カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

121 / 142
 新生活、疲れや忙しさでなかなか進めれなかったけれども漸く落ち着いてきたので更新。
 更新頻度が低下してしまいましたが気合いで続けます
 


121話

 それはケイスケと理子が猿楽製薬に潜入する前まで遡る。ケイスケ達が中の様子を双眼鏡で確かめていた時間と同刻、タクト達は猿楽製薬の裏側に既に潜入しようとしていた。

 

「ここまではクリアだ…」

 

 黒套を靡かせて静刃は辺りを見回す。裏側の壁沿いには見張りも監視カメラもない。安全が取れると静刃はゆっくりと手を振る。警戒しながら待っていると、暗い茂みからセーラと鵺が出てきて彼女達に続いて黒い迷彩柄のボディーアーマーを着たタクトとナオトがカップうどんを啜りながら出てきた。

 

「静刃、問題はないみたいだな!」

「問題があるのはお前らだ。なんで今うどん食ってんだよ!?」

「‥‥お腹空いたから仕方ないだろ。あ、俺ラーメンだし」

「そういう問題じゃない」

 

 セーラがツッコミをいれるが二人はなんでと不思議そうに首を傾げる。静刃は頭を抱えた。正直言って潜入するとしたら自分だけでよかったのではないか、と薄々思ってきていた。気を取り直して静刃はタクト達を見つめる。

 

「いいか?今回の目的は猿楽製薬に潜入して伊藤マキリを見つける事だ」

 

「「‥‥え?え?」」

 

「なあ、こいつら殴っていいよな?ぶった切っていいよな?」

「落ち着いて。ふざけてるだけだから」

 

 少し我を忘れて手を出しそうになった静刃をセーラが宥める。未だに少しバカっぽい返事をするタクトとナオトがどこまで真面目なのか未だに分からない。既に知ってたとタクト達のおふざけをスルーしていた鵺は自分達が来た方角を向いて深く唸っていた。

 

「それにしてもあの神父、ここまでバックアップしてくれるとは‥‥本当に何者だじょ?」

 

 ジョージ神父はタクト達に猿楽製薬の場所や潜入するに監視の薄い場所はどこかの地図の手配、武器や道具等々、自分達が戻ってくるまで待機および逃走用の車輛の準備までもしてくれた。鵺は不思議そうにしていたがジョージ神父の正体を知っているセーラはやりすぎと少し遠い眼差しをしていた。

 

「兎に角、内部に潜入する。ここからは見つからないように慎重に「へっふん‼」

 

 静刃の忠告を遮るようにタクトが派手に大きなくしゃみをした。静刃はギョッとして辺りを見回しセーラは慌ててタクトの口を手でふさいだ。

 

「バカなの!?たっくん、本当にバカなの!?」

「出ちゃったものはしょうがない。所謂これが武者震いってやつだ!」

「くそっ‼今すぐこいつをチームから除外してぇ‥‥‼」

 

「お前らそんな事に構っているばじゃないぞ?ナオトのやつ入口見つけて先に進もうとしてるじょ」

「ああもう自由すぎる‥‥!」

 

 反省の色を全く見せないタクトとナオトに静刃とセーラは項垂れる。ここでぐだぐだしていては進むことができない。気を取り直して裏口から潜入する。内部は明かりひとつもない暗い通路。暗視ゴーグルをつけたナオトと静刃が先頭に慎重に進んでいく。静刃は右目の『バーミリオンの瞳』を赤く光らせて一つ一つサーチしていくが対象の人物は勿論、目ぼしいものは見つからなかった。見つかるのは通信販売用に販売する医薬品の材料や製造過程のものばかりや製造するための機材ばかりであった。

 

「この辺りは本当にただの製薬所のようだな」

「表面は製薬会社だと見せる為かも。私設軍隊を保有しているなら武器を保管、隠す場所があるはず…」

 

ここから上の階は恐らく目的の物はないだろう。それなら隠している場所があるとすれば、と静刃は足元を見つめる。

 

「そうとなると地下か。可能性があるな」

「問題はその道がどこにあるか。内部のエレベーターか地下へ続く階段を探すしかない」

 

 辺りを見ながら通路を歩んでいくが下へと続く階段がありそうにない。残すはエレベーターだ。静刃は小さなタブレットを開きこの内部のマップを確認する。一階のエレベーターはエントランス近くにある一か所だけ。遠くは無いが監視カメラを掻い潜って通るしか方法は無い。遠回りをするか悩みながらチラリと横を見ると床にヒートチャージを仕掛けようとしているタクトの姿が見えた。血の気が一気に引く感覚がしてすぐさまタクトを止めた。

