カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼ 作:サバ缶みそ味
燃え尽き症候群っていうのは怖いね!
武偵校から離れ、千代田区にある小さな音楽スタジオにてカズキ達はいた。タクトは愛用の青いギターを弾き終わりふぅと一息ついた。
「ひゅーっ‼リサ、俺達のバンド、どうだった?」
近くでカズキ達の演奏を見て聞いていたリサは目を輝かせ、興奮気味に喜びながら拍手をした。
「
「でへへー、こう褒められたらうれちーっ‼」
カズキはへにゃりとにんまりして照れだす。へにゃりとしているカズキにケイスケが呆れて小突く。
「ったく、なんで文化祭に備えてこんなことやんなきゃいけねえんだよ」
「…人生初めての音楽スタジオ…」
ケイスケとナオトにとっては初めて音楽スタジオに入って、初めて練習することに少し戸惑いを見せていた。
「ふっふっふ、アドシアードの演奏が好評でさ、今年は文化祭で音楽バンドをやることにしたんだぜ‼」
「たっくんの突然の思い付きだろうな…」
2年生は食堂を借りて
「今年も俺達が『プリン』を作るよって先生に言ったら、蘭豹先生が『衣装は後でいいから、バンドの練習してこい』って即決で許可をもらったんだー」
「タクト様達はプリンを作るのが上手なんですか?」
「リサ…『プリン』の事は詳しく聞かないでくれ」
自分達が作ったプリンの事に対してケイスケもカズキも青ざめているのでリサは首を傾げていた。何かあったのかと気にはしていたが、彼らの様子を見てそっとしておくことにした。
「俺がギター、カズキはシンセ、ケイスケがベースでナオトがドラム!いいバランスだぜ‼」
「一昨日思いついたぽっと出のバンドだけどな」
宣戦会議の鍋パから翌日、文化祭があることを思い出してタクトが思い付きで始めたものであり、曲も数時間前にカズキとナオトが作ったものでうまくできるかどうか心配な物ばかりだった。ケイスケの心配をよそにタクトは大はしゃぎする。
「ってなわけでこれを土台に、目指せ武道館ライブ!」
「たっくん、それじゃあ作品が違う」
カズキがメメタなツッコミを入れ、ふと単純な疑問を口にする。
「ところでたっくん、ボーカルはやるの?」
「…一応カズキと俺で歌詞も作ったけど」
「うーん、俺でもいいけど…」
音楽だけのバンドも悪くはないが、ボーカルも入れたらより盛り上がるだろう。タクトは唸る様に深く悩み、チラリとリサの方を見る。
「リサ、ボーカルやってみない?」
「ええっ!?わ、私ですか!?」
急に振られてリサはあたふたと慌てだす。突然のことでビックリしたのかぴょこりと犬耳が出てきてしまいぴょこぴょこと動いていた。
「ご、ごめんなさい、リサには難しそうです…」
「たっくん、ボーカルのことは後にして今は練習をした方がいいぜ?」
「むーん、仕方ないか。そんじゃもう一回合わせるよー‼」
気を取り直して皆で合わせて演奏しようとしたその時、ふつっとスタジオの中が薄暗くなり、シンセサイザーもスピーカーからも音が出なくなってしまった。
「おおい、こんな時に停電かよー…」
「もー‼これからだっていうのに!帰る‼」
しばらく停電から回復が見込まれないようなのでやる気が削がれたカズキ達は仕方なしにスタジオから出ることにした。外に出れば昼間でも交差点や横断歩道の信号の明かりが消え、ビルや近くの店の中も薄暗いことからかなりの停電だとうかがえる。練習が中断されたのかタクトは不機嫌な様子だった。
「ありゃりゃ。たっくん、怒ってるなー」
「どこのどいつだよ。たっくんを怒らしたバカは」
カズキとケイスケは怒っているタクトを「帰りにケーキでも買おう」と言って宥める。そんな様子を見ていたナオトだったが、ふと近辺でパトカーのサイレンが響いているのに気づいた。ちらりとその方を見ると遠くの交差点のど真ん中に白銀のICBMが電話ボックスのように突き刺さっているのが見えた。
「…‼」
ナオトは一瞬ギョッとしたのだが、あれに関わればまた変なことに巻き込まれるのではないかと感じ見ていないふりをして帰路についているカズキ達の後に続いた。
