カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 今年のGWは10連休のようですね。いいですね10連休。どこへ出かけようかとわくわくしますよね。ええ、私にとって10連休なんてないので気にしておりません(血涙

 


137話

「うおおおい‼いつまで走ればいいんだよぉっ!?」

 

 どれくらいの時間をかけ、どれくらいの距離を走っているだろうか。左慈と召喚された兵隊に追われる中を長い事走り続けている最中にカズキが息を荒げながら弱弱しく何度も叫んだ。そんなカズキの弱音の叫びにケイスケが苛立ちながら怒声を飛ばした。

 

「叫んでる暇があったら只管走れ‼」

「うわあああん!ナオトーお助けー!」

 

 ケイスケの喝にさらに弱音を叫ぶカズキはナオトに助けを求めた。だがカズキが期待していたナオトの鶴の一声は無かった。

 

「叫ぶ元気があるならまだ大丈夫」

「おまっ!?この鬼畜ぅ!このアンポンタン!この明太子!」

 

 ナオトの慈悲の声がなかったことにカズキがプンスカと怒りだす。へばっているのかまだ元気があるのかそんなカズキの腕を先ほどまで目を回して混乱していたココ(猛妹)が正気に戻ってぐいぐいと引っ張る。

 

「このっいつまで引っ張るネ!お前達のせいで私までもが裏切者扱いされてしまうヨ!」

 

「まあそう怒るなってアリア二号ちゃん、ふりかけ食べても胡椒の縁っていうじゃん?」

「それを言うなら振袖合うも他生の縁じゃね?」

「流石ナオト!お前今日から諺マスター5段って呼ぶぜ!」

「てかお前疲れてるんじゃねえのか?」

「ああっそうだった!か、カツェぇぇこっからどうすんのぉぉぉ!?」

 

「人の話を聞けヨ!?」

 

 人の名を間違え人の話を完全にスルーされたことにココはツッコミを入れるがそれも完全にスルーされてしまった。再び弱音をあげているカズキにカツェが並走して彼の背中を叩き喝を入れる。

 

「今考えてる!何とかするからとにかく走れ!」

 

「は、はやく私にいい考えがあるとか思い浮かんで!お願いぃぃ!」

 

 カズキが必死の形相で頼み込んできた。九龍のプロムナードにある董卓の豪邸から離れ尖沙咀の商店街の中へ、行きかう人々の間を縫うように只管走り続けた。

 

「くそっ‼人混みの中に紛れて逃げてもまだ追いかけてきやがる!」

 

 ちらりと後ろを見ていたケイスケが舌打ちして悪態をつく。後方では商店街を行きかう人々が悲鳴を上げて蜘蛛の子を散らす様に逃げ出し道が開き、その開いた道を剣や槍を構えた白い兵士達がカズキ達めがけて追っていた。そしてその兵士達の後に左慈が宙に浮きながら後へ続いている。

 

「どこへ逃げても無駄アル!左慈は絶対に逃がしてくれないネ!」

「このままじゃ埒が明かない‼どうにかして撒くねえぞ‼」

 

 ココとケイスケの言う通りこのまま走り続けても何も打開策が浮かばない。弱音を叫びながら走っているカズキは限界に近い。この状況が長引けば長引くほどこちらが不利だ。だからと言ってここで戦闘をしても今の状況で左慈に勝てるかどうか、この劣勢の最中で更にココが寝返られたら一気に負けてしまうかもしれない。

 カツェは何かいい考えはないか必死に思考したが視線の先に見える光景を見てもうこの方法しかないと意を決する。だからこそ実行する前にカズキ達に尋ねた。

 

「お前ら、長距離を泳げるか?」

 

「えっ?どゆ「行ける!」「愚問だ‼」「問題ありません!」こと?ねえカツェどゆこと?」

 

 カズキの戸惑う声を遮るようにナオト達は大声で即答する。カズキの回答は聞けなかったが彼らなら問題ないとカツェは判断し、懐からライターとボトルを取り出しボトルのふたを開けた。

 

「いいか?これからやることは数十秒しか足止めが効かねえ。その間に一直線に猛ダッシュしろ」

「この先は海……も、もしかして香港島へ泳ぐ気アルか!?」

 

 ココはカツェの魂胆が分かるとギョッとする。左慈から逃げるためのイチかバチかの一手だ。しかし小手先の足止めでは簡単に撒くことはできないだろう。

 

「海に飛び込んだと同時にあたしの力で一気に香港島へ行かせる。水流に飲み込まれないようにしろよ!」

 

