カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 黒いスカラベといえばハムナプトラという映画を思い出します。あんなのが沢山でてきたら鳥肌物です

 1、2は面白かったのに3は面白くなかった…




20話

カズキ達はジョージ神父から至急来てほしいとその言葉だけ伝えられ、教会へ向かった。急遽呼ばれたのでどたばたとしてしまいやっと着いたのは夕方。教会に入れば夕焼けの日差しが窓から照らされ、ジョージ神父は黙々と分厚そうな本を読みながらカズキ達が来るのを待っていた。

 

「やあ、来るのを待っていたよ」

 

 カズキ達に気づくとジョージ神父は本を閉じてニッコリと彼らを迎えた。哀愁を感じたのかナオトは気になりながらも尋ねる。

 

「神父、今日はどんな用?」

「今の俺達ならどんな御用も成し遂げれるぜ‼」

 

 余計な事を言うなとケイスケはタクトの足を踏んづける。下手に言ってしまうと本当に無茶苦茶なことを頼まれるかもしれない、というよりもどうせまた無茶苦茶なことを頼んでくるんだろうなとケイスケはやや諦め気味だった。

 

「そうだね、寧ろ君達じゃないと成し遂げられないだろう」

 

 ジョージ神父はにっこりと答えるとカズキとタクトはドヤ顔してガッツポーズをとる。あげられてるから乗せられてしまっているんだとケイスケは二人に呆れていた。

 

「君たちにはとある人物の護衛を頼みたい」

「とある人物?」

 

 タクトは突然頼まれた依頼に首を傾げ、ケイスケはやっぱりそんなことを頼まれるのだろうなと予想が当たりケイスケは項垂れる。

 

「…名前は?」

「すまないが、今は名前も姿も教えられない。機密事項だ」

「名前も姿も秘密って…名無しの権兵衛さんかよ!?」

 

 怒声をあげるところをカズキが驚いて代弁してくれたのでケイスケは怒りを鎮める。ジョージ神父は任務の内容を話し続ける。

 

「日時、場所は後日知らせる。その人物は私にとって大事な人でね…恐らく、君たちと出会う時は瀕死の状況だ。どうか私の大事な人を助けてくれないか?」

 

 ジョージ神父はカズキ達に頭を深く下げた。カズキ達は驚く。まさかカズキ達に愉悦な笑顔で依頼を頼むジョージ神父がここまでして頼むなんて、よほど大事な人なのだろうと。ケイスケも怒るに怒れずもやもやしていた。そんなジョージ神父を見たタクトはカズキ達に呼びかけた。

 

「ジョージ神父の大事な人の命がかかってるんだ。この依頼、受けようぜ?」

「たっくん、マジかよ!?こんなよく分からねえのやるのか!?」

「ケイスケもうやるしかないだろ。ジョージ神父には色々お世話になってんだし、ここで恩をリターンしようぜ!」

 

 それを言うならリバースだろとケイスケはツッコミを入れてナオトの方を見る。ナオトは無言のまま首を縦に振る。この3人がヤル気満々に対し、依頼の内容が不安すぎると警戒していたケイスケはやけ気味にジト目でジョージ神父を睨む。

 

「ったく、断る空気じゃねえから仕方なしにやってやるよ」

「そうか…ありがとう」

 

 ジョージ神父はカズキ達ににっこりと笑い頷いた。しかし、その直後笑顔が消えて真剣な表情でカズキ達を見た。

 

「君たちに言わなければならない…この依頼は死と隣り合わせの戦いになるだろう」

「ちょ、それを早く言えよ!?やっぱり断るぞこの依頼!」

 

 それを聞いたケイスケは手のひらを反す様に起こり怒声をあげる。カズキは今にも殴り掛かりそうな勢いのケイスケを抑えて落ち着かせた。ジョージ神父にタクトはニシシと笑って答えた。

 

「大丈夫だって!何度も死線を超えた俺達ならダイジョーブ!」

「…超えられてないと思う」

「たっくん、前線に特攻してすぐやられるイメージしかない」

 

