カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 シャー・ペイってどんな犬かなーと思って調べてみると…むっちゃくちゃシワクチャでビックリした…

 チャウチャウといい、チベタン・マスティフといい…ごっつくてしわくちゃなんね…


27話

「うぷ…気持ち悪い…」

 

 京都の北東、比叡山の山中にある民宿の一室にてカズキは気分悪そうにして寝転がっていた。居間でくつろいでいるケイスケが呆れてみる。

 

「お前、食い過ぎだろ」

 

 ジョージ神父のお土産のお菓子を食べ、京都の寺を見て回る間に喫茶店やお土産屋で買い食いし、神戸でも買い食いし、そして民宿の料理も食べた結果である。

 5人で泊まる宿にしては安く、障子窓から見える枯山水の庭の先は比叡山の森、夜の虫の声だけが響く静かな空間で落ち着ける所だった。温泉から戻って来たタクトとナオトが布団を敷いて枕投げをし合う、タクトの喧しい声とカズキの吐きそうとつぶやく弱音だけが喧しく響く。

 

「チーム編成の調整の行事だっていうのに…本当に大丈夫かこれ」

 

 ケイスケは項垂れる。組めるとしたらこの面子しかないが、チームワーク、チームリーダーと心配事が山積みなのである。そう言った細かい事は押し通すしかないだろうと吹っ切れる。そんな時、リサが障子窓を開けて枯山水の庭の先に森を不安そうに眺めているのに気づいた。

 

「リサ、どうかしたのか?」

「ケイスケ様…この森、比叡山のどこかで銃声が聞こえました」

 

 それを聞いたケイスケは森の方へ視線を向ける。ただ静観とした森で銃声のような音は聞こえなかった。気のせいだろうと言おうとしたがリサは更に不安そうにしている。

 

「銃声だけではありません。獣の血と、何頭かの猛犬の臭いがします」

 

 ケイスケはリサが秂狼であることを思いだす。嗅覚、聴覚ともに優れており、遠くまで察知できるのだ。そうとなればもしもの時に備えガンケースからMP5を取り出す。枕投げをしているタクトとナオトに武器を持って警戒するよう呼びかける。タクトとナオトが渋々ガンケースから銃を取り出しているのを見て、顔面蒼白になっているカズキがよろよろとしながら起き上がる

 

「え?ケイスケ、迎撃態勢って…おれ吐きそうなんだけど」

「だったらさっさと吐いてこいや」

 

 気分が悪いカズキがケイスケに催促されてガンケースからM110狙撃銃を取り出してトイレへ向かおうとした時、庭先の森の茂みからがさがさと音がした。何かが近づいてきている、ケイスケとナオトが咄嗟に銃口をその茂みの方へ向ける。

 茂みから出てきたのは白い毛並みの狼、レキが飼っているコーカサスハクギンオオカミのハイマキだった。ケイスケ達は銃を降ろす。よく見ると銀色の毛が何か所か赤く染まっていた。何かに噛まれ、爪でひきさかれた傷を負っており、少しよたよたと力なく歩いていた。

 

「ハイマキじゃないか。どうしたんだ、その怪我は」

 

 ケイスケは庭へ降りて傷だらけのハイマキに駆け寄る。ハイマキは吠えることもせず、ただケイスケ達を力強く見つめていた。

 

「なにか…あったんだな」

 

 ナオトが察するように頷く。ハイマキがこんなに傷だらけになってここまで来たのだからきっとキンジとレキに何かよからぬことが起きたのだと感じた。

 

「ケイスケ様、ハイマキを連れて離れてください!猛犬たちが来ます‼」

 

 リサが急ぐように叫ぶ。確かに森の先から何頭かこちらに駆けてくる音が聞こえてきた。ケイスケはハイマキを抱き上げ急いで戻る。その途中、茂みからハイマキを追いかけて来たのであろう、中国では軍用犬や猟犬として扱われる闘犬、シャー・ペイの群れが飛び出してきた。

 

「ここは私が…えいっ‼」

 

 戻って来たケイスケと代わるように前へ出たリサはシャー・ペイの群れに向けてキッと睨み付けた。気合いを入れて睨み付けるまでは良かったのだが、気合の声と共にぴょこっと頭に犬耳が、スカートの後ろからふんわりとした尻尾が出てきた。

 それを見ていたケイスケ達はブッと吹きだして驚くがハイマキを仕留めようと怒り狂って追いかけていたシャー・ペイの群れが急に立ち止まり、キャンキャンと恐怖におびえるような声をあげて逃げ出していった。

