カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼ 作:サバ缶みそ味
19話
カズキ達は開けた森の中にある通り道を駆けていた。1人は般若のお面をつけ、1人はフルジップのパーカーとサングラスで顔を隠していたが4人とも必死の形相で走り続けていた。
4人は普段よりも重厚そうな迷彩柄のボディースーツを身に着け、ナオトはAK47、ケイスケはMP5、タクトはM16、そしてカズキはM110狙撃銃を構えて辺りを警戒しながら進んでいる。
「あのクソ神父…生きて帰ってこれたら助走をつけてぶん殴ってやる!」
ケイスケは嫌味たっぷりとかなり機嫌悪そうに悪態をつける。普段ならカズキかタクトがケイスケを宥めるのだが今回はそんな暇がなかった。カズキは苦笑いをしながらスコープを除いてその先を確かめる。
「まあ気持ちは分からんでもねえけど…今はとにかくこの戦場から脱出するんだ」
ケイスケは気だるそうに頷く。今年の夏休みは最悪だった。祭りに行ったり、海に行ったり、花火を見たり、旅行をしたり夏を堪能するはずだった。まさかあのジョージ神父のせいでたった4人で小さな島で戦場のような修羅場を駆ける羽目になってしまったのだ。
ケイスケは後ろにいるタクトと仲良く話している古めかしいスーツを着た白髪交じりオールバックの男性を睨む。壮年かそれともまだ30代かよくわからない男性を護衛するという任務のせいで死と隣り合わせの状況になっている。
「スナイパー‼」
先頭を進んでいたナオトが大声で叫ぶ3人は咄嗟に身を屈め、カズキはナオトが指示した場所を狙撃する。それを皮切りに岩場から、茂みから白のボディースーツを身に着け、SG500やG36等のアサルト、レミントンM870といった散弾銃を構えた兵士達が飛び出しカズキ達に向けて発砲した。カズキはスナイパーをダウンさせたことを確認しナオトに叫ぶように呼びかけた。
「スナイパーダウン!」
「俺の夏休みを返せええっ‼」
ナオトが頷く前にケイスケが怒りとともに敵陣へ駆けた。それを見たカズキとナオトがギョッとする。
「ちょ、ケイスケ、前にでるなってば!?」
「メディックのお前がやられたら意味ないっていってるだろ!?」
二人の声も虚しく、ケイスケは怒声と神父の文句を言いながら銃の火を吹かす。かなりお冠だなと二人は仕方なしと頷いた。
「よし、たっくん‼」
ナオトは前線へ駆け、ナオトを支援するようにカズキが狙い撃つ。ナオトに呼ばれたタクトは男性にカズキの近くで身を屈めて被弾しないように言った。
「行くぜオイ‼これが俺達のイームワークだ‼」
タクトはナオトの下へ駆けて行き手持ちの銃で襲い掛かる兵士達を死なない程度で撃っていく。文句を垂らしがら、変に噛みながら、叫びながら、黙ったまま多くの敵兵と相手している4人組を男は面白そうに見ていた。
「彼らは面白いな…僕の予想の斜め上、いや斜めに行くがよくわからない方向に行く。実に興味深い…」
__
事の始まりは数週間前に遡る。7月、夏真っ盛りの時のことであった。カズキ達は無事に単位を取り、留年は逃れることができた。医務室ではすでに夏休み気分のカズキとタクトが野球盤で遊んでいた。ルールを知らずに遊ぶ二人にケイスケは呆れていた。
「相手のゴールに…シューッ‼」
「ああくそっ‼たっくん強すぎなんですけど!?」
「お前ら本当に懲りねえのな」
いくら怒っても反省しない二人にため息をつく。そればかりかここ最近はやけに疲れた。リサが正式に武偵高校の生徒になり、2-A組に編入することになるとA組の男子は勿論、男共はすぐに興味を示しだす。
リサは優しさでどんな質問をにっこりと答えるのはまだいいが、リサを一目見たくて仮病と称して入って来る連中を追い出すのには手を焼いた。包帯で縛り上げたり激痛足つぼマッサージをしたり、お灸を添えたりして〆てやった。
「疲れた…仮病マンはほんとくたばれ」
「ケイスケ様、今日は大忙しでしたね」
