カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 かなめが登場して、10巻を何度も読み直しても「ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れない」CDを思い浮かべてしまう…
 キンちゃんさんはフラグ乱立してますし、シカタナイネ


40話

「さあかなめちゃん!一緒に取り掛かるとしよう!」

「はい、タクト先輩‼…ところでどうしてキッチンにいるんですか?」

 

 気合いを入れて答えたものの、かなめは首を傾げる。かなめはタクトとカズキと共に買い物をし、今現在タクト達の自宅のキッチンにいた。エプロンを付け料理する気満々のタクトは自信満々に答えた。

 

「かなめちゃん…やっぱりね、真人間にするには相手の胃袋を制することが一番大事なんだ」

「たっくん、たぶんそれ違う」

 

 同じくエプロンをしているカズキがそっとツッコミをいれるが、かなめは成程と呟きながらメモを取る。

 

「それでタクト先輩、どんな料理を作るんです?」

「ふっふっふ、男が好きなものと言えば…カレーだぜ‼」

 

 タクトはふふんと胸を張りながら先ほどお店で買ったカレールーを掲げた。するとかなめは購入した食材を確認しつつ首を傾げる。

 

「カレーですか?それだったら一番料理法を調べてやった方が…」

「かなめちゃん、一番大事なのは自分の力で自力で作ることさ‼愛情が籠っていればどんな一流シェフの料理よりも勝る‼」

 

 力説のようで力説ではないようなことをカッコつけて語るタクトにかなめは目を輝かせて何度も頷く。そんな二人をカズキは心配そうに見る。

 

「たっくん、質問だけど…なんで食材が肉ばっかりなの?」

「甘いぞカズキ。世の中には『良い』カレーと『悪い』カレーがある…男の子と言えば皆お肉が大好き。だから肉のみのカレーを作るぞ‼」

「おーっ!」

 

 タクト曰く、男なら誰だってやってみたい肉だけのカレー。今ここに男の夢を実現してやろうではないか。タクトはヤル気満々だし、かなめもタクトに続いてのり出したのでカズキももうツッコまずにのることにした。

 

 鍋に水とルーやスパイスを入れつつ、片方のコンロを使って牛肉と鶏肉、豚肉、ラム肉、挽き肉やベーコンやウィンナーをフライパンで順番に炒めつつ鍋へ投入していく。ホールトマトや調味料を入れて味を調整して、こうして男の夢(?)である肉ばっかカレーが完成した。

 

「古に伝わりし肉ばっかカレーの出来上がりだ‼これで男のハートもイチコロだぜ‼」

「すごいです!お兄ちゃんのハートをイチコロどころかお兄ちゃんの胃袋をイチコロですね!」

 

 なんの工夫も入れていない、ただくどいだけのカレーになっているかもしれない。しかし、レシピを見ないで一生懸命に一から作ったことにタクトもかなめも達成感を感じていた。カズキはこのカレーをどうするのかその行く先を憂いていた。かなめは一通りレシピをメモした後、満面の笑みでお辞儀をした。

 

「タクト先輩、カズキ先輩、ありがとうございます!どんな最先端技術でも愛情が勝る…とっても参考になりました!この肉ばっかカレー、自分なりにアレンジを加えて作ってみます!」

 

「頑張ってねかなめちゃん!健闘を祈るぜ」

 

 ドヤ顔するタクトにかなめは再びお辞儀をして手を振って帰っていった。それを見送った二人はさてとと完成している肉カレーを見る。

 

「たっくん…これどうすんの?」

「ケイスケに怒られる前に全部平らげるぞ。もうご飯は炊けてるから」

 

 ああやっぱりとカズキは遠い目をした。タクトはお皿にご飯を盛り、肉カレーをかけていく。4,5人前ほどのこのカレーを二人がかりで食べていき、その日カズキとタクトは胃もたれを起こした。

 

__

 

