カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼ 作:サバ缶みそ味
時系列的には
フレイヤ事件→原作23巻、キンちゃんマキリと戦う→原作24→【今ここ】
となっております
129話
イタリアがローマにある細い通り、ヴィア・デル・コルソ。細めの道とはいえローマのランドマークに囲まれた目抜き通りのこともあってイタリア内外からの観光客が多く、多くの人で賑わう観光地となっている。
その街中を遠山キンジはため息をつきながら歩いていた。彼は留年してしまった事により今現在はイタリアがローマ武偵校へと留学しているのであった。
彼の女難の相もあってかそこでも武器商でもあり自分の奨学金を担保してくれていたベレッタ社のベレッタ=ベレッタに捕まるわ、全額返済するまで拘束されるわいざこざがあったが、あの一月前に戦車で暴走していたあの4人組と比べれば苦にはならなかった。そのおかげもあってかすぐに解決。
そして今日はイ・ウーの同窓会というものに参加する予定だ。シャーロックがわざわざ手紙をよこしたのだから用心して掛からなければならない。そう意気込んでベレッタに監視役として雇われていたレキを連れて向かうまではよかった。
キンジはちらりと後ろを見る。後ろではしっかりとついてきてくれているレキ、ルンルン気分で観光してる魔女連隊隊長カツェ・グラッセ、その彼女をジト目で見つめている教会のシスターであり、ローマ武偵校の教師でもあるメーヤ・ロマーノ、そして勝手に後をついて来ていたベレッタがいた。
メーヤは教会へ行って迎えにいくつもりではあったが道中でばったりとカツェに出くわし、トレビの泉に連れてけと連れ回され、その途中でこっそり後をつけていたベレッタを見つけ気がつけば大所帯となっていた。
あと何人同窓会に出る奴に出くわすのだろうか、キンジは少々やつれ気味に頭を抱えた。それでも気を取り直して最後に合流する予定であるアリアの下へ彼女がいるフォール・フィオーレというレストラン・カフェへと向かう。
ヴィア・デル・コルソのわき道にあるカフェに向かうと石畳の上にパラソルを広げたオープン席に目立つピンク色のツインテールのアリアがいた。彼女がいたのは良かったが、その隣にいる人物を見てキンジはさらにうんざりした。
「やあ、キンジ君。快晴のローマは完璧だとは思わないかね?」
気軽な感じで笑みを見せながら語りかけてきたのはシャーロック・ホームズ。ローマで第一回目となる同窓会を開こうと言い出した張本人。まさかもう出くわすことになるとは、キンジは肩を竦める。
「曾御爺様が言った通りの顔ぶれね」
アリアはキンジの他についてきた面々を見ながら納得して頷いていた。どうやらシャーロックは条理予知してキンジの他に彼女達も加わることを知っていたようだ。
「おい、幹事さんよ英国紳士は紅茶がいいんじゃないのか?」
キンジは皮肉を込めてイタリアン・コーヒーを傾けるシャーロックをジト目で睨むが、シャーロックは気にもしていないようで楽しそうに微笑む。
「全ての日本人がお茶を最も好むのではないのと同様、全てのイギリス人が紅茶を最も好むのではないものだよ。君も知っての通り、アリアもコーヒー派であり、僕もイタリアでコーヒーを傾けるのは悪くないと思っている」
そう言ってコーヒーを傾けるシャーロックに言葉では勝てないとキンジはため息をついた。
「もうわかった‥‥全員揃ったのならさっさ行こうぜ」
ここでああだこうだと言うのも野暮、さっさと同窓会とやらに向かいたいキンジだったがシャーロックが待ったをかけた。訝しげに睨むキンジにはものともせずシャーロックは腕時計を見つめながら苦笑いをした。
「最近、僕の条理予知も時々外れるようだ‥‥キンジ君、彼らには出会わなかったのかい?」
彼ら‥‥?とキンジだけでなくアリアまでも不思議そうに首を傾けた。この同窓会に出るのは自分とアリアとカツェと‥‥ブラドは拘留中であり、ヒルダは来ない。元々ローマ魔物にとって入りにくい土地だとジャンヌから聞いている。
それ以外に来そうな人物は‥‥と思い返すが、なかなか思い浮かばない。複数で来るのだから残るは‥‥と考えたキンジはぞくりと感じた。
「アリア‥‥俺、すっげえ嫌な予感がする」
「奇遇ね‥‥私もだわ。というか曾御爺様、あいつらも来るのですか…?」
アリアは恐る恐るシャーロックに尋ねた。願わくば今思い浮かべている彼らではないと、あのバカ4人組じゃないとキンジとアリアは心から願った。