 

「お前なにしてんだ!?」

「何って床をぶち抜いて近道しようかなーって」

「今回は壊すな!施設の破壊が目的じゃねえっての‼」

 

 静刃はタクトからヒートチャージを没収した。目を離したらこれである。することがハチャメチャで対象の破壊が得意なタクト達が武偵なんて色々とおかしい。どうやったら抑えることができるかと静刃は目の前にいる問題児に頭を悩ます。が、少し離れた場所で甲高い破裂音が響いた。静刃はセーラと鵺の方にすぐさま目で伺うが二人は半ば呆れた顔で首を横に振る。静刃は数分前までついて来ていたはずなのにもうナオトの姿が見えない事に気づくと頭を抱えた。

 

 音が響いた方へと急ぎ向かうと、案の定ナオトが小型のヒートチャージで鉄製の黒い扉をぶち壊していた。白い煙を上げて倒れている扉の傍でナオトはドヤ顔をする。

 

「‥‥隠し階段みつけたぞ」

「おお‼さすがナオトだぜ!勝手に探索の達人に任命しよう!」

「頼むからお前ら勝手に動かないでくれ‥‥‼」

 

 ここにケイスケかカズキがいてくれてれば少しは勝手な行動が抑えることができていたのだろうか。次第に胃が痛くなってきた静刃はもうどうにでもなれと躍起になって階段を降りていった。非常階段か或いはあまり使っていないのか電灯の明かりも薄く下へと下へと降りて行くほど少しずつ暗くなっていく。最下層が地下7階のようで慎重に扉を開ける。

 

 扉を開けると上の階とは違い、大きな空間が広がっていた。分厚いガラスに囲まれてできた中央の広い場所では銃器や弾薬、弾丸の製造をしておりまるで武器工場のようで、上の階に見えるラボと思われる場所では何やら化学実験のようなものが行われており、通路では武装した見張りが数多く巡回しているのが見えた。静刃やセーラはまさかこんな場所が隠されていたのかと驚き、タクトは目を輝かせていた。

 

「すっげえええ!まるで秘密基地じゃん‼

 

「この規模‥‥猿楽製薬は何を企んでいるの…」

「獅堂の予想通り、こいつら『N』に繋がってるわけか。これではっきりした」

 

 猿楽製薬が武器の製造を行っている事が明らかになった。間違いなく猿楽製薬は『N』の手先であり、この製造している武器は『N』の為に使い或いは他の武装組織に売り飛ばしているだろう。『N』に繋がっているとなれば伊藤マキリがここに潜んでいる可能性が大きくなった。彼女を見つけることと公安0課が立件できるよう更に証拠を集めるためにこのまま潜入を続ける。

 

「よーし、ナオト俺に続け。今の俺はエージェントスパイだ、もうワクワクが止まらねえぜ?」

「たっくん、スパイしたことあんの?」

「ない。ナオトは?」

「俺もない。けどやれる気がする」

 

「鵺、セーラ、このバカ二人が勝手な事をしないか見といてくれ」

 

 更に緊迫した状況にもあるにもかかわらずタクトとナオトはのほほんとしていた。これ以上この二人の行動で胃を痛めないように静刃は鵺とセーラに見張ってもらいながら自分が先頭に立って進むことにした。

 

 警備兵が来ないか監視カメラに映らないか慎重に進んでいるものの、見えるものは武器工場の現場と何かの実験施設しか見えず、『N』との関連が完璧に裏付ける証拠、伊藤マキリの姿は見つからない。静刃は緊張と焦りが募っていくがタクトとナオトは工場見学気分で気楽にしていた。

 

「ねえねえセーラちゃん。あれって何の実験かわかる?」

 

「たっくん、今はそこを気にしている場合じゃない。油を売っている場合じゃry」

 

「とにかく入ってみようぜぇ」

 

 セーラは止めようとしたがタクトの好奇心は止まらず、野太い声をわざと上げて直ぐ近くの実験室に入っていった。実験室の中は薄暗く、稼働している大きな培養装置による仄かな光が室内を照らしていた。タクトとナオトは小学校の理科準備室に入った小学生の如く興味津々に培養装置を覗き実験室内を物色しはじめた。

