カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼ 作:サバ缶みそ味
堂々とう〇こと言って盛り上がる、何というか羨ましい‥‥(白目)
Day:6
「時間軸がさばらてん~♪時間軸がさっばらてん~♪」
カズキは上機嫌に適当に思いついた歌を歌っていた。街中で周りなぞ気にせず堂々と声を高々にして歌うカズキに隣で歩いていた乾桜はジト目で睨んだ。
「先輩、のんびりしすぎです」
「だって暇なんだもん」
笑顔で即答するカズキに桜はため息をついた。他の武偵は日々鍛錬を積み重ねたり、依頼やミッションをこなして腕を鍛え高めていくというのにどうしてこの男は呑気でマイペースなのか。この前のショッピングモールの襲撃の事すら忘れている程だ。
あの後先輩であるアリア達が捜査しても他の手掛りが掴めなかった。逮捕した強盗犯達を尋問しても口を割らずまともな情報を得られないままである。いつ再びこの様な事態が起こるか、警戒しなければならないのだがカズキは今日はどのピザにしようか携帯でピザ屋のサイトに載っているメニューを見ながら考えていた。
「ふーむ。このゴルゴンゾーラが美味しそうと思うんだけど、どう?」
「先輩、ピザなんか頼んでる場合じゃないですよ。もう少し緊張感を持ってください」
「そういえば桜ちゃんてさ、婦警の格好してるけど警察の人?」
「‥‥先輩その質問3回目なんですけど」
何度も行われている会話のドッジボールに乾桜はもうどうしたらいいのかと呆れて頭を抱えた。自分が警察で研修を受けている
「あぁーなるほどね!なるほどなるほど‥‥ほどなるの命!」
「次同じ質問したら、もう口ききませんからね!」
「OK!…それでなんで婦警さんの恰好してんの?」
「‥‥パトロールです!明日行われる『参観日』に備えて警備の強化をしてるんです!」
桜はヤッケになって答えた。明日行われる『参観日』は1年生のみならず2年、3年生も交えた大規模なチーム対抗戦である。今回の行事は保護者や企業のみならず武偵庁や防衛省、内閣や行政の上層部等々が大規模訓練の視察を行う為この名がついたと言われる。各学科や生徒各々が技術や腕前をお披露目しアピールし、企業側が気になった生徒を抜粋するという試みのようだ。
この行事が行われる前にショッピングモールでの事件が起きてしまったため、警察及び武偵達は警戒レベルを上げて当日に向けて警備を終日まで行っていた。桜もその一人で街中を巡回していたのだがそこでバッタリのんびりぶらぶらしていたカズキに出くわしてしまい今に至る。
「前の事件で保護者や防衛省などの観覧される方達の観覧場所は変更。大型豪華客船『彼岸丸』にて海上による観覧が行われるようですよ。明日に向けて警察も武偵達は巡回しなきゃいけません」
「ほーん‥‥いつの間にこんなことが」
「いつの間にって、今日のHRでも全学年に伝わっていたと思うんですが」
「あったの!?」
やはり話は聞いていなかったようだ。驚きの声を上げるカズキに桜は肩を竦めた。恐らくこの様子だと『クリーパー』を使った連中、そしてアリアと遠山キンジの命を狙うフレイヤの捜査すら行っていないだろう。ジト目で見てくる桜に意図を察したのかカズキはゴホンと咳払いをする。
「ちゃ、ちゃんとやってるよー?あかりちゃんや白雪ちゃん達に任せっきりとかしてないぜ?」
「例えば、何やってるんですか?」
桜の問いにカズキは腕を組んで深く唸った。悩むほどではないのだがと桜は心の中でツッコミを入れる。
「えーと‥‥さ‥‥さ、サガマハラの…ボナポチエがないかなーって」
「意味が分からないんですけど!?」
この人は本当に事件を解決する気はないのだろうかと桜はますます心配になってきた。今この場に先輩のあかりやアリアやかなめもいない。自分だけでこの男の手綱を引く事はできない。今すぐに誰かを呼ぼうかと悩んでいたその時、カズキが何かに気付いた。
「あの車‥‥なんかこっちに来てね?」
