カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 作者です。法律ガバガバじゃねえか!?と見返して気付いたけども…緋弾の方もガバガバだし、まあいいよね。
 さて、今回は
 特殊な訓練を受けたフライパン
 少しOTONAのお話し(?)
 イチゴ大福 
 の3本をお送りいたします


37話

 工事中のフェンスをぶち破り、フォードスポーツトラックは工場跡地の土壌を駆け抜けていく。その車を追いかけるようにリンクスAH7は飛んできて対戦車ミサイルを撃ちこんでいった。ケイスケは車を大きくドリフトしていき対戦車ミサイルを躱していく。大振りで避けていく様をラゲッジスペースにいるカズキは目を輝かせて興奮していた。

 

「すっげー‼まるで特撮みたいじゃねえか!」

『さっさとヘリを何とかしやがれ!』

「ミサイルはあと2発…カズキ、狙えるか?」

 

 ヘリを観察していたナオトはカズキにへカートⅡで狙撃できるかどうか確認した。カズキは残りの装填数を確認し首を横に振る。

 

「無理。弾がない。グレネードは?」

「あと2個。1発分は躱すことができるけど、後がねえな…」

 

 後がもう無くなってきたのにそれでも慌てていない二人にワトソンは息を飲む。こんな状況に慣れているのか、それともただ緊張感がなく呑気にしているのか腹の内が読めない。そんな時、何処からともなく喧しい叫び声が遠くから響いてきた。

 

「いやっふぅぅぅぅっ‼」

 

 GSX1300Rに乗ったタクトとセーラがフェンスを飛び越えて工場跡地に入って来た。ヘリに追いかけられているカズキ達を見てタクトは親指を突き立ててポーズを決める。

 

「待たせたなぁ!ヒーローは遅れてやっ(ry」

 

『たっくん‼来るの遅いよ‼』

『作戦通りさっさと来いやハゲ‼』

『…そんなことより早く来てくれ』

 

 折角かっこよく決めようとしたところを3人に遮られてしまった。セーラの予想通り、途中道に迷いかけていた。セーラは自業自得だとしょんぼりするタクトにポンと肩を叩いた。

 

「みてろー‼さすがたっくんって鰯絞めてやる!」

「言わしてやるんじゃ…?」

 

 ムキなったタクトはセーラに言葉を直されつつもRPG-7を構えた。狙っている先は明らかにリンクスAH7。下手したら9条破りになり兼ねないことにセーラは心配気味にタクトを見る。

 

「大丈夫なのか…?」

「ダイジョーブ‼たぶん‼」

 

 全然大丈夫じゃないと言おうとしたが時すでに遅し、タクトはRPG-7の引き金を引き、発射させた。RPG-7の弾頭がテールローターに当たり爆発を起こす。テールローターを失ったリンクスAH7は操縦不能となり錐もみ回転しながら落ちていく。高度を低めで飛行していたのが幸か不幸か、地面を引きずりながら滑っていき、山土にぶつかって止まった。

 

「ど、どうだ?」

「‥‥」

 

 スポーツトラックが止まり、カズキ達は降りて車を盾にして様子を伺っていた。するとリンクスAH7の扉を蹴り開けてモラン大佐が出て来た。髪のセットが乱れ、顔もやつれ気味で、墜落した衝撃がまだ収まっていないのかフラフラしながらもL96A1を構えて怒号を飛ばした。

 

「この…このクソガキ共がぁ!舐めてんじゃねえぞ‼」

 

 怒りと憎しみと気力だけで体を奮わせて、ワトソンに狙いを定めて撃って来た。カズキ達は慌てて車の陰に隠れる。

 

「ちょ、あのおっさんしつこすぎだろ!?」

「…しかもワトソンばっかり狙ってきてる」

「おい、あのおっさんに何か恨みでもかわれてんのか?」

 

 あまりのしつこさにカズキはうんざりし、ケイスケは少し皮肉っぽくワトソンに尋ねた。だいぶ昔、曾お爺様の時から恨まれていることにワトソンは苦笑いして返す。そうしているうちに残りのモラン大佐の部下が駆けつけて来てモラン大佐に加勢しだす。

 

「残りも来やがったな」

「ケイスケ、フラッシュ・バンとスタグレはある?」

 

 ナオトはカズキにAK47を渡しつつ、ケイスケに確認をする。ケイスケはにんまりとして持っている事を見せた。隼でやっと合流できたタクトとセーラにも確認をした。

 

「ケイスケとたっくんが投げたあと、俺とカズキでアタック。ワトソンとセーラは援護」

「短期決戦に持ち込むんだね?任せてよ!」

 