 

「すげー‼これって言うなればバイオってやつでしょ‼」

「たっくん、勝手に弄ったらダメ」

 

「寄り道している場合じゃねえが‥‥これは何の実験をしてんだ?」

 

 静刃もタクトの暴走を止めようとしたが培養装置をよく見ると中に角や爪、翼膜やら何か生き物の部位が入っているのに気づいた。

 

「こいつは‥‥気に食わないなぁ」

 

 鵺が眉間にしわを寄せ唸りながら培養装置を睨んでいた。静刃は鵺のこの不機嫌な様を見てこれはただ事ではないと気づく。

 

「鵺、これは何だ?」

「これらは鵺や貘と同じ妖の部分だじょ。人間のDNAと同じように妖も少しの部位だけで大量の情報が詰まっている。憶測だがこれは成分や能力、魔力を分析しているのだろうな」

 

 鵺は嫌そうな顔をしながら培養装置をコツンと叩く。妖も一匹一匹性質も能力も使う魔力も異なる。これら全てデータにして一体何をするのか。あまり考えたくなかったが静刃の表情で鵺は察したのか軽く頷く。

 

「この猿楽製薬とやらの連中、鵺達のような妖を殺す為の兵器を開発しようとしておるのかもしれん。もしそうだとすればかなり気に食わないじょ」

 

 静刃はごくりと唾を飲む。元いた時代で聞いた『パンスヘルミアの砦』の計画と関連しており、鵺と共に追っている妖『影鰐』は猿楽製薬や『N』と繋がっている可能性が高くなった。もし鵺の言う通りならばこれは確かに気に食わない。

 

 しかし今はそんなことを考えている場合ではない。これ以上長居すべきではないので静刃はタクトを急ぎ連れ戻そうとした。その時、鈍く低いアラートが鳴り響いた。いきなり響いた音に驚いた静刃とセーラはこれは何の音か辺りを見回す。

 

 

 実験室の薄暗い隅っこで、スイッチを押してしまったナオトの姿が見えた。

 

「‥‥」

 

 ナオトは無言のままじっと見つめてくる。そのスイッチ、よく見るとナオトが押したスイッチは非常警報装置だった。静刃は目が点になってしまっているがナオトは悪びれる様子はなく、納得したように頷いていた。

 

「これ、明かりのスイッチじゃなかったんだな」

 

「納得している場合じゃない!?」

 

 セーラが思わず大声でツッコミを入れるが時はすでに遅し。あちこちで警報のアラートが鳴り響いており、扉から外を覗けば武装した警備兵達が大勢駆けているのが見えた。しかしどういうわけかこっちに向かってくる様子はない。

 

「どういうわけか分からないけどまだこっちに気づいていない。今のうちにすぐに脱出しないと‥‥!」

 

「ナオト、どういうこと?」

「要はスパイしないで普通に帰ろうってことじゃね?」

 

 そう言う意味ではないと静刃はツッコミを入れようとしたが、タクトとナオト、そして鵺までもがスッキリした表情でご満悦になう。

 

「つまりもうこそこそしなくていいってわけだな!」

「漸くか。鵺は退屈していたじょ」

 

 まさかと静刃は嫌な予感が過ったので止めようとするが、タクトとナオトはポーチからM26手榴弾を取り出してピンを抜いて投げた。

 

____

 

「そんであちこち壊しながら突き進んでいくと、反対側で奮闘していた俺達を見つけて壁を壊しながら合流したというわけか‥‥」

「セーラも大変だったねー…」

 

「さっすがケイスケ、りこりん!つまりはそういうことだぜ」

「たっくんのフォローも疲れる」

 

 ケイスケと理子はタクトの大雑把な説明とセーラの捕捉で経緯を聞いて納得しながら頷く。すぐさまナオトにげんこつを入れた。

 

「原因はてめえか‼このクソ野郎‼」

「見つからないように潜入してたのになんで見つかったのかおかしいと思った!」

 

「仕方ないだろ!押しちゃうものは押しちゃうもんだっての‼」

 

 ナオトはげんこつをくらった頭を摩りながら反論する。それを聞いたケイスケは般若の如く激昂した。

 

「二度とスイッチに触るなてめえはよぉ‼」

 

 ケイスケの怒号に押されたのかナオトは渋々しょんぼりして無言のままうなずいた。

 

「というか長話している場合じゃねえぞ‼」

 

