カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 やがて魔剱のアリスベルは既に終了となっておりますが、緋弾のアリアの方で静刃と鵺がひょっこりと出てたり、繋がっている事には嬉しいです…魔剱の話の方も好きでしたので…


49話

「いやっふぅぅぅぅっ‼ふかふかのソファーだー‼」

 

 ドイツがラウタ―タール、静かでのどかな町村の端にある草原と森林が広がる丘の上に建っているジョージ神父の別荘にて、カズキ達は寛いでいた。タクトは広いリビングにあるふかふかのソファーにダイブして遊んでいた。ジャンケンで負けて荷物持ちをしていたカズキはくたびれたように荷物を置いて座り込む。

 

「あ゛ーもう疲れた」

「もうひと頑張りだ。神父、銃器の調整と準備がしたいんだけど…」

 

 ナオトはくたびれているカズキを起こさせ、ジョージ神父に尋ねた。今回、カズキ達は手持ちの銃器はハンドガンだけにしていた。AK-47やSR25やグレネードといったものだと警戒されてしまう。修学旅行の準備をしている間にジョージ神父に銃器等の用意を頼んでおいたのだった。ジョージ神父はにこやかに頷いた。

 

「それなら地下の部屋に用意してある。好きなのを使うといい」

「わかった…カズキ、ほらいくぞ」

「えぇー…ピザ食べたーい」

 

「カズキ様、それでしたらリサが腕によりをかけてドイツ料理をご用意いたしますね!ドイツにはソーセージの他にアイスバインやマウルタッシェ等美味しい料理がありますよ」

 

 リサはフンスと張り切りながらキッチンへと向かい、カズキは「早く食べたーい」と叫びつつ、ナオトに引きずられながら地下室へと向かった。一方でケイスケは荷物を背負って神父に尋ねる。

 

「なあ、俺が頼んでおいたものは用意してくれてんのか?航空での入国審査とかだと間違えられて面倒事になるから持ってきてないからさ」

「勿論だとも。これで何か作るのかい?」

 

 ジョージ神父はケイスケに黒いアタッシュケースを渡した。開けて中身を確認したケイスケは頷く。

 

「戦役でヨーロッパは混戦中と聞いたし、無いよりかはマシだと思ってさ。それと風通しの良い部屋を一室借りたいんだが…」

「それならば二階に空き部屋がある。そこを使うといいよ」

 

「…その前に一つ、伝えとかないといけない事がある」

 

 セーラはケイスケが部屋に移動する前に、伝えてるべきことを話そうとした。数日前に眷属の宿営地であるノイエアーネンエルベ城に『妖刕』と『魔剱』、そして他二人の計4人が加わったこと、特に『妖刕』と『魔釼』の力と能力が強く、手強いらしいという情報をジョージ神父とケイスケに説明した。

 

「おいマジかよ。また更に面倒な事になってんな」

「ふむ‥‥成程ね」

 

 ケイスケは面倒くさそうに溜息をつき、ジョージ神父は成程と頷いて深く考えていた。セーラも実際に見たことはないのだが、その後に地元民の目撃情報、証言を聞いて情報を整理した。

 

「イ・ウーには星占術で予測する者がいる。たぶんお前達のドイツ入りも予測はしているだろうし、魔女連隊も既にお前達の事には気づいてるはずだ」

「もしその『妖刕』達を雇ったとすれば…いつ来てもおかしくない、か」

 

 連中がカズキ達のドイツ入りを予測または気づいているのならば、後を付けていることもあるしその雇った奴等を使って襲い掛かって来るだろう。ケイスケの考えにセーラは頷く。

 

「お前達に高い報酬を付けているならすぐに動くはず。来るとすれば…夜間だと思う」

「そうとくれば…たっくん!」

 

「あいー?」

 

 ケイスケはソファーですでに寛いでいるタクトを呼び起こした。タクトはすることがないのか欠伸をしながらケイスケの方へ歩み寄る。

 

「たっくん、暇なら迎撃に備えて準備をしてくれ」

「えー、俺は今から暇をする仕事をしようとしてたのによ」

 