しかしそんな少年少女の願いを軽々と打ち砕くが如く、遠くから聞き覚えのある喧しい騒ぎ声が聞こえ近づいてきた。
「だーかーら‼トレビの泉は後で行けばいいだろうが、バカか!」
「ヤダもん!俺もトレビアの泉でへぇーしてえもん‼」
「ここの店、なんか美味しそうなもん売ってる‥‥よし、行こう」
「あぁっナオトが勝手に…!ピザ売ってんじゃねえか、俺も連れてけ‼」
「もう少しで着くから勝手にあちこち行くな‥‥‼」
騒がしく歩き、勝手に何処かへ行こうとし、わちゃわちゃしているカズキ達と纏めて連れてきているセーラとリサの姿が見えた。カズキ達を見た途端、カツェは嬉しそうにしていたがキンジとアリアは頭を抱えた。
「お?あれってキンジとアリアじゃね?キンジ、アリア!すぽぉぉぉん‼」
「カツェもいるじゃん、おひさー‼」
「なんでお前らまで来るんだよ!?」
「よっ!久しぶりだな、カズキ!」
イタリアにまでくれば彼らに会う事も無いので少しでも気が休めるかと思った矢先、出くわすことになるとは。この同窓会は絶対に荒れる、キンジとアリアは予測した。一方、セーラはずかずかとシャーロックの方へと歩み寄り、やつれた表情で訴えた。
「あのバカ達‥‥疲れる‥‥!」
「やあセーラ、ご苦労様。少し遅れ気味だったようだけど大丈夫だったかい?」
やや苦笑いしながらシャーロックは尋ねるが、セーラはジト目で睨んできた。
「たっくんが間違えてヴェネチア行きの列車に乗ろうとするし、ナオトが勝手に迷子になるし、カズキは突然歌いだしてピザ食べたいって言いだすし、ケイスケはリサ連れて遊びだすし、たっくんが勝手にタクシーに乗ってヴェネチアへ行こうとするし‥‥こいつら自由すぎ‼」
まだまだ語り足りないとセーラは述べる。ここに来るまでカズキ達に振り回されたのだろう、キンジとアリアは今回ばかりはやつれ気味のセーラに同情した。
「というか同窓会の会場はヴェネチアじゃないのか」
「カズキ‥‥ヴェネチアって、あんた達ちゃんと手紙を読んだの?」
「捨てちゃったぜ」
「置きっぱなしにした」
「読んでシュレッターかけた」
「醤油こぼしちゃった」
「そうよね。というかそうだったわよね、聞いた私がバカだったわ」
当然だと反省の色も見せずに即答した4人にアリアは頭を抱えた。こんな彼らをここまで連れてきたセーラは本当に頑張ったと思えた。
「やあタクト君、カズキ君、ケイスケ君、ナオト君、リサ君、よく来てくれたね」
「シャーロックさんすぽぉぉぉん‼というかシャーロックさん、会場はヴェネチアの方が雰囲気いいと思うんですよ!第二回はヴェネチアでやろう!」
「ヴェネチアか‥‥いいね、素晴らしい提案だ。それじゃあ第二回は改めて送ろう」
「っておいシャーロック!なんでこいつらも呼んだんだよ!?」
呑気に彼らと楽しく会話をしているシャーロックにキンジは眉をひそめて尋ねた。セーラはまだしもカズキ達はそんなに関係はないはずだとキンジは訴えるがシャーロックはにっこりと笑みを見せる。
「ヒルダから聞いていなかったのかい?彼ら、菊池タクト君はイ・ウーの次期当主となる予定だ。新たなるリーダーを呼ばなくてはいけないじゃないか」
「「‥‥はあああああっ!?」」
シャーロックからのトンデモ発言を聞いてアリアとキンジは驚愕の声を上げた。すぐ隣で悪ふざけしている同級生があのイ・ウーのリーダーになるなんて初耳だ。
「おい待てシャーロック、いくらなんでもあのバカはダメだろ!?数秒で崩壊するぞ!?」
「曾御爺様!あいつに任したらダメな気がします!すぐに何か壊してやらかしますよ!?」
任せちゃいけない奴に任してはいけない。焦る二人に対してシャーロックはにこにことコーヒーを傾ける。
「心配はないよ、寧ろ彼らのおかげでイ・ウーは再評価されている。今よりも先、今後イ・ウーはどうあるべきか‥‥彼、菊池財閥は先を考えている。次の次代に託すのは悪くはない」
嬉しそうに語るシャーロックにキンジとアリアは不安そうにタクトを見つめる。本当にこのふざけている男に任せて大丈夫なのだろうか、心配と不安でしかない。
「さて、全員が揃った事だしそろそろ行こう!同窓会の会場にはグランドホテルプラザのボールルームを借りている。ヴィスコンティ、フェリーニ、マーティン・スコセッシらに愛された、空間そのものがry」
「ああっ!?ナオトがいない‼」