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「カイザー、遠山キンジ及びアリアとコンタクトできた。これより任務を実行するよ」
武偵校の男子寮の一室にて、灰色のブレザーを着た、黒髪の青年、リバティー・メイソンの一員であり、かの名探偵シャーロック・ホームズの相棒であるジョン・H・ワトソンの曾孫のエル・ワトソンは衛星電話を通して電話をかけていた。
『ご苦労。ワトソン君、道中トラブルはなかったか?』
「ない事はなかったが、丁度ヒルダと交戦中だったようでね…でも彼女が退いてくれたことは幸いだったよ」
ワトソンはやれやれとため息をついた。昼間、遠山キンジがヒルダに手も足も出なかったことに失望し、怒りを感じていた。
「いち早くアリアをリバティー・メイソンに入れて『眷属』へと組み入れる」
リバティー・メイソンは混迷していた。『師団』に付くべきであると主張するハト派と『眷属』に付くべきであると主張するタカ派と組織内で分かれてしまっている。ヒルダがアリアから奪い取り撒き散らした『殻金』は『師団』が2つ、『眷属』が5つと圧倒的に後者が有利だ。
アリアを遠山から取り上げ、『眷属』に帰属すれば彼女の安全はとれる。いや、そうしなければならないのだ。ワトソンはそう言い聞かせる。そして『師団』派である先輩に申し訳なく返す。
「カイザー…『師団』派である君に無茶を頼んで申し訳ない」
『いやいいんだワトソン君。君の意見も大事だからな…』
ワトソンはほっと胸をなでおろす。ここまで支えてくれる先輩に感謝をする。これから遠山キンジからアリアを引き離す段取りに取り掛かる前に、ふと気になる事があった。
「…ところで、遠山キンジとは別の資料に載っている連中は何者なんだい?」
ワトソンはカイザーから渡されたもう一つの資料と写真を見た。写真には美味しそうに鍋をしているカズキ達とジョージ神父が写っていた。資料に至ってはただ名前しか載っていない。遠山の仲間なのかそうでないのかワトソンは疑問に思っていたのだが、カイザーの声は本当に申し訳なさそうにしていた。
『その…よくわからん』
「…What!?」
カイザーの意外な答えにワトソンは驚いてつい英語で返してしまった。
『宣戦会議で鍋をしていた訳の分からない連中だ。ジョージ神父という男が代表して『無所属』と宣言していたが…他の連中は理解しているのかどうかも分からなかった』
ワトソンは呆れた。まさか宣戦会議で鍋をしているなんて前代未聞だ。写真から見て大したことはない、警戒すべき相手ではないと判断した。
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「エル・ワトソンです。これからよろしくね」
この日、2年A組にマンチェスター武偵校から留学生が来た。男子にしては少し高めの少年っぽい声に、忠誠的な成りにクラスの男子も女子も興味津々にワトソンを見ていた。アリアは目を丸くして、キンジは凄く嫌そうな顔をしてみていたが、睡魔に負けかけているナオトにとってはどうでもいい事だった。
一番後ろの席、ナオトの隣の席についた時、朝のHRの終了のチャイムが鳴った。それと同時に女子達が黄色い声を上げてワトソンの席を取り囲む。
「前の学校では、専門家はどこだったの!?ここではどこに入るの!?」
「ニューヨークでは強襲科、マンチェスターでは探偵科、東京では衛生科だよ」
ワトソンの笑顔に女子達は目をハートにして黄色いを上げる。黄色い声でナオトの眠気は吹っ飛ぶ。五月蠅そうにため息をつき、チラリと見ればキンジがワトソンを白い目で見ていた。
「王子様みたい!」
「うちは王家じゃない。子爵家だよ」
「肌が綺麗‼女子よりきれい‼」
「…あ、ありがとう」
「サインください!」
「えっ」
気づけば女子達の輪の中にタクトが目を輝かせて色紙をワトソンに渡そうとしていた。突然のことでワトソンも周りの女子達もキョトンとしていた。ワトソンは戸惑いながらも色紙を受け取りサインしタクトに渡す。
「ぼ、僕のサインでいいのならば…」
「やったー‼カズキに自慢しよっと。女優?俳優のサインを貰ったぜー‼」
