がするが、いたのがナオトしかなかった。仕方ないだろ」

 

 文句を言う可鵡偉を静刃はため息をつきながら宥める。本当はナオトだけでなく他の面子も呼びたかった。しかし、カズキやケイスケ、タクトに連絡をしようとしたが繋がらず、唯一繋がったのはナオトだけだったと不知火はそう報告していた。マイペースで目を離せばすぐに迷子になりそうになるナオトの手綱をとるのはかなりの難題な気がしてきた。

 

「いちいち道草を食ってしまったら日が暮れる。さっさと行くぞ」

「えー、この先のたい焼き屋のたい焼き安くて美味しいのに」

「だからそんな暇はないと言ってるだろ!?」

 

 ナオトはこのままたい焼きを食べるつもりだ。ここで時間を費やすわけにはいかないので静刃は無理矢理ナオトを引っ張り商店街を抜ける。そのままナオトを連れて騒然とした錦糸3丁目の奥まった場所にある日当たりの悪そうな安アパートへと辿り着いた。静刃はその一階にある『原田』とネームプレートが掛けてあるドアを開ける。

 

「帰ったぞ…」

「びょお、随分と遅い帰りだな。道にでも迷ったのかと思ったじょ」

 

 ナオトが寄り道して買った荷物を置いて静刃が疲れて玄関に腰かけていると、赤と青のオッドアイズをした長い髪もお洋服もピンク色な少女が禍々しい笑みを見せながら玄関へやってきた。その少女を見てナオトは「あ」と声を漏らす。

 

「鵺じゃん、久しぶり」

「おっ?誰かと思えばあの喧しい4人組のナオトか。しばらくぶりだじょ」

「ん。しばらく厄介になる」

「びょひひひ、また大暴れできそうな予感がするじょ。まあゆっくりせい」

「これ、お土産」

「ぬお、随分とまあ買い込んだなぁ。しばらくは飯に困らんじょ」

 

「おいこらちょっと待て」

 

 さっそく上がって買ってきた食材を鵺と共に台所へと運ぼうとするナオトを静刃は止めた。静刃はイラッとした表情でナオトを睨む。

 

「なんで俺は忘れてて鵺はしっかり覚えているんだよ!?」

 

 尋ねられたナオトは難しい表情をし腕を組んで悩んだ。そこまで考えるものかとツッコミたかったが唸りながら考えるナオトの答えを待つ。

 

「‥‥ビーム撃つから?」

「どういう基準だよ!?ガンダムか!?」

「寧ろガンタンク?」

「やかましいわ‼」

 

 静刃は腹を抱えて笑っている鵺にさっさと荷物を運ぶように言いつけると漸く居間に辿り着いたと安堵とくたびれの混じったため息を可鵡偉と共につく。台所ではナオトと鵺が今夜の献立は何にするかの談義をしている。

 

「原田さん、はやく本題を伝えた方がいいのでは?このままだとただ居候するだけですよ?」

 

 可鵡偉の言う通り、早めに伝えるべきだ。そうでもしなければナオトはただただフリーダムに動くだけ。今夜の献立が決まったのかさっそく鵺と共に料理をしようとしているナオトを引き留める。

 

「ナオト、これからやることは一度しか言わない。だから真面目に聞けよ?」

「ちょっと待って、鰆の西京焼きにしたいんだけど味噌ってどこにある?」

「‥‥そうだよな、こいつら真面目に聞くわけねえよな」

 

 静刃は項垂れながら頭を抱える。この喧しい4人組は真面目に人の話を聞かない。ドイツの時はどっかのバカがチェーンソーを振り回すわ見方が先陣切っているのに火炎瓶を投げるわ、イタリアではどっかのバカが装甲車で突撃して世界遺産を壊しかけた。自分がしっかりしなければ彼らの暴走を止めることができずまた何かやらかすに違いない。

 

「言い方を変える。俺達でやらなきゃいけない事がある。それだけは忘れるな」

「確か、佐藤マキリのこと?」

「伊藤マキリな。上からの命令だが俺達は伊藤マキリを捕えなければならない」

 