「キンジ、顔色が悪いようだが何かあったのか?」

 

 1週間後、ケイスケとリサは校庭でキンジにばったり会った。キンジに至っては何やら顔色が悪いように見える。

 

「いや…昨日、かなめが作ったカレーですっごい胃もたれをしててな。美味しかったんだが流石に肉ばかりは…」

「はぁ?お前こんな時に胃を痛めてどうすんだ。この先やっていけなくなるぞ?」

 

 ケイスケはそんなキンジに呆れてため息をつく。この先、かなめのプレッシャーにどんどん押されていくかもしれない。初っ端からこの状況だとすぐにでもやられてしまうだろう。リサは鞄から処方箋を取り出してキンジに渡した。

 

「遠山様、気休めかもしれませんが胃腸に効く漢方薬をご用意いたしました。どうかお使いください」

「あ、ありがとうな。そうだ、ケイスケ。これを返しとくぞ」

 

 キンジは昨日ケイスケが渡した『ヤンデレの妹』のCDを返した。ちゃんと聞いて理解したのだろうかケイスケは念のためキンジに確認をとる。

 

「キンジ…ちゃんと聞いたんだろうな?」

「ああ。とういうか…下手したらマジで俺死ぬのか?」

 

 キンジは冷や汗をかきながら尋ねた。ちゃんと聞いて色々察してくれたようだ。CDの内容とかなめの行動を重ねてみて、行動を一つでも間違えたらどうなるか理解をしたようだ。ケイスケは黙って頷いて答える。

 

「これでわかったろ。回りに気を付けるんだぞ。それでお前なりに防衛線を張ったか?」

「まあな…これから一般校区の公園に行き、風魔に状況を聞く」

 

 それを聞いたケイスケは肩を竦める。風魔とは1年C組の風魔陽菜のことでキンジの後輩であり戦徒の()()()()である。昨日の忠告を聞いていないのかとケイスケが呆れているのを察したキンジは咄嗟に弁解する。

 

「だ、大丈夫だ。かなめに見られないようひと気のない所に行からさ」

 

 風魔を待たせているとキンジは駆け足で去っていった。そんなキンジを見送ったケイスケはため息をつく。甘い、実に甘すぎる。ひと気のいない所にいけば見つからないだろうと油断している所をあいつは、遠山かなめは見てくるだろう。それにキンジのことだから軽々とフラグを立てていき、かなめのヤンデレ度をあげてしまうに違いない。

 

「あいつ…今のうちに手を打たねえと、妹に殺されるな…」

 

 ジャンヌといい、ワトソンといい、そして風魔といい、キンジには男の仲間はいないのかとケイスケは案じた。今すぐにキンジを止めておきたかったのだが、するのをやめた。

 ケイスケはキンジの後を気配を消してついて来ていたかなめの方を見る。かなめは殺気を放ちながらケイスケを睨んでいた。いつケイスケを襲ってくるか分からない、リサが警戒してケイスケの前に立とうとしたがケイスケはそれを止めた。

 

「そう殺気立つなって。俺はあいつの相談役だ。別にお前とキンジとの仲を引き裂くつもりは全然ない」

「‥‥」

 

 ケイスケの話を聞いてもかなめは殺気をビンビンに立てて睨んでいる。そんなかなめを見てケイスケはやれやれとため息をつく。

 

「お前ら兄妹はどうして理解力がねえんだか。お前はあいつの妹なんだろ?何の問題がある?」

 

 それを聞いたかなめは殺気が消えてキョトンとケイスケを見つめる。面食らったようで少し戸惑っていた。

 

「け、ケイスケ先輩は私を止めないんですか…?」

「んなもん知るか。ただあいつがお前を妹と認めていないだけだ。俺はあいつにかなめとどう接するかアドバイスしているだけ。俺達は巻き込まれているだけであいつらがどうなろうと知ったこっちゃねえし」

 

