カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 宣戦会議でこれをやりたかっただけです(目を逸らす)


リベンジofデス
30話


「いやー、随分と時間が掛かったよなー」

 

 武偵校のケイスケの医務室にてカズキは京都で買った宇治茶を沸かして湯呑に注ぎ飲んでまったりとしていた。

 

「掛かったよなじゃねえよ。掛かりすぎだろうが」

 

 ケイスケはカズキが京都で買った焼き八つ橋をひったくって食べる。呂布を逮捕できたその後、星伽神社に関西の武偵校の教務科達、大阪警察庁のお偉いさん方、さらには星伽の関係者たちがやってきて事情聴取という長い後始末を受けていた。

 その後は星伽神社の境内が滅茶苦茶になっていたので弁償されるのではないかとビクビクしていたが、風雪や寵巫女たち、白雪が関係者たちに説明してくれたおかげかしばらく神社の手伝いをするということでチャラになった。これからもこの先も神社に装甲車でダイナミックお参りをしたはタクトだけだろう。

 

「…戻ってきた後もドタバタしたな」

 

 カズキの隣でお茶を飲んでいるナオトもしみじみと呟く。京都から東京へ戻ってきた後も大変だった。綴先生に早々、「クーガーで神社に突っ込むとかお前らバカじゃないの?」という第一声の後、反省室に連れて行かれ始末書を書き、その後は理子に「三国無双にどうやって勝ったの!?そこらへんkwsk‼」と迫られるわ他の生徒たちに詳しい内容を話せと迫られるわでわちゃわちゃしていた。そんなこんなことをしているうちに気づけば9月下旬である。

 

「ふっふっふ、遂にこの偉大なる堕天使である俺のパワーに気づいて恐れをなしたようだな」

「たっくん、それはない」

「たっくんに恐れをなしたら世界の終わりだし」

「…ありえん」

 

 ドヤ顔して決めるタクトをカズキ達は即否定する。またしても否定されたタクトはしょんぼりして不貞寝をしだした。

 

「うふふふ、こうしてチームメイトのやり取りもいつもと変わらないですね」

 

 楽しそうに微笑むリサの言葉を聞いて4人はピタリと動きを止めた。何か大事なことを忘れているようなことがある、4人の頭にそれがよぎる。

 

「そういえば…カズキ、申請書はどうした?」

「えっ俺?」

 

 急にケイスケにふられてカズキは慌てだす。

 

「それってケイスケが持ってなかったか?」

「馬鹿か。修学旅行Ⅰの数日前にお前に渡しただろうが」

 

 必死に頭の中で時間を遡って申請書の行方を思い出そうとした。何か物凄く嫌な予感がするのだった。そんな二人にタクトが思い出してポンと手を叩く。

 

「そうだ!その申請書はカズキが医務室で俺に渡してたよー」

 

 ピキリとカズキとケイスケは固まりゆっくりとタクトの方に視線を向ける。

 

「た、たっくん…その申請書、その後どうしたの?」

「うーん…わかんない」

「分かんないじゃねーよ‼」

 

 ケイスケは怒りながらタクトを揺らし、ケイスケの怒りを沈めようとカズキが抑え、ギャーギャーと騒がしくしていると、ケイスケの机の上を漁っていたナオトが冷や汗を凄い流して3人を呼ぶ。

 

「…あった…」

 

 ナオトが見つけたのは何も書かれていない真白な申請書だった。カズキとケイスケは大理石の彫刻の如く真っ白になる。しばらく白紙の申請書を見て動かなかったが数秒後、カズキ達はがたりと立ち上がる。

 

「は、早く書いて出すぞ‼ケイスケ、時間は‼」

「9月23日11時半…タイムリミットまであと30分しかねえ‼」

 

 チーム編成はチームの代表が申請を行い、修学旅行後に教務科が電話で確認の応答をすることで承認され、登録の写真を撮るのが流れである。しかし、修学旅行後にチーム編成で変更もあることがある。そこでチームのメンバーを書いた紙を教務科へ提出し、集合写真を撮ってもらえば登録される『直前申請』というものがある。〆切は9月23日の12時ジャスト。それまでに滑り込みで申請書を出し撮影すればいい。

 

「お前らさっさと着替えろよ‼」

 

 ケイスケはロッカーから『防弾制服・黒』人数分取り出し投げつける。カズキ達は急いで着替え撮影会場まで駆け足で向かった。

 

___

 

「あーうん、お前ら絶対ギリギリにやって来ると思ってたわ…」

 

 教務科の蘭豹は腕時計で時間を確認しながら息を切らしているカズキ達をみて呆れていた。

 

「それとケイスケ、ナオト、お前らそれでええんか‥?」

 