 ココは戸惑ったがカツェはやる気のようでやけくそ気味に頷く。ココはしぶしぶ了承したがカズキ達はちゃんと理解しているだろうか、気になったカツェは目でカズキ達に確かめた。ナオトとケイスケとリサは理解して頷いていたがカズキは状況を把握できていないようでキョトンとしていた。

 

「カズキ、いけるか?」

「おー…だいたい分かったぜ!あ、でも俺ry」

「それじゃあ行くぞ‼」

 

 カズキが何か言いかけようとしていたがカツェはボトルの中に入っている水のようなものを口に含むと迫りくる白い兵士達の方向へとライターの火を灯した。

 

「――――ぶはぁっ‼」

 

 カツェは大きく息を吐いたと同時に白い霧を吐いた。広がりだそうとする白い霧はライターの火へと通ると炎が燃え広がりだした。突然現れた炎に行く手を遮られカズキ達を追っていた白い兵士達は炎に驚き足が止まった。行く手を阻まれた追手の足が止まったのを見たカツェはカズキ達に呼びかける。

 

「走れっ‼」

 

 彼女の合図とともにカズキ達は必死に一直線に走り出した。この通りの突き当りへと駆けると海が見え、その先に島の明かりが煌々と煌めく。この海の先が香港島のようだ。ケイスケ達はカツェの指示通りに柵を乗り越え海へと飛び込んだ。最後にカツェが飛び込むと彼女は手をかざしだす。

 

「こっから水流と波を起こす。溺れないようにしとけよ‼」

 

 それの直後、ケイスケ達の後ろから水の激しく流れる音が唸りだす。そして波がうねりをあげてケイスケ達を押し出すように一気に流れていだした。その勢いは流れるプールや波が起こるプールとかの比ではなく激しく力強く強引に押し流す。気を抜いたら波にのまれてしまうだろう。

 ケイスケ達は溺れまいと必死に体勢を保たせながら流れに身を任した。気が付くと波と流れの勢いが段々と弱くなっていた。ケイスケは辺りを見回すと桟橋が視界に移った。

 

「はぁ…な、なんとか香港島へたどり着いたぜ?」

 

 カツェは「結構力いるんだぞ?」とぼやきながらやや疲れ気味に笑い桟橋へと上がる。ケイスケ達も続くように桟橋へと上がり辺りに追手がいないか見回す。辺りは波の音しか聞こえない静かな港のようで自分達を追っていた左慈達の姿もなかった。

 

「なんとか振り撒けた?」

「ふぅー…左慈に追いかけられるとか生きた心地がしなかったヨ」

「あぁん?途中で裏切ったくせによぉ、覚悟できてんのかぁ?」

「ヒッ」

 

 何とか逃げ切れたと安堵するナオト、ケイスケの鬼のような形相で睨まれ涙目になるココ、怒れるケイスケを宥めるリサ、彼らの安堵した様子に同じようにカツェは安堵した。

 

 が、カツェはすぐにあることに気づいた。

 

 

「……おい、カズキの奴がいないんだが?」

 

 よく見ればカズキの姿がいない。確か海に飛び込んだ時には隣にいて彼の姿はあったとカツェは記憶を遡らせる。そんなカツェにケイスケとナオトは「えっ?」とキョトンと不思議そうな顔をした。

 

「お前、何とかしてなかったの?」

「そばにいながら何もしてなかったのか?」

「え、いや、どういうことだ?」

 

 どういう意味なのか理解でき兼ねないカツェにケイスケは当然の如くに答えた。

 

「だってあいつ―――――泳げないんだけど?

 

「……はあああああああっ!?」

 

 カズキは泳げない、突然の事実にカツェは驚愕した。一度泳げるかと尋ねたのにカズキはどや顔でOKと答えていたのを思い出す。

 

「なんで泳げないのに『わかったぜ!』ってどや顔で答えたんだよ!?つかお前らも教えろよ!?」

 

「いやー、カツェが何とかしてくれるのかなーって」

「なんたってカツェだし」

 

「お前ら呑気すぎるだろっ!?」

 

 こんな状況でも呑気してるケイスケとナオトにツッコミを入れるが、まさかとカツェは狼狽しながら暗い海の方へと視線を向けた。自分が起こした激流と波でカズキは道中で飲み込まれて溺れているかもしれない。わたわたとしているカツェにココがジト目で指をさす。

 

「あいつなら…溺れたシカのようにもがいてたの見たヨ。そんで今あそこにいるネ」

 

 ココの指さす先にはプクプクと気泡が弱弱しく上がっていた。その泡の数は今にも尽きてしまいそうだ。

 