カズキの一言に桜はハッと気づく。確かに黒いグランドキャビンがスピードを上げてこちらに向かってきているのが見えた。車を縫うように追い越していき激しいブレーキ音を響かせながら横向きに止まろうと迫る。カズキと桜にぶつかる寸前にグランドキャビンは停まると、スライド式のドアが勢いよく開き黒のフルフェイス、黒の防弾服、黒の手袋と黒づくめの如何にも危険そうな連中が手を伸ばしカズキの腕を掴み勢いよく引っ張り込んだ。
「へ?」
流れに流されたままのカズキは何が起きているのか分からないままグランドキャビンの中へと引き込まれてしまう。桜はカズキを助けようと手を伸ばすがその前にドアを閉められてしまいグランドキャビンは再びスピードを上げて発たれてしまった。
「か、カズキ先輩っ‼」
桜の声は虚しく響く。何故カズキが攫われたのか、今は考えている場合ではない。桜はすぐさま携帯を取り出す。
一方のカズキは黒づくめの連中に囲まれて何が何だかと状況がよく分からなかった。うーんと眉をひそめて考えているとガハハと笑いながら隣の黒づくめを小突く。
「はっはっはー、これはドッキリだな?バレバレだぜたっくーん!俺をビックリさせようなんてダメダメ、ぜぇんぜんダメ」
これはもしやタクト達によるドッキリではないかと考えたカズキは気さくに笑う。だが黒づくめの連中は誰一人声を発さずじっとカズキを見つめていた。それでもカズキは動じることなく笑い続けた。
「それとナオトとケイスケと‥‥あれ?なんか数が多くない?」
カズキは少し違和感を感じたが尋ねるよりも早く黒づくめの連中の一人が麻袋を被せた。突然の事でカズキは慌てるが首に衝撃を受け気を失ってしまった。
_____
「むにゃむにゃ‥‥もうピザは食べられないよ‥‥」
カズキはゆっくりと目を覚ました。真っ暗な視界が次第に明るくなる。まだ視界がぼやけるがここは車の中ではない事は確かだ。漸く視界が鮮明になると古い木製のイスに腕と足がロープで縛られた状態で座っている事に気づいた。
未だに痛みを感じる首の後ろを気にしながらもカズキは自分の真上を照らしている古びた電灯の薄い明かりを頼りに辺りを見回す。長らく使われていない埃が被った大型の製造機や錆びたベルトコンベア、薄汚れた壁に割れたガラスの破片が残る大きな窓からして廃工場のようだ。窓からの景色は薄暗く既に日は落ちている。
「ここ…どこ?」
「あら、漸く目が覚めたのね」
カズキが途方に暮れている最中に暗闇から女性の声が聞こえた。コツコツと靴を鳴らす音を響かせながら近づいてくる。暗闇から現れたのは薄い金髪のショートヘヤーで金色の瞳、黒いドレスの上に黒い羽毛のついたコートを羽織った女性だった。
「あんた‥‥だれ?」
「初めて、私はフレイヤ。貴方のお仲間のお知り合いよ」
妖艶な笑みを見せたフレイヤの名前を聞いてカズキは目を丸くする。目の前にいる女性こそがアリアとキンジの命を狙い、武装検事試験会場を『クリーパー』で爆破させ、ショッピングモールを襲撃してきた連中の黒幕なのだ。カズキが驚いている間にフレイヤはじっくりとカズキを見つめる。
「ふぅん…随分と冴えなさそうな見た目だけど、私の部下や伊藤マキリと渡り合えたというのだから世も末ね。けどもry」
「はーん、フレイヤって老けたおばさんかと思ってた」
フレイヤの話を遮ってカズキは納得して頷く。この時フレイヤの額に一瞬青筋が何本も浮かび上がっていたのにカズキは気づいていなかった。フレイヤはギロリとカズキを睨み付けるがすぐにやめて首を横に振る。
「‥‥やめましょう。こんなのと長々と話をしてたら気が狂うわ」
「やい!俺をどうするつもりだ‼食べても美味しくないぞ!」
ガタガタと体を動かして椅子を揺らす。ギャーギャーと喚くカズキにフレイヤはじっと黙って見ていたがゆっくりと片手を上げる。暗闇から手斧を持った体格のでかい黒づくめが現れた。それを見た途端カズキは一瞬にして沈黙した。