 蘭豹は気になっていた。カズキとタクトは普通のスーツような防弾制服で、リサはメイド服のような白いヒラヒラのついた防弾制服だが、ケイスケはスーツのような防弾制服だが般若のお面をつけ、ナオトはフルジップのパーカーで顔を隠し、サングラスとニット帽をつけていた。二人はこれでいいと首を縦に振る。

 

「ま、まあいいけどな。それで申請書はちゃんと持ってきたか?」

「勿論ですぜ‼」

 

 カズキは自信満々にポケットから申請書を取り出し蘭豹に渡した。申請書の内容をケイスケ達も覗き込む。そこに書かれていたのは

 

チーム名『イクシオン(Ixion)

 

メンバー

 

 天露ケイスケ(救護科(メディカ))

〇江尾ナオト(強襲科(アサルト))

 菊池タクト(超能力捜査研究科(SSR))

◎吹雪カズキ(狙撃科(スナイプ))

 リサ・アヴェ・デュ・アンク(救護科(メディカ))

 

「い、イクシオン?」

 

 ケイスケが眉をひそめて首を傾げているとカズキは自信満々に胸を張る。

 

「どうだ?かっこいいだろ!なんかこう…究極の力っぽくてさ!」

「えー‼もっとかっこいいのがいい‼」

 

 タクトが文句を言いだすとカズキはポケットからメモ帳を取り出した。

 

「えーと他には…『スーパーウルトラフェニックス』とか『IRON―鋼鉄の魔人―』とか『滅びろ☆悪魔の化身』とか…」

「「「イクシオンで」」」

 

 タクト達は即答した。ネーミングセンスがひどすぎるカズキの中で『イクシオン』はとってもまともに見えた。

 

「ネーミングセンスは置いといて…さっさと配置につけ‼」

 

 申請書を受け取った蘭豹の怒声が響く。カズキ達はあたふたと撮影の配置についた。

 

「オラァ!斜向け!…て、カズキィ、タクトォ‼変顔して正面を向くな‼」

 

 変顔しているカズキとタクトに蘭豹は怒号を飛ばす。撮影の際、武偵の集合写真は正体をぼかすために正面を向かず撮影される。カズキは横を向くがタクトは厨二らしく片手で顔を半分隠してドヤ顔をしいていた。これがダメだとタクトはポーズを何回かしようする、時間がヤバイのでカズキが声を上げる。

 

「チーム・イクシオン。吹雪カズキが直前申請します‼」

「よっしゃ、9月23日11時57分、チーム・イクシオン、承認・登録‼」

 

 腕時計を見て時間を確認した蘭豹は持っていたカメラでシャッターを押した。この日カズキ達、武偵一喧しいメンバーはチーム『イクシオン』として登録されたのだった。

 

___

 

 平穏な日々が過ぎ、気が付けば9月の末にまで至っていた。カズキ達は修学旅行であれだけ頑張ったのに未だにCランクのままだったので只管高ランクの依頼を受けていくがプラマイゼロの評価が続き中々ランクアップすることができなかった。

 

「どうしてランクアップしないんだよ‼」

「そりゃぁ街中でグレネード投げるわ、装甲車でダイレクトアタックするわ、公共の物破壊するからじゃね?」

 

 怒りながら買い物の帰路につくカズキにケイスケは自分たちがやらかしてることをリストアップしていく。

 

「…どうすればランクアップできるんだろうね」

「もっと派手にアピールすればいいと思うよ‼たとえば戦車でry」

「やめろ」

 

 絶対に碌な事じゃないことだろうとタクトの提案を即却下する。カズキとタクトの目標はSランクになることなのだがこれだと当分先かなることはないだろうとケイスケはため息をつく。最近ではCランクでもいいじゃないかと思えてきた。そんな時、ふとリサが歩みを止めた。

 

「うん?リサどったの?」

「教会の前に立っておられるのは…神父様では?」

 

 リサは教会の方を指さした。いつも買い物の帰りに通る教会の門前で立ち、にこやかにこちらに手を振っている黒い師祭服の男は間違いなくジョージ神父だった。

 

「やあ皆、元気にしてたかい?」

「ジョージ神父‼ヨーロッパ旅行から帰ってきてたんですね!」

 

 2か月ぶりのジョージ神父との再会にカズキとタクトは喜んで駆けつける。ナオトは教会の庭を覗いてキョロキョロとする。

 

「…セーラは?」

「彼女は『イ・ウー』の集会に呼ばれてね、終わり次第戻って来るそうだ」

 

 その後ジョージ神父はにこやかにヨーロッパ旅行の話をしだした。イギリス、オランダ、ドイツ、フランス、イタリアと観光名所やら郷土料理やらカズキとタクトが目を輝かせて話を聞いているが、ケイスケは嫌な予感しかしないと少し警戒してジョージ神父を見ていた。