 そんな暇があるなら動けとケイスケに小突かれる。セーラもその通りだと呆れてため息をついた。

 

「セーラやジョージ神父に手伝ってもらえ。後で俺達も用事が済めばさっさと取り掛かるからよ」

「しょうがないなー。で、なにをやんの?」

 

 迎撃の準備をするというならば何をするのかセーラは気になっていた。この4人のことだから少し嫌な予感がする。ケイスケはにやりと笑って答えた。

 

「辺りは草原に森もある…あとはわかるよな?」

「おぉっ?ジャングルポッケだな!任せておけ‼神父、手伝ってくださいぜ‼」

 

 それを聞いたタクトは目を輝かせてジョージ神父の手を引っ張って外へと向かって行った。一体何をするのかセーラは首を傾げていたがケイスケはそれ以上は言わなかった。

 

「あとはたっくんの指示を聞いときゃ大体わかる。俺はリサとカズキとナオトに伝えたら作業に移るから」

 

 ケイスケは荷物とアタッシュケースを持つとすぐに行ってしまった。セーラはこれからやる事、起こる事はハチャメチャな事になるだろうと感じていた。

 

__

 

 ラウタ―タールの森の夜は思った以上に暗い。街から外れると一気に灯りも少なり、暗闇が広がる。静刃達は草原を避け、森の中を通って標的達がいるであろうジョージ神父の別荘へと向かって行っていた。

 

「見るからに警戒はされてねえみたいだな」

「静刃、あまり油断はするな。武偵とはいえ前回闘った黒服やシスターの連中とは違う」

 

 貘は静刃を軽く注意する。昨日、カツェやパトラが言っていたことが気になっていた。この4人について、カツェが言うには『宣戦会議で堂々と鍋をする馬鹿』と言い、パトラは『カナが言うにはかなりメチャクチャする』と言っていた。情報が少なく、戦闘力は未知数であるが、アリスベルは首を横に振る。

 

「ですが…私達がいた2013年、2010年の時代には彼らの名は聞いたことがありません」

「確かにそうだ。だがもしかしたら私達がただ知らないだけなのかもしれん」

 

 前に来た時代で彼らが何処かで関連しているのかもしれない。ただそれは可能性の話であり、確信はない。だが彼らは武偵であり、異能者ではないだろう。静刃は早くもといた時代に戻りたい。さっさと標的を捕えて報酬金を貰い、眷属の連中から離れて直ぐにでも戻る準備をしたかった。

 

「…しかし、やけに静かだな」

 

 ジョージ神父の別荘である屋敷からの光を目指して森の中を進んでいるが、静刃の『バーミリオンの瞳』発動させ右目が緋色に光る。辺りを見回しても表示(ガイド)には警戒信号(アラート)目標方向指示(ターゲットロケーター)もつかない。本当に警戒していないようで、静刃は標的は手強い敵でもないと判断した。しかし、ずっとしかめっ面をしていた鵺が呆れたように静刃とアリスベルを見ていた。

 

「はあ…お前達、油断しすぎだじょ。足元を既に掬われているじょ」

 

 鵺の言葉を聞いて静刃達は歩みを止めて振り向いた。一体どういうことなのか聞こうと、静刃が一歩踏んだ時だった。足にワイヤーが引っかかり、すぐ近くでカラカラとロープにつるされた木の板がぶつかり合い乾いた音を鳴らす。鵺はやっちまったなと言わんばかりにため息をつく。

 

「道にやけに無造作に枝が沢山落ちていたり、あのような仕掛けをされていることに気付かなかったのか?連中に耳がいい奴がいるじょ。奴らに場所がばれたじょ」

 

__

 

「…ケイスケ様、こちらから北西方角、900m先に鳴りました」

 

 屋上にてぴょこんと犬耳をぴこぴこしながらリサはケイスケに伝えた。ケイスケとセーラは地図を広げ場所を確認し、双眼鏡タイプの暗視スコープで探る。

 