「自覚しなさい、貴方は捕虜よ。次変に喚いたら足の一本か舌を斬るわよ?」
「‥‥」
「いやそこは黙らなくていいから」
「OK‼」
自分の状況を理解しているのだろうか。捕まっているというのになんとお気楽な事か。フレイヤはため息をこぼすがさっさと本題に入ることにした。
「私達はね、明日の『イベント』に備えて準備しているの」
「遠足?バナナはおやつに入る?」
「‥‥次人の話を遮ったらダルマにするわよ?」
ギロリと睨み殺気を放つフレイヤにカズキは何度も頷いた。ため息をこぼして話を再開させる。
「私達にとってそれはもう楽しい『イベント』にはなるのだけど‥‥私的にはさっさと標的を始末しておきたいのよ。それで貴方を捕まえて尋問することにしたわ」
「‥‥つまり、俺のファン‥‥!」
ドヤ顔で嬉しそうにするカズキにフレイヤは再び額に青筋を浮かべた。ピラミディオンで出会ったタクトといい、この状況を理解していないカズキといい、どうしてこいつらは人の話を聞かないのだろうか。
「率直に言うわ。貴方、遠山キンジが何処にいるか知っていること全て話しなさい」
「へ‥‥?」
「黙ろうとしても無駄よ?貴方は尋問にかけられている。答えなければ尋問は拷問に変わる。貴方に黙秘することも拒絶する権利はないわよ?」
フレイヤはゲスな笑みを浮かべて指をパチンと鳴らす。暗闇から幾人もの黒づくめが歩いて現れた。しかも彼らは手斧や鉈や鋸等の刃物、SG550やステアーAUGなどの銃器を持っていた。
「漸く立場をわきまえたかしら。早く答えてくれればそこから解放してあげるわ?」
フレイヤはクスクスと妖艶な笑みを浮かばせてカズキに歩み寄るが肝心のカズキは何処か困った表情で視線を逸らしていた。
「あー‥‥」
カズキはどもった声で困惑する。正直なところ、今キンジがどこで何をしているのかカズキは知らなかった。キンジが女装していることは知っているのだがここ最近は連絡がとれていない。
「えーと‥‥キンジは」
「遠山キンジは?」
「えー‥‥そうだ。あいつは幼女から人妻まで守備範囲がすんごい広いぜ!女の子の前でゲヘへって笑うし、脇汗がナイアガラの滝みたいに流れるし‥‥それとあいつうどんめっちゃ食う!うどん魔人だぜ!」
「‥‥貴方ふざけてるのかしら?」
一瞬にして妖艶な笑みが消え失せ声を低くして睨むフレイヤにカズキは首を傾げた。
「いや知っていること全て話せっていうからさ。あーあと最近は女装癖がついてるとか無いとか」
「そう言う事じゃなくて、居場所よ!遠山キンジの居場所を教えなさい!」
「うーん‥‥わからん。最近連絡ないし会ってないもん」
即答するカズキにフレイヤは殺気立った。捕える対象を間違えた。手っ取り早く遠山キンジの仲間か家族を攫えばよかったのだがそうすれば伊藤マキリや『スポンサー』に咎められる。仕方なしに一番関わりのありそうな輩を狙ったが的外れのようだ。
「それなら‥‥貴方のお仲間の居場所を教えてもらえないかしら?」
「えっ‥‥」
フレイヤの問いにカズキは表情が固まる。その様子にフレイヤはほくそ笑んだ。伊藤マキリから得た情報にて、彼女を一度退けた4人組は自分達の計画の妨げになるのは間違いない。必ず邪魔をしてくるだろう。それならば今すぐに居場所を吐かせすぐに始末した方が手っ取り早い。
「さあどうする?仲間を売るか、自分が犠牲になるか、二つに一つよ?」
「うーん‥‥わからん」
「‥‥は?」
困ったような表情で答えたカズキにフレイヤは面食らった。様子からしてふざけているようには見えない。
「ふざけているのかしら?それとも仲間意識で誤魔化しているのかしら?」
「いやだって電話してもあいつらと繋がんないんだもん」
「…貴方、本当に彼らの仲間なの?」
「あ、当たり前だぞ!一緒に焼肉食うし!あ、でも最近はリサの作る御飯が上手いもんなー」
プンスカと反論するカズキにフレイヤは大きくため息を吐いた。なんだか尋問しているこちらがあほらしくなってきた。
