カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 ぐだぐだしてるかもです。長くなりそうなのでここで斬ります


31話

「…『宣戦会議』に集いし組織・機関・結社の大使たちよ、まずはイ・ウー研鑽派残党(ダイオ・ノマド)のジャンヌダルクが、敬意をもって奉迎する」

 

 ジャンヌは周りを見ながら歓迎するようなことを言っているが、その声は奥歯に刃を秘めた様な感じであった。周りから感じられる敵愾心、全員が一触即発のムードであることをキンジは嫌ほど感じていた。

 

「まぁまぁ、そうピリピリしなくてもさ。鍋の具材はたっくさんあるよー」

「冷えるし鍋でも食べて温まろうぜ‼」

 

 そんな空気を察していないのかタクトとカズキの呑気な呼びかけが周りに響く。緊張感がない連中のせいでキンジの集中力が削がれていく。

 

「…初顔の者もいるので、序言しておこう。かつての我々は諸国の闇に自分達を秘しつつ、各々の武術・秘術を伝承し、求める物を巡り、奪い合ってきた。イ・ウーの隆盛と共に争いは休止されたが…イ・ウーの崩壊と共に再び砲火しようとしている」

 

 キンジは思い出す。超人たちが集う組織、その組織のリーダーで、アリアの曾祖父であるシャーロックとの戦いでイ・ウーは崩壊したはずだった。しかし、イ・ウーを壊滅したせいで目の前でまた新たな戦いに巻き込まれようとしていることに焦りを感じる。

 

「カズキ、つまりどういうことだってばよ」

「あーと…たぶんあれじゃね?鍋の具材の奪い合いをしてたんだろ」

「…すき焼きにしなくてよかったな」

 

 違う。そんなわけあるかとキンジは心の中でツッコミを入れる。そんな時、純白のローブに身を包み、十字架を模した大剣を背負った金髪のシスターが一歩前に出た。

 

「…皆さん、あの戦乱の時代に戻らない選択はないのですか」

 

 キンジはこんな厄介事を起こしたくない、同じ意見を持つ者がいてほっと一安心する。シスターはイ・ウーの影響のおかげで誰もが沈黙を通し、誰もが手を出さなかったことによって長い休戦と平和を保つことができた。その平和を保ちたいと述べた。

 

「なあ、ケイスケ、あのデカメロンシスターさんは何を言いたいのかな?」

「たっくん、あれだろ。鍋よりおでんがよかったんじゃね?」

「…おでんなら具材もたくさんあるしね」

「そろそろもやし入れてもいい?」

 

 違う、そうじゃない。鍋とかおでんとかそんな話をしてるんじゃないとキンジは再び心の中でツッコミを入れる。

 

「私はバチカンが戦乱を望まぬことを伝えにここへ参ったのです。平和の体験を学び、皆さんの英知を持って和平を成し、無益な争いを避ける事はry」

「はっ…‼できるわけねえだろ、メーヤ。この偽善者が」

 

 彼女の斜め後ろにいた、旧ナチス・ドイツ軍のハーケンクロイツのマークがついた眼帯をし、魔女の帽子や黒いローブを身に着けたオカッパ頭の小柄の少女は睨みながら話を遮った。

 

「てめえらはちっとも休戦しなかっただろうが。何が平和だ、どの口がほざいてんだ」

「…黙りなさい、カツェ=グラッセ。この汚らしい不快害虫が」

 

 今までお淑やかな雰囲気だったシスターが突然毒舌を吐いてカツェと呼ばれた少女を睨み返す。

 

「たっくん、てめえ‼俺の育てたツミレを取るんじゃねえよ‼」

「はぁ?こんなでかいツミレは取りたくなるだろ?」

「てゆうかカズキは野菜を喰え」

 

 一触即発な雰囲気を醸し出しているのに喧しく騒ぐカズキ達にキンジは項垂れる。それにしてもこんだけ騒いでいるのにあの連中はよく無視しているなと感心していた。ジャンヌは一度咳払いして話を進行させていく。

 

「…では古の作法に則り、3つの協定を復唱する。86年前の宣戦会議ではフランス語だったが、今回は私が日本語に翻訳したことを容赦頂きたい。

 …第一項。いつ何時、誰が誰に挑戦することも許される。戦いは決闘に準ずるものとするが、不意打ち、闇討ち、密偵、奇術の使用、侮辱は許される。

 …第二項。際限無き殺戮を避けるため、決闘に価せぬ雑兵の使用を禁ずる。」

 