「マジでいたな…リサ、そのまま耳と鼻で探ってくれ」

 

 ケイスケはヘカートⅡのリロードをした後、無線をつなげて辺りでスタンバっている面子に報告をする。

 

「こちら般若…別荘から北西900m『妖刕』と『魔剱』あとその他2名を確認。ぼろぞうきんぐ、玉ねぎ、アルパカ、ファーストアタックをかけるぞ」

 

『ぶろっちょ、こちらぼろぞうきんぐ。リロードおっけいだぜ!アルパカ、正面から突撃。玉ねぎはタイミングを合わせ…えーとびっくりさせろ‼』

『…それを言うなら奇襲だろ』

『おっけーい‼魔剱には負けんぞー!』

 

 無線を通しても喧しい連中だとセーラは肩を竦めて苦笑いをする。妖刕達はおそらく彼らをなめているだろう。なめていると痛い目を見ると少し敵に同情してしまった。ケイスケは無線を続けヘカートⅡのスコープを覗いた。

 

「おし…まずは妖刕からだ」

『りょー『わか『俺は無敵だ』った』かい』

「返事ぐらい統一しなよ…」

 

 

 鵺の言った通り、音が鳴った数秒後に表示から目標方向表示が1つついた。詳細はでないが1つの標的がこちらにまっすぐやってくる。

 

「はやく構えるじょ!一人突っ込んでくるじょ‼」

 

 鵺がプンスカしながら唸っていた。静刃は自分の潜在能力を上昇させる能力、準潜在能力開放(セミオープンアウト)をして拳を構え、アリスベルは環剱を展開して構えた。向かってくる相手は1人とはいえ実力が分からない。そうしているうちにこちらにめがけまっすぐ走ってくる、菊池タクトの姿が見えた。

 

「スポーーン‼この俺がドイツに舞い降りし漆黒のアルパカ的な存在で噂されている菊池タクトだぜ‼」

 

 出会って早々、自分の名を名乗るのかと呆れている暇はなかった。タクトはすぐさまM16を撃ちだしてきた。

 

「っ!?遠慮なく撃ってきやがった‼」

 

 リバティーメイソンの黒服達が撃ってきた拳銃とは違い、アサルトライフルをこちらに撃ちだしてきたのにはさすがの静刃達もギョッとした。アリスベルは貘と鵺を守る様に後ろへ下がり、静刃は真っ直ぐ走り出した。黒套で体に当たる銃弾は防げているが拳銃とは違い、威力は上がっている。タクトめがけてはしっているとタクトは今度は腰のポーチからMK3手榴弾を取り出すピンを抜いてアンダースローで投げ出す。

 

「アリスベル、離れろ‼」

 

 宙に放り出されたMK3を見た静刃はすぐにアリスベルを離れるよう叫び防御をする。爆発と衝撃が響きだす。爆風で土煙が上がるが、タクトは直撃しても尚、立ってこちらを睨んでいる静刃を見てむむむとしわを寄せる。

 

『こちら般若。妖刕はどうだ?』

「うーん、すっごい頑丈。言うなれば古に伝わりし俺の邪眼がヤバイ、真っ黒に染まった中二病青春マックスレボリューションでしょ」

 

『ぶろっちょ、人かどうかわかんねえな。玉ねぎは奇襲をかけて、ケイスケはその隙を狙って撃ってくれ』

 

 無線でケイスケとカズキの指示を聞いたタクトはM16を妖刕達に狙いを定めて撃ちだす。木陰に隠れた静刃達はタクトを動きを伺っていた。静刃は直ぐにでも打って出ようと構えていた。

 

「静刃、気を付けろ。あいつら…遠山キンジや神崎アリアとは全く違う戦い方をしている」

「だが1人ならいける…」

 

 これまでやってきた戦いと比べ、あれはメチャクチャしているだけだ。すぐに打って出て反撃すればすぐに倒せる。そんな時、表示に目標方向もう一つ表示される。タクトとは別の方向、おそらくこちらがタクトを襲おうとすれば奇襲をかけるのだろう。だったらその逆をつき奇襲側に反撃をかけ纏めて片付ければいい。静刃は一気にタクトめがけて駆け出した。