「そう‥‥貴方はもういいわ。先駆けしようとした私が何だがバカみたいだったわ」
「自分の事をバカとか言っちゃダメだぜ?もっと自信もてよ」
「だから貴方いまの状況わかってる?」
「わからん!」
「もううんざり、こっちまでおかしくなりそうだわ。貴方は拷問にかける」
フレイヤはもうカズキに視線を合わせることなく指をパチンと鳴らした。フレイヤの合図と同時に黒づくめの連中がカズキを囲うように近づいていく。明らかにおかしい雰囲気に気付いたカズキは慌てふためく。
「え、ちょ!?正直に答えたら解放してくれるんじゃないの!?」
「この世から解放する意味よ。それに‥‥普通真面目に取引するわけないでしょ?」
フレイヤは呆れたように肩を竦めて背を向けた。捕えた対象を間違えたのは手痛かったが妨げになる輩を一人始末できたのなら多少は元が取れるだろう。焦りながら喚くカズキの声にはもう聴く耳を持たずこの場を去ろうとした。
しかし何処からか響いてきた鈍いエンジン音にフレイヤは足を止めた。その音は次第に近づいて来て大きく響いてきた。まさかとフレイヤはゆっくりと振り向く。
フレイヤが振り向いたと同時に向こうの壁からV-150コマンドウ装甲車が壁を突き破って飛び込んできた。突然の装甲車の突撃にフレイヤもフレイヤの部下達も仰天した。V-150コマンドウ装甲車はスピードを落とすことなくこちらに向かってくる。カズキを取り囲む黒づくめの連中を追い払うかのように蛇行しながら迫り、カズキの前で急ブレーキで停まった。カズキはどういう状況か分からずキョトンとしていたが装甲車の扉が開くと見覚えある顔が見えた。
「すぽーーーーん‼カズキ、みっけ!」
「た、たっくぅぅぅん‼」
カズキはタクトの6日ぶりの再会に喜びの声を上げる。タクトもそれに答えようとポーズをとろうとしたが蹴とばされる。
「さっさと出ろやバカ!詰まってんだろうが」
「‥‥やっとカズキ見つけた」
「ケイスケ、ナオト!お前ら何処行ってたんだよー‼」
装甲車にはタクトだけでなくケイスケとナオトもいた。漸く4人揃った事にカズキは喜んでいたが不思議そうに首を傾げた。
「でもどうしてここだと分かったんだ?」
「そりゃお前、かなめちゃんのおかげに決まってんだろ」
「カズキ先輩!無事ですか‼」
ケイスケとナオトに続いてかなめがひょこっと出てきた。彼女のまわりに布のようなヒラヒラしたものが浮いている。
「先のショッピングモールの事件でカズキ先輩が狙われていたと聞いて私の磁気推進繊盾でカズキ先輩を見張ってたんです。そこで桜ちゃんからカズキ先輩が連れ去られたと聞いて後を追っていたんですけど‥‥カズキ先輩を探してるケイスケ先輩達と合流したのですよ」
「そこでカッコよくカズキを助けて俺に一生感謝させることを企んで装甲車できたのさ!」
「うん、かなめちゃんすっごくありがと」
カズキはドヤ顔で決めるタクトを無視してかなめに深く感謝をした。ケイスケもタクトをスルーしてカズキにM110狙撃銃を手渡す。
「ひと暴れしてこっからさっさと出るぞ。それに、助っ人もいる」
「助っ人?もしかして俺のファン?」
「誰がお前のファンだよ!?というかどういう考えをしてるんだ!」
「ほんと、どいつもこいつもブレてないじょ‥‥」
ツッコミを入れて静刃と鵺が装甲車から出てきた。静刃達との再会にカズキは驚きと喜びの声を上げる。
「おぉっ!?鵺ちゃんじゃないか!おひさー!それから‥‥えーと‥‥なんかしずかちゃん的な名前だったよな?」
「静刃だ‼もうやだこいつら!」
ナオトに続きタクトやケイスケも自分の名前は忘れてたようだから恐らくカズキも忘れているだろうと静刃は覚悟していたがその通りになってしまった。どうして鵺は覚えていて自分はすっかり忘れられているのか、静刃は頭を抱えた。
カズキはわざとキンジが幼女から人妻まで守備範囲が広いと‥‥うん、これまんざらでもないような気がする(視線を逸らす
うらやま‥‥ゲフンゲフン、けしからん!