リサはにこやかにコーヒーをマグカップに注いでケイスケに渡す。リサはすぐにこの学校生活に慣れた。男子や女子にも人気になり、ジャンヌや理子といった元『イ・ウー』の生徒と仲良く話しているところもよく見かける。最初はどうなることかと心配していたケイスケだったが杞憂だったと安心した。
「もうすぐ夏休みだし、しばらくの辛抱だ」
カズキとタクトの野球盤を退屈そうに眺めながらナオトがケイスケを励ます。それまでの間、仮病マンに荒治療しなければならないのか、とケイスケはそう思うと更に嫌そうにため息をついた。
「そうだ、夏休みは何処に行く?」
タクトはウキウキしながらカズキ達に聞いた。海に行ったり、夏祭りに行ったり、旅行をしたりと夏休みを堪能しようと考えていた。
「そうだなー。去年は北海道に行ったし…リサを連れて北海道に行こうぜ‼」
「またかよ」
結局北海道かよとケイスケはツッコミを入れた。去年は北海道に行ったり、北海道の海に行ったり、温泉行ったり…夏休みの半分を北海道旅行に費やしていた。
「日本の観光名所…リサはとても興味があります‼」
リサは嬉しそうにはしゃぐ。しかしまだまだ夏休みまでほど遠い。ここ最近あの愉悦に浸る神父から無茶苦茶な依頼をされることから今月もあるんじゃないだろうかとケイスケは不安気味にコーヒーを啜る。
「久しぶりにここに来てみたけど…貴方達は相変わらずね…」
ふと中性的な声が聞こえたので4人は声のした方を見る。入り口に立っている武偵高校の女子制服を着た茶髪の綺麗な三つ編みと、絹のように白い肌、華奢ながらも力強さを感じる凛々しさを持つ人物を見て4人は驚愕した。同じくリサもその人物を見て目を見開いたように驚いていた。
「カナさん…!?」
カズキが口をこぼす。カナと呼ばれた人物はニッコリと笑って手を振る。
「弟が、キンジがお世話になってるわね」
「金一さん、あんたがいなくなった後、素っ頓狂な弟には手を焼いたんだけど」
ケイスケは皮肉たっぷりにカナに話した。カナと呼ばれ、金一と呼ばれるこの人物こそ、一年前に起きた豪華客船沈没事故で死んだと思われたキンジの兄、遠山カナもとい遠山金一である。
「き、キンイチ様、お、お久しぶりです…‼」
リサは口をパクパクしながらあたふたと頭を下げるた。そんなリサにカナは苦笑いをしながらも優しく微笑む。
「リサ、貴女が突然いなくなって心配したけど…彼らの所にいたのを知って安心したわ」
「…リサがカナさんを知ってて、カナさんもリサを知ってる…もしかして‥」
「か、かなさん…もしかして…」
ナオトはふと気づき、カズキもわなわなと震えながらも答えを言おうとしていた。4人に対しカナは申し訳なさそうに笑う。
「最初、『始末屋』が貴方達に捕まったと聞いて偶然かと思ったけど…まさかブラドも倒すなんてね、正直驚いたわ。黙っててごめんなさいね。私もイ・ry」
「カナさんはやっぱり女の子だったんですね!」
カズキの答えにカナはあうやくずっこけそうになった。自分も『イ・ウー』の一員であると話そうとしていたが更にケイスケが遮る。
「バカかお前。カナさんもとい金一さんは男だぞ?」
「いやいやいや!おかしいだろ。こんな綺麗な人が男のはずがねぇ!」
「えっと…今はその話を置いといて、貴方達に伝えてなければならないことが…」
カナが話を変えようとしたが更にナオトが話に加わりヒートアップする。
「…俺も女子制服着てるから女の子かと思った」
「お前ら本当にバカだな。学校の生徒のリスト見てみろ。金一さんは男だと書いてるだろうが」
「それが偽装かもしんねえだろ!男(女)かもしれないぞ」
「あの…そろそろいいかしら?」
今は男とか女とか討論している場合ではない、カナは彼らの話を終わらせようと声を掛けるがそれも虚しくタクトが話に加わる。
「お前ら落ち着けって。カナさんは両方なんだ」
「たっくん、お前天才か!?それはつまり…どゆこと?」
「いやだから金一さんは男つってんだろ」
「いやだから人の話を…」
カナの話は虚しく遮られ、タクトがドヤ顔をして答えた。