 ずっと鰆とにらめっこしていたナオトが静刃の方へ視線を向ける。ようやく話を聞く気になったかと静刃は内心ほっとして話を進めた。

 

「獅堂が言うには日本に戻って来た伊藤マキリは猿楽製薬を隠れ蓑して潜んでいるらしい」

 

 猿楽製薬といえば医薬品の開発の他に私設軍隊を保有している事でも有名な企業だ。銃器や戦車、潜水艦や戦闘機も保有していると聞く。

 

「猿楽製薬が『N』と通じてるとなれば伊藤マキリは連中を利用して何かしでかすやもしれん。そうなる前に、俺達で止めるぞ」

「…主に何をするんだ?」

「猿楽製薬の内部に侵入し、伊藤マキリが何を企んでいるのかを暴くのと猿楽製薬の摘発。そして潜んでいる伊藤マキリを見つけて捕える」

「つまり‥‥スパイ的な潜入捜査か?」

 

 何やらやる気満々な表情を見せる。やる気になってくれたのはいいが、果たしてこの騒がしい4人組は潜入捜査とか上手くできるのかどうか不安でいっぱいだった。

 

「兎に角、獅堂達と連携を取っていく。迷子になったり無茶な行動はするなよ?」

「だいたいわかった。鵺のビームでなんとかなるな」

「おう!破壊活動なら任せるじょ!」

「おいこら、話を聞いてたか?」

 

 やっぱりこいつらは潜入捜査とかには向いていない気がしてきた。できるだけ内密な行動をして欲しいと願うしかない。

 するとずっと黙ってナオトを見つめていた可鵡偉が立ち上がると再び調理に取り掛かろうとするナオトに歩み寄る。

 

「貴方達の事は聞きました。イギリスで伊藤マキリと戦い、あと一歩のところまで追いつめたようですね‥‥」

 

「‥‥」

 

 ナオトはそんな事あったっけ?みたいな表情で首を傾げていた。そんなナオトに可鵡偉は視線を鋭くしナオトを見つめる。

 

「言っては悪いと思いますが、それはマグレでしょう。貴方達ではマキリにもう二度と勝てない」

 

 挑発的にナオトを指摘する可鵡偉だがナオトは気にしていないようで、更には興味が失せたのか顔を合わせずに再び料理の準備に取り掛かろうとしていた。

 

「寧ろ、僕にとっては屈辱的ですね‥‥僕がマキリを殺さなければならないのに、貴方達の様な何を考えているのか分からない人たちに先を越されたのは少し癪です」

 

 静刃は可鵡偉がだんだんと殺気立っているのに気づく。可夢偉が静かに怒っており、今にもナオトを殺しにかかろうとしている。肝心のナオトはその殺意丸出しの可鵡偉に気づいていないのか呑気に料理を始めてしまっている。このままだと可鵡偉は本気でナオトを殺すつもりだ。

 

「可鵡偉、そこまでにしておけ‥‥」

 

 静刃は刀を握りいつでも可鵡偉を止めれるように殺気を放つが可鵡偉は止めようとしなかった。可鵡偉は2本の指を立てて静かに構えた。

 

「‥‥何故マキリと戦えたのか、その理由を確かめさせてもらいます。真面目にやらなければ死にますよ?」

 

 これが最後の警告だと言わんばかりに可鵡偉は告げるが、ナオトは動きを止めてチラリと可鵡偉を見ると興味がないようにすぐに料理に取り掛かりだす。全く相手にしていない事にさすがの可鵡偉も堪忍袋の緒が切れたのか一気に殺気立つ。

 

「―――ウラィ」

 

 可鵡偉は何語か分からない単語を口走った。だが静刃には分かっていた。可鵡偉が技を仕掛ける、可鵡偉はナオトを殺す勢いで技を放つのだ。可鵡偉はナオトの後頭部めがけて指貫を放った。すぐにでも止めに入るつもりだったが、静刃はなんとなく分かっていた。確かにあの4人組は何を考えているの分からないが‥‥やる時はやる喧しい4人組だと。

 

「―――っ!?」

 