 

「うおっ!?速すぎでしょ!?」

 

 タクトは焦りながら迫ってくる静刃に向けて撃ち続ける。黒套の防御力で弾丸が当たっても少し痛いだけ、静刃は後ろへずっこけているタクトへ蹴りを入れようとした。瞳に警戒信号は表示され、横の茂みからAK47を構えていたナオトが飛び出してきた。予測通りと、静刃は標的をタクトからナオトへ攻撃を入れようとした。しかし、ナオトは無線を繋げていたのに静刃は気づいた。

 

「般若…シュート」

 

 その言葉を聞いた途端に静刃の右の瞳に警戒信号が遠くからくると表示されたと同時に左胸に激痛が走った。静刃はいつの間にか後ろへ吹っ飛ばされているのに気づく。

 

「静刃くん!?」

 

 アリスベルが悲痛な叫びあげて、タクトとナオトを睨み付けて連射できる光弾、連射砲(ウラヌス)を撃とうとしていた。瞳に第二射が来ると表示されてることに気付いた静刃は受け身を取ってアリスベルを茂みへと引っ張り出す。

 

「静刃くん、大丈夫ですか!?」

「いってぇ…あいつら本当に武偵か!?ヘカートⅡを撃ち込んできやがったぞ!?」

 

 静刃は荒々しく愚痴をこぼした。完全に武偵法を無視している兵器を持っているし、こちらに向かってグレネードを投げ出してきてるし、殺す気満々の武偵なんて聞いたこともない。一先ず、狙撃から逃れようと静刃達は走り出すが、ナオトが追いかけてきているのに気づく。

 

「ちっ、しつけえやろうだ‼」

 

___

 

「ヘカートⅡに撃たれてもへっちゃらとか、チートだろ」

 

 ケイスケは舌打ちして茂みへと隠れていった静刃達を双眼鏡で後を追った。1人は暗い中を堂々に動くわ、こちらの動きが分かってるかのように戦うわ、弾丸に当たってもへっちゃらと化け物級だが動きを見て人間であると判断した。人間ならばヘカートⅡを打ち込むことはこれ以上はまずい、ケイスケはヘカートⅡで撃つのをやめた。

 妖刕は厄介だが、残りの3人はそうでもないらしい。セーラはケイスケに詳細を伝える。

 

「情報だが、1人は戦力になるかわからないし、残りの2人は遠距離型の攻撃をしてくる。特に魔剱は服が脱げるビームを撃ってくるようだ」

「はぁ?見た目に反して変態じゃねーか」

 

 厄介なビームを撃ってくるならば近接に持っていけばどうにかなる。リサに音を探知させどこへ向かっているか追跡し、地図を見る。

 

「よし…ぼろぞうきんぐ。相手を分断させた後、妖刕と戦う玉ねぎの援護。アルパカは魔剱を追跡、俺も行く」

 

 ケイスケは無線でカズキ達に伝える。そうすると案の定、バラバラの返事が返ってくる。ワイヤーを付け降りようとする前にケイスケは再び全員に無線を繋げた。

 

「ナオト…いつでも『ゲロ瓶』を投げ込めれるようにしろ」

『おk』

「全員、ガスマスクの用意」

 

 セーラはゲロ瓶とは何ぞやと首を傾げていたが、すぐ横でリサがガスマスクを付けていたのに気づく。

 

「セーラは弓矢で狙撃してくれ。あと…必要だったらガスマスクつけとけ」

 

 ケイスケはガスマスクを付け、ワイヤーをつたって下へと降り、タクト達の下へと駆けだしていった。

 

__

 

「くるぞ‼」

 

 静刃とアリスベルは茂みから飛び出して来たガスマスクを付けたナオトを迎え撃った。ナオトは二人めがけてAK47を撃ちだす。静刃がガードをしつつ迫り、蹴りを入れる。避けたナオトは後ろへ下がると同時にグレネードを投げ込む。静刃はすぐさま上へと蹴り飛ばし爆発から逃れる。