「なんだとー!?お前らが俺を引っ張ってるんだろー‼」

 

 さらっと訂正したナオトとカズキに対しタクトはそんな事はないとプンスカと怒りながら反論する。

 

「この戦いに私は出ることができない。その代わり、君たちの助っ人を呼ぶ」

 

 ケイスケはジョージ神父の助っ人と聞いて、かつてリサが入った木箱を渡した老人の執事とメイドを浮かべた。彼らじゃ助っ人にならないのではと心配しているが、カズキとタクトは助っ人と聞いて喜んでいた。

 

「いよっしゃぁ!助っ人が来るなら勝ち確だぜ‼」

「イエーイ‼アイムウィナー!」

「その助っ人、本当に大丈夫なんだろうな?」

 

 彼らに代わってケイスケは怪しそうに神父を睨む。こちらに詳しく教えてくれないのだから助っ人もあまり期待できない。そんな疑心の目で見ているケイスケに対しジョージ神父はにこやかに頷く。

 

「心配する必要はない。君たちの手助けなら全力を揮おう」

「神父自らの手を揮ってもらいたいんだけど」

 

 ケイスケは皮肉たっぷりに言い返す。それを理解しているのかしていないのか、ジョージ神父は無言でニッコリと笑い頷く。

 

「詳しい事は随時連絡する。迷惑をかけるがよろしくお願いするよ」

「任してくださいよ‼火の船に乗った気分でいて構いませんよ‼」

「それ沈むじゃねえか」

「よーし、ちゃちゃっと熟してみせるから楽しみに待っててね!」

「‥‥」

 

 カズキ達は新たな任務に楽しみにしながら教会から出て行った。そんな元気な彼らを見送った後、ジョージ神父は一息つく。

 

「彼らには酷な事をさせることになるが…これを乗り越えれば、彼らはこの先の戦いについていけれるはずだ…」

 

__

 

 依頼から一週間経過し、未だにジョージ神父から連絡は来なかった。いつ連絡が来るのか念のため着々と準備はしているのだがカズキ達は少し忘れかけてしまうところだった。

 そんなある日、タクトは意味もなく華麗なステップを踏みながらケイスケの医務室に入るといつもなら遅れてやってくるはずのナオトが携帯を弄りながら寛いでいた。

 

「あれ?ナオトー、ケイスケは?」

 

 医務室でリサにコーヒーを注いでもらってレポートを書いているはずのケイスケが医務室にいなかった。そんな疑問を答えるようにナオトは眠たそうに答えた。

 

「ケイスケならリサと一緒に武偵病院にいる。何やら理子が眼疾を患ったらしくてその治療しに行った」

「なるほどー…つまりこの医務室は俺達の天下ってことだなー‼」

 

 ケイスケがいないので自由に使えることを知ったタクトは大はしゃぎしていつもケイスケが座っている椅子に腰かけ回転する。まさに鬼の居ぬ間に洗濯。そんな3日よりも短そうな天下にナオトは苦笑いをする。

 

「…たっくん、カズキは?」

「カズキの奴なら補習だってさ。プププー、居残りされてやんの‼」

 

 ケイスケとリサは病院、カズキは居残り、つまりはタクトとナオトだけの状態。ナオトはタクトの悪乗りを止めれるだろうかやや心配になった。

 その時、二人の目の前に黒いコガネムシのような甲虫が飛んで通り過ぎた。タクトはカブトムシを見つけた少年のように目を輝かせた。

 

「見ろよナオト‼カブトムシじゃねーか!」

「明らかにカブトムシじゃないんだが…いやカブトムシか?」

 

 医務室の中を飛んでいるコガネムシのような虫はカーテンに止まった。タクトはゆっくりと虫が逃げないように静かに近づいて虫を捕まえた。

 

「ナオト、虫かごみたいなもの!はやくはやく‼」

「ちょっと待ってろ」

 