 ワトソンは張り切り、セーラはやっと落ち着いて矢を射ることができるとほっと一息入れる。カズキはAK47を持って自信満々に答えた。

 

「よっしゃ、どこまでもお供しやすぜ隊長‼」

「カズキ、おまえリーダーだからな?」

 

 ケイスケに注意され、チーム―リーダーの姿勢の低さにワトソンとセーラはやや呆れ気味に肩を竦める。そんなことをよそに話を理解していたのかそうでもないのかタクトはすかさずフラッシュ・バンとスタングレネードを投げたのであった。

 

「よーし、援護はませろー。ポイポーイ♪」

「ちょ、たっくん!?早いってば!」

 

 フライングしたタクトにケイスケは慌てて続いて投げ、閃光と爆発音が響いた数秒後にナオトとカズキが乗り出して駆け出す。ナオトが先導して駆け、その後ろからカズキが続く。眩暈とスタンを起こしている敵兵をカズキが撃ち、逃れて二人を狙っている連中をワトソンが狙い撃ち、セーラが射抜く。

 二人の駆ける先、閃光と爆発音から離れていたモラン大佐はL96A1の銃口をナオトの方に向け、脳天を狙いを定めていた。

 

「俺の復讐の邪魔をするなああぁぁっ‼」

 

 ある程度の距離まで来たときに、モラン大佐は引き金を引いた。しかし、ナオトはそれを待っていたかのように()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()背負っている物を持って防いだ。それは穴が開くことなく、カキンと鈍い金属音を響かせた。

 

「ばっ…!?フライパンだと…!?」

 

 フライパンで防いだことにモラン大佐は驚愕していた。その隙を逃さないようにカズキがモラン大佐の足を狙い撃つ。膝を落とすモラン大佐に追い打ちをかけるようフライパンを顔面に思い切り打ち付けた。両膝を突き倒れるモラン大佐に更にカズキとナオトが顔面に向けてダブルキックをして倒れさせた。

 

「ナイスだぜフライパン紳士」

「さっさと援護しろよ」

 

 カズキとナオトは軽く交わしてハイタッチをした。倒れているモラン大佐に手錠をかけたと同時に、他の武偵の車輛、警察庁からのパトカーが大勢駆けつけて来た。やっと応援が来たことに、パトカーのサイレンが響いてきたことにカズキ達は戦いが終わったとほっと一息をついた。

 

「や、やっと終わったー‼」

「もう面倒事は勘弁な」

 

 タクトとケイスケがくたびれたと声を上げる。ワトソンが苦笑いをしてナオトとカズキの方を見た。二人が教務科の人たちにモラン大佐の身柄を引き渡そうとした時、モラン大佐はワトソンの方を睨みつけた。

 

「ワトソン…覚えていろ…‼俺は死ぬまで諦めんぞ‼いつか、いつか必ず、貴様とシャーロックの一族を根絶やしにしてやるからな‼次の代、その先の代も俺が殺してやる‼」

 

 捕まっても尚、復讐に燃えて吠えるモラン大佐にワトソンは臆することもなく、怯むことなく、ただ黙って見つめるだけだった。

 

「厄介な奴に付け狙われてるな」

 

 セーラがワトソンをジト目で見て、肩を竦めていた。ワトソンが彼女がイ・ウーの一員であることは話で聞いていたが、今はただ共に戦ってくれたパーティーとして彼女にふっと笑って返した。

 

「まあね。でも、ワトソン家は厄介事に巻き込まれるのは慣れてるさ」

 

 ワトソンは警察と教務科の人たちに事情聴取されている騒がしくも賑やかな4人組の方を見つめた。

 

__

 

「今回は派手にやらかしてくれたなぁ」

 

 会議室にて、警視庁公安部公安0課の獅堂はため息をついて武偵検事、武偵庁の官僚の方に視線を向けた。官僚たちは表情が硬く、体を縮こまっていた。しかし東京武偵校校長、緑松は無表情で微動だにしなかった。

 

「今までは軽い監視対象であしらってたが…街中でへカートやRPG-7をぶっ放すわグレネード投げまくるわ、相手にミサイルぶっ放されるわ。武偵としてどうなんだ?」

 

 ただでさえ、あの4人組は警視庁や警察庁の胃袋を殴りつけている上に、今回の件はやりすぎではないかと思うくらい派手にやっているのだ。もはや武偵どころか部隊みたいなものになっている。

 

「もうあのクソガキ4人を厳重に監視し、あいつ等が持っているだろう武器を押収…そして武偵免許を剥奪、退学じゃねえのか?」

「…‥‥」

 

