カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

41 / 142
 緋弾の世界ではアメリカはじゃんじゃんと先端科学や人工兵器を作り出し、ヨーロッパは魔女連隊だの、MI6だの、バチカンだのハチャメチャなのに…日本ェ…


41話

「ナオトがー夜なべしーててー♪」

「ズッ友編んでくれた―♪」

 

 カズキとタクトは歌いながら学園島の海沿いの道を歩いていた。二人は合わせる気のない歌をそれぞれ歌いつつ最近学校の雰囲気に違和感を感じていた。

 

「たっくん。やっぱりね、前より一層殺伐している気がするんだ」

「え?サツバツナイト?」

 

 タクトはふざけて返す。確かに武偵校は普段と変わらず殺伐としているが、遠山かなめがこの学校に来てから特に女子の間がより殺伐としている。強いて言うならアリア達『バスカビール』の女子と周りの女子、1年の女子の間がそんな雰囲気を漂わせる。

 

「カズキ、あれだよ。もしかしたら女子の間で総選挙が行われてるんだぜ!それは苛烈極まる熾烈な戦いさ!」

「わお、じゃあ俺は誰に1票入れようかな!」

 

 二人はふざけ合いながら深く考えることをやめた。もし総選挙をやっているのなら自分達はチームメイトのリサに清き一票を入れる予定だ。そう笑いあっていると、歩いている先にかなめがいるのに気づいた。その様子は落ち込んでおり、元気が無くてしょんぼりとしていた。カズキ達は気になってかなめに声を掛ける。

 

「おーい、かなめちゃん!」

「どうしたんだ!?元気がないぞ?」

 

 そんな二人に気づいたかなめは視線を向ける。余程ショックな事があったのか物凄く落ち込んでいるように見える。

 

「タクト先輩、カズキ先輩…」

「何か嫌な事でもあったの?」

「よかったら相談にのるぜ!俺達ソウルメイトだもんな!」

 

 かなめはドヤ顔するカズキとタクトの顔をじっと見つめると、ポロポロと涙をこぼし声をあげて泣き出した。

 

「泣いた!?たっくんが泣かしたー!」

「ばっ、泣かしたのはカズキだろ!その顎しまえよ!」

「ふぇぇ…お兄ちゃんが、お兄ちゃんが約束破ったー!」

 

 二人がどっちが泣かしたのか喧嘩する前にかなめは泣きながら事情を話した。かなめが言うにはキンジはかなめに『アリア達に手を出すな』と言い、かなめはその約束を守る代わりに『他の女を触ったり、抱きしめたりしないで』と約束しキンジは承諾した。

 かなめはキンジの約束を守り続けたのだが、一方のキンジはかなめに見つからないようにひと気のない場所で他の女を触ったり抱きしめたりしていたというのであった。それを聞いたカズキとタクトはプンスカと怒り出す。

 

「はぁ!?あいつクズか‼」

「何自分だけイチャコラして…リア充爆発しろ‼」

「グスッ…一度だけなら許してあげたのに…お兄ちゃん、約束を3回も破ったんですよ‼」

 

 約束をしっかり守っている健気な妹をよそにキンジは3回も他の女とオサワリをしていたというのであった。二人は更に怒りだす。

 

「あの野郎、マジ許さねえ‼」

「私は約束を守ってるのに、お兄ちゃんは約束を破ってて…私、どうしたらいいのか胸が痛くて…」

 

「分かるよかなめちゃん。我慢しなくいいんだ」

「タクト先輩…?」

 

 タクトはポンポンとかなめの頭を撫でてあげた。かなめは泣き止み、タクトを見つめて首を傾げる。

 

「お婆ちゃんが言ってた、『女の約束を破る野郎は半殺しにしてしまえ』って」

「タクト先輩のお婆さん、物騒すぎるんですけど!?」

 

 それを聞いたかなめは涙がぶっ飛ぶくらいぎょっとする。驚くかなめを落ち着かせながらタクトは話を続ける。

 

