カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 安西先生…時間が、ほしいです(血涙

 今回も少なめ。展開がなかなか進まぬ…


140話

「カカロット、まだ着かねえのか?」

「カカロット、お腹空いた」

「カカロット!おめぇつえぇなぁ!」

 

 香港島の桟橋から安全な場所へと移動するため呂布と猴そして鵺と静刃の後に続いて歩いている最中、カズキ達3人は静かに移動することが退屈なのか何度も何度も猴をカカロットと呼び続けていた。かの孫悟空こと猴はついに痺れを切らしてプンスカと怒り出す。

 

「ど、どうして猴をカカロットって呼ぶんですか!?」

 

 猴にとっては聞いたこともないあだ名をつけられ不本意のようだがカズキ達には猴の抗議の意味があまりわかっていないようで3人は顔を見合わせてまじまじと猴の尻尾を見つめる。

 

「だって尻尾あるし」

「尻尾斬られる前のカカロットだな」

「今夜は満月じゃない。よかった」

 

「だからなんで尻尾前提なんです!?」

 

 取りあえず簡単な理由を話しても不本意だったようでカズキ達はウーンと唸りながら顔を合わせて考えだした。

 

「じゃあさ、筋斗雲はある?」

「あ、ありますよ?」

 

「如意棒は?」

「も、もちろん!できます‼」

 

「……ビームは撃てる?」

「び、ビーム?え、えーと…あい!ビーム?みたいなのはあります‼」

 

 3人の質問にやや自信あり気に答え胸を張る猴に対してカズキ達は互いの顔を見て納得して頷きあった。

 

「ほらカカロットじゃん」

「やっぱりカカロットだ」

「お前はカカロット。諦めて認めろ」

 

「カカロットじゃないです‼私、孫悟空です‼」

 

猴は涙目で訴えるもカズキら3人はそれでも彼女をカカロットだと認識してしまっていた。このままでは埒が明かないし猴がかわいそうなので静刃が話に割り込む。

 

「お前らその話はそこまでにしておけ。いくら安全とはいえこれだけ騒いだらかえって目立つ。あと猴はドラゴンボールの悟空じゃなくて西遊記の悟空だからな」

「そうだじょ、かの斉天大聖……といってもお前らじゃちんぷんかんぷんだろうな」

「そうです!というかそもそもカカロットってなんですか!?」

 

「カカロットなのにカカロットを知らねえのか?」

「よーし、ナオト!お前カカロットの真似やってやれ!めっちゃくちゃうまかったもんな?」

 

「えっ!?俺!?」

 

 突然のカズキのキラーパスにナオトは吃驚する。まさかこの流れで自分に振ってくるとは思いもしなかったようで戸惑う。嫌そうな顔をして断ろうとするがカズキと猴の期待の視線とケイスケの「お前がナンバーワンだ」と押してきて断るタイミングを逃してしまった。

 

 

「仕方ないな………オッス、おらゴクウ!ベジータかおめぇ!?おめぇベジータか!?お前つえぇなぁ!」

 

 

 ナオトの物真似を目の当たりにした静刃とカツェは呆気にとられた。かつて何事にも動じず物静かで大人しそうなナオトがカズキの無茶ぶりに答えハイテンションで、声が裏返ってしまう程の物真似をするとは思いもしなかった。だが、それよりも驚くことは彼の物真似がとてつもなく下手ということだった。

 

「わ、私そんな変な人じゃないですぅぅぅぅっ!」

 

 カズキとケイスケと鵺が爆笑する中、ナオトの全く似ていないカカロットの物真似を見た猴は案の定再び涙目で訴えた。

 そんな彼らのおかしい様子を離れてみていたココは隣でどう反応したらいいのか困った結果取り合えず見守ることにしていた呂布をジト目で睨んだ。

 

「呂布…お前、こんな頭おかしい奴らに負けたアルか……」

「言うな。ああ見えて結構強い奴らだ、と思いたい……」

 

 どこか遠い眼差しをしている呂布を見てココは自分はキンジとアリア達に負けて本当に良かったとほっと胸を撫で下ろした。感傷に浸っていた呂布はこんなことをしている場合ではないと我に返りここで先に進むことを催促する。

 

「さっさと行くぞ、ここで油を売っている場合ではない」

 

「というかどこ行くんだっけ?」

 

 物真似をいち早くやめたナオトの問いにやっとかと静刃は肩をすくめる。これでようやく話を進めることができる。

 

「藍幇城から脱出した諸葛静幻の隠れ家だ」

 

「そっかー!で、そこでご飯食べるんだっけ?」

「腹が減った。飯くれを飯を」

「じゃあさっさと行こうぜ。案内しろよ」

 

「頼むからお前ら静かについてきてくれ……」

 

 どうして飯のことしか考えていないのか、静刃はあきれて頭を抱える。しかし彼らのよく分からない思考に何度も呆れてしまってはこちらの胃が持たない。ひとまずやいのやいのと騒がしくするカズキ達をなんとかしてついて行かせることにした。

 