 獅堂の威圧に緑松はただただ黙ってお茶を飲むんでいたが、武偵検事と武偵庁の官僚たちはびくびくしながらそうすべきだという雰囲気になっていた。あの4人は一歩道を間違えれば危険になりかねない。あともうひと押しかと獅堂は考え行動しようとした。

 

「獅堂くん。そう決めつけるのはよくないんじゃないかい?」

 

 和らげのある声を聞いて獅堂は嫌そうな顔をして振り向いた。ドアの前に小柄でありながらも和らげのあるおっとりとした雰囲気の七三分けの黒髪で、黒みのかかったスーツを着た男性がにこやかに立っていた。

 

「すまないね。ちょっと移動に時間が掛かってしまったよ」

「…菊池雅人…‼」

 

 獅堂は苦虫を噛み潰したよう顔をしてその男性を睨み付けた。男性は鼻歌を唄いながら椅子にどっしりと座る。

 

「遅れてしまって申し訳ない。菊池財閥の副社長、菊池雅人だ。あ、一応ノリで弁護士もやってる」

 

 菊池財閥。星伽と肩を並べる日本の裏方の重鎮でもあり、唯一こうして口を挟む厄介者である。そして菊池雅人はあの喧しい4人組の一人、菊池タクトの父親である。雅人はにこにこしながら話を進めた。

 

「えーと、それで何の話だっけ?彼らの武偵免許剥奪かい?」

 

 にこにこしている雅人に獅堂は嫌そうにしてぶっきらぼうに返す。

 

「ああ、あのクソガキ共は派手にやってくれたからな。だから監視対象にし(ry」

「君たちは実にバカだなぁ」

 

 こいつはいつもこうやって人の話を遮って来ると獅堂はため息をつく。ここからこいつの長話が始まると思うとうんざりする。

 

「彼らは武装集団、テロリストに勇敢に立ち向かい、そして事件を解決したじゃぁないか」

「で、ですが…被害は甚大ですよ…」

 

 武偵庁の官僚がそう言うと雅人は「お前は何を言っているんだ?」みたいな顔をして席を立った。

 

「被害が甚大?バカ言っちゃいけない。被害は最小限に抑えれたんだ。それともあれかい?人を殺すことを禁じられて、玩具みたいな銃と近接しか役に立たない格闘技を備えた、戦争みたいな戦闘を経験していない武偵達でMINIMIやXM8、ロケランや対戦車ミサイルを備えたヘリを使う殺す気満々の戦闘集団に挑むのかい?」

 

 雅人の話がヒートアップしだしたと気づいた獅堂はため息をついて黙って見続けた。

 

「それとも司法で縛られた警察か公安が挑むのかい?たぶん、沢山の死人が出てただろうねぇ。あ、君達の事だけど。武偵の教務科や機動部隊、公安0課とかいったつよーい人達は()()が出てから動く…それじゃあ遅い遅い。君たちはいっつも後手に回るんだ。後手じゃあだめなんだよ」

 

 雅人は一息ついてお茶を一気飲みする。

 

「彼らを見たまえ。彼らは()()()()9()()()()()()戦った。戦争みたいな武装をした連中を倒すためにはああするしかなかったんだ。そもそも警察も武偵も日本の司法は甘すぎるんだよ。あのような戦闘をしたことがないし…あったとしても隠している。『藍幇』然り、『イ・ウー』然り…」

「雅人、てめえ何が言いたい」

 

 獅堂は殺気を込めて雅人を睨み付けた。溢れんばかりの殺気に官僚たちは度肝を抜かすが雅人は恐れもせずににこにこして返す。

 

「彼らは然るべき対処をした。法律ギリギリを守って戦ったんだ。当たり前の事を守っている彼らにそのような処置はないんじゃないかい?」

 

「武偵法も武偵憲章も守った…貴方の仰ることは最もですね。武偵免許剥奪、退学、留年は免除しましょう…ですが、それ相応の対処は致しますよ」

 

 ずっと黙っていた緑松が口を開いた。獅堂は目を見開く。武偵庁だけではなく、警視庁も警察庁も周りの官僚たちもその通りだと頷いている。公安の監視は軽度、若しくは無しとされ、周囲が完全に菊池雅人の口に乗せられたことに獅堂は舌打ちした。

 

「皆様の寛大な処置、誠にありがとうございます。被害のあった道路、建物は私達菊池財閥が対処いたしましょう。あ、それと今後も監視は優しくお願いいたしますね」

 

 にこやかにこちらに笑顔を見せている雅人に獅堂は悪態をつく。「それでは」とにこやかに会議室から出て行った雅人を獅堂は追いかけて行った。

 