「お婆ちゃんはね、『女の約束を破って他の女とイチャコラする男はその女の気持ちを踏みにじっている。でもだからと言って泣き寝入りしちゃいけない。そんな野郎は自分の気持ちを分からせるまで灸をすえてやらないとわからない』…って、キャバクラ帰りのお爺ちゃんを殴りながら言ってた」

 

「たっくん、途中までよかったのに最後で台無しだよ」

「確かに最後でなんか台無しですね…」

 

 いいこと言ったのに何だか最後で台無しになったとカズキとかなめはツッコミを入れる。そんな事は気にせずタクトはポンとかなめの肩に手を添える。

 

「だからかなめちゃん、ガツンと言ってやりなよ!あの分からず屋は灸をすえないと反省しないからさ!」

「そうだなかなめちゃん!あの女たらしを懲らしめちゃいな‼」

 

 応援してくれる二人を見てかなめは次第に元気になっていった。落ち込んでいる雰囲気が消え、笑顔でカズキ達を見つめる。

 

「タクト先輩…私、やってみます!お兄ちゃんにお灸を据えてやります‼」

「いいぞかなめちゃん‼その調子だぜ‼」

 

 元気になったかなめにカズキとタクトはのりだす。

 

「かなめちゃん、ユー、やっちゃいなよ!」

「はい♪ヤっちゃいます!」

 

 うん?とカズキはピタリと止まる。タクトとかなめの間で『やる』という意味が違っているように聞こえた。よからぬ方向に行ってしまっているのではとカズキは次第に心配になってきた。

 

「タクト先輩、カズキ先輩!ありがとうございました!私、頑張りますね!」

「頑張ってね!成果を期待してるぜ‼」

 

 かなめは笑顔でお辞儀をして手を振って走り去っていった。見送ったカズキとタクトは手を振りながら、これでキンジの悪い癖が直ればいいなと期待をした。そんな時、後ろからものすごい勢いでこちらに走って来る音が聞こえて来た。

 

「なにしてくれんのお前えええええっ!?」

 

 何処からともなくケイスケが駆けつけて来てタクトにドロップキックをお見舞いした。背後から蹴られたタクトは奇声をあげながら吹っ飛んでいく。

 

「キンジから最近、かなめの様子がおかしいと聞いて気になって見てたら…原因お前か!?」

「何言ってんだケイスケ、俺の教えの賜物だぜ」

 

 その賜物のせいで変になってるんだよ‼とケイスケは怒りながらタクトに頭突きをお見舞いした。のた打ち回るタクトをこっそり後を付けていたナオトとあかりも見ていた。

 

「あ、あの…遠山キンジ先輩はこの後どうなるんですか…?」

 

 おどおどしているあかりにナオトは他人事かのように眠たそうに答えた。

 

「よければ半分死ぬ。悪かったら死ぬ半分」

「結局死にかけなんですね!?よく分からないです!?」

「まあどちらにしろ、これでキンジは反省してくれるだろー」

 

 カズキは笑いながらこのひと悶着を終わらせようと強引に閉めようとした。そういう問題じゃないとケイスケはため息をつく。

 

「たっくんの一言でキンジの生死が分けられることになったが…あいつが約束を破ったのもいけないけどな」

 

 あれほどヤンデレの妹には気を付けろとアドバイスをしてやったのに、理解をしていなかったキンジにも原因がある。ケイスケは仕方ないと愚痴をこぼしながらキンジに『今すぐ逃げろ。若しくは今すぐかなめに謝れ』とメールをしてやった。

 

__

 

 それから数日が経った。キンジから『胃が痛い』というメールが来てからケイスケの医務室の押しかける事はなくなり、更にタクト達にかなめが接触するということもなくなった。やっと身内だけでできるようになったとケイスケはほっとひと息つく。