 ケイスケの愚痴混じりの話にかなめは少し驚きつつも、クスリと笑った。

 

「ごめんなさい…私、ケイスケ先輩を警戒していました」

「目的とか理由は知らねえ。ただあいつの浮気性ぐらいは多めに見てやれよ?」

 

 ケイスケは苦笑いしてかなめに言っておいたがかなめはニッコリと満面の笑みで頷く。

 

「大丈夫です!これからお兄ちゃんが約束守ってるかどうか様子を見るだけですから!」

 

 そう言ってかなめは失礼しますとお辞儀をして走って行った。ケイスケはため息をついて肩を竦める。どうして遠山兄妹は人のアドバイスを無視するのか。タクトと戦徒を組んだようだが、変な影響は出ていないかやや心配しながら遠くに見えるかなめを見る。

 

「なあリサ、今度からカウンセリング料もとるか」

 

__

 

 学園島の公園をとぼとぼと歩いている間宮あかりは心配気味だった。遠山かなめの手によって周りの友達の仲がバラバラになり自分は孤立してしまった。かつて戦った敵でもあり、今は同じ武偵校に通う夾竹桃の助言により入院しているアリア先輩や理子先輩に話をした。

 先輩たちは『こういう時は状況に流されないあの4人組を利用すればいい』とアドバイスを聞いて、さっそく4人組の1人である江尾ナオトに協力を昨日から頼んだ。しかし、あかりはちらりと視線を向ける。

 

「‥‥」

 

 肝心のナオトは和菓子屋で買ったイチゴ大福を黙々と食べていた。どうしてこうものんびりできるのか夾竹桃もあかりも不安そうにナオトを見つめる。視線に気づいたのかナオトは首を傾げる。紙袋からイチゴ大福を二つ取り出す。

 

「…食べる?」

「いや、食べないから…」

 

 夾竹桃は呆れながら断る。ナオトは美味しいのにと呟いて残りのイチゴ大福を黙々と食べだす。痺れを切らしたあかりはナオトに訴えかける。

 

「ナオト先輩、どうしてそうのんびりできるんですか!?今もこうして遠山かなめに追い詰められていっちゃうんですよ!?」

 

「…落ち着け。慌てたら負け」

 

 あかりの訴えはあっさりとナオトに返された。ようやく残りのイチゴ大福を食べ終わったナオトは一息ついてあかりの方に視線を向ける。

 

「相手は勝手に自滅するのを待っている。今は動きを潜めるか地盤を固め直すかだ」

「地盤を固め直す…志乃たちの仲を治すことが先決ね。」

 

 ふっと出たナオトのアドバイスを聞いた夾竹桃はこれからやらるべきことを決めた。今、あかりが動けば遠山かなめはよりもっとえげつない手を使ってあかり達のチームワークを傷つけていくだろう。自分はあまり動くなと言われたあかりはそれでも不安だったようで、ナオトは眠たそうに欠伸をしながらベンチに座る。

 

「急がば回れ。あかりは他の味方を入れるべきだ…キンジとか」

「ええっ!?遠山キンジ…先輩ですか…!?」

 

 あかりは少し嫌そうな顔をする。尊敬しているアリア先輩をたぶらかす遠山キンジを味方に入れろと言われてもどうしてもできない。確かに風魔陽菜から聞いた話によると女たらしで不甲斐ない男だけども本気になると強いと聞く。しかし今のキンジは遠山かなめが独占している。

 

「ナオト先輩ー、それは非合理的ですよー」

 

 あかりと夾竹桃は聞き覚えのある声を聞いて咄嗟に身構える。ナオトは一体何事かとキョトンとしていたが自分の頭上に布切れのようなヒラヒラした物が空中に飛んでおり、それがナオトめがけて飛んできたのでナオトは咄嗟にベンチから離れた。

 

「うおっ!?なにこれ!?」

「ナオト先輩‼それは遠山かなめの武器です!」

 