「へー…86年前にフランスで鍋パーティーをしてたんだってよ」

「寄せ鍋だけど、皆も遠慮しないで食べてね!あ、それともよそってあげようか?」

 

 だから鍋じゃねえよ。ジャンヌの話を全く聞いていないカズキ達にキンジは呆れる。

 

「第三項。戦いは主に『師団(ディーン)』と『眷属(グレナダ)』の双方に分かれて行う。それぞれの組織がどちらの連盟に属するか、その場での宣言で定められるが、その際に黙秘、無所属も許される。また、鞍替えもできるがその場合、誇り高き各位によりそれ相応の扱いをされることを心得よ」

 

 

「『師団』と『眷属』?どいうことだ?」

「ケイスケ、あれだろ。『ポン酢』か『ゴマダレ』かどちらか選ぶんだろ」

「…どっちも捨てがたいな」

 

 ジャンヌはそれを聞いて危うくずっこけそうになったが、咳払いして改めて語りだす。

 

「つ、続けて連盟の宣言を募るが…まずは私達イ・ウー研鑽派残党は『師団』となる事を宣言させてもらう。バチカンの聖女・メーヤは『師団』、魔女連隊のカツェ=グラッセは『眷属』。よもや鞍替えは無いな?」

 

 ジャンヌはルールを語り終えたジャンヌは名指しをしてその方を見る。メーヤはデカメロンな胸の前で十字を切る。

 

「ああ…再び剣を取る私をお赦しください…はい。バチカンは元よりこの汚らわしい者共を討つ『師団』。殲滅師団(レギオ・ディーン)の始祖です」

 

「ああ、あたしも当然『眷属』だ。あんなシスターと仲良くなれるかっての。ヒルダもそうだろう?」

 

 フンと鼻で笑うカツェは近くにいたコウモリのような翼を持った金髪のツインテールの少女の方に視線を向けた。ヒルダと呼ばれた少女はにやりと笑う。

 

「当たり前じゃないの…私は生まれながらにして闇の眷属。戦も大好きだし、おかげで血も沢山飲めれるわ」

 

 

「たっくん、あのコスプレすごくない?」

「やべえよ。古に伝わりし…早すぎるハロウィン、お菓子大好きトリックオアトリートエディションでしょ」

「…リサ、春菊取って」

 

 ヒルダは喧しい外野を無視してキンジの隣にいるキツネ少女の方に視線を向ける。

 

「タマモ、あなたもそうでしょう?」

「…すまんのう、ヒルダ。儂は今回は『師団』じゃ。未だ仄聞のみじゃが、今日の星伽は基督教会と盟約があるそうじゃからの。パトラ、お主もこっちに来い」

 

 星伽という言葉を聞いてキンジはピクリと反応する。一方、水晶玉を指の上でくるくる回していたパトラはアヒル口をして返す。

 

「タマモ。かつて先祖が教わった諸々の事、感謝はしておるのぢゃが。そこにいるイ・ウー研鑽派の優等生共には私怨もある。イ・ウー主戦派(イグナテイス)は『眷属』ぢゃ…あ、あー‥カナ?お前はどうするのぢゃ?」

 

「そうね…私は『無所属』とさせてもらうわ」

 

「カナさん‼カナさんも一緒に鍋でもしませんか!」

「今ならお餅もありますぜ‼」

 

 カナの方にカズキとタクトが喜びながら呼びかける。ちらりとパトラはカズキ達の方に視線を向ける。

 

「か、カナ?さっきから喧しいあの連中は…?」

「パトラ、今は見なかったことにする方がいいわ…」

 

 カナは即答してカズキ達を見なかったことにしようとしていた。キンジもカナもなんであのおバカ達(カズキ達)がいるのか分からなかった。

 

 リバティー・メイソンという組織を名乗ったトレンチコートの青年は『無所属』、Looと呼ばれたよくわからない奴も『無所属』、ハビと名乗った本人よりもでかい斧を持った少女は『眷属』とカズキ達をよそにキンジの周りではどんどん宣言していく。

 

「遠山、『バスカビール』はどちらにつくのだ?」

「えっ…?」

 

 突然、ジャンヌに振られキンジは慌てだす。

 

「な、なんで俺の方に振るんだよ」

「お前はシャーロックを倒し、イ・ウーを崩壊させ、この戦いの口火を切ったのだからな。『バスカビール』という組織名を作り、そのリーダーの連盟宣言が不可欠だ」

「ま、待てよ‼俺はいきなり呼び出され突然そんなことを言われたって…‼」

 