 カズキの感じていた女子生徒間だけの殺伐とした雰囲気も消え、いつものような武偵校の雰囲気へと戻っていったのも確かに感じ取れる。周りを巻き込んだごちゃごちゃした争いがやっと終わったとケイスケは肩の荷が下ろされたように背伸びをしつつ医務室へと入っていった。

 

「ケイスケ。来るの遅いぞー!」

「あ、ケイスケ先輩‼医務室お借りしてますね♪」

 

 前言撤回である。医務室にはカズキ達、いつもの面子の他に、キンジやアリア達『バスカビール』の面子と間宮あかり、そしてかなめがいた。医務室のベッドが部屋の隅に片づけられ、部屋のど真ん中にテーブルと食材と鍋が置かれていた。

 

「いや‥‥何してんだお前ら?」

「見て分からないの?鍋パーティーに決まってるじゃない」

「しかもただの鍋じゃないぞ…チーズフォンデュだぜ!」

 

 アリアとカズキが当たり前のように答えるのでケイスケはキッとキンジの方に睨みを付ける。ケイスケの怒りの睨みを察したキンジは申し訳なさそうに視線を逸らす。

 

「いや、あのな…俺は止めようとしたんだぞ?なのにタクト達が…」

「つべこべ言わず、事情を話せやクソが」

「ケイスケ先輩ー、あまりお兄ちゃんに怒らないでくださいよー」

 

 にこにこしながらかなめはケイスケを宥めて事情を話した。かなめは色々あった後、アリアやあかり達と仲直りしたという。それを聞いたタクトが「それじゃあ親睦を深めて何かしようぜ!」と言い出し、その結果医務室で鍋パをすることになったという。タクトは笑いながらケイスケに肩をかける。

 

「ほらよく言うじゃんか?鍋食って地固まるって」

「またお前かよぉっ‼」

 

 ケイスケはそれを言うなら雨降って地固まるだとツッコミを入れつつアッパーカットをお見舞いした。タクトは再び奇声をあげて倒れていく。

 

「ほんとたっくんって盛り上げ上手だよねー。まさか医務室を貸し切りにしてくれるなんてさ」

「ケイスケ君、ごめんなさい!ちゃ、ちゃんと片付けもするからね!」

 

 理子はニヤニヤし、白雪は申し訳ないと何度も謝ってきた。レキとナオトは止めもせずに黙々と食べ続けるし、カズキはクソ歌を歌いだすわでケイスケのイライラが最高潮に達した。ケイスケの怒りを察しているのはキンジとあかりとリサの常識人ぐらいだった。ケイスケも最初はかなめが嬉しそうにしているからまあ良しとしようと思ったのだが、アリアとタクトがドヤ顔をしだした。

 

「まあ、感謝しなさい。こうやってなんとか丸く収めたんだし、治療費を少し安くしなさいよ」

「ケイスケー、出遅れたからって拗ねちゃダメだぞ☆」

 

 プッツンとケイスケの堪忍袋の緒が切れる。それを察したキンジとあかりが青ざめ、ナオトとレキがこっそりと鍋と食材を持って逃げ出し、カズキはリサとかなめを連れて猛ダッシュで廊下へ出た。

 

「お前ら…しばくぞおおおおおっ‼」

 

 武偵校内に行き渡るくらい怒声が響いた。その後タクトとアリア、そして逃げ切れなかったキンジ達は正座をさせられケイスケに滅茶苦茶説教をされた。そしてケイスケの医務室には『鍋禁止』とでかでかと張り紙が張られた。

 

__

 

 それから更に数日が経過した。間宮あかりは志乃やライカ達と帰り道を歩いていた。かなめは女子生徒たちにかけていた暗示を解き、自分が志乃たちの仲を引き裂いたことを志乃達に深く頭を下げて謝った。志乃達は最初は警戒していたが、あかりやナオト達の説得もあってかなめを許し、そして仲直りすることができた。

 

「しっかし、あかりも災難だったな。ケイスケ先輩の逆鱗に触れるなんてさ」

 