 

「お前ら、本当に武偵かよ!?メチャクチャじゃねーか!?」

 

 静刃は怒りを込めて遠慮なく投げてくるナオトに向かって睨み付ける。アリスベルが光弾を撃とうとした時、遠くから弾丸が飛んできて足を掠める。続けざまにこちらに向かって撃ちだしてきた。

 

「っ…‼撃たせないつもりですか…!」

 

 わざと足や環剱を狙って撃ってきているようでこちらを分断させるつもりのようだ。バックにいる鵺は現状に苛立っていた。

 

「もう遠慮なくぶち殺してもいいじょ‼」

 

 獏の抑止を振り払い、痺れを切らした鵺はナオトめがけて紅い光、極超短波増幅砲(メーザー・ピアス)を撃ち込んだ。ナオトはギョッとしてギリギリ躱すが隙ができた。

 

「今のレーザー…すごい‼」

 

 キラキラと目を輝かせているナオトに思い切り、自らの骨格を固め全体重を載せたドロップキックを叩きこんだ。AK47が宙を飛び、武器を失ったても尚、受け身をとって立ち上がるナオトに追撃を入れようとした。放った右拳に鈍い金属音が響いた。静刃はナオトが手に持って防いでいる物を見て目を丸くする。

 

「フライパン…!?」

 

 まさか自分の攻撃をフライパンで防がれるとは思いもしなかった。これ以上戦闘を長引かせたらあちらのペースに持っていかれる。やむを得ないと判断した静刃は妖刀を引き抜いた。妖刀を鞘から抜刀したとき潜在能力解放という能力が発動し、大幅に能力が上昇するが、現段階では3分しか持たない。時間との勝負だが、一気に片付けることにした。

 

「お前ら全員、3分で片付けてやる…」

 

『3分!?俺達4人だから…カップラーメン4つは食えるぜ‼』

「たっくん、計算が全然違うし理屈もよくわかんない」

 

 ナオトがそうツッコミを入れている間に静刃が妖刀を振るってきた。ナオトはすかさずフライパンで防ぎ、乾いた金属音が響く。自分が振るう妖刀の速さについて来ているのに静刃は内心驚いていた。妖刀とフライパンの攻防と乾いた金属音が鳴り響いていく。アリスベルは静刃が妖刀を抜いて戦っているのに気づき焦りだした。

 

「静刃が刀を抜いた…‼」

「アリスベル、私達は後でいい。すぐに静刃の援護だ‼」

 

 貘はすぐにアリスベルに指示を出す。確かに妖刀を引き抜けば自分の身体能力も上がるが、3分しかもたない。もし長引いて時間を切らすと非常にまずい。静刃の援護をしようと駆けだすが、こちらに狙いを定めていたケイスケとタクトが遮る。

 

「くっ…どいてください!」

 

 アリスベルは咄嗟に後ろへ跳び下がって光弾を撃とうとした。しかし、足元でぐにゃりと変な感触があった。足元とすぐ傍をみるともじゃもじゃした草の塊があり、アリスベルの足下から草の塊のようなものを身に着け、ガスマスクをつけている、ぼろぞうきんぐもといカズキが見ていた。

 

「ぶ…ぶろっちょ…」

 

 アリスベルは足下にいたカズキを見て、真下にいたことと真下から見られた恥ずかしさと、オバケの様な姿のカズキに驚愕してしまった。

 

「きゃああああああああっ!?」

 

「うわ何アレ!?気持ち悪いじょ!?」

「妖の類か!?」

 

 アリスベルの悲鳴を聞いた静刃はすぐさま悲鳴のした方を見る。そこには緑の毛むくじゃらの変な奴(カズキ)がアリスベルに襲い掛かろうと(?)していた。心なしかアリスベルが顔を赤くして何度も緑の毛むくじゃらの奴(カズキ)を足蹴しているように見える。

 

「あの野郎…‼アリスベルを狙いやがって…‼」

 