 ナオトの後頭部に当たるかと思っていたがその直後に鈍い金属音が響いた。可鵡偉は目の前に起きたことに目を丸くする。可鵡偉の指剣はナオトが咄嗟に前に出した鍋の蓋に防がれたのだ。鍋の蓋は穴が開き、可鵡偉の2本指はナオトの顔の一歩手前で止められた。

 

「‥‥驚きました。もう既に見切っていたんですね…」

「んー‥‥伊藤マキリも同じように指貫してきたっけ」

 

 それを聞いた可鵡偉は更に目を丸くし、肩を竦めてため息をついた。

 

「分かりました。今回は江尾先輩の勝ち、という事で。一応それなりに実力があると認めますよ…」

 

 一応可鵡偉も認めてくれた。ひと悶着起きるかと思っていたがなんとか落ち着いた事に静刃はほっと安堵する。ただ、ナオトが何をしでかすかしっかり見張っておかなければこの先苦労が続くだろう。そう思うと静刃は憂鬱気味にため息を漏らした。

 

「鍋の蓋、壊しちゃったな」

「びょお、別に構わねえじょ。新しいのを買えばいい、どうせ経費で落ちるだろうし」

「なるほど、じゃあ明日にオーブンでも買いに行こう。シュークリームが食べたくなった」

 

「やめてください獅堂さんが激怒します」

「‥‥」

 

 なんだか胃が痛くなってきたと静刃は頭を抱えた。

 

___

 

「ふっふっふ‥‥俺がリーダーだ」

 

 高層ビルの一室でタクトは高級そうな回転椅子で回転しながらドヤ顔をする。彼のデスクの隣でずっと立っているセーラは呆れてジト目でタクトを睨んだ。

 

「たっくん、リーダーとしてちゃんと自覚して」

「何を言っているんだ、セーラちゃん。俺は毎日自覚してるぜ!」

 

 どうして自分はこんなところにいるのだろう。セーラは遠い目で窓から見える景色に視線を向けた。今日からまだ仮ではあるがこのバカ丸出しの男、菊池タクトが秘密結社であるイ・ウーのリーダーになってしまった。気分はまるで地球最後の日を実感しているようだ。

 

「電話すればすぐにピザでも持ってきてくれるのかな?」

「やめて」

 

 黒塗りの電話機に手を伸ばすタクトを制止する。彼の行動一つ一つがイ・ウーを滅ぼしかけない。何時起爆するか分からない時限爆弾を抱えているようでセーラはくたびれていた。

 

「元気だしなってセーラちゃん。母ちゃんがわざわざビルを貸切にしてくれたんだからもっと贅沢に派手にやろうぜ!」

「だからってなんで高層ビルを…というか菊池サラコは何を考えている」

「そだ、母ちゃんが式とか披露宴は何時やる?とか言ってたけど?」

「たっくんは黙ってて」

 

 今自分達がいるこのビルは母親の菊池サラコが『ご祝儀』とか言ってくれた物、自分達には手にあり余り過ぎる。菊池サラコが去る前にセーラは彼女に尋ねていた。イ・ウーを何に利用するのか。

 彼女の目的はシャーロックが死期が近づいていた事で不安定になり分断してしまっていた『主戦派』と『研鑽派』を統合させるつもりだ。この先は菊池サラコは教えてくれなかったが、恐らく自分達のような超能力集団を利用して傭兵集団でも何か企業するのかもしれない。タクトに後は任せて帰る前にサラコはセーラに『有り余る力をちゃんとした使い道で利用しないと勿体ない』と言っていた。世界に侵略行為を目論む『主戦派』もただ己の力を磨く『研鑽派』もイ・ウー全てをあの女は否定したのだ。よくよく考えると本当に恐ろしい人だとセーラは身震いする。

 

「ところでセーラちゃん」

「何?今考え事をしているんだから話しかけないで」

「リーダーって何すんの?」

 

 セーラは思い切りずっこけた。これまで深刻に考え事をしていたのに、何もわかっていない面をしているタクトのせいでいっきに緊張感が失せた。

 