「待ってろカズキィィィィッ‼」

 

 カツェが必死の形相で再び海へと飛び込み気泡が湧いている場所へ泳いで潜った。しばらく見守っているとカズキを肩に担いだカツェが海面へと上がってきた。なんとか桟橋へと戻ったがカズキはピクリとも動かない。そんなカズキにケイスケとナオトはやれやれと肩をすくめる。

 

「いつまで寝てんだ。叩き起こすぞ?」

「いや、俺が踵落としで起こす」

 

「お前ら物騒過ぎんだろ!?こういう時は…ええと…じ、人工呼吸だ!つ、つまりは…」

 

 カツェは多少もじもじしながら人工呼吸をするよう指示を出すがケイスケとナオトはじっとカツェを見つめていた。

 

「……」

「……」

「……」

「…やんないの?」

 

「あっ、あたしがかっ!?いやお前らがやれよ!?」

 

 カツェが顔を赤くして反論するがケイスケとナオトはどうしようかなぁと言わんばかりな面倒くさそうな顔をしだす。

 

「俺らがやんなくてもたぶん大丈夫でしょ」

「絵的にカツェがいいんじゃねえの?」

 

「適当すぎんだろうが!?」

 

「このままだとカズキ様が危ない…それでしたらリサがやります!」

 

 ふんすと張り切って手を挙げたリサにケイスケが素早く止めた。

 

「いや、リサがするんなら俺がしよう」

「いやいや、ケイスケがするなら俺がする」

「いやいやいやお前らじゃ下手で死なすネ。こんな時はココに任せるヨ」

 

「…あたしがする「「「どうぞどうぞ」」」なんだよこれはよぉ!?つかそんなことやってる場合じゃねえだろう!?」

 

 こんなコントをしている場合ではない。このままカズキをほったらかしにするわけにはいかない。意を決したカツェはカズキの口を開かせ自分の口を近づけさせていく。プルプルと体が緊張で震え、己の顔が赤く体が熱くなっているのが分かる。それでもカズキを助けようとカツェは唇を近づけさせた。

 

「…………ぶへはぁっ‼」

 

 その時、カズキが目を覚ました。いきなりのことで硬直するカツェだがカズキは気付かずにゲホゲホと咳き込む。

 

「げほげほっ…あ゛ぁー死ぬかと思った!もう溺れた時はやべぇと思っ……あれ?カツェなんか顔近くね?」

「うわあああああああああっ‼!?」

 

 顔がタコのように赤くなったカツェは叫びながら思い切りカズキを殴りつけた。

 

「あばすっ!?」

「ばっ、バカ野郎‼お、泳げないなら早く言えよこの野郎っ‼あとあたしの乙女心返せ!」

「あだっ!?ちょ、なんで怒ってんの!?」

 

 ポカポカと叩かれているカズキを見てケイスケとナオトはやれやれと肩をすくめて苦笑いをしていた。

 

「ったく、心配かけさせやがって」

「まあ何とかなって良かった。でもカツェ滅茶苦茶怒ってない?」

 

 なぜそこまで怒ってるのか不思議そうにしているカズキ達にリサは苦笑いしココはやれやれと呆れていた。

 

「あいつ…千載一遇のチャンスを逃すとか大馬鹿アルなぁ」

 

 呆れて肩を竦めていたその直後、ぞくりと嫌な気配を察した。ココだけでなくカツェも同じようで気配を察して辺りを見回した。その直後カズキ達を囲むように白い煙がモヤモヤと漂い出す。煙が消えると先程までカズキ達を追いかけていた白い兵士達の姿が現れた。まさかとココとカツェが上を見上げると左慈が宙に浮きながらこちらを見下ろしていた。

 

「ふむ…先ほどの足止めはなかなかいい一手だった。だがそれもただ『いい一手』、その手では私から逃れることはできん」

 

 冷静に告げる左慈にカツェは舌打ちして悔し気味に睨んだ。そんなカツェにはおかまいなく左慈は右手を挙げて合図をすると剣や槍を構えた白い兵士達がジリジリとカズキ達へとゆっくりと迫った。カズキとケイスケとナオトは銃を構える。

 

「どうするカツェ?俺達で切り開こうか?」

 

 カズキ達はやる気満々だったがココとカツェは項垂れて首を横に振る。

 

「もう終わりネ…左慈にお仕置きされるヨ」

「この状況で左慈から逃れることは無理だ……代わりにあたしが囮になってお前らだけでも…」

 

「そんなことはできっか!ソウルメイトは絶対に見捨てたりしないぜ!」

「まだ弾もゲロ瓶もあるからな。大盤振る舞いしてもいいか?」

「リサもお供させていただきます…!」

「手榴弾投げ放題」

 