 虫を捕まえてはしゃいでいるタクトに急かされながらナオトは虫かごになりそうなものを探す。ロッカーの上に長方形のプラケースがあったのでそれを取って虫を入れた。がさがさと動く黒い虫をタクトとナオトはまじまじと見つめる。

 

「すっげえ‼よく見ると腕とか頭とかギザギザしててかっこいい‼」

「…日本の虫じゃなさそう」

 

 見た目が普通にみかけるコガネムシとは違い腕や頭にギザギザついておりタクトはカッコイイと感じていた。

 

「分かったぞ‼これは新種のコガネムシだ‼名前はジェームズにしよう!」

「…なんでジェームズ?」

 

 ジェームズという明らかに虫らしくない名前にナオトは首を傾げるとタクトがドヤ顔で答えた。

 

「昔、ホームセンターで買って一日で死なせてしまったカブトムシにそっくりだからさ!」

「…ジェームズ、絶滅の危機」

 

 タクトに捕まってしまって絶滅の危機にさらされてしまっているジェームズにナオトは哀れと感じた。その時、後ろでパリンと何かが落ちて割れた音がした。二人は後ろを振り返ってみると、ケイスケが愛用している赤いマグカップが無残にも落ちて割れてしまっていた。二人の顔が一気に真っ青になる。

 

「これ、ケイスケが愛用しているマグカップじゃん…」

「や、やべえぞ‼急いで証拠隠滅だー‼」

 

 ケイスケに見つかったら間違いなく処せられる。焦った二人はマグカップの破片を回収して大急ぎで医務室を出て行った。

 

__

 

 カズキは必死こいて補習のプリントを書いていた。他の生徒がどんどん補習を済まして教室から出て行き、気が付けば教室にいるのはカズキだけになっていた。

 

「う、うおおおー…終わんねぇー!」

 

 まだまだ残っている横に積まれているプリントを見てカズキのやる気が一気に減っていく。下手したら今夜は教室で過ごすんじゃないかと頭によぎる。

 

「お前達は凄いのかそうじゃないのか、全く分からないな…」

 

 ふと声を掛けられたので顔を上げれば、呆れながらカズキを見ている松葉杖をついたジャンヌがいた。

 

「おお?ジョーンズちゃん、どうしたの、松葉杖をついちゃってさ?」

「ジョーンズじゃない、ジャンヌだ‼というかなんでお前達は私の名前をわざと間違えるんだ!?」

 

 名前を間違えられて怒っているジャンヌはテヘペロとしながら謝るカズキに肩を竦めてため息をつく。

 

「まあいい…ちなみこれは不覚に溝が足にはまった時にバスにひかれて骨折してしまったんだ」

「それは難儀だったなー…で、補習を手伝ってくれるの?」

 

 心配してくれてるのかそれとも自分の事しか考えていないのかそんなカズキにジャンヌは呆れながらもカズキの願いを無視して話を続けた。

 

「用はお前達に警告を伝えに来ただけだ。もうすでに『イ・ウー』の攻撃は始まっている。ほとぼりが冷めるまであまり目立ったことはするな」

「なるほどねー…お願い、手伝って」

「タクトといい、お前といい、なんで人の話を真面目に聞こうとしないんだ」

 

 絶対を話しを聞いていないだろうとジャンヌは確信し、仕方なしにカズキの補習を手伝ってあげた。

 

「…少し聞いていいか?ジョージ神父とは何者なんだ?」

「どしたの急に?」

 

 突然ジャンヌがジョージ神父の名を口に出したのでカズキは筆を止めて首を傾げた。

 

「いや…()()()()から聞かれてな。ジョージ神父という人物について詳しく知りたいんだ」

 

それでも頭には手をを浮かべて不思議がるカズキを見てジャンヌは慌てて補足する。

 

「し、心配するな。悪い人じゃない。寧ろ敬愛している人なんだ」

「うーん。ナオトの養親で、いつも俺達に依頼をしてくれる人なんだけど…世界中を旅してるから色んな事に詳しいんだ。例えば『イ・ウー』とかさ」

 