 いきなり飛んできた物に驚くナオトにあかりは叫んで説明する。あかりと夾竹桃は警戒して辺りを見回す。どこに遠山かなめが潜んでいるか、どこから襲ってくるか、息を飲んでいた。しかし、ナオトは飛んでいる物体に目を輝かせていた。

 

「お兄ちゃんと私の仲を邪魔するなら、たとえ先輩でも容赦しませんよ?」

 

 彼女たちの警戒に答えるようにかなめはニコニコしながら現れた。あかりと夾竹桃はぎりっと歯ぎしりするようにかなめを睨み付ける。そんな二人にかなめは養豚場の豚を見るような冷めた目で見つめる。

 

「ふん、ドブネズミのようにしつこいなぁ…どっかでひっそりと死んでるかと思ったら、助っ人を呼んだつもり?やっぱり、二度と私に歯向かわないようにしてや(ry」

「ねえ、これなに?」

 

 かなめの話を遮るようにナオトは目を輝かせながらヒラヒラと飛んでいる物を指さす。いきなり話しかけられたのでかなめはきょどる。

 

「え、えっと…磁気推進繊盾(P・ファイバー)って言いまして、米軍の次世代無人機です」

「UAVか‼俺もこれほしい‼」

 

 まるで欲しいものをねだる子供のようにナオトは物欲しそうに磁気推進繊盾を見ていた。そんな様子にかなめは苦笑いする。

 

「高いですよー。粗品でもだいたい5百万ドルもしますよ?」

「マジか…安くなったら教えて!」

 

 この先端化学兵器がいつ安くなるのか、それは当分先の事になるだろうとかなめは再び苦笑いした。そんな事よりも話が脱線してしまっていることにあかりは気づく。

 

「ナオト先輩‼気を付けてください!」

「あの子が‥‥えーと、誰だっけ?」

 

 話が振出しに戻っていることに、結局ナオトが話を聞いていなかったことにあかりもかなめもずっこける。緊迫した雰囲気が台無しであることに夾竹桃も呆れ果てる。

 

「あ、あははは…ほんとナオト先輩は天然ですね。初めまして、遠山キンジの妹の遠山かなめです」

 

 かなめはニッコリと笑い、ぺこりと頭を下げた。キンジの妹であることを聞いたナオトはポカンとして立ったまま動かなくなった。そんなナオトをあかりとかなめが心配する様に見ていたが、ナオトは納得したのかポンと手を叩いた。

 

「ああ。なんだ、キンジの妹か。どーりで…」

「えっ…?」

 

 ナオトは納得する様に何度も頷いていた。さっきのような相手を警戒している様子が全くなくなり、勝手に自己完結しだすナオトにかなめとあかりは困惑した。

 

「えっと、ナオト先輩は違和感を感じないのですか?それに戦わないんですか?」

「ナオト先輩‼遠山キンジに妹なんかいないんですよ!?」

 

 お兄ちゃんを呼び捨てするなとかなめは殺気を込めてあかりを睨み付ける。一方のナオトは首を傾げていた。

 

「妹なら妹でしょ?それに妹泣かしたらキンジに怒られるし」

 

 まさかの天然に3人は呆気にとられた。しかしかなめは少しムッとした様子でナオトをジト目で睨みだした。

 

「それはいいとして…ナオト先輩、ちょっと失礼ですよー。そう簡単に泣きませんし!」

 

 かなめの掛け声とともに先ほどから浮遊していた磁気推進繊盾が3つ、ナオトに向かって飛んできた。それはナオトの足や腕に巻き付くように飛んでくるがナオトは縫うように躱していく。避けきったと思いきやいつの間にかかなめがナオトの懐まで迫ってきていた。かなめはジャックナイフを取り出して振るおうとした。しかし、咄嗟にその手を止めた。

 

「!?」

 