 強気なカズキ達の様子にカツェは思い出した。彼らは恐れを知らないだけでなく、どんな窮地でも諦めずにゴリ押しで突破していく連中だと。こうなれば当たって砕けろとカツェも懐からルガーP90を取り出す。囲まれても尚折れない彼らを見た左慈はやれやれと頷いた。

 

「その威勢は良し。だが、いくら強がろうともこの窮地からは逃れられんぞ?」

 

 左慈は挙げていた右手を下した。その合図に白い兵士達がカズキ達に一斉に襲い掛かる。覚悟を決めた彼らは何を考えているのか、左慈はじっと彼らを、カズキ達を見つめる。

 

 

「うおおおおおおお!なんとかしてくれ、ゴクウぅぅぅぅっ‼」

 

 先ほどの威勢と変わってなんとも弱弱しい叫びの事か。左慈は思わずこけそうになった。それでも尚カズキは自信満々に叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「呼びましたか?」

 

 

 カズキの叫びに答えるように少女の声が聞こえた。その刹那、カズキ達の前にスタッと少女がどこからともなく跳んできた。その少女は地面にすれすれなほどの黒い髪をし、香港なのに名古屋武偵女子高ことナゴジョのへそ丸出しのカットオフセーラーを着ており、超という程短いスカートからニョロンと長いしっぽが見えた。突然現れた少女にカズキ達はポカンとしていたが、左慈は目を丸くして左手をあげて白い兵士達を止めた。

 

「……まさかこんなところで出くわすとはな。孫、いや今は猴だったか」

 

 左慈は驚いているようでカズキ達の前に立ちはだかっている猴と呼ばれた赤い瞳の少女を見つめる。猴は臆することなくじっと左慈を見つめ返した。

 

「左慈様…貴方ほどの賢人が何故董卓についたのか、事情は静幻様から聞いています」

 

 猴の言葉に左慈はピクリと反応した。先ほどとは少し重い面持ちをしだす。

 

「では問おう。お前はそれを知っておきながら何故かの者を助けようとする?」

「彼らは遠山の友人、大切な人の友人が窮地に陥っているならば猴は助けます」

 

 猴の真剣な眼差しを見て左慈はふっと笑った。やや嬉しそうに、この満足した顔を見せまいと静かに頷いた。

 

「以前の怯えていたお前ではないな…だが、この状況をお前はどうやって打開する?」

 

 

「一人ではないさ」

 

 力強い男性の声がカズキ達の後方から聞こえてきた。視線を向けると奉天檄を持った黒い革ジャン、黒のレーザーパンツを身に着けたオールバックの男性が近づいてきていたのが見えた。その大男の姿を見たカツェがギョッと目を丸くした。

 

「あれって……呂布じゃねえか!?」

 

「あ、呂布だ。京都以来か?」

「呂布さんおひさー!」

 

 こんな状況の中カズキとケイスケは久しぶりに再会する友人の如く手を振る。彼らを見た呂布は苦笑いして頷くとジロリと左慈を睨み奉天檄の切っ先を向けた。

 

「さて、ここで俺が暴れてもいいが貴様はどうだ?」

 

 睨まれた左慈はゆっくりと唸りながら白い髭をさする。無双と呼ばれた呂布を相手に如何にするか、些か考えた左慈は懐から札を取り出す。

 

「心配は無用、さすれば式神の数を増やすだけ」

「ふん、数で押すか……ならば俺や猴の他に、こいつらの助っ人がいたとすればどうする?」

 

 呂布はちらりと後ろへと視線を向けた。うっすらとした暗闇の中から黒い外套を羽織った黒髪の青年とピンクの長髪のゴスロリの服を着た少女の姿が現れた。彼らの姿を見たカズキ達は大喜びで手を振った。

 

「おおっ‼鵺ちゃん!やっほー‼あと……タケシだっけ?」

「ちげえよバカ。鵺と一緒にいるのはケンジだろ」

「やすしかきよしだったはず」

 

「セイジだ‼原田静刃だとつってんだろ!?だからなんでお前ら鵺のことは覚えていて俺を忘れてんだ!?」

 

 またしても名前を忘れらいることにプンスカと怒る静刃だったがカズキ達は当たり前のことのように即答する。

 

「「「ビーム撃てるから」」」

「畜生もうやだこいつら‼」

「ぎゃははははは‼相変わらず楽しませてくれるじょ!」

 