火野ライカは苦笑いしながらあかりを励ましてあげた。あかりはケイスケの般若のような怒りのオーラを思い出し項垂れる。

 

「あれは本当に怖かったー…まさかの4時間も正座をさせられての説教だよ」

 

 あかりの遠い眼差しを見てライカ達はどれだけ大変だったか察する。1年の間でも怒らしてはいけない先輩と恐れられているのであった。志乃はそれを聞いてぎりぃっと歯ぎしりをする

 

「あかりちゃんを正座させて説教だなんて…うらやま(ry…許せん…!」

「あー、志乃?やめとけ」

 

 志乃を宥めつつ苦笑いするライカにあかりはくすっと笑う。またこうしていつもの仲に戻れたことが、一緒にいられることが嬉しかった。かなめという新しい友達もでき、楽しい日常になることが嬉しくてたまらない。

 

「あれ?…あそこに歩いてるのってかなめじゃないか?」

 

 そんな時、ライカは人混みの中を歩いているかなめに気づいた。いつもならキンジと一緒にいるはずなのだがこの日はただ1人で歩いており、恐らく端子振動刀を入れているに違いない竹刀袋を背負ってキョロキョロと周りを見た後、ひと気のない路地へと入っていった。

 

「かなめちゃん、どうしたんだろう…?」

「あかりちゃん、後を追ってみますか?」

 

 志乃に尋ねられ、あかりは無言のまま頷きかなめの後をこっそりと追いかけて行った。かなめは路地を歩いて行き、どんどんひと気のない場所へと足を進んでいく。一体どうしたのか、あかり達は気になりつつも後を追う。気づけば廃工場へと歩みを進んでいた。どこまで行くのか伺っていた時、かなめは大きくため息をついた。

 

「…ねえ、一体どこまで後をつけるつもり?いい加減出てきたら?」

 

 じろりとかなめがあたりに睨みをかける。かなめは殺気を放ち当たりを見回す。ビクリとあかり達は自分たちの尾行がばれたかと驚き、勝手についてきたことを謝ろうと出ようとした。一歩出る寸前、かなめの周りにすっと、黒の迷彩柄の服にボディーアーマーやプロテクトを付け、HK416やM231を構えたフルフェイスの武装集団が出てきた。

 

「いやー、すごいね!さっすが人工天才(ジニオン)‼気づかなかったら一斉掃射しようと思ってたんだよー」

 

 その武装集団の中に白衣を着たぼさぼさの茶髪で眼鏡をかけた細身の男性が拍手をしながら歩いてきた。かなめは警戒の手を緩めず睨み付ける。

 

「貴方…アメリカの特殊部隊ね?ジーサードを追いかけてここまで来たの?」

 

「そう怯えないで。初めまして、ジーフォース。僕はアメリカの政府機関、ロスアラモス・エリートの一人、えーと確か名前は…なんだっけ?」

 

 男はにこにこしながら部下である兵士たちに問いかける。兵士たちはどよどよしだすが、近くにいた一人が男に耳打ちする。

 

「ああ‼そうだったね!僕は博士。ジキル博士と好きなように呼びたまえ」

 

 ジキル博士はそう名乗り、にこにことかなめに握手の手を差し伸べた。しかしかなめはその手を叩き、背負っている武器に手をかける。兵士たちが一斉に銃を構え撃とうとしたが「ノンノンノン」とジキル博士に止められた。

 

「だめだよー。まずは仲良くお話をしなくちゃ」

「何が目的なの?あたし?ジーサード?それとも…お兄ちゃん?」

 

 警戒しているかなめにジキル博士はポケットからチュッパチャプスを取り出し咥えると、にっこりと笑って大きく頷いた。

 

「そうだね。最初はジーサードか、遠山キンジを捕獲しようと決めてたんだけど、やっぱり君を連れて行った方が早いと思ったんだ!君を攫えば奴らも来る。それを捕獲すれば一石二鳥‼どう?すごいでしょ!」