サインを貰ってはしゃぐタクトにワトソンだけでなく、女子達も男子達もキョトンとしている。その意味を知っているのかキンジがツッコミを入れる
「タクト、あいつは『エマ・ワトソン』じゃなくて『エル・ワトソン』だ」
「なん…だと…!?」
クラスの皆はどこぞの新喜劇のようにずっこける。椅子からずり落ちそうになったワトソンは心の内でタクト、ナオトは脅威にならないと判断した。いち早く遠山からアリアを引き離す作戦を実行するのであった。
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バレボールの球が顔面に当たり、キンジは尻もちをつく。翌日の4限目の体育では体育館でバレーをやり、試合をやっているのだがワトソンが狙ってきたかのようにアタックをしてきた。
「ゴメン、トオヤマ。大丈夫かい?」
「…気にするな」
言葉で流すがキンジはムッとしていた。前にアリアがヒルダにやられそうになった時、助けに来てくれたのはよかった。しかし、ワトソンはアリアの婚約者であると名乗り、お前はアリアのパートナーではないと言ってきたのだった。
彼の事だから自分に対する嫌がらせでもしてきているのだろうと感じていた。キンジの予想通り、しばらくラリーが続いたことにワトソンがキンジを狙ってアタックしきた…のだったが、
「キンジ‼お前にいいかっこうをブベラっ!?」
タクトがキンジの前にしゃしゃり出て顔面にボールが当たる。ワトソンが謝り、試合は再会されるのだが何度もキンジを狙うアタックがしゃしゃり出るタクトに全て当たった。
「き、菊池君!?なんで当たるんだよ!?」
「ふっ、成功するまで諦めないのが俺の性だ‼ワトソン、もう一回来い!」
「いや、諦めなくても試合終了なんだけど…」
キンジは呆れてツッコミを入れる。この試合、タクトが体を張ったせいで負けとなった。
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「‥‥」
昼休み、キンジは気が合わないといったくせにワトソンが一緒にお昼にしようと誘い、金欠のキンジは安物のパンを、ワトソンは学食で一番高いステーキ・プレートを購入して食べようとしていたのだったが、向かいの席でカズキとタクトがおにぎりだけ持って座っていた。二人がじーっとステーキを凝視していたのでワトソンは困惑していた。
「えっと…」
「いいよ気にしないで。俺達はこれで十分」
「だな。あれだぞ?かば焼きの臭いでメシを食べる的な…そうだろキンジ?」
「おい、お前らと一緒にすんな」
ワトソンは気になりながらも十字を切り、食前の祈りをしてからステーキをナイフで切る。綺麗な仕草だとキンジは感心し、チラリと見るとカズキとタクトは既に食べ終わっていた。おい、ステーキの臭いを嗅ぎながら食べるんじゃなかったのかとツッコミを入れた。食べ終わったタクトはふと思い出し、ニシシと笑う。
「そういえば、キンジがワトソンを嫉妬してるって女子達が噂してたぞ?」
「遠山が僕を嫉妬?それはよくないな」
「いや、なんで俺が嫉妬してるんだよ」
キンジは少し焦りながら文句を言う。実際の所、ワトソンを警戒している。何を企んでいるのか、自分に何をしようとしているのか危険を感じていた。そんな警戒しているキンジにカズキはゲラゲラと笑う。
「つまるところあれだな。嫉妬している程気にしているってことだから、キンジはワトソンに気があるってことだ‼」
その言葉にキンジは飲んでいた水を吹き、ワトソンは喉を詰まりそうになった。近くで女子達の「やっぱり…‼」「このままではワトソンくんに毒牙がっ」「キンジ×ワトソン…濡れるっ!」とヒソヒソ声が聞こえた。
「き、き、君は何を言うんだ!?」
ワトソンは顔を真っ赤にしてカズキにプンスカと怒り出す。タクトとカズキはジョークだと笑って返すが、食べ終わったワトソンは顔を赤くして席を立って行ってしまった。ワトソンの態度を見ていたキンジはため息をつく。
「…あいつもアリアと同じくガキっぽいところがあるんだな」
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武偵高では2学期でも月に1回、屋内でプールで体育を行う。ワトソンは水泳が苦手なのか、黒い長袖長ズボンのスポーツウェアを着てシャネルのサングラスをかけ見学していた。