「半沢ぁ‼」

 

 獅堂はかつての監視の対象としていた旧友の名を怒鳴り声を上げて叫んだ。雅人はピタリと歩みを止めてこちらに振り向く。

 

「今は半沢雅人じゃない。菊池雅人だ」

「てめえ、何の真似だ…日本の司法に殴り込みか?それとも俺への復讐か?」

 

 殺気を放って睨み付ける獅堂に雅人はうーんと唸って考えて軽く返す。

 

「そうだね‥‥言うなれば、だいぶ遅めの倍返しだ。まあ昔の僕だったら君への仕返しを考えていたけど…今は愛する妻と愛する息子を守るためにいるよ。子供の為なら親は何だってする」

「はっ、嫌なモンスターペアレントだな」

 

 皮肉をつく獅堂に何のためらいもなく雅人は話を続ける。

 

「言った筈だ。君たちはいつも後手に回るからダメなんだよ。それに?獅堂くんの公安0課だなんて権利はこーーーーーーーーーーっれぽっちもない。いつか人事異動されるがいい」

 

 獅堂は逆に雅人に嫌味を言われて苛立つ。

 

「君たちがタクトやタクトの友達を追い詰めようとも、僕が、更子が、菊池財閥全員が束になって守る。それは覚悟しておくんだね。じゃ、僕は息子にあってデコピンしてくるから失礼するよ」

 

 雅人は手を振って去っていった。口だけ達者な奴が去って獅堂は大きくため息をついた。獅堂の後ろにいて一部始終を見ていた不知火が口を開く。

 

「本当に嵐のような人ですね‥‥」

「ああやって口だけで上り詰めた野郎だからな。不知火、遠山キンジの他にあのクソガキ共の監視を続けてくれ」

 

 獅堂は携帯を開き電話をかけた。そろそろ他の面子が行動に移っている頃合いだとみて連絡を入れた。

 

『もしもし、獅堂さんですか?』

「おお。可鵡韋、他の面子とともにへカートⅡやRPG-7、今件に使われたあいつ等の武器を押収しろ。少しでも証拠になる物をかき集めるんだ」

 

 またしてもあの口八丁手八丁な男に邪魔をされたが、陰で少しずつ証拠となる物を集めていく。しかし、可鵡韋と呼ばれた青年の声は少し戸惑っていた。

 

『し、獅堂さん、それが…先を越されました』

「あ?」

 

 獅堂はピクリと怒りを漂わせた。可鵡韋は獅堂の怒りに押されつつも申し訳なさそうに答える。

 

()()()()()()が指名手配犯であるセバスチャン・モランが逮捕されたと聞いて、いち早く証拠となる武器や物を押収した物を引き取ったようです』

「いくらなんでも速すぎじゃねえか‼」

 

 獅堂は怒号を飛ばす。なぜイギリス政府がいち早くこの情報を聞いて動いたのか分からなかった。雅人から『お前達は後手で遅すぎる』と言われたことを思い出し、苛立つことしかできなかった。

 

__

 

「隠居した身だと言ったくせに、こういう事はするんだ‥‥」

 

 セーラは塩ゆでしたブロッコリーを食べながらジト目で電話をし終えたマイクロフト・ホームズことジョージ神父を見る。

 

「ははは、日本の時代劇でいう『水戸黄門』になった気分だよ」

 

 愉悦な笑顔を見せるジョージ神父にセーラは呆れてため息をついた。あの弟にしてこの兄ありである。

 

「それで、次はどうするの?他の奴等が黙っていないんじゃ?」

 

 今回の件で彼らも遠山キンジと同様注目の的になる。藍幇か、またはヨーロッパにいる連中も動くだろう。今のうちに師団か眷属か決めておくべきなのだがジョージ神父は笑って答えた。

 

「激しい運動をした後はゆっくりと体を休めて次に備える。セーラも今は休むといい」

「‥‥むぅ」

 

 傭兵どころか、完全にジョージ神父の助手、カズキ達のチームになりつつあるとセーラは今後の心配をしながら塩ゆでしたブロッコリーを食べ続けた。

 

__

 

 あの戦いから数日後、ナオトは屋上でまったり天高い秋空を見上げていた。いつも騒がしくしているが久々の静寂に寛いでいた。

 ニュースにもなって、武偵でも話題になったことから免許剝奪されるんじゃないかと焦っていたが、タクトの父親が来てタクトにコブラツイストをかました後、緑松校長が来て菊池財閥とタクトの父親に免じて数週間の謹慎、一定期間の武偵活動禁止となった。