 かなめは驚いていた。自分のナイフはナオトの首の前に突き立てていたが、それと同時に自分の首の近くにナオトのカーボンナイフが突き立てられていたのだった。驚くかなめにナオトは申し訳なさそうに謝る。

 

「わるい。ビックリするとつい動いてしまうんだ」

「いえ…これは引き分けですね」

 

 謝るナオトにかなめはくすりと微笑む。ジャックナイフをしまい、ぺこりとお辞儀をする。

 

「ナオト先輩、失礼しました。また今度、お手合わせお願いしますね!」

「考えとく…そんなことより仲良くね」

 

 そんなナオトの一言にかなめは苦笑いしながら「善処します」と答えた。しかし、あかりを見る目はいつか仕留めてやると言わんばかりの殺気が込められていた。かなめは再びお辞儀をして去っていった。ナオトは一息ついて一部始終を見ていたあかり達の方を見る。

 

「疲れたし、帰ろっか」

 

 先程の戦いがまるで嘘のように脱力して欠伸をしているナオトを見て夾竹桃は息を飲む。

 

「…速かったわね」

「え?そ、そうだね…遠山かなめの動きは。もっと厳しい戦いになりそうかも」

 

 そう答えるあかりに夾竹桃は首を横に振る。

 

「違うわ…ナオトの振るったナイフの方がかなめより速かったのよ」

 

 それを聞いたあかりはギョッと驚く。夾竹桃が言うにはかなめがナオトの懐まで一気に迫った時、ナオトはびっくりして振ったナイフ、『びっくりナイフ』は既にかなめの首まで迫っていた。かなめ自身もそれに気づいて驚き動きを止めたというのである。

 

「まさかびっくりして先手を取るなんて…凄いのか凄くないのか、本当によく分からないわ」

 

 呆れる夾竹桃にあかりは苦笑いをする。しかし、あかりはナオトの助言通り動くことにした。少しでも自分の力で大事な友達を救えるよう、力を尽くそうと決めたのだった。

 

__

 

「ゆーやけこやけのーばあさんがー♪えんやこらせー♪」

 

 夕陽に照らされながらカズキは即席で自作した歌を歌いながら買い物の帰り道を歩いていた。肉カレーを食べて胃を痛めたタクトはケイスケに自業自得だと言われ、タクトは呻いていたが、自分の胃袋は慣れていたのか胃もたれは全くしなかった。かなめからメールで『肉カレー大成功♡』と返事が来たので今度作るときは是非ともレシピを教えてもらおうと考えた。

 

「そういえば最近学校はギスギスしてんなー…」

 

 カズキはふと思い出す。アリア達は何かと苛立っているし、1年の女子達は何かとピリピリしてるし、近頃の学校はやけに殺気立っている。

 

「まさか‼何かの陰謀んか…たはっ」

 

 噛んでしまった台詞に自分で笑ってしまったことに哀愁を感じてしまった。そんな時、反対方向からかなめが歩いているのが見えた。夕陽に照らされて、なにやら元気がなくしょんぼりとしているの顔がくっきりと見えた。物凄く落ち込んでるようでこのままだと信号無視して横断歩道を歩いてしまい兼ねないと見たカズキは大きな声でかなめを呼んだ。

 

「おおーい‼かーなめちゃーん‼」

 

 カズキの必死の素振りに気づいたかなめは横断歩道の前で立ち止まる。青信号になってから駆けつけてみると、本当に元気がないような顔をしているのに気づく。

 

「カズキ先輩…」

「どしたの?元気ないようだけど」

 

 抑揚のない声をするかなめにカズキは心配しだす。かなめは話すべきかどうか戸惑って俯いていたが顔を上げて口を開く。

 

「…私、お兄ちゃんの妹としてやっていけるのかな…」

 