 しばらく歩いて香港島が太平山の麓へと進み、深々と生い茂る木々に囲まれた物静かな場所に一階建ての小さな屋敷へとたどり着いた。屋根と壁は色褪せ、瓦にはヒビや苔がついており相当古い建物のようだ。

 

「ここはかつて藍幇の非常時の隠れ家として使われてきたが今は静幻が療養をとる場所となっている。己の病が深刻化した場合、誰にも知られないようにここへ潜むらしい」

「あい、諸葛様が療養されている時呂布様が門番を務めていると私も初めて知りました!」

 

 猴がぴょこぴょこと尻尾を振りながら付け足す。諸葛静幻がそれほど呂布を信頼しているのかと静刃は納得してうなずくがカズキ達は話を理解しているだろうかと後で問いただしたいくらいキョトンとしていた。恐らくお腹が空いているから話をあまり聞いていないだろう。

 

 そこはあまりつっこまないようで、呂布は屋敷の中へと入っていく。中は無人かと本当にここに諸葛静幻がいるのかと言いたいくらい静かだった。

 

「おっじゃましまーす!うおおおめっちゃ涼しい‼」

「あー結構歩いたな…めっちゃ静かだなおい‼」

「それよりもお腹空いた」

 

「な、ナオト様、よろしかったら携帯食料をどうぞ!海水に濡れていないので大丈夫です!」

 

 そんな物静かなところも彼らが来るとすぐに喧しくなる。静かな雰囲気が一瞬で壊された静刃とココはうんざりするようにジト目でカズキ達を睨んだ。気を取り直して呂布に案内され進んでいき、障子張りの戸を開けて畳が敷かれた広間へと辿り着く。

 

「静幻、少し時間がかかったが例の奴らを連れてきたぞ」

 

 広い畳の間に無地の白い和服を着た丸目が目をかけた糸目の男性が古めかしい書物を読んでいるのが見えた。呂布の声を聴いた男性はこちらへと顔を向けてニコニコと笑顔を見せた。

 

「貴方達が例の…ようこそ、お待ちしておりました」

 

 ニコニコと笑顔を見せるこの男こそが香港藍幇の頭首、諸葛静幻であった。戦役会議以来久々に静幻を見たカツェは病のせいか以前よりも痩せていることに気づいた。それに対してカズキ達はまじまじと見てから「ふーん」とややがっかりしたような声を漏らした。

 

「なんかこう…派手かと思った」

「今です、とかいってなんかしてくると思ったな」

「それで団扇からビーム出せるの?」

 

「お前ら初対面からめちゃくちゃ失礼だなおい」

 

 いったい静幻に何の期待をしていたのか、露骨にがっかりするカズキ達に静刃は辛辣にツッコミを入れた。そんな彼らに対して静幻は陽気に笑った。

 

「ははは、噂通りなかなか面白い人達ですね。病のためみすぼらしい場所へ来られたうえに情けないお姿でお迎えしたことには申し訳ありません」

 

 カズキ達に向けて静幻は大きく頭を下げた。まさかこのような何を考えているのかわからない連中に頭を下げるなんて、とココはギョッと目を丸くした。

 

「はっはっは‼いいってことよ‼俺はこまけえことはぜーんぜん気にしねえぜ‼」

「今度うまい飯とか奢ってくれたらチャラにしてやるよ」

「とりあえずなんか食べ物とかないの?」

 

「お前らつくづく本当に失礼な奴だな!?」

「傲慢すぎるヨ!?」

 

 なぜか偉そうにするカズキ達に静刃とココが小突いて叱咤した。しかし3人はなぜ怒られたのかあまり気にしていないようで、彼らは立場とかその場の雰囲気とか全く気にすらしないから仕方ないのだろうとカツェはため息をついた。

 

「ところでなんで俺たち孔明の所に連れてこられたんだっけ?」

「はっ…まさか孔明の罠!?孔明だけに高名な判断ってかー!?」

 

「あの、私は諸葛ですが孔明じゃないのですが…」

「静幻、スルーした方がいい。いちいち気にしていたら胃に穴が開くぞ」

 

 静刃は遠い眼差しで静幻に促す。カズキ達に向ける彼の心なしかやつれた眼差しにかなり苦労をしていることを静幻は察した。

 

「カズキさん、ナオトさん、ケイスケさん、そしてリサさん、貴方達のことは更子さんからお伺いしております。」

 

「いやー、俺達4人の話は知ってるってさ!すげえなナオト‼俺達4人だってよ!」

「4人…?たっくん忘れてない?」

「たっくんなんていなかったんや」

 

 カズキはナオトにうざったいほど絡み、ナオトはタクトが今どこにいるのだろうかと考え、ケイスケは今頃タクトは捕まってるんだろうなぁと面倒くさそうに舌打ちした。とりあえずリサだけが人の話を真面目に聞いているようなので話を続けた。

 

「今香港では私達香港藍幇と上海藍幇との抗争が起き、現状は董卓率いる上海藍幇に押され私達は瀬戸際に立たされています。私が倒れてしまえばこの香港は彼らの手に墜ちてしまうでしょう…更子殿は貴方達がこの香港藍幇と上海藍幇の争いを止めさせ、香港藍幇の危機を救ってくださるとおっしゃっていました。どうか私たちにお力をお貸しいただけないでしょうか…?」