「あいつ暇すぎてどっか何か買いに行きやがった‼そう遠くに入ってねえはずだ!リサ、追跡を頼む!」
「は、はい!ナオト様は‥‥‥あ、あちらのお店に入って並んでます!」
「ねえーセーラちゃん、ねえーマシュマロ好き?ねぇーマシュマロ好きでしょ?」
「たっくん、マシュマロをほっぺに押し付けないで」
「シャーロック!長話してないではやく行くぞ‼じゃないとあいつら自由に勝手に行動する!」
話が長すぎて自由行動をしまくる彼らで収集がつかなくなってしまう。全員で協力したおかげでナオトは早く見つけることができ、闇雲にマシュマロを押し付けるタクトからマシュマロを没収することができた。
ようやっとレストラン・カフェから移動することができた。しかし黙ってついて行っているキンジとアリアに対してカズキ達はワイワイと賑やかにシャーロック達と会話しながら歩いていた。
「へぇー…タクトの奴がイ・ウーのリーダーになったのか。魔女連隊もサラコさんにお世話になろうかな?」
「カツェやめといたほうがいい‥‥絶対こき使われる」
「ローマに来たんだからディーノさんやトリエラちゃん達も呼べば良かったなー。みんな元気にしてるかなー?」
「たっくん、同窓会終わってから遊びに行けばいいだろう?」
「遊びに行ったらピザパーティーだ!」
「ふむ、キャバッローネファミリーの‥‥私も折角イタリアに来たのだから同窓会が終わったらかの赤ん坊に挨拶でもしに行こうかな‥‥」
どこへ行っても賑やかな奴等だとキンジはため息をついた。この腐れ縁に束縛されているのかと考えると心なしか胃がキリキリ言いだした。そんなキンジについて来ていたベレッタが訝しげにカズキ達を見ながら尋ねる。
「ねえキンジ‥‥確かあいつらって以前マフィア引き連れてローマ内を暴走してた連中でしょ?」
「ああ‥‥ベレッタは姿しか見た事無かったんだっけか?絡まれたら自分の胃が終わりだと思ったほうがいいぞ」
「そ、そんなにヤバイの!?」
「ヤバいってレベルじゃないわよ‥‥先月はあいつら戦車で都内を爆走してたし」
「せ、戦車!?え、あいつら武偵でしょ!?」
慌てふためくベレッタにキンジとアリアは遠い眼差しをしていた。まだ大丈夫、もし今後関わるとしたら自分の常識が壊れてしまうだろう‥‥
気を取り直して改めて会場へとのんびり歩いていく。途中でシャーロックが名店を一つずつ覗き込んでは立ち止まり豆知識を披露していく。その間にナオトが迷子になりかけるわカズキとタクトが何か買っているわ、ケイスケが先先行くわで結局キンジは休むことができなかった。漸く彼らを止めることができ宝石店のショーウィンドウの前で一息ついていると自分達の行列の中にスッと誰かが割り込んできた。
「――――お久しぶりです、遠山キンジ」
「‥‥!?マキリ‥‥!?」
キンジはぞくりとしてすぐに真横へと身構える。そこにいたのは東京湾で戦った伊藤マキリの姿が。晴れた日なのに黒の防弾コートに編み上げの黒のロングブーツに長い黒髪、氷の様な瞳の伊藤マキリがいた。まさか単身で乗り込んできたのかと慎重に辺りを見回すと、自分達の行列に割り込んできたのは彼女だけではなかった。
「‥‥な、何だ‥‥!?」
「‥‥っ!?」
アリア、カツェ、メーヤ、レキ、セーラもマキリと同じく割り込んできた一団には今気づいたようだ。その一団はとても奇妙というか奇抜だった。雨合羽のようなフードとコートで隠している2mを越す巨漢と同じくフードとコートで隠しているアフリカ土産みたいなデザインの木彫りの仮面で顔を隠している小柄の人物。カツェとメーヤの前には左右に翼の装飾のされた金と緑の兜、そして同じ配色のビキニアーマーを身に着け白銀の槍を持った金髪の三つ編みの白人。そして顔面を包帯、山高帽、サングラスで隠し、トレンチコートで全身を隠した人物。
誰もかれもがコスプレのような恰好をしているがどれも只者じゃない、彼らがマキリと同じくかの『N』の一員なのだ。アリア達は警戒して身構えているがシャーロックは涼しい顔をして笑顔で迎えていた。そして‥‥
「たっくん、これとかどうよ?レモネード安くね?」
「お前ローマにきてレモネードとかロマンねえな!やっぱりチュッパチャプスでしょ!」
「こいつら論外だ。リサ、どんなのがいいか?」
「そうですね…家族に贈るのでしたらエスプレッソとかはどうでしょうか?他にもBaciというチョコレートもおススメですよ?」
「バルサミコ酢かオリーブオイルか‥‥」
(気づいてねえ‥‥!?)