 カズキが自慢する様に話す内容を聞いたジャンヌはやや困ったような顔をしてカズキを見つめた。

 

「…何でも知ってて不審に思わないのか?」

「別に?物知りだなーって思っちゃうくらい」

 

 ニシシと笑うカズキに対し、ジャンヌは苦笑いして返した。

 

「そうか…お前達らしいな。邪魔して済まなかった」

「ちょ、待って!?俺の補習を手伝ってくれー‼」

 

 ジャンヌは助けを求めるカズキにあとは自分でやれと即答し教室を出て行った。その後カズキはケイスケとリサが迎えに来るまで補習とやり続けていた。

 

__

 

「…ああ、事が済み次第すぐに用意してくれ…うん、費用の方は私が負担する」

 

 教会でジョージ神父は年代物の雰囲気を醸し出す黒電話の受話器を戻した。ジョージ神父は一息入れると電話が終わるまでずっと殺気を放って待っている人物の方へ振り向く。

 

「すまないね、待たせてしまったかな?生憎、私は不器用だから人生相談はできそうにないがね」

 

 そんなニッコリとしているジョージ神父に対し、遠山カナこと遠山金一はジョージ神父を睨み付けていた。

 

「…あの子達に危険なことをさせているようだけど、何を企んでいるの?」

 

 殺気を放って睨んでいるカナに対し、ジョージ神父は笑顔のまま答えた。

 

「企み?それは違うな…私ではできなくて、彼らじゃないとできないんだ。私は彼らに託しているだけさ」

「ふざけないで。あの子達にこれ以上危険な目に会わせないと約束して」

 

 カナはさらに殺気を強めてジョージ神父を睨み付けた。しかし、殺気に押されることなくジョージ神父はクスリと笑って答えた。

 

「脅迫かね?すまないがそれは無理な話だ」

「…だったら力尽くで押し通してもらうわ」

 

 すぐに動いたのはカナだった。銃声と共にカナの手元で一瞬閃光した。カナが最も得意としている技の一つ、相手に見えない銃弾を放つ銃撃、『不可視の銃弾(インヴィジビレ)』である。いつ銃を抜いたのか、いつ狙われたのか、いつ撃たれたのか分からない、反応することも反撃もすることができない技なのだ。

 

 しかし、カナが放った『不可視の銃弾』をジョージ神父は右へ避けたのだった。『不可視の銃弾』を避けた、カナは驚くも続けて撃ち続けた。ジョージ神父は見えない銃弾を見えているかのように避け続け一気にカナの懐まで近づき、カナの腕と襟を掴み投げ倒した。カナは起き上がって反撃しようとするが目の前にレイピアを突き付けられていたので動けなかった。

 

「…っ!?」

「睡魔に負けそうになっている今の君では私に傷をつけることはできないと思うがね」

 

 カナはそれを聞いて更にジョージ神父を警戒する。キンジの寮から出て行きこのままホテルへ『寝る』予定だったが、ジャンヌから連絡を聞いてこの教会へ来たのだった。ジョージ神父は自分のHSS(ヒステリア・サヴァン・シンドローム)について知っているようだ。

 

「貴方は…一体、何者なの…?」

 

 耐えていた睡魔がこの時に一気に降りかかる。眠りそうになるのを堪えながらカナはジョージ神父に尋ねた。ジョージ神父はにっこりと笑って答えた。

 

「君がカズキくん達の味方であるように、私も彼らの味方だ。それ以外は…ただの世話好きな神父さ」

 

 そんな答えを聞いたカナは瞼で閉じそうになっている眠たい目でジョージ神父を見て思い出すのだった。すべてお見通しというような雰囲気を出すあの探偵と同じ感覚を感じたのだった。

 

「貴方は…まさか…」

 

 しかし、カナは答えることができず瞼を閉じてスヤスヤと寝息を立てて眠ってしまった。




 原作を読んでいる時に金一ニキが「兄より優れた弟などいない」というセリフを見て、どこぞの世紀末のヘルメット助教授を思い出した。兄さん、それ言ったらアカンやつ

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