 時間はまだある。すぐさま駆けつけて蹴とばしてやろうとカズキに標的を定めて動こうとしていた。ナオトはこの隙を逃さなかった。すかさず腰のポーチから黄緑色の液体が入っている瓶3つ取り出し、投げつけた。2つは静刃めがけ、もう一つはアリスベル達の方へ遠投する。

 

 瞳の表示に警戒信号が2つつく。黄緑色液体が入っている瓶だが、表示は『???』と書かれていた。よく分からないものだが煙幕系の類だろうか。静刃は妖刀で打ち払おうとした。しかし、妖刀に当たると瓶はいとも簡単に割れてしまう。そして連中がなぜガスマスクを付けているのか理由に気付いてしまった。

 

___

 

「…なにあれ」

 

 双眼鏡でセーラは屋上から遠方で緑色の煙がもやもやしているのが見えた。煙幕のように見えるが何か変だ。

 

「ケイスケ様曰く、『ゲロ瓶』だそうです」

 

 ガスマスクを付けているリサが説明しだした。あれはケイスケが開発した対異能者、対人外種用に作った催涙ガスの類という。だから嗅覚が優れているリサがガスマスクを着用しているのだとセーラは納得する。

 

「でも、なんで『ゲロ』?」

「ケイスケ様が言うには『タクト様がそれを嗅いでしまって戻してしまったからゲロ瓶』とのことです」

 

 好奇心旺盛なタクトのことだからすぐに気になって臭いをかいでしまったのだと想像がつく。そしてそうとも知らずくらってしまった相手はどうなっているのかあらかた想像もついた。

 

__

 

「何だコレ…くさっ!?」

 

 静刃の視界は緑になり物凄く歪んでしまっていた。前もまともに見えなくなり、そして鼻が曲がるほどの悪臭がにおいだしてきた。潜在能力解放で身体能力をあげてしまっているから目と鼻がより敏感になっている。視界は歪んだ緑の景色で見えていないがアリスベルも同じ状態で、獣人である貘と鵺も自分と同じ、それ以上の影響が出ているだろう。

 

「ぐぅ…!?このニオイはまずい…‼」

「くっさ!?めっちゃ臭いじょ…ウップ…昨日飲んだ酒がリバースしそうだじょ…」

「くぅ…目が…‼」

 

 ガスマスクを付けているカズキ達は何ともなく、視覚と嗅覚をやられて膝をついているアリスベルと貘、鵺に手錠をかけていった。静刃も能力の限界時間が来て解除せざるを得なかった。膝をつきこちらを睨んでいる静刃に対し、ナオトは手錠をかけた後、静刃の首の後ろを打ち気絶させた。

 

「ナオト、ゲロ瓶で気絶するんだからやらなくていいのに」

 

 リバースして弱々しくなっている鵺の背中をさすってからおぶってあげたカズキが気を失っている静刃の方を見ながらナオトに話す。

 

「仕方ないだろ。ヘカートⅡもヘッチャラだったし、ゲロ瓶の臭いも少しは耐えてたみたいだから」

「でもさ、とりあえず作戦は成功だね!」

 

 気絶しているアリスベルを担いでいるタクトはノリノリではしゃいでいた。なんとか相手の攻撃をさせないで捕縛できたが、ケイスケは少し心配そうに考えていた。

 

「ジョージ神父から言われたけど…マジで連れて帰るのかよ」

 

 セーラから『妖刕』と『魔釼』話を聞いてジョージ神父は興味津々になり、戦闘になる直前にカズキ達に捕まえて来てくれと頼まれたのであった。もしかしてこいつらも雇うつもりなのか、ケイスケは不安でしかなかった。




 ブーマーの胆汁や排泄物を集めた液体こと『ゲロ瓶』。ブーマーの胆汁をくらうと視界が緑になって歪みだし、ゾンビがそこに集まってくるようですが…あれ臭そうですよね…いや臭いですよね

 人にゲロ瓶ぶつけたらどうなるか…そんな感じで、静刃さん達が犠牲になったのだ…ゲロ瓶のな(目を逸らす)

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