 かなめが言うにはキンジの帰りが遅いので様子を見に行こうとしたら、SSR棟の屋上でアリアがキンジに妹と同棲していることに問い詰められていた時、キンジが『あんな奴、妹じゃない。自称妹に付き纏われて迷惑している』と話し、それを聞いてかなりショックを受けたというのである。それを聞いたカズキはプンスカと怒り出した。

 

「あいつ、自分の妹になんてこと言いやがるんだ‼」

「それで…お兄ちゃんの妹でいられるのか、不安になってきて…」

 

 俯くかなめにカズキはポンとかなめの肩を軽く叩く。

 

「かなめちゃん、落ち込んだらだめだ。ほら、キンジは高2だろ?恐らくあいつは高2病で、可愛い妹がいると回りから囃し立てられてダスティネーションなんだよ」

「…こ、コンプレックスですか?」

 

 かなめに訂正され、カズキは「そうそれだ‼」深く頷く。

 

「…カズキ先輩、先輩たちは私に違和感を感じないのですか?パっと出の妹を見ておかしいと思わないんですか?」

「おかしいなわけあるか。今いるのは遠山かなめ、遠山キンジの妹だ。だからかなめちゃん、あいつに何言われようが、回りが何言おうが、君はキンジの妹だと胸を張りなよ‼」 

 

 俺達が応援しているぜ!とカズキはニッと笑う。そんなカズキを見たかなめは少し目を潤わせて微笑む。

 

「カズキ先輩…ありがとうございます。私、自信を取り戻せそうです」

「その調子だぜ!そうだかなめちゃん、ストレス解消にゲーセンに行こうぜ‼」

 

 カズキは近くのゲーセンを指さす。かなめは大きく返事をして一緒にゲーセンへ行った。ガンシューティングをしたりレースをしたり、かなめはカズキと一緒に時間を忘れて大いに楽しんだ。この後カズキは帰りが遅いとケイスケに滅茶苦茶怒られた。

 

__

 

『ジーフォース、貴女正気?』

 

 ジーサードの部下であるロカはかなめの言った事に耳を疑った。通信を通してかなめはもう一度答える。

 

「うん、正気だよ。あの4人を仲間にしようよ。それがダメなら同盟とか…」

 

 かなめはカズキ、ケイスケ、ナオト、そしてタクトの写真を見ながら伝えた。それを聞いたロカはため息をついた。

 

『無理よ。先の武装集団の戦いの映像を見たけど…滅茶苦茶じゃないの。サード様も口をあんぐりと開けて呆れていたわ』

「うん。それでもあの人達は強いよ。サードも納得するよ」

 

 かなめもカズキ達がモラン大佐と戦っていた映像を何度も見た。やることは滅茶苦茶だけども他の武偵達と比べたら随分とマシだ。

 

『フォース、そんな事よりも早くミッションを遂行しなさい。時間がないわ』

「え?もうそんなに時間が迫ってるの?」

 

 かなめは首を傾げる。目的である遠山キンジとの接触、そしてミッションの遂行、まだ時間はあるはずだ。

 

『他の米軍特殊部隊が動いたわ。予定の変更よ』

「ちっ…あいつら本当にしつこいなぁ。じゃあさっさとするから…あ、勿論あの4人を連れてってもいいよね?」

 

 それを聞いたロカはため息をつく。サードとフォース、自分達の命を狙う連中が動いているというのにそこまでして欲しいのかと。

 

『…サード様に一応聞いておくわ。それにしても、貴女がそこまで推すなんてね』

 

 ロカはそう言って通信を切った。切り終わったかなめは嬉しそうに微笑む。正直な所、嬉しかったのだ。洗脳でもなく、暗示でもなく、強制でもなく、彼らは自分を当然のようにキンジの妹と見てくれたことが、兄に褒められた時と同じくらい嬉しかったのだ。

 

 かなめは早速、当初の目的であるミッションを速く遂行するよう動いた。




 肉のみのカレー…肉だけとは確かにやってみたいと思うのだけども…すっごく胃もたれしそうですね(白目)

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