 

「さっすがリサだ‼あのワンコロ達、リサの可愛さに恐れをなして逃げて行ったんだな!」

「…さすがは『百獣の王』」

 

 興奮して目を輝かせるタクトとナオトにリサは照れながら尻尾を振る。可愛さではなく、明らかに『百獣の王』であるジェヴォーダンの獣に恐怖を感じて逃げて行ったのだとケイスケはこっそりツッコミを入れる。そんな中、和気藹々としているタクト達をよそに顔面蒼白のカズキがプルプルと震わせながら手をあげる。

 

「あ、あのー…吐きそうなんでトイレ行ってもいい?」

「まだ行ってねえのかよ。さっさと行けつってんだろ」

 

 まだトイレに行ってないカズキにケイスケがイラッとしてすぐに行くよう言った。カズキはすぐにでもトイレへ行こうとした時だった。

 

「きひっ!シャーペイの群れがものすごい勢いで逃げて行ったのだから気になって来てみたら…お前達か」

 

 甲高い笑い声と共に茂みから清朝中国の民族衣装を着た少女、ココがニっと笑って出てきた。

 

「真の三国無双ちゃん‼」

「ココさん…!?」

 

 タクトが名前を間違え、リサがココを見て驚く。タクト達を見ていたココもリサを見て目を丸くし、苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「げぇっ!?なんでリサが武偵のところにいるネ!」

 

「リサ、ココってやつを知ってるのか?」

「もしかして真の三国無双ちゃんもイ・ウーなの?」

 

 ケイスケとタクトの質問にリサは頷く。

 

「はい、ココさんは中国の秘密結社『藍幇(ランバン)』の構成員の一人で…よくイ・ウーに武器を売り込んできていたんです」

 

「商売で売りに来たのにいっつもリサに値切られて商売にならないネ!」

 

 補足する様にプンスカとココは怒る。リサは買い物上手だから武器も安値で値切られるのだろう。ココははっとして話を戻した。

 

「お前達、そこの姫の飼い犬をこっちによこすネ。こいつはキンチ達のいい人質になるネ」

 

 ココはケイスケが抱き上げている傷だらけのハイマキを指さす。ケイスケはココを睨みかえし下がる。

 

「はいそうですか、ってそう易々と渡すわけねえだろ」

「はっ、くっさい仲間意識カ?」

 

 あざ笑うかのようににやりとするココに対し、ケイスケは首を横に振る。

 

「ハイマキを治療して、あとであいつらに面倒事を巻き込んだ仕返しに治療費を請求してやるんだからな」

「うわー…」

 

 明らかに面倒事に巻き込まれ、苛立っているケイスケにタクトとナオト、そしてココも引いた。奴らのペースに流されないよう、ココは気を取り直してケイスケ達を睨む。

 

「もう一度言うネ‥‥その飼い犬をよこすヨ。さもなくば…皆殺しにするネ」

「だから嫌だっつってんだろ!この2Pカラーが‼」

 

 ココの要請を即拒否したケイスケにココは殺気立つ。ココは長い袖を振って、香水の容器(アトマイザー)のようなものを取り出した時、すっとカズキが手をあげた。

 

「なにヨ、グラサン‼」

「あ、あのー…マジで吐きそうなんで先にトイレ行ってもいいですか?」

 

 顔面蒼白で吐きそうにしているカズキがプルプルとしている中、しばらくの間沈黙していたがココは怒った。

 

「もうこいつらむかつくヨ!これでもくらって消し飛ぶネ!『爆泡珠(バオパオチュウ)‼」

 

 シュッと霧吹きのように吹きかけ部屋から照らされる光できらりと光る、シャボン玉がカズキ達に向かって飛んできた。

 

「シャボン玉ぁ?あれだなシャボン玉避けゲームか!」

 

 タクトが恐るるに足らずと飛んでくるシャボン玉を遊ぶように避ける。そんなタクトにリサが叫ぶように呼びかけた。

 

「気をつけてください!ココさんが使う爆泡は気体爆弾です‼破裂して空気の酸素と混ざると爆発します‼」

「「「え゛っ!?」」」

 

 それを聞いたカズキ、ナオト、ケイスケはぎょっとする。そして飛んでいるシャボン玉が部屋の壁や天井にぶつかり弾けると、シャボン玉から激しい閃光と衝撃が上がる。

 

