カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼ 作:サバ缶みそ味
14話
「たっくん、やることがなくて暇だねー」
「ねー」(*´ω`)
「ねー、じゃねえよ。だから人の仕事を邪魔すんなや」
雨の日が多い6月、カズキとタクトはケイスケの医務室にてベッドの上でぐでっとしていた。ここ最近、SランクやAランクの任務をアリアに横取りされることは減り、カズキ達だけで遂行できることが増えた。しかし相変わらずの低評価でCランク止まりのままだった。コーヒーを飲みながらパソコンで作業をしているケイスケはいつまでもぐだっているカズキとタクトを叱る。
「あれあれ~?ケイスケ先生はなぁにやってんのですかぁ?」
「やってんですかぁ?」( ´థ౪థ)
変な顔でふざけながらカズキとタクトは愚痴をこぼしながらパソコンを打ち続けているケイスケが気になっていた。ケイスケはブスッとした顔でカズキ達の方を見る。
「教員に提出する課題と論文だ。というかお前ら単位を忘れてないか?」
あ、と二人は口をこぼした。武偵高校にも単位というものがあり、1学期のうちに一定の単位を取らなければ補修もしくは留年、最悪の場合退学になってしまう。カズキ達はその単位が足りておらず1学期が修了するまでに取らなければ留年してしまうのだった。その事実を思い出したカズキとタクトは真っ青になる。
「やっば!?忘れてた‼」
「てかずるいぞケイスケ‼抜け駆けかよ!?」
「一蓮托生とかごめんだし」
急に慌てだすカズキとタクトをよそにケイスケは再度パソコンのほうに視線を向きなおして作業を再開した。着々と単位を稼いでいくケイスケに対し、二人は何もしていなかった。そんな時、ナオトが眠たそうにしながら医務室に入り、ナオトに続いてリサも入って来た。
「おまえ、リサは医務室までの道のりを覚えたのにいつまで迷ってんだよ」
「…眠気とヤル気による」
「頑張れよ!?リサちゃんいつもごめんな?」
「いえ、こう色々と見て回れるのが楽しいので大丈夫ですよ」
呆れているケイスケとカズキに対してナオトは今にも寝そうな表情だった。リサが医務室まで連れて来てくれたのだった。ふと、何か思い出したのかナオトは眠気が覚め、携帯電話を取り出した。
「…そうだ、ジョージ神父から電話があって頼みたい事があるから来てほしいってさ」
「はぁ!?またかよ!?」
ケイスケは嫌そうな顔をした。ここのところ、神父の依頼が物騒な連中に絡まれることが多いことに嫌気をさしていた。しかしそんなケイスケに対しカズキとタクトが大喜びをする。
「やった!神父様のお助けだー‼」
「やったねたっくん、単位がもらえるよ‼」
ジョージ神父の依頼は内容がどうあれSランク、Aランクの任務でうまくいけば単位をかなり稼ぐことができ、留年を回避できるのだった。
「…俺はリサと買い物に行ってくるから。カズキ達は神父に会いに行ってくれ」
「ナオト様と一緒に『デパ地下』という所で買い物に行ってまいります!」
リサは楽しそうに今朝の新聞に入っていた大安売りのチラシを広げて見せた。任せてくれとカズキとタクトは了承しすぐに医務室から出ようとしたが頑なにパソコンで作業をしているケイスケを見る。
「あれれ~?ケイスケは行かないの~?」
「誰が行くかよ。勝手に行ってろ」
「YO!俺たちゃソウルメイト‼一蓮托生‼」(∩´∀`)∩
変顔しながら茶化してくるカズキとタクトにイラッとしながらも立ち上がる。正直なところ、論文や課題を提出してちまちま単位を稼ぐよりもSランク、Aランクの任務を一つこなした方が早い。しかしジョージ神父の依頼は碌な物がないと悩んでいた。行かないとこのバカ二人が喧しいので仕方なしとケイスケはやけくそ気味に頷いた。