「キンジ‼男なら決めろ‼」

「選べよ『ポン酢』か『ゴマダレ』か…好きな方をよ‼」

 

「「だからそうじゃないってば!」」

 

 外野で喧しくするカズキ達にキンジとジャンヌは声をそろえてツッコミを入れる。どうしてそこまでふざけれるのか呆れていた。慌てふためくキンジにヒルダはクスクスと笑う。

 

「新人は皆、無様に慌てるのよねぇ…ジャンヌ、いじめちゃダメでしょ?遠山キンジ、お前たちは『師団』よ。そうじゃなきゃ『眷属』の偉大なる竜悴公・ブラド、お父様のカタキを取れないわ」

 

 そういってヒルダはキンジに睨み付けた。ヒルダが吸血鬼であること、あのブラドの娘であることにキンジは冷や汗を流す。

 

「…それではウルスが『師団』に付くことを代理宣言します…私個人は『バスカビール』の一員ですが、同じ『師団』になるのですから問題はないでしょう。私が代理大使になることは、既にウルスの許諾を得ています」

 

 風力発電機のプロペラに腰を掛けていたレキは微動だにしなかった。そんなレキを中国服の男がにやりと笑う。

 

「では藍幇の大使、諸葛静幻が宣言しましょう。私達は『眷属』。ウルスのレキには先日、ビジネスを阻害された借りがありますので…それで、そこで音楽を聞いてる貴方はどうするんです?」

 

 諸葛静幻は一番端でずっと携帯音楽プレイヤーで音楽を聞いていた派手な衣装を着た迷彩柄の男はその音楽プレイヤーを投げ捨てた。

 

「チッ、美しくねえな…」

 

 その男は舌打ちして苛立たしい声を上げて周りを睨み付ける。

 

「馬鹿馬鹿しいぜ。どんな強ぇ奴が集まるかと思って来てみりゃ…ただの使い走りの集いかよ。ケッ、来てて損したぜ」

GⅢ(ジーサード)、ここに集うのは『大使』だが、戦闘力ではなく本人の希望、組織の推薦、使者の適正や一定の日本語を理解できるかの基準に選出された者たちだ。お前の求める者たちでない事を認めるが…いいのかGⅢ?このまま帰ればお前は『無所属』になるぞ」

 

 ジャンヌはGⅢと呼ばれた男に忠告をするが、GⅢは舌打ちして睨み返す。

 

「関係ねぇ。最近てめえらの周りで強ぇ野郎が出たって聞いてみて来たまでだ。いいか、次は一番強ぇ奴を連れてこい、全殺ししてやる」

 

 GⅢはそう言って身体から壊れた蛍光灯の音がした途端に姿がどんどん見えなくなっていき消えていった。

 

「すげえぞたっくん‼スケルトン中二病だぞ‼」

「スケルトン中二病くん…鍋が嫌いだったんだね」

「‥‥」

 

 タクトがしょんぼりし、ナオトは別の方向をじっと見ていた。静まり返った霧の中でヒルダが溜息をついた。

 

「よく吠える子犬ね。殺す気も失せるわ…ジャンヌ、これで全員済んだかしら?」

「いいえ、まだ残っていますよ」

 

 諸葛静幻がカズキ達の方に視線を向けた。その声と共にキンジだけではなくヒルダもカツェも周りにいた全員が鍋をしているカズキ達の方に視線を向ける。

 

「えっ?あいつらもか?ただのバカかと思ってたぜ」

「そうね。ただの野次馬かと思ったわ」

 

 カツェもヒルダも呆れた声を上げる。キンジはやっぱり全員が気になっていたことにほっと一息つく。注目されている中、ジョージ神父がすっと立ち上がった。

 

「それでは私、ジョージ神父が代表して宣言しよう。私達も遠山くんと同じく新参者でね、私達は『無所属』としてもらうよ」

「む…そのようだが、『イクシオン』はどうなのだ?」

 

 ジャンヌは仕方ないとため息をついてカズキ達に一応尋ねた。カズキ達は悩んでいるようだったがすぐに答えた。

 

「そうだなー…なんか響きがいいから『眷属』‼」

「馬鹿か、『師団』だろ」

「…無所属」

「り、リサもジョージ神父とナオト様と同じく『無所属』です」

「俺、ポン酢派‼」

 