「つまり…カナさんにお湯をかければいいんだ。カナさん‼お湯をかけたらどっちなんですか!」
「うん、やっぱり人の話を聞かないのも相変わらずね…」
カナは肩を竦めてため息をついた。本題に入ろうとしているのにこんなに時間がかかることにやや呆れていた。
「き、キンイチ様。どのような件でお越しになられたのですか?」
リサの鶴の一声でやっと本題に入れる。カナはやれやれと苦笑いをしながらカズキ達に話す。
「貴方達にお願いがあるの。しばらくの間、キンジに関わらないでほしい」
突然のお願いに4人はきょとんとしていた。話は分かっていないだろうとカナはカズキ達に補足する。
「これから起こることに、リサを貴方達を巻き込みたくないの。私達のいざこざのせいで無関係な人を傷つけたくないからね」
「つまり…兄弟喧嘩するんですね!」
タクトの率直な質問にカナは少し驚いたような顔をしたがすぐに苦笑いして答えた。
「まあ兄弟喧嘩のようなものかもね‥‥それもあるけれど、『イ・ウー』は貴方達を警戒しているわ。事が済むまでキンジやアリアに関わったら危険よ。貴方達も巻き込まれるわ」
「まっかせてくださいよ‼カナさん応援してますぜ!」
「金一さん、あの女たらしに喝をいれてください」
カズキとケイスケの応援を聞いてちゃんと分かってくれているのだろうかとカナは少し心配になった。
「リサ、無茶なことを言うかもしれないけれど彼らのことをお願いね」
「は、はい!」
リサは緊張気味でカチコチになりながらも懸命に答えた。言う事全て伝えたカナはほっと一息入れてカズキ達ににっこりと笑う。
「それじゃあ私は帰るわ。またいつか会いましょ」
そう言ってカナは踵を返して医務室から出て行った。4人はしばらく黙ったまま顔を合わせた。沈黙が続いたがカズキが最初に口を開く。
「結局カナさんって男なの?女なの?」
「そこかよ!?」
ナオトが呆れながらツッコミを入れた。リサを知っているという事はカナも『イ・ウー』の一員であること、そうでありながらもカズキ達に忠告しに来たこと、カナの真意が分からなかった。ケイスケは考えて話をまとめた。
「金一さんは危険が迫っていることを伝えに来たんだ。その渦の中心がキンジとアリアに関わっている事、関わればヤバイってことか」
「キンイチ様がああおっしゃるのですから…よほど危険なことなのですね」
リサとケイスケは深く頷く。そんな二人をよそにカズキとタクトはギャーギャーと口喧嘩していた。
「だから、お湯か水をかければすべて解決なんだってば!」
「たっくん、それじゃあ分からないってば!お湯や水を駆けても結局どっちなんだよ!?」
「…もう性別不明でいいんじゃ?」
「「ナオト、お前天才か!?」」
絶対にカナの話を理解してないだろうとそんな3人にケイスケは項垂れた。そんな時、ナオトの携帯が鳴る。電話の相手はどうやらジョージ神父のようだ。ナオトは何も考えずに携帯を取り、通話を開始した。
全てはこのジョージ神父の電話から始まった。もし、カナの忠告をしっかり理解しジョージ神父の電話を無視ししていればあんなことにならなかっただろう…
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「一応伝えたけども…やっぱり心配だわ…」
カナは帰路につきながら騒がしい4人のことが心配になった。人の話を聞かないことに評定があるあの4人は恐らくきっとこれから描かれる『第二の可能性』に巻き込まれるだろう。彼らを守ってやりたいが、今はキンジとアリアの方で手一杯だった。
「全ては彼ら次第ね…それにしても…」
ただ一つ、気になることがあった。『始末屋』のことも『ブラド』のことも、カズキ達の活躍だと聞いていたが独自で調べていると事の全てがジョージ神父という謎の人物が関連している事が分かった。ナオトの養親であること、カズキ達が関わっていることしか分からなかった。
「ジョージ神父…一度会ってみるべきね…」
冒頭はWarfaceです。動画で見ましたがむっちゃ難しそうですね…
こちらのカナさんは優しいデス(たぶん