 

「そうだ、カズキ君達には出てもらいたい集まりがあるんだ」

「「集まり?」」

 

 カズキとタクトは首を傾げケイスケはやっぱりと項垂れる。

 

「…なんの集まり?」

「今夜、0時に行われる…『宣戦会議(バンディーレ)』だ」

宣戦会議(バンディーレ)…!?遂に行われるのですか…!?」

 

 宣戦会議という名を聞いてリサはとても動揺していた。リサの動揺からしてその会議はとても危険な物ではないかとケイスケは警戒しだす。

 

「神父様、カズキ様達を『戦役』にまき込むべきでは…」

「リサ、君の気持ちは分かる。だが私も、シャーロックもこの戦役で彼らの力が必要なんだ…」

 

 ジョージ神父の弟、シャーロックの名を聞いて絶対にただの集まりじゃないとケイスケは察する。ジョージ神父の説得を聞いてリサは少し戸惑っていたようだが、決意したのか真剣な表情でカズキ達を見る。

 

「リサは決めました。カズキ様達のお力になるよう、リサも頑張ります‼」

「いやリサ、それでいいのかよ」

 

 うまく神父に丸められたようでケイスケはリサを心配する。タクトは目を輝かせてジョージ神父に尋ねる。

 

「その集まりってどんな人が来るの?」

「うむ…例えるなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()だ]

 

それを聞いてタクトは「すっげえええ!」と嬉しそうに叫びだした。

 

「待て待て待て!絶対にその集まりやばいじゃねえか!」

 

 ケイスケは神父を睨みながら喚くタクトを抑える。『イ・ウー』や『藍幇』、裏側にはかなりヤバイ奴らがわんさかいる。自分たちが片足で浸かってもいいレベルではないはずだ。

 

「ケイスケ、俺達も仲間入りだぞ☆」

「嬉しくねえよバカ‼」

 

 理解していないだろうカズキはニコニコしながらケイスケを宥めるが逆に叱られた。ケイスケはナオトの方を見て助けを求めるが、ナオトもどうやらやる気のようで張り切っており、肩を竦めて諦めるしかなった。

 

「もう後戻りはできないってか…畜生、やってやろうじゃねえか」

「おっ!ケイスケ先生、その意気ですぜ‼」

「そういえば、今夜は冷えるっていってたね…」

 

 喜んでいるタクトがふと思い出す。確かに今朝の天気予報では夜は冷えると言っていた。

 

「深夜に集まるならみんな寒くないのかな?」

「眠たくなるし、お腹もすくんじゃね?」

「うん、それお前ら基準だよな」

 

 真夜中に集まるなら寒いし、眠たくなるだろうとカズキとタクトが心配しだす。するとタクトが何かを閃いたらしくポンと手を叩いた。

 

「そうだ!この俺にいい考えがある‼」

 

___

 

 キンジは空き地島に着き、曲がり風車とあだ名がついた曲がった風力発電機の所まで歩き出す。ジャンヌの手紙と電話により、ここまで来たのだが辺りは深い霧に包まれていた。

 

「遠山、こっちだ」

 

 声を掛けられてキンジは振り向くと、少し離れた場所で白銀の鎧を着たジャンヌが立っていた。

 

「時間通りに来てくれたようだな」

「ジャンヌ、こんな所に夜分遅く呼び出して何の用だよ」

 

 急に呼び出されてキンジは不審がる。ジャンヌは重装備しているし、妙に霧が漂っているし、気になることばかりだった。

 

「そのうちわかる。だが…」

 

 詳しく説明してくれなかったことにキンジはムッとしたが、ジャンヌが困った顔をして視線を左の方に向けていた。視線の方になにかいるのかとキンジもその方を向く。霧が漂ってなかなか見えないのだが、耳をすませばぐつぐつと何かを煮込んでいる音がした。

 音だけではなく匂いもしだす。気になって目を凝らすと6人のシルエットが見え、そして見覚えのある連中だとキンジは気づいた。

 

「いやー、温まるな!」

「こら‼そう言いながらもやしを入れるんじゃねえよ‼」

「おいぃ‼ナオト‼俺の鳥団子を取るな‼」

「…たっくんが食べないのが悪い」

「タクト様、まだありますから大丈夫ですよ…」

 

 

「あいつら何してんだよ!?」

 

 この霧がかかった真夜中の空き地島でカズキ達が神父と一緒に茣蓙を敷いて鍋をしていた。キンジは咄嗟にツッコミを入れるが、ジャンヌは本当に困っている様子だった。

 