 

 いくらなんでも軽いんじゃと思ったがイギリス政府からへカートⅡやRPG-7といった今事件に使った兵器を押収されたのは痛かった。しかし、その次の日にタクトの母親から『武器が無くちゃ死ぬからこれ使え』と()()こっそり送られてきたのは焦った。手紙の最後に『父ちゃんに感謝しな』と書かれていたので裏でタクトの父親が奮闘していたのがわかり、タクトの父親には本当に感謝している。

 

「‥‥暇」

 

 いくら登校謹慎されているとはいえ、学校にいてもすることは無いのは暇である。白くて丸い雲を見てイチゴ大福が食べたいとぼーっとして考えていると誰かが屋上に入って来たのに気づいた。

 

「…ワトソン?」

「な、ナオト、暇そうにしてるね」

 

 ワトソンは何故か顔を赤くして照れていた。そして何故か女子生徒の制服を着ていた。ナオトは眠たそうな目をぱちくりして首を傾げる。

 

「ぶ、文化祭の準備中にちょっと暇ができたんだ…隣いいかい?」

 

 本当は謹慎中なので他の生徒とは会っていけないのだがどうせ暇なので頷いて返す。ワトソンはナオトの隣に座る。ナオトはイチゴ大福食べたいと考えつつ黙ったまま空を見上げ、ワトソンも黙ったまま、お互い口を開くことなくしばらくの時間が経過した。

 

「…君は命の恩人だ」

 

 どれくらい時間が経ったか分からないが最初にワトソンが口を開いてこちらを見た。

 

「ナオト達がいなかったら…僕は死んでいた。そしてアリアも殺されていたかもしれない」

「『仲間を信じ、仲間を助けよ』、ただそれをやっただけ」

 

 神父から武偵憲章は徹底しておこうね、と言われているのでその通りやったまでである。そんなナオトにワトソンはクスクスと笑う。

 

「ナオト、君は素直だね…その‥えっと…僕は、それがいいんだ」

「???」

 

 突然ワトソンが顔を赤めながら空を見上げてよく分からないことを言ってきたのでナオトは首を傾げる。空を見上げるとイチゴ大福のような雲が浮かんでいるのでもしかしたらとナオトは納得して頷く。

 

「ああ、俺も(イチゴ大福が)好きだ」

「!?」

 

 するとワトソンがこっちを目を丸くして驚いているのでさらによく分からなくなった。イチゴ大福が好き、という女の子っぽいことにワトソンはモジモジしているおだろうとナオトは憶測する。

 

「そ、そうなんだ‥うん…よかった…この気持ち、初めてだよ…」

「(イチゴ大福が)好きなのはいいことだ。俺もそう思う」

 

 それを聞いたワトソンは更に頬を赤らめる。うん、イチゴ大福は酸味と甘みが掛け合わせた美味があることで自分も好きだ。ナオトは眠たそうにしながら頷く。

 

「本当に君は素直すぎるな…でも、君なら、君とならいいと思えて本当によかった…」

 

 ワトソンは余程のイチゴ大福好きだなとナオトは感じた。今度、うまいイチゴ大福を売っている店があるから一緒に買いに行こうかとこれからの予定を考える。その間にワトソンが何か言おうとしているところ、また誰かが屋上に入って来た。

 

「いた!ナオト、こんな所でサボってやがったのか‼」

「お前だけのんびりしてんじゃねーよ‼」

 

 カズキとタクトがブーブーと文句を言いながらやって来たのだった。突然のことでワトソンが慌てふためく。ナオトは眠たそうに文句を垂らす二人を宥めた。

 

「ナオト‼暇だから文化祭のバンドの練習するぞ‼」

「えー…謹慎中じゃないの?」

「謹慎だからいいんだよ‼持ち味を活かせ?」

 

 これ以上軽く返してもこの二人が喧しくなるので仕方なくついて行くことにした。

 

「ワトソン‼俺達の練習を見に来てよ‼」

「えぇっ!?たっくん、僕も!?」

 

「今なら生演奏が見られるぜ!ほら行くぞナオト‼」

「仕方ねえなー‥‥あ、そうだワトソン」

 

 ナオトが思い出したようにワトソンの方に視線を向けた。ワトソンはドキッとして顔を赤くする

 

「…今度、好きなイチゴ大福を食べに行こ」

「うん!‥‥えっ」

 

 咄嗟に頷いてしまったが、ワトソンはキョトンとした。




 
 フラグは折るもの
 でもワトソンちゃんくんはカワイイのでもっと彼女の活躍を見たい…(遠い目)
 

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