 

 まるで子供の様にはしゃぐジキル博士にかなめは殺気を放つ。この男にキンジを、兄を近づけさせてはいけないと決めた。

 

「ただの兵隊が人工天才に敵うと思ってるの?」

 

 まずは目の前にいる男を倒すことに専念した。背負っている武器を握り、今にでも斬りかかろうとした時、子供のようにはしゃいでいたジキル博士が突然、真面目な顔になって見つめてきた。

 

「そうだね、その通りだよ。()()()()()()()()君ら『遠山』にコンタクトをとると思ってたかい?」

 

 ジキル博士はポケットから子供の玩具の様な銃を取り出しこちらに銃口を向けた。かなめは咄嗟に後ろに下がって躱そうとした。その時、首筋に何かが刺さる感触がした。どこからか吹き矢で撃ってきたのだ。毒でも仕込まれたのかとかなめは焦りだす。突然、体が熱くなり、手や足の力が抜けへたりと座り込んでしまった。

 

「ビックリした?ビックリしたでしょ‼これはただの玩具なんだよね!」

 

 ジキル博士は悪戯した子供の様に笑ってはしゃぐ。玩具をしまってかなめに近づいた。

 

「よし、お前達は近づくな。下手こくと彼女を『()()()()()()()()()』よ?」 

 

 その一言を聞いたかなめはビクリと反応した。かなめはわなわなと震え、ジキル博士を見上げる。

 

「なんで…?なんで、貴方が()()()()()()…」

 

 ジキル博士はいじめっ子の子供の様に笑い、かなめの首筋に刺さっている針をとった。

 

HSS(ヒステリア・サヴァン・シンドローム)…それはある人間にある特異体質のことで、性的興奮をすることによりある分泌物が一定の量を分泌すると神経伝達物質を媒介し中枢神経をの活動を強化、人離れしたスーパーマンになれるんだ。そして、今君に打ち込んだのはβエンドルフィンと同じ成分を含む所謂『薬』。君は今、『ヒステリアモード』になっている。男は『女を守れる強い男』になる」

 

 ビクビクと震えだすかなめにジキル博士はゲスな笑みでそっとかなめの耳に囁く。

 

「女のHSSはその逆、『男に守られる弱い女』になる…HSSの研究をしていたのはサラ博士だけと思っていたかい?」

「!?」

 

 女のHSSはどうなるか知っていることとサラ博士の名を知っているジキル博士にかなめは更に震えだす。すでに怯えきっているかなめにジキル博士は無邪気に笑う。

 

「安心したまえ。使い物にならないと処分する連中とは違って僕はちゃんと利用するよ。そうだねー…種馬とか?」

 

 ジキル博士は兵士たちに連れて行けと指示を出した。兵士たちはなるべくかなめに目を合わせないように連れて行こうとかなめの腕をつかむ。

 

「待ちなさい!」

「武偵です!その子を放しなさい!」

 

 かなめが危険な状態になっていると状況を理解したあかり達が飛び出して銃と刀を構えた。兵士たちは一斉に銃を構えたが再びジキル博士に止められる。ジキル博士はにこにことあかり達の前に近づいた。

 

「日本の武偵かい?これは僕達アメリカの問題だ。国際問題になるし、君達はしゃしゃり出ないことをお勧めするよ?」

 

「何言ってやがる!お前らがしてんのは人攫いだろうが‼」

「かなめちゃんは私の友達です!かなめちゃんに手を出さないで‼」

 

 ライカとあかりはジキル博士を睨み付ける。ジキル博士はうーんと唸りながら考えると無邪気な子供のように首を傾げた。

 

「君たちは…実験から逃げ出した危険なモルモットを処分しないで飼育するのかい?」

 

 かなめの事をモルモットと聞いてあかり達の怒りが爆発した。ジキル博士に向けて志乃は峰打ちを、ライカが殴りかかろうとした。その瞬間、あかりは物凄い殺気を感じた。

 