「わ、私がここに着いた時には既に鍋をしていててな…まさかカズキ達も呼ばれたのか…?」

 

「あれ?あそこにいるのキンジじゃね?」

「これ見よがしに食べちゃおー。ムシャムシャオイシー」

 

 カズキとタクトがキンジに向けて美味しそうに食べるが逆にキンジは呆れていた。なんでここにいるのか、何故あの神父と一緒にいるのかキンジは問い詰めようとした。

 

「…間もなく0時です」

 

 聞きなれた声を聞いたキンジはピタリと止まって上の方を見る。動かない風車のプロペラに制服姿のレキがドラグノフを体の前で抱えて座っていた。かなり警戒を高めている雰囲気なので眉を顰める。

 

 その時、曲がり風車を囲むように複数の強力なライトが灯った。キンジは眩しさで腕で目を覆い、再び周りを見ると目を丸くした。気づけば自分の周りにはいくつもの影が見えた。どれも普通の人ではなく異形で、不気味な物ばかり。

 

「こいつら…やばい‥っ‼」

 

 キンジはヒステリアモードにならなくてもすべてを察した。見えているのはただの仮想したコスプレ集団ではなくどれもこれもタダ者ではない。その中にいる色鮮やかな中国の民族衣装を着た丸眼鏡をかけた糸みたいに細い目をした男がキンジに頭を下げるた。

 

「先日はココ姉妹達がとんだご迷惑をおかけしたようで。陳謝いたします」

 

 その男から離れた地面から黒い影が蠢き、人の形をしだして起き上がると白と黒のゴスロリな服を着た、金髪のツインテールの少女の姿となりキンジの方を見た。

 

「ふぅーん、お前がリュパン4世と共にお父様を捕えた男か。信じ難いわね…」

 

 

「カズキ、てめえは野菜を食え」

「俺の所に春菊を入れるなよ‼たっくんに食わせろよ‼」

「…リサ、ポン酢とって」

「神父!ゴマダレとポン酢どっちがいいです?」

「うむ、私はポン酢にしようかな」

 

 キンジは目の前にいるコウモリのような翼を背に生やした少女や頭を下げてきた中国の民族衣装を着た男、すぐ近くで武装をした巨大な者、大剣を背負ったシスターや魔女の衣装を着た少女と、見たことのない者達に戸惑っていたが、外野にいる騒がしい連中が鍋をしているせいで集中できなかった。

 

「仕掛けるでないぞ、遠山の。今宵はまだじゃ。儂も大戦は86年ぶりで気が立って…って、あそこで鍋をしてるのは誰じゃ‥…?」

 

 キンジは気づけば自分の傍にアリアよりも小柄な梵字描かれた藍色の和服を着た、狐のような耳を立てた少女がいた。他にはトレンチコートを着た長剣を背負った白人の青年、トラジマ模様の動物の頭付きの毛皮を被ったワンピースの少女に、イヤホンで音楽を聞いている姿勢の悪いピエロ、異様な者ばかりだった。視界の端で砂金が舞い、キンジにとって見覚えのある人物が二人見えてきた。

 

「パトラ…‼カナ‥!?」

 

 砂礫の魔女、パトラはキンジに向かって高笑いし、カナは『ハーイ』とにこやかに手を振り、カズキ達の方を見てギョッとしていた。キンジは再び周囲を見回し(カズキ達を無視して)、額に滲んでいる汗を拭う。自分も周囲の連中と同じく、『普通』の人ではないとされている事に項垂れた。これで揃ったようで、ジャンヌが周囲を見て語りだした。

 

「では始めようか。各地の機関・結社・組織の大使たちよ。宣戦会議(バンディーレ)…イ・ウー崩壊後、求める物を巡り、戦い、奪い合う我々の世が…次へ進むために(Go For The Next )

 

_GO For The Next__

 

 怪人達もバラバラに唱和する。キンジはそんな連中を半ばやけくそで睨んでいた。

 

 

「イエーイ‼ゴーフォーザネクスト―‼」

「だから他の物を入れてる時にもやしを入れるなっつってんだろがクズ‼」

「誰だよ‼俺のお肉をとったのはー‼」

「…取らないたっくんが悪い」

「ま、まだお肉もありますよ‼」

「ははは、初めての宣戦会議(バンディーレ)だが、実に面白いな」

 

 怪人達の近くで鍋をして騒いでいる緊張感がないカズキ達を見てキンジもジャンヌもこれだけはわかった。

 

((あいつら…この状況を絶対に理解してない‼))




 イクシオン…最初はわかりやすく『幾四音』にしようかなと思ったのですが、5人だしカズキがはぶれてしまうのでカタカナにしました。エ?なんか違う?

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