「やっべえええっ!?」

「そんな爆弾、あるのかよ!?」

 

 タクトとケイスケは叫んだ。リサの忠告のおかげでシャボン玉からすぐに離れていったカズキ達は爆泡の爆発から逃れたが衝撃が大きいためココの前へ飛ばされる。

 

「きひっ‼さっさとその飼い犬をよこすネ!」

 

 ココは再び爆泡、気体爆弾のシャボン玉を飛ばす。今度は明かりがない所から飛ばしてきたのでシャボン玉がどこからきているか見えなかった。

 

「逃げるぞ、走れ!」

 

 ケイスケはリサにハイマキを渡してすぐ足下の枯山水の砂利を掴んで投げる。投げた砂利はシャボン玉にを割り、空中で衝撃と閃光が巻き上がった。

 

「カズキ、ケイスケ、リサ‼大丈夫か!?」

 

 衝撃で巻き上がる土煙の中、ナオトが大声が聞こえた。さっきの爆発でカズキ、ケイスケ、リサの三人とナオトとタクトの二人に分断されてしまった。

 

「ナオト、たっくんと一緒に山を下りろ‼安全が取れたら知らせる‼」

 

「…わかった!」

「みんな、無事でいてくれよ‼」

 

 カズキ達は二手に分かれて駆けて行った。ココの狙いはハイマキ、追いかけてくるとすればこちらだろう。なんとか巻いて逃げなくては。森の中を駆ける、ふと逃げている最中にカズキがついて来ていないことに気づく。

 

「あれ?カズキは…?」

「カズキ様は吐きそうでしたので恐らく…」

 

 ケイスケとリサは後ろを振り向く。すぐにでも吐きそうだと顔を真っ青にしながらドタドタと遅れて走ってきていた。

 

「おまえ、さっさともどしとけよ‼バカか!」

「だ、だって…タイミングないんだもん…」

 

 ケイスケの怒号にカズキはひぃひぃと悲鳴を上げながら答えた。このままだと追いつかれてやられる。ケイスケはカズキをさっさと吐かせようとした。その時、前方の茂みからケイスケ目がけてココがUZIを構えて撃ってきた。

 

「なっ!?もう先回りしやがってたのか!?」

 

 ケイスケはカズキを押し離して咄嗟に伏せる。いくつか弾を掠めたが大事にはならなかった。MP5を撃って反撃をする。

 

「きひっ‼お前達はもう袋の鼠ネ!」

 

 UZIを撃ちながら近づいてくるココにリサと負傷しているハイマキを守りながら下がっていく。途中押し離したカズキの方を気にした時、カズキ()()()()()()()()()()()()姿()のココがいたのが見えた。

 

「まずは1人ネ!」

「ぐえっ!?」

 

 もう一人のココがカズキに裸絞めをする。ケイスケはカズキを助けに行こうとしたが、UZIで撃っているココに遮られる。

 

「ちょ、ちょっと…待って…‼」

 

 ジタバタとカズキはもがきながらココに訴えかける。しかしココは聞く耳を持たずツインテールの髪で首を絞め手と足でカズキの腹と身体を絞める。

 

「や、やめ…そんなことをしたら…うっぷ…」

「きひっ‼今更命乞いカ?もう遅いネ!『双蛇刎頚抱(シャンシケイケイパー)』‼」

 

 ココは力を込めてカズキを絞める。その絞め技でカズキの腹はつよく押された。いままで我慢してきたのだがカズキは我慢の限界だった。押されたカズキは今まで食べた物を口からリバースしてしまった。

 

哎呀(アイヤー)!?お、お前、何てことするネ!?」

 

 多面で絞めていたココの顔面に、体に今まで食べたものがかかりそうだったのでココは大慌てで拘束を放して下がる。リバースしてすっきりしたのか、カズキは鼻水を垂らしながら、涙目になりながらも上機嫌に返す。

 

「お前のおかげでスッキルしたぜ‼」

 

 M110狙撃銃を構え、ケイスケ達にUZIを撃ち続けているもう一人のココに向けて撃つ。こちらが狙われてると気づいたココは撃つのをやめて身軽に後ろへ下がる。カズキのリバースがかかりそうになったココも下がってUZIを持ったココの方へ駆け寄った。

 

炮娘(パオニャン)‼こいつらなめてかかったらまずいネ」

猛妹(モウメイ)、キンチとは違って別の意味で厄介ネ」

 

「あいつら、双子だったのか…」

 