静刃は焦りながら身構える。ケイスケ達がわちゃわちゃしている間にも警備兵達が押し寄せてきている。ここで長居している場合ではない。

 

「手に入れたものは手に入れたし、さっさとずらかるぞ!」

「待てよケイスケ、俺とナオトはまだ伊藤マキリ見っけてねえぞ!」

「どういうわけか大変な事になったけど、まだ探せるでしょ」

 

「「「原因お前だっての‼」」」

 

 静刃と理子とヒルダは一斉にナオトにツッコミを入れた。しかしそれでもナオトは反省の色を見せていないというよりも寧ろ照れていた。

 

「兎に角、たっくん達が来たルートを辿って脱出するしかねえな。一気に突っ走っていくぞ‼」

「お前らこの俺に続けーっ‼置いて行かれないように俺に導かれてこい!」

 

「たっくん、そっちじゃなくてこっち」

 

 セーラに引っ張られながらタクトが先導していく。強制的に壊したであろう穴が大きく空いた壁を通り抜けて駆け抜け、後方の殿はナオトとケイスケが務め、UMP45とAK47を撃ちながら、フラッシュバンやスタングレネードを投げたりして追手の動きを牽制していった。非常階段までたどり着くとケイスケは面倒くさそうに見上げる。

 

「まさかこの階段を駆け上らなきゃなんねんのか」

「ケイスケ気合いを入れて行かなきゃなんねえぞ?こうやって‥‥GOGOGOGOGOGOGOGO‼」

 

 タクトは『GO‼』と叫びながらケイスケ達を置いてけぼりしたままハイスピードで駆けのぼっていく。気合いを入れてる理屈が色々とおかしいとツッコミを入れようか迷っていた静刃と理子は遠い眼差しでタクトを見つめる。

 

「あれ途中でへばるな」

「たっくんだもん‥‥」

 

 彼らの予想通り、タクトは地下5階の辺りでへばっていた。ペース配分という物を考えて欲しい。仕方なく静刃がタクトを背負って駆けのぼっていく。後方でナオト達が殿を務めてくれているためか脱出も順調であった。しかしここまで派手にやらかしているのに追手の頻度が少ない上に攻め手も薄い。どうしてここまで追ってこないのか、静刃は下の階を覗いた。

 

 追手が来ていない薄暗い最下層に何か黒い物体が蠢いたのが見えた。一瞬ぞくりと背筋が凍る感覚がしたが見間違いかと改めて最下層を覗く。明らかに黒い何かが蠢いている。それは武装した警備兵達ではなく、全く別の生き物のようだ。静刃のバーミリオンの瞳には『正体不明』と表示され、『警告』の表示が点滅している。その正体がよく分からなかったが静刃はあれは危険すぎるものだと本能で感じていた。

 

「静刃!下を見ないでさっさと出るじょ‼早くしないと『そいつ』がくる!」

 

 鵺もあの黒い蠢く何かの気配を感じたのか焦りながらに怒鳴った。今はあれに関わるとヤバイ。

 

「理子、あんた達‥‥後ろは振り返らないでさっさと走るわよ‼」

「ヒルダ、どういうこと…!?」

 

 ヒルダも鵺と同じく黒い蠢く何かの気配に気づき焦りだす。妖はあれの気配に気づいたようだが人は『あれ』見ないと気づかないようだ。

 

「?なんで?」

「振りかえる暇すらねえっての」

「俺は過去を振り返らないから安心しな!」

 

 そしてこの3バカは平常運転。そんな二人に静刃はどういうわけか安堵した。タクトは後ろを振り返らず一気に階段を駆け上り、1階にたどり着いて裏口の扉を蹴り開けて外へ出た。最後に外へ出た静刃はちらりと後ろを振り返った。暗闇から黒い蠢く何かが外へ出ようとしている。微かだが獣のような呻き声が聞こえてきた。

 

「一発ぶっぱなすじょ‼撃ったらそのまま突っ走れ‼」

 

 鵺が右目を緋色に光らせて緋色の閃光を放った。放たれた閃光は裏口に向かって飛んで爆発を起こした。これ以上『あれ』に構っている場合ではない。静刃達は後ろを振りかえることなく只管走り続けた。

 

 ジョージ神父が待っているであろう場所へと向かって走って数十分が経った。鵺の緋箍のおかげか黒い蠢く何かの気配はしなくなった。どうやらもう追手は来ていないようだ。安全が取れるとほっと安堵の息をついた。