 

 静幻は先ほどの笑顔とは一変し真剣な眼差しでカズキ達に頼み込んだ。かの諸葛静幻がここまで頼み込むとは、病の状況もかなり深刻であり彼自身も切羽詰まっているかもしれないとココとカツェは息をのむ。しかし今の香港藍幇の現状をあまり理解していないカズキはガハハと高々と笑いながら頷いた。

 

「しょうがねえなぁ!頼まれちゃったらやっちゃうしかないよな!俺たてぃのしょしょしょしょしょーん…」

「途中で噛んで諦めてんじゃねえよ。その代わり絶対にうまい飯を奢ってもらうからな」

「早くご飯食べたいからさっさと敵陣に突撃しようか」

 

「どうしてお前らは飯のことと突撃することしか考えてないんだよ!?」

 

 こんな状況でも結構呑気にしているカズキ達に対して静刃はうんざりするように肩を竦めた。そんな陽気でやる気満々なカズキ達に静幻はクスリと楽しそうにほほ笑む。

 

「どんな状況にも屈しないどころか寧ろ楽しむ…勇士、というよりか戦士ですね」

「いや、まだこの3人だからマシなんだ…4人になると戦士どころじゃなくなる」

 

 これまでのことを考えたら今度はどんなことをやらかすか、彼らの行動を見てきた静刃とカツェは遠い眼差しでカズキ達を見つめる。そんなどこか黄昏ている二人に対して鵺とココはやる気に満ちていた。

 

「やっと大暴れできるか!鵺は暴れたくてうずうずしていたじょ‼」

「早く董卓のアホから姉妹達を助けないと、それにうざい静幻に借りを作れる絶好の機会ネ!」

 

「これだけ精鋭がいれば問題はないだろうな。俺はこのだらしない大将のお守りをせねばならん」

 

 自分は守り側につかなければならず活躍ができないとため息を漏らした呂布に横目で睨まれた静幻は面目ないと苦笑いをした。

 

「ははは、呂布殿申し訳ありません……ここから北へ歩けばと小さいですが隠しの武器庫があります。何か必要なものがあればお申し付けください、微力ながら我々香港藍幇の者がお力を貸しましょう」

 

「おっしゃ!そうときたらさっそく準備しようぜ!お前ら40べようで支度しな!」

「とかいいながら足しびれて動けてねえじゃねえか。置いてくぞカス」

「とりあえずたっくんの分も用意しとく?」

 

 カズキ達は我先にと広間から出て行った。ちゃんと場所を把握しているのだろうかとカツェ達もあとへ続けていこうとしたが静幻に呼び止められた。

 

「……間者から董卓が西九龍にある拠点に覇美ら鬼一族を呼び連れた、と伝達がありました」

 

 覇美と聞いてカツェは眉をひそめた。もうすでに戦役は終わっている。交渉か同盟、だとしても鬼一族には何のメリットはないはず。ましてや鬼一族も香港藍幇と同様遠山キンジと戦って負け、彼の味方となっている。董卓にとっては鬼一族は敵になるのは明らかだ。

 

「恐らく董卓ではなく彼の後ろにいる何者かが目的があるのでしょう……猴、貴女に無理をさせてしまうかもしれませんがカズキさん達について行ってくれないでしょうか?」

 

「わ、私がですか?」

 

 まさか自分を「カカロット」とよくわからない人の名で呼んでくるカズキ達と行動することになるとは思っていなかったようで長い尻尾がピンッと伸びた。

 

「嫌な予感がするのです…もしかしたら……猴、もしもの時の為、貴女にこれを」

 

 静幻は懐からエジプト風の小さな鍵を取り出して猴に渡した。

 

「パトラの鍵……」

「今この鍵に効果があるかわかりませんが…覇美を助けてあげてください」

 

 小さな鍵を受け取った猴は意を決したようでこくりと大きく頷いた。

 

「あい…静幻様の予感はよく当たります。私、やってみます!」

 

 彼女の決意とその眼差しを見た静幻は安堵したように笑顔を見せて頷き彼女の頭を優しく撫でた。

 

「成長しましたね、猴…これで安心しましたよ。これなら私がいつかいなくなっても大丈夫でしょう…」

「静幻様…私ry」

 

 

「遅いぞカカロット‼早く支度しねえと置いてくぞ‼」

「おいカカロット、ここは時と精神の間じゃねえんだぞ?時間がねえから早くしろ」

「カカロット、瞬間移動とかできる?」

 

 目を潤わせて何か言おうとしていた猴の言葉を遮るようにいつの間にか支度を終えて迷彩柄のボディーアーマーを身に着け銃器を担いだカズキ達が押し寄せてきた。

 

「私カカロットじゃないですってばぁぁ‼」

 

「空気‼お前ら空気読めヨ!?」

「せっかくいい雰囲気だったのにすぐに台無しにするよな!?」

 

 





 シリアスな展開にしたいけどやっぱりできなかった…いつものことだからシカタナイネ!

 

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