「しゃあねえな‼ついて行けばいいんだろクソが」
「さっすが、それでこそケイスケ先生だぜー‼」
__
「あめっあめっふれっふれっばーちゃんが~っ‼」
「おぉ~、単位の⤴夢がー輝くー♪」
降りやまない雨の中、クソみたいな歌を歌いながら教会へ向かうタクトとカズキに対しケイスケは我関せずといった態度で歩いていた。今度はどんな無茶苦茶な依頼をしてくるのか正直面倒くさいと感じている。
教会の建物が見えてもう間もなく着くから二人の歌を止めさせようとした時、教会の前に黒のクラウンセダンが止まっているのが見えた。よく見ると教会の入り口にジョージ神父がおり、黒いスーツを着た白髪が見える壮年の外国人の男性とその男性の両サイドにボディーガードの男性二人と話をしているのが見えた。
「…それでは、頼みましたぞ」
「ええ、お任せください」
壮年の男性はジョージ神父と握手を交わした後、ボディーガードの男性と共にクラウンに乗り去っていった。ケイスケは通り過ぎる車に青、黄、赤の色のある小さな国旗が付いていたのに気づいた。タクトとカズキは通り過ぎた車を気にはせずジョージ神父の下へ駆けつけた。
「お待たせ神父ー‼」
「今回はどんな依頼ですか?なんなりとこなしてみせますぜ‼」
そんなことを言ったら今後面倒なことになるぞ、とケイスケは心の中でツッコミを入れる。3人に気づいたジョージ神父はにこやかに手を振る。
「やあ、待っていたよ。ここでは雨に濡れるし中で詳しく話そうか」
___
リサにとって、デパ地下というものは初めて見るもので、スーパーのように品ぞろえのある食品やパン屋や和菓子や洋菓子、惣菜を売っている地下の広さに興奮して目を輝かせていた。
「デパ地下にはいろんなものが揃っているのですね!」
ナオトは楽しそうに買い物をしているリサを見て微笑んだ。いつもはカズキ達と喚きあいながらデパ地下で買い食いをして楽しんでいるがウキウキ気分のリサとで買い物するのも悪くはないと感じていた。
「あ…」
そんな時、リサはピタリと動きを止めて、元気がなさそうにしょんぼりした。どうしたのか気になったナオトはリサの視線の先を見る。その先には小さなペットショップがあり、そこのショーウインドーには可愛らしい子犬や子猫、小動物が見える。しかし、その動物たちはなにか怯えている様子だった。寧ろリサを見て怯えているようだった。
「…初めてみるものにはビックリするんだろうな」
ナオトはしょんぼりとしているリサを励ました。しかし、リサは元気がなさそうに首を横にふり微笑む。
「ナオト様、ありがとうございます。でも…これは仕方のないことなのです」
「…?」
「ごめんなさい、買い物の途中でしたね。気を取り直していきましょう」
どういうことなのかナオトは不思議に思った。リサは鼻歌を歌いながら買い物をしているがそれでも元気がない様子だった。ナオトは帰りの際に好物であるケーキ屋『百十字』のシュークリームをカズキ達には内緒で買ってやろうと決めた。
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「で、今度はどんな無茶をさせるんだよ?」
ケイスケはジョージ神父がくれたホットミルクを飲みながらぶっきらぼうに質問をした。そんな態度にタクトとカズキがプンスカと怒る。
「ケイスケ!ジョージ神父は俺達の為に単位をくれるんだぞ!?」
「俺達のジョージだぞ!もっと敬意を敬え?」
「カズキ、お前は何を言っているんだ」
とりあえずケイスケは言ってる意味が分からないカズキにツッコミを入れてにこやかにコーヒーを飲んでいるジョージ神父の方に視線を向ける。
「さっき神父が会っていた人達は誰なんだ?どこかの国の大使のようだけどさ」
「え?集金の人じゃなかったの?」(・ω・?