「たっくんは何もしないで。私達が何とかするから、絶対に何もしないで」

「そう照れるなって。俺に任せておけ!シムシティとか結構やり込んだから得意だし」

 

 誰がそんな話をしている。タクトの言動で行動でますます疲れてきた。今すぐにここから出て行きたいが、彼の行動を止めることができるとすれば彼の隣にいる自分しかいない。

 

「これをみんなが知ったら‥‥すぐにでもクーデターが起こるかもしれない」

「ん?クレープ食べたい?注文する?」

「だから電話はしないで。というか私はそんなこと言ってない」

 

 昨晩、たまたま出会ったヒルダについタクトがイ・ウーのリーダーになったことを話したら物凄く驚愕し『あいつバカなの?死ぬの?』と言っていた。恐らく理子やジャンヌ、夾竹桃に伝えても同じ反応をするだろう。ましてやこの事を知らない他のイ・ウーのメンバーには伝えてはいけない気がしてきた。反発し、タクトを殺しにかかるかもしれない。もし彼に手をかけてしまえば菊池サラコからの報復が恐ろしい。そうならない為にも自分が頑張らなくては、セーラは何とかして自分に言い聞かせた。

 

 そんな時、突然黒塗りの電話機が鳴り響いた。セーラは受話器を取ろうとしたがそれよりも早くタクトが受話器を取った。

 

「あーもしもし?おれこそが世界に愛を振り撒く人生の堕天使、イ・ウーのアルティメットリーダー菊池タクトだぜ‼」

「ちょ、たっくん何してるの!?」

 

 セーラは慌てて受話器をひったくった。タクトに代わって電話の相手をしようとしたが既に相手は電話を切ったようでツー、ツーと音信不通の音が鳴っていた。

 

「たっくん‥‥電話の相手、誰だったの?」

 

 セーラは恐る恐るタクトに尋ねる。どうか電話の相手が彼の母親か家族関係の人であって欲しいと願ったのだが、タクトはニッと笑って答えた。

 

「わかんね!」

 

 最悪だ。もしこれがイ・ウーの関係者であったら世界中にいるイ・ウーの同志達にこの何を考えているのか分からない男がイ・ウーのリーダーになってしまった事が露見されてしまう。

 

「どうせいたずら電話でしょ!」

「いたずら電話のわけがない」

 

 電話を掛けてきたのはどうかイ・ウーの誰かじゃありませんように、セーラは心の底から願った。

 

「ささ、気を取り直してデスクワークに取り掛かろうぜ!‥‥なにすればいいの?」

「もう、お願いだからたっくんは何もしないで」

「よしわかった!取りあえずお部屋のヘアメイクといこうぜ!」

 

 どうやったらタクトの行動を制御できるか、セーラは真面目に考え込んだ。どうにかしないとこちらが考えるのをやめてしまう。そんな事を考えていると再び黒塗りの電話機が鳴り響いた。今度はタクトが取る前にセーラは素早く受話器を取った。

 

「もしもし‥‥」

 

 先程の電話を掛けてきた相手かと思って身構えていたが、電話の主は一階の受付の人からのようだ。内心ほっとしたがその安堵はすぐにかき消される。

 

「え?彼にすぐに面会したい人がいる?」

 

 受付の者が言うにはその人物は今すぐに菊池タクトに会わせろと物凄く慌てながら問い詰めてきているとのこと。受付の者は小声で『追い払いましょうか』と尋ねてきた。サラコが手配したのだろう、もう既にこのビル内に彼女の部下達が配属されているようだ。そうしてくれれば嬉しいのだが、『何やらエジプト語で文句を言っている』と聞いてセーラはすぐに通すように伝えた。受話器を戻すとセーラは肩を竦める。もう情報が伝わるのが早い。

 

「ん?お客さん?」

「違う、クレーマーだよ」

 

 しばらく待っていると扉を荒々しく開けて入って来たのは黒い長髪のオカッパ頭の金のピアスをした女性だった。荒げる息を整えるとその女性はタクトを睨み付けた。

 

「貴様…何を考えているのぢゃ!?」

 

「んー‥‥誰?」

 