「志乃ちゃん、ライカちゃん、危ないっ‼」

 

 あかりは咄嗟に二人を後ろへ押し倒す。するとあかりの頭上を熱い一閃が通り過ぎた。ジキル博士は後ろへ下がっており、目の前には死んだ魚の様な目をした黒のオールバックの髪型をしたサラリーマン姿の男がいた。その男の手には赤熱した日本刀を模した刀が握られていた。

 

「…ちびガキ。自分の背の低さで助かったようだな」

 

 自分はチビじゃないとあかりは男を睨み付ける。ジキル博士はにこにこしながら男を宥める。

 

「だめだよ『ハンター』。殺したら余計面倒事になる。『チャージャー』や『タンク』、そして僕の『お気に入り』だって我慢してるんだよ?」

「博士は相手を怒らせすぎです…ここにガキ共はいなかった事にすればいいのでは?」

 

 それを聞いたジキル博士は「それいい考えだね!」と手を叩く。『ハンター』と呼ばれた男は武器を構え、兵士たちに合図をおくる。この男は強い、あかりはそう自覚する。志乃やライカを守りつつ連中を倒し、かなめを救えるか焦りだす。

 

「あかりちゃん!みんな逃げて‼」

 

 かなめの悲痛な叫びが届く。あかりは自分が傷つこうとも必ず助けると決め一歩前に出す。その時、あかり達の後ろから強い風が吹き、弓矢がハンターめがけて飛んできた。ハンターは赤熱した刀で打ち払い後ろへ下がる。

 

「ちっ、余計なガキ共も来やがったか…」

 

 あかり達は振り向くとそこには夾竹桃とセーラがいた。セーラが今度はジキル博士めがけて弓矢を射る。1発目はジキル博士を掠め、2発目はハンターがジキル博士の前に立ち打ち払う。

 

「夾竹桃!?それと…誰!?」

 

 ライカが驚くが、夾竹桃はすかさず持っていた煙玉をハンターめがけて投げつけた。バフンと白い煙が巻き上がる。

 

「イ・ウーか…!博士の安全の確保、そしてジーフォースを連れて速やかに去るぞ‼」

「そうだね!早くジーサードが来るよう準備しなくっちゃ!みんなバイバーイ‼」

 

 博士のはしゃぐ声が聞こえたと同時にガタガタと慌ただしい音がする。相手が逃げるとライカが追いかけようとしたが夾竹桃に腕を掴まれ止められた。

 

「なんで止めやがる‼早く追いかけないとかなめが…!」

「あなた、殺されるわよ。武装した集団にその武器で勝てると思って?」

 

 夾竹桃の一言にあかり達は言い返せなかった。もしこのまま3人だけで戦闘になっていたら、一斉掃射されてハチの巣になって殺されていただろう。しかしあかりはそれでもかなめを助けたかった。

 

「でも、かなめちゃんが‥‥っ!」

 

 あかりの悲痛な声に夾竹桃は頷き、セーラの方に視線を向ける。

 

「セーラ、ちゃんとつけた?」

 

 セーラは物静かに頷き電子機器を見せた。

 

「博士とサラリーマン、それと兵士の一人に探知機を付けた」

「じゃあ早く遠山先輩たちに知らせなくちゃ‼」

 

 早速動こうとするあかりに夾竹桃は止めた。

 

「確かにいい手だわ…でも、もう少し手を加えた方がいいわ」

「え?それって…」

 

 夾竹桃の一言にあかりはきょとんとする。夾竹桃はセーラの方に視線を向ける。ジト目で見ていたセーラが口を開く。

 

「40秒で支度できるバカ達なら知ってる」




 体育祭をやろうと思ったけども、4人が『リア充爆発しろ』と叫んで大暴れするしかなかったのでカット(遠い目)
 HSSに関してはちょっと間違ってるかもしれません。すまぬ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。