 予想通りのバラバラの意見にジャンヌは聞くんじゃなかったと項垂れる。ジョージ神父はそんな彼らを見てにこやかにする。

 

「ははは、私も彼らもまだ戦況を把握していないのでね。そこのところご容赦頂きたい」

 

 にこやかにしているジョージ神父の態度にジャンヌも遠くで見ていたカナも眉をひそめていた。ヒルダはジョージ神父と鍋をしているカズキ達を見てクスクスと笑う。

 

「少し面白くないわねー…まあどこかのマヌケよりかはマシかしら。ジャンヌ、これで全員が済んだわね」

「…その通りだ。最後に、この闘争は宣戦会議の地域名を元に名付ける慣習に従い…『極東戦役(Far East Warfare )』、FEWと呼ぶことを定める。各位の参加に感謝と、武運を祈る」

 

「あれ?なんか終りっぽい?」

「ねえ、みんなで鍋を食べないの?」

「…シメはラーメンなのに」

 

 終始鍋の事しか話していないカズキ達にキンジはため息をつく。しかし、ヒルダがずっとこちらを見ていることに気づき、嫌な予感がよぎる。

 

「それじゃあ…()()()()()()()()()いいわね?」

「…もう、やるのか?」

 

 キンジはジャンヌとヒルダがずっとこちら見ていることに焦りを感じた。嫌な予感が段々と当たりそうになってきている。ジャンヌが慌てた表情で短縮マバタキ信号で『逃げろ』と合図していたことに目を見張る。

 

「…っ‼」

 

 ヒルダが影となってキンジめがけて蠢きだす。会議が終了し、誰もが誰と戦っていいことに気づいたキンジは急いで下がろうとする。

 

「遠山‼30秒は縛る‼すぐに逃げろ‼」

 

 ジャンヌはジャベリンのようにデュランを蠢く影に向けて投げた。デュランダルは蠢く影に刺さり、影の動きが鈍る。どこへ逃げるべきかキンジは迷ったその時、遠くからエンジン音が響いた。その音の方に目を向けると空き地島に向かって小型のモーターボートが近づいてきてる。

 

 ボートは壁に衝突するように接舷すると、ひょっこりと小さな手がふちに捕まるのが見えた。

 

「SSRに網を張らせて正解だったわ!あたしの目の届く所に来るなんてね…パトラ!ヒルダ‼そこにいるんでしょ‼」

 

 甲高いアニメ声と共にアリアがよいしょと登ってきた。

 

「イ・ウー残党‼まとめてセットで逮捕よ‼これでママの高裁に手土産が…ってあんた達、何呑気に鍋をしてんのよ!?」

「アリアも鍋しにきたんだー」

「遅かったな。もうそろそろシメに入る所だぞ」

 

 そういう問題じゃない。アリアもキンジもツッコミを入れる。というよりも火に油を注ぐ事態になり兼ねないとキンジは焦りだす。気づけばよそではメーヤは大剣を振るい、カツェに襲い掛かっていた。

 

「厄水の魔女、討ち取ったりぃぃぃっ‼」

 

 両断しようと振り下ろすメーヤの大剣をカツェは短剣で受け止めた。

 

「メーヤ…お前ほんといっぺん死なないと治らねえな、そのアホさ!」

 

 カツェは大剣をいなすと金ぴかのルガーP08を構えて撃つ。あっちこっちで戦いが勃発していることにやっとカズキ達は慌てだす。

 

「なんかすごいことになってるぞおい‼」

「やべえな…ポン酢かゴマダレか、争いがヒートアップしてるぜ‼」

「…やっぱりおでんがよかったんじゃない?」

「ナオト、そんなこと言うなよ‼」

 

 ジョージ神父はふうと一息ついて鍋に蓋をして、鍋掴みで鍋を持ちげる。

 

「どうやらお開きのようだね。私達も帰ろうか」

 

 ジョージ神父の呼びかけにカズキ達は頷いてそそくさと食器と茣蓙と片づけていく。風呂敷にまとめてナオトが背負い込む。

 

「それじゃあみんな、バーイ‼」

「今度はおでんにするから!」

 

 タクトとカズキは大声を上げて呼びかけた。誰もが返事の無い中、カズキ達は霧の中を駆けて去っていった。終始鍋しかしてなかったカズキ達にキンジは呆れる。

 

「…あいつら、何がしたかったんだよ…」

 




 宣戦会議で鍋をしてシリアスな雰囲気をぶち壊す…ただこれがしたかっただけでした(焼き土下座)

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