「たっくん、違うぞ。あれは神父のファンだ」
どっちも違う、とタクトとカズキを叱る。コーヒーを飲み干したのかジョージ神父は一息いれて答えた。
「彼らはルーマニア大使館からの使者、と言っておこう。これから手伝ってほしい事と関係あるからね」
ジョージ神父は机に置いてあった茶封筒の封を開けてカズキ達に資料を見せた。資料には宝石が装飾された腕輪やネックレス、貴重そうな本や指輪などの写真が付いていた。タクトは興味津々に写真を見つめる。
「なにこれ?お宝?」
「その通り。昔、ルーマニアで『ある人物』に奪われた宝だ」
「それとルーマニア大使と関係あるのかよ?」
ケイスケは『ルーマニア大使』、『奪われたお宝』といった単語聞いて嫌な予感がした。やっぱりついてこなきゃよかったと内心少し後悔している。
「ナオトには既に伝えているけど…今回の依頼はリサには内緒にしてくれ」
「「内緒?」」
真剣な表情で話をしだしたジョージ神父にタクトとカズキは首を傾げる。その一方でケイスケはもう察してしまった。
「君たちには『ブラド』が奪ったルーマニアの宝を取り戻してほしい」
「も、もしかてその『ブラド』ってやつも『イ・ウー』なのか?」
ケイスケは恐る恐る質問をした。絶対にやばいと感じているケイスケにジョージ神父はにっこりと首を縦にふる。
「『無限罪のブラド』と呼ばれていてね、彼は『イ・ウー』のNO.2の‥‥吸血鬼だ」
「ほらやっぱりやべえ奴じゃねえか!?」
「吸血鬼!?めっちゃかっこよさそうなんですけど!?」
「ドッドッドラキュラ~♪」
ケイスケは憤然とし、カズキは目を輝かせ、タクトは理解をしているのか楽しそうに歌いだす。そんな彼らをみてジョージ神父はくすくすと笑う。
「ふざけんじゃねえぞ!?いきなりラスボスの一歩手前の奴から宝を奪えって、殺す気かよ!?」
「その事なら安心したまえ、今回は私がサポートしよう」
そういう問題じゃないとケイスケは苛立つが、カズキとタクトは目を輝かせていた。
「奪われたものを奪い返すって…言うなればオーシャンズでしょ‼」
「たっくん、そこはミッション・インポッスブルァだよ‼」
「どっちもちげぇよ‼てかお前らマジでやる気か?」
奪われたものを奪還する、聞けば正義の味方か庶民の味方の義賊のように見えるが完全な犯罪、窃盗である。たぶんジョージ神父は別の名義で彼らに依頼をするだろう。果たしてやっていいものか、ケイスケは悩んでいたがタクトとカズキに至っては留年がかかっているのだから受けるのだろうと察していた。
「心配すんなってケイスケ。今回はジョージ神父がサポートしてくれるんだ」
「あと俺達の将来がこれに影響するんだぞ。それにルーマニアの人たとも喜ぶんだしやろうぜ?」
「はぁ…こうなると思った。けど俺達は素人だぞ?ちゃんとサポートしてくれるんだろうな?」
ケイスケはため息をついてジョージ神父を睨む。ジョージ神父はにっこりとして頷いた。
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「…マジで?」
『イ・ウー』の一員だった峰理子は驚いていた。これから変装して遠山キンジを女子寮に誘い込んで泥棒一味に入れる、もしくは追いかけてくるアリアも入れて自分が計画している泥棒作戦を頼もうと準備をしていたのだがその際に見えた光景を見て驚愕した。
あの騒がしい4人組の1人、江尾ナオトと一緒に買い物から帰っている金髪の少女に見覚えがあったからだ。同じ『イ・ウー』にいたリサ・アヴェ・デュ・アンクで間違いない。
「あいつら…なんで絶対にキーくんが出会うことがないだろう隠れキャラと一緒にいるのよ…」
絶対に縁がない、と思っていた彼らがなぜメイドとして、会計士として、薬剤師や看護師として優秀なリサを仲間として入れているのか分からなかった。やっぱり油断できない、警戒すべきか考えていたが理子はにやりとほくそ笑んだ。
「そうだ…いいこと思いついちゃった♪追加シナリオ、作っちゃお♡」
理子にとってこれは好都合と考えた。彼らを利用すれば自分の計画がもっと効率良くなると思ったのだった。
「まずはキーくんとフラグを建ててー、それから実行しよっと」
そういえば彼ら4人はスニ―キングミッションやあるものをバレずに盗るとか苦手だったような…そこはなんとかなるかな(目を逸らす)