カズキ達はマキリら『N』が現れているのにも気づかずのんびりとお土産を買おうとしていた。声をかけるべきかどうすべきかキンジは悩んだ。マキリが現れたと彼らに伝えると間違いなくその瞬間にスタングレネードや手榴弾を投げだすかもしれないし、大惨事になり兼ねない。
「『同志達よ、争ってはならない』」
その一団の中に海軍の軍服と軍帽を身に着けたアリアと同じツインテールをした青い髪の少女がマキリらを収めた。彼女の一言でマキリたちが殺気を収めたことからキンジはこの少女がこの一団のリーダー格だと察した。キンジだけでなくアリア、レキ、そしてシャーロックがその少女を見つめている。
「これは意外だった。神出鬼没の提督殿がお目見えだとは、流石の僕も推理できなかったよ。君達が現れる時刻は推理できたがね」
シャーロックの言葉にキンジはギョッとする。シャーロックでも推理できなかった、条理予知の力でも予測することができなかったと。キンジはこの軍服の少女が只者ではないと理解した。
「こちらも予測時刻の通りだ。それより――――私達が人目を好まぬのは知っているはずだ。私も立ち話は好きではない、さっさと案内しろ」
少女はシャーロックに対して不敵な笑みで上からといった態度で告げて来た。シャーロックはそんな少女に苦笑いして頷いた。どうやらシャーロックにとってこの少女は天敵のようだ。
「待て‥‥その前にお前は一体何者なんだ‥‥‼」
キンジは少しでも敵の情報を得ようとわざと挑発的に尋ねた。そんなキンジに対して少女はフンと鼻で笑って不敵な笑みを見せた。
「私は――――「あれ?あそこにいるのって‥‥ネギちゃんじゃね?」‥‥っ!?」
タクトの声が聞こえた途端、少女は物凄く嫌そうな顔をして声のした方へと視線を向ける。そこにはお土産を沢山購入したタクト達の姿が。
「たっくん、ネギじゃねえだろ。たしか‥‥あー‥‥そうだ、アリア2号機ことネスちゃん‼」
「ちげえだろ。ハモかアナゴかウナギ‥‥寿司みたいな名前だったはずだ」
「ガリ」
「待って思い出せそう‥‥そうだ!アネモネちゃん‼」
「ネモだ‥‥シャーロック、貴様。何故こいつらも呼んだ?」
ギロリとシャーロックを睨むネモだがシャーロックは緊張していた表情が一変、愉悦な笑みを見せていた。
「おやおや?君でも予測不可能だったみたいだね。人目で暴れるのは嫌いなのだろう?我慢して会場までついてきたまえ」
「‥‥っ」
愉悦な笑みを見せるシャーロックにネモが舌打ちをした。まさか出鼻をくじかれるとは、本人も思ってはいなかったのだろう。そんなネモにキンジはどことなく自分と似てないようで似ていると感じた。
NDK?NDK?まさか出鼻をくじかれるとはネモ提督も思ってはいなかったでしょう‥‥
原作を読んでいくとネモが意外な性格でしたので‥‥ようこそ!君も胃痛仲間だ!