 どういう基準なのか、相も変わらず分からない静刃は地団駄を踏んでそんな静刃を鵺が腹を抱えて爆笑する。変な状況ではあるが味方の数が一気に増えた。呂布は静刃達をほっといて再び左慈に尋ねた。

 

「さて、どう動く?この状況でお前は簡単に勝てなくなったぞ?」

「………」

 

 左慈は沈黙したままじっとカズキ達を見つめた。そしてため息を漏らしてパチンと指を鳴らすと、白い兵士達が煙のように消えて白い札へと姿を戻す。白い札は飛んで左慈の手へと戻った。

 

「ここで戦ってもどちらも無意味。私は帰らせてもらおう……ふむ、なんとも強運な者だな」

 

 再び指を鳴らすと左慈の体がモクモクと煙のように漂い出して消えていった。緊張した空気が消え、辺りが静かになるとカツェが息を大きく吐いてへなへなと座り込んだ。

 

「はぁぁ…い、生きた心地がしなかったぁ…助かったぜ、猴」

 

「あい!鵺殿がここへ嗅ぎつけてくれたおかげで早く助け出すことができました。それに呂布様がいらしていなかったら左慈様を簡単に退けることはできなかったかもしれません」

 

 猴はぺこりと呂布にお辞儀をすると呂布はフンと鼻を鳴らして奉天檄を肩に担ぐ。

 

「ふん、今回は静幻の方につけば楽しい戦になると思っただけだ。次にあいつが病に臥せたときは敵かもしれんぞ?」

 

 さて、と呂布はカズキ達の方へと視線を向ける。カズキ達は再び出会った静幻と鵺と話をしていた。

 

「いやー鵺ちゃんらどして香港にいんの?」

「がははは、鵺はそん時酒を飲んでたからあんまり覚えてないじょ。たぶんノリ?」

「違う。あのタクトの母、更子ってやつとあのジョージ神父に頼まれたんだよ」

 

 静刃はムスッとして話す。東京で電話があり、タクトの母親の菊池更子だと名乗ると『バカ息子が香港で頑張るから手助けをしてくれ。後ついでに藍幇の諸葛静幻がピンチだから助けてやれ』と依頼されてきた。どうして自分の電話番号を知っているのかと戸惑う最中に追い打ちをかけるかのようにジョージ神父が尋ねてきて同じような内容の依頼をしてきたのであった。

 ここで断ったらどうなるか、静刃はぞっとしながら承諾し渋々香港へ。更子とジョージ神父のコネのおかげかそこで猴と呼ばれた少女と出会い、諸葛静幻の下へ。そして彼の護衛を務めることになってしまったのだという。

 

「ったく、お前らとまた組むとなると胃が痛くなってきやがる…」

「まあそういうなって。悩み事ならソウルメイトだから相談に乗ってやるぜ?」

「胃痛の原因はなんだ?」

「お前らのせいだって言ってんだろうが!?」

 

 どうしてこう自覚してくれないのだろうか、静幻は心なしか胃が痛くなってきた。ふとカズキ達の下に猴がポテポテとやってきた。

 

「あなた方がサラコ様がおっしゃていた方ですね?初めまして、猴と申します」

「……」

 

 猴は礼儀正しく笑顔でお辞儀をするがカズキ達はまじまじと超ミニなスカートからはみ出ている尻尾をまじまじと見つめていた。

 

「お話はサラコ様からお伺いしております。これから静幻様がおられる隠れ家へと案内しますです」

 

「……」

 

 詳しい話はその隠れ家に着いてからと猴は説明するがカズキ達はそんなことは聞いていないまま猴をまじまじと見つめていた。

 

「……?どうかしましたか?」

 

 どうしたのかと猴は不思議そうに首を傾げた。まじまじと見つめていたカズキがゆっくりと口を開く。

 

「…さっき、ゴクウって呼んだら返事をしたよね?」

「?あい!猴は孫悟空です!」

 

「「「孫悟空…」」」

 

 えっへんと胸を張る猴に対してカズキとナオトとケイスケは声を揃えて顔を見合わせてゆっくりと頷いた。

 

「……カカロットだ」

「カカロットじゃん」

「間違いなくカカロット。よろしくな、カカロット!」

 

「ええっ!?」

 

 カズキ達に初めて出会って数秒で『カカロット』と名付けられた猴は驚きの声をあげた。




【藍幇の孫悟空、出会って数秒で『カカロット』と呼ばれる】


新曲が出ましたね!動画に出ております

 アスヘノBRAVE→曲もダンスもカッコイイ‼
 
 MssPanzer→燃える熱い曲‼

 動画【ラップバトル】→ふぁっ!?

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