「よーしガキ共‼プールを20M往復しろや!サボった奴は射殺だからな‼」
ワトソンの横で蘭豹がスターター代わりにM500を撃ち、どこかへ行ってしまった。教師がほっといていいのかよと言いたいところだったが、鬼の居ぬ間に洗濯になった。生徒たちは横向きにさっと20M往復し自由時間となり適当に泳いだり、プールサイドで駄弁ったりしていた。
「…?」
キンジはワトソンの方を見るとワトソンは泳ぐ男子達を見て顔を赤くしていた。ときには「あわっ」と声を漏らして恥ずかしがったりとその様子に首を傾げる。
「ワトソン、顔が赤いぞ?体調が悪いなら救護科にでも行けよ」
キンジは声を掛けるとワトソンはキンジの胸や肩を見て、バッとすぐに顔を反らす。
「キンジ!これにAKBが載ってるぞ!不知火も来いよ。総選挙しようぜ‼」
蘭豹の授業放棄を予測していたのか武藤がグラビア雑誌を広げて示してきた。不知火もノリがいいのか苦笑いしていた。
「でも3人じゃ投票にならないんじゃないかな?」
「それもそうか。ワトソン、お前もやるか?」
武藤がにこやかにグラビア雑誌を広げてワトソンに見せた。ワトソンはこっちを見ないようにそっぽを向ける。
「そ、そんな本を公共の場で広げるなっ」
そっぽを向いているが耳まで赤く、熱っぽいのかキンジ達が気になりだしたその時、すぐ近くで喧しい声が響いた。
「いくぜ‼ビッグサンダーマウンテンスプラッシュっ‼」
「たっくん‼それだと水飛沫がやばい‼」
声の方を見るとすぐ近くでタクトが助走をつけてジャンプして飛び込みをした。ナオトの注意したとおり、タクトは回転して背中から着水し大きな水飛沫が飛び上がった。
「うおっ!?あぶねっ!?」
「きゃっ…!?」
飛んできた水飛沫に武藤はグラビア雑誌を濡されないようにと避けてしまい、ワトソンにかかってしまった。女の子っぽい声を上げて尻もちをついた。
「たっくん、やりすぎ‼」
「あははは。ワトソン、ごめん!」
タクトはにこやかにワトソンに謝るが、上下のスポーツウェアは濡れてしまいピッチリと張り付けかけていた。ワトソンは「‼」と飛び上がる。
「ぼ、僕は帰る‼」
甲高い声を上げてワトソンは慌ててるかのように微妙にジグザグ走行しながら逃げ出していった。一部始終にタクトはきょとんとしていた。
「…あれ?」
「『あれ?』じゃなくて後で謝らなくちゃ。先にタオル渡してくる」
ナオトはタオルを取ってワトソンの後を追った。素早く着替えて、ワトソンはどこに行ったか探し出す。床にぽつぽつと水滴が落ちておりナオトはそれを辿っていった。辿った先は意外と近く、水泳道具の倉庫だった。
「???」
そこの倉庫は誰も使わないし滅多に人は入ってこない。しかし着替えるならば男子更衣室でもいいのになぜここに入ったのかナオトは疑問に思った。静かに入り、落ちている水滴の後を辿る。ひょっこりと除けばワトソンの後ろ姿がちらりと見えた。
「ま、まさか下着まで濡れるなんて…油断した…」
この声は間違いなくワトソンだ。しかし、ナオトはワトソンの声色になにかと違和感を感じた。その違和感がなんなのか分からない。シュルシュルと何かを外す音が聞こえる中、ナオトは意を決して進みだす。
「ワトソン、濡れてるならタオルを‥‥」
「ふえっ!?」
ナオトはぴしりと固まり、もっていたタオルを落としてしまう。目の前にいる、ナオトを見て驚愕しているワトソンは、黒のズボンは脱いで白いショーツを履いており、足元には包帯のようなバンドが落ちており、濡れてぴっちりとした黒のスポーツウェアから大きすぎず小さすぎず形も左右均等で美しいお椀形の胸の膨らみが見える。
「わ、ワトソン…もしかして…」
わなわなと震えているナオトにワトソンは自分の
「そ、そんな…みられてしまうなんて…」
誰かに見られてしまったことに立ち上がれず、きゅっと自らを抱きしめて涙を流し、震えているワトソンを見てナオトは確信した。
エル・ワトソンは『
だいぶ前にある女子高生が男子に惚れて男装して男子校に入学。とかいう少女漫画があったようななかったような…