 

「鵺、一体何だったんだあれは‥‥」

 

 黒い蠢く謎の生物、今まで見たこともないし戦ったこともない妖の類なのか。尋ねられた鵺は終始冷や汗をかいていた。

 

「鵺もよくわからん。だが分かるとすれば『ヤバイ』というぐらいだじょ。もしかしてあれが‥‥」

 

 鵺は自分達が通った薄暗い森の茂みを眺めるが首を横に振って苦笑いをした。

 

「だが今はこれから次はどうするかを考えるのが先やもな」

 

 苦笑いしたまま指をさす。指した先にはタクトとナオトとケイスケがわちゃわちゃしていた。

 

「だから俺のおかげでしょぉ?ケイスケ、俺に感謝すべきだ!一番美味しいうどんを奢ってもらうぜ」

「あぁ?寝言は寝て言えや。というかお前らのおかげじゃなくてお前らのせいだろ。ナオト、うどんばっか食ってんじゃねえぞ‼」

「今日はラーメンだし」

 

 二人だけでも喧しいのに更に一人追加されると余計に喧しい。少しは自重してほしいと静刃は項垂れた。

 

「けどまあ、ケイスケと合流できたしいっか」

「だな。これで全員揃ったわけだ」

「おっしゃ!こっから俺達のターンだぜ‼」

 

「いや待って!?おかしいよ!?」

 

 理子に止められたが3人はハテナと不思議そうに首を傾げる。

 

「どうした理子。おかしいことなんてねえぞ?」

 

「ケーくん、おかしいことだらけだよ!まだ全員揃ってないでしょ!?」

 

「???」

 

「ナオっち、そこでそうだっけって首を傾げないで!?あと一人忘れてるって‼」

 

 理子に言われて3人は腕を組んで深く考え込む。わざとなのかそれとも本当に忘れてるのか紛らわしい。ようやく気付いたのかタクトが思い出したかのようにポンと手を叩いた。

 

「そうだった!リサを忘れてた‼」

「うっかりしてたぜ。リサも俺達の大事なチームメイトだもんな」

「これ4人揃った」

 

「違うそうじゃない‼」

 

 理子のツッコミが虚しく響いた。あと一人、カズキが合流すれば喧しい4人組が再結成される。3人だけでもハチャメチャなのに合流していいものか、静刃と理子は頭を抱えた。

 

 

 

 

 

_____

 

 

 

「本当に喧しい人達‥‥」

 

 

 伊藤マキリは猿楽製薬の地下施設の惨状を見てため息を漏らした。タクト達は潜入のつもりだったのだろうがこの有様は殴り込みと言っても過言ではない。気配を消して彼らの行動を見ていたが予想の遥か斜め下の行動には目を丸くした。

 

「随分と派手にやられてしまいましたねぇ」

 

 伊藤マキリの隣では猿楽製薬の社長、木村雅貴がため息を軽くついて気さくに笑う。派手に荒らされたというのに痛くも痒くもないのか上機嫌に頷いていた。

 

「いいのです?逃がした上に証拠も取られた。猿楽製薬は公安に民由党諸共潰されますよ?」

 

 マキリは横目で木村雅貴に尋ねた。ケイスケと理子に民由党との武器の取引、武器製造の現場など色々と証拠を盗られた。近いうちに獅堂達公安0課に摘発されるだろう。しかし木村雅貴は気にもしないようで軽く笑った。

 

「使わないものはそぎ落として新しく入れ替える主義でしてね。『N』に入れば私はこの会社が、彼らがどうなろうと気にはしませんよ。それに小手調べですよ。彼らが『わたし』にどう抵抗するのか試しただけです」

 

 低く笑う木村雅貴にマキリは警戒する様に目を細める。

 

「貴方は()()()()()。決して『N』は気を許したと思わないで」

「もちろんですよ。信頼を得るために行動はしましょう‥‥」

 

 次が楽しみです、と木村雅貴は軽く笑ってその場を去っていった。マキリは去っていく木村雅貴の背と影をじっと見つめる。木村雅貴の黒い影が微かに蠢いていた。

 

 




 今度は敵の地下施設を破壊‥‥?
 ドタバタしたりわちゃわちゃしてたり破壊したりしてたので今回の章はのほほんとしようと考えていたのに‥‥どうしてこうなた(白目

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。