 身なりも顔も、髪も、同じ姿にケイスケとカズキは驚く。しかし猛妹の方は絞め技や爆弾などの近接、炮娘の方は銃を使う遠距離と戦い方に違いがあった。

 

「確か…ココさんは『ツァオツァオ』と呼ばれ、3,4人姉妹だと聞いたことがあります…」

「マジかよ。同じ顔があと1,2人いるのかよ…」

「あれだな。ココだけに個々のここがすごいってかー‼」

 

 調子を取り戻したのか、調子に乗り出したのか、カズキはドヤ顔でダジャレを言う。ケイスケとハイマキはカズキのダジャレを無視してココ姉妹を睨む。一方のココ姉妹はプルプルと怒りで震えていた。

 

猛妹(モウメイ)、あのグラサン…明らかにバカにしてるネ」

「どうする炮娘(パオニャン)、あいつら処す?処す?」

 

 猛妹は青竜刀を取り出し、炮娘はUZIを構えてこちらに近づいてきた。カズキも調子を取り戻したが、見えにくいシャボン玉の爆弾、爆泡を出されたらこちらの手の打ちどころがない。カズキとケイスケはジリッと身構えた時だった。

 

「…お前ら、どうやら手こずっているようだな」

 

 後ろから野太い、ドスの聞いた声が聞こえた。カズキとケイスケは振り向くとそこには仁和寺に向かう途中、空腹で倒れていたあのルーブーがいた。

 

「る、ルーさん!?」

「る、ルーブー!?な、なんでお前が来てるネ!?」

 

 カズキは後ろにいたことに驚いていたが、ルーブーの姿を見てココ姉妹は目を見開いて驚いていた。

 

「ふん…お前らガキ共と共に『璃巫女』を連れてこいと諸葛に命じられたまでだ」

 

 ルーブーは低い声で答え、ココ姉妹を睨むように見る。ココ姉妹は蛇に睨まれた蛙のように動かなかった。

 

「見たところによると『璃巫女』を捕え損ねて、犬を人質にしようとしたが手こずっているところか」

「う、うるさいネ!ルーブー、お前が手を貸せヨ!」

 

 キッと睨むココ姉妹に対し、ルーブーは首を横に振る。

 

「残念だが、こいつらには借りがある。『璃巫女』や優れた人材を連れ去るならいくらでも機会があるだろう?ここは俺に免じて引いてはくれないか?」

 

 ルーブーの問いかけにココ姉妹は唸るようにカズキ達を睨んでいたが、ルーブーは虎を仕留めるかのような鋭い眼光で睨み付けた。

 

「…なんなら俺が相手になろうか?貴様らと()()()()()()()()()()()()()()、まとめてな」

 

 ルーブーに睨まれてココ姉妹はビクリとする。冷や汗をかいているようで、炮娘はカズキ達の方を睨みつけた。

 

「お前達、運がよかったネ…だが、次はないヨ」

 

 ココ姉妹は後ろへ下がっていき森の中の闇の中へ消えていった。静かになったところでカズキ達はほっと安堵する。

 

「た、助かったー…」

「ルーさん、ありがとうございます!」

 

 カズキ達に感謝されたルーブーはふんと一息つく。

 

「これで借りは返したぞ…次合うときは、敵やもしれん。せいぜい気を付けるのだな」

 

 そういってルーブーはココたちが消えていった森の方へ足を進めて去っていった。

 

「なんなんだよ、あいつらは…」

 

 ケイスケはうんざりと項垂れる。『イ・ウー』の他にも『藍幇』といった秘密結社があるなんて…改めて世界の裏側の深さに改めて思い知らされた。

 

「ま、まあ助かったんだしいいんじゃね?」

「カズキの言う通りだな…今は良しとするか」

 

 これから別れたタクトとナオトに連絡をとって合流するか、それともキンジ達の方へどうなっているのか確かめに行くか、行く先を考える。すると体力を取り戻したのかハイマキがリサから降りて歩き出した。こっちに振り向いて「ワンッ‼」と一声かけてきた。

 

「どうやら飼い主…レキの下に行きたいようだな」

「よーし、それじゃあそこに向かおう‼いくぞ、ハラマキ‼」

 

 名前を間違えたカズキに自分はそんな名前じゃないとでもういうようにハイマキは強めに吠えた。




 
 戦闘中、げろっちゃったけど…気にしない‼(目を逸らす)
 皆さんも食べすぎには注意しましょう。胸やけどころか本当にひどいことになります(遠い目)

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