「パトラ、落ち着いて」

「これが落ち着いていられるか!一大事ぢゃぞ!?」

 

 タクトに会いに来たのは元イ・ウーのメンバーであり、クレオパトラの末裔であるパトラだった。確か遠山金一と同棲して東京にいるという情報は聞いており、この事を知ったらいの一番にくるだろうと思っていた。

 

「どうしてこんなアホがイ・ウーのリーダーになる!?組織そのものを潰すつもりか!?」

「文句を言うのは分かるけど、決まったことは仕方ない」

 

「あー思い出した!猫が嫌いなパトラッシュでしょ‼」

 

「よし、今ここで始末してやる」

「パトラ、落ち着いて」

 

 セーラはなんとかパトラを宥める。ようやく落ち着いたようで冷静になったパトラはどうしてこうなったと言わんばかりにタクトをジト目で睨む。

 

「むぅ‥‥確かに妾も一度はイ・ウーのリーダーを狙っておったが、己の曾孫娘ではなくこんな男を一任させるとは、教授は何を考えているのぢゃ」

 

「ローズバトラーちゃん、落ち着いた?」

 

「‥‥セーラ、やっぱりこのアホ始末していいぢゃろ?」

「パトラ、ここは冷静になって。というかたっくん、パトラを怒らせないで」

 

 どうして人の気を逆撫でるのは得意なのだろうか、セーラとパトラはため息をついて項垂れた。

 

「はぁ、もう怒る気も失せたわ‥‥カナには相談する。一応、この事は理子達には黙っておくぞ?」

「そうしてくれると助かる‥‥」

「ぢゃが、もう飛び火はしておるぞ?」

 

 パトラがこの事を知っているという事は外部にもうこの事が漏れてしまっているのだろう。恐らくタクトが最初に電話を取った相手はイ・ウーの誰か。セーラは確認のためにパトラに尋ねた。

 

「‥‥どうやって知ったの?」

 

「イ・ウーのOB会の詳細についての連絡が来た。乗る気はしなかったのぢゃが、直ぐに電話がかかって来て『教授に電話をかけようとしたら菊池タクトと名乗るどこぞの馬の骨がリーダーだとほざいてきた』と聞いてすっ飛んできたわけぢゃ」

「OB会か‥‥」

 

 セーラは眉をひそめる。イ・ウーは学校みたいなもので既に卒業した者、途中で抜け出した者、離れて組織を自立した者がOBとして年に一度会合を開く。

 

「それで‥‥今回の主催者は誰なの?」

 

 イ・ウーのOB会は当番制ではなく誰かがふと思いついたように開催しだす。イ・ウーを抜けだして賞金稼ぎに回った者が罠としておびき寄せる場合もあるので気をつけなければならない。パトラは少し気まずそうに頷く。

 

「…フレイヤぢゃ。かなり激昂してようだからのう、こいつ殺されるかもしれぬぞ?」

 

 その名前を聞いた途端、セーラは深刻な表情になった。一体何の話をしているのか蚊帳の外だったタクトは興味本位にセーラに尋ねた。

 

「そのフレイヤって誰?」

 

「たっくん、非常にまずいかもしれない‥‥」

 

 セーラは冷や汗を流す。これは非常事態になり兼ねないと言っているのだがタクトは不思議そうに首を傾げていた。

 

「彼女はパトラがNO.2に就任する前にいたイ・ウーのNO.2。高層ビルさえも戦艦さえも、どんな物も斬る能力がある。ジャンヌのデュランダルとは比にならない。その力と気性の激しさでこう恐れられている」

 

 一息いれてからセーラは答えた。

 

「――――『斬撃のレギンレイヴ』と」

 

「そっか、じゃあそのギレンザビが迎えれるように支度をしなきゃね!」

 

 セーラとパトラはずっこけた。事は急くのにやっぱりどんな状況でも通常運転だとセーラは呆れた。




 1日目後半でした。
 あれ…?ほのぼのにさせるはずなのに緋弾のアリアのキャラの胃を苦しめている気がするぞ?まあそんな日もあるさ!

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