カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼ 作:サバ缶みそ味
おせちに、お年玉に…正月はお腹も胸もいっぱいですね。
まさか初夢がゾンビって…今年は大丈夫かなー(白目)
「わああああっ!?だからそれを持って追いかけてくるなあぁぁぁっ‼」
パトラとアヌビス像達は猫を前に出して走っているカズキに追い回されていた。猫を盾にされている以上攻撃はできないし、後方から魔女連隊の兵士が攻撃しようとするがナオト達が遠慮なくグレネードを投げ込んでくる。城内は猫の声とカズキのゲスな笑い声と爆発音で騒がしく響いていた。
「カズキ、もうそろそろ着くよ‼」
タクトがメモを見ながら戦闘を走るカズキに伝える。作戦ではセーラがカツェを足止めしており、そこへカズキ達が突撃、なんやかんやでカツェを捕まえ、なんやかんやで脱出するという。
「おい、ほとんどなんやかんやじゃねえか」
「…最後らへんで適当になってたし、仕方ない」
「おし‼突撃だー‼」
カズキとタクトが目的地である部屋の扉を蹴り開け、転がるように入っていった。ケイスケとナオトは銃を構えて突入したが、その部屋は誰もいなかった。
「たっくん、ここであってるの?」
「うーん…メモでは確かここであってるはずなんだけど」
この部屋にはセーラもカツェもいない。不審に思ったケイスケは窓を開けて下を見下ろすと、すぐさまタクトとカズキに向けて怒声を飛ばした。
「ここ3階じゃなくて4階じゃねえか!?」
「「え゛えええっ!?」」
タクトとカズキはギョッとした。ついうっかりパトラ達を追い回すことに集中しすぎて3階を通り過ぎ、4階を駆けまわっていた。カズキとタクトは反省の色を見せずにテヘペロしながらケイスケに謝る。
「猫シールドを持って追い回すのが楽しくて忘れてたぜ‼」
「なんてこったい、急いで戻らなきゃ‼」
タクトは急いで部屋のドアを開けて出ていこうとしたが、目の前にはパトラとアヌビス像達、銃を構えた魔女連隊の兵士たちがどっしりと待ち構えていた。
「ふっふっふ、お主等袋のネズミぢゃのう」
パトラは額に青筋をピクピクと浮かばせて怒りを込めた笑みでカズキ達を見る。怒りオーラが漂っている眷属たちに対し、タクトは変顔をしながら挑発しだす。
「へっへー!こっちには猫がいるんだ。こんな状態でも手は出せないだろ~!」
タクトはカズキの方をちらりと見た。猫がいる限り、連中は手を出すことはできない。しかし、カズキの手には肝心の猫がいなかった。思わずタクトは二度見して身が凍りつく。ナオトもカズキが猫を持っていないことに気付く。
「‥‥カズキ、猫は?」
「え?猫ならあそこに…あっ」
カズキは猫ならそこのソファーに置いたと言おうとしたが、猫はタクトの間を通り抜け、何事もなかったかのように部屋から出て行った。両者ともしばらく見つめ合ったまま静寂が流れていたが、タクトが引きつった笑みでテヘペロをした。
「ゆ…許してニャン♪」
「殺せええええっ‼」
魔女連隊の兵士達が一斉掃射する前にナオトがすかさずグレネードと発煙手榴弾を投げ込む。カズキとケイスケは本棚や箪笥を倒したり、ソファーを運んだりとバリケードを作っていく。
「急げ!バーケード、バーケードを作って何とかするぞ‼」
「バリケードだつってんだろ!ぶち殺すぞ‼」
ケイスケはカズキに怒声を飛ばしながら身を低くしてMP5を撃ち込んでいく。タクトはM16A4をナオトはAK47を撃ち込み、相手に手榴弾を投げさせる隙を作らせないようにしていく。
「このままだとジリ貧だ!」
SR25のスコープを覗きながらアヌビス像をヘッドショットするカズキが焦りながら叫ぶ。カズキの言う通り、このまま籠って迎え撃っていても相手側の方が物量も多く、異能者もいる。こちらが弾切れが起こるのが先であり、時間の問題である。
「…この真下にセーラがいるんだっけ?」
ふと、ナオトが思い出したように呟く。タクトのメモが正しければこの真下の部屋でセーラがカツェを足止めしているのだ。ナオトが一体何を考えているのかケイスケとカズキは首を傾げた。
__
「…遅すぎる」
セーラは愚痴をこぼしながら風を巻き起こしカツェの能力で飛ばす水の塊を防いでいく。いくら待ってもカズキ達が突入する気配も無ければ喧しい銃声がどこか遠くの方で聞こえてもこない。あのバカ4人がしくじったか、まさか部屋を間違えたかのどちらかに違いない。そんなことを考えていると小さな水玉が頬を掠める。
「へっ、雑念が多いんじゃねえのか?」
カツェがヘラヘラしながら能力で水を浮かばせていく。セーラはジト目でカツェを睨み舌打ちする。このまま待たされるとこちらが危ない。こうなれば無理をして能力をフルに使って捕えるしかないとセーラは仕方なしに手加減するのをやめようとした。その時、カツェの真上の天井で白い火花が円を作る様に出ているのに気づいた。何かと思いしばらく見ていた途端、爆風と爆発音が天井に響き渡る。
「な、なんだ!?」
突然のことでカツェは焦りだした。穴が開いた天井からまだ白い煙があがっていると思いきや、カツェの真上からカズキ達が飛び降りて来た。ぎょっとして身動きができなかったカツェはカズキとぶつかり、下敷きになってしまった。
「むきゅっ!?」
カズキとぶつかっただけではなく次から次へと飛び降りてくるタクト達の下敷きとなったカツェは押しつぶされそうな小動物のような声をあげる。セーラは呆然としていたがケイスケが耳をさすりながらナオトにゲンコツをいれた。カズキもプンスカと怒りながらナオトに文句を言いだした。
「ナオト‼テルミットで床に穴をあけるならさっさと言えよ‼巻き込まれて死ぬかと思ったじゃねえか!」
「なんかペタペタと張ってるから気になったけど、ヒートテックを張るならそう言え‼」
「だからさっき張るよーって言ってただろ!てかヒートテックじゃなくてヒートチャージな」
気絶しているカツェの上でナオトとカズキとケイスケがギャーギャーと口喧嘩をしだす。セーラはまさか場所を間違えていたのかとカズキ達に呆れるようにジト目で見つめる。そんなセーラの視線に気づいたタクトは何事もなかったかのようににこやかに手を振る。
「オタコン、待たせたなぁ‼」
「いや、たっくん遅すぎ。というかオタコンって誰?」
一先ずこれ以上能力を使わなくて済んだとセーラはほっと一息入れた。カズキはふと思い出したように辺りを見回す。
「セーラ、この部屋にいるマロングラッセは何処にいるんだ?まさか、さっきの爆発でどっかに隠れたんだな!」
「マロングラッセじゃなくてカツェ・グラッセ。カズキの真下にいる」
セーラに指摘されてようやくカズキの真下でカツェがのびていることに気付いた。カズキ達はそそくさと退いていく。ナオトとカズキはカツェの頬をツンツンとつつく。
「…さっきの爆風に巻き込まれたのか」
「『厄水の魔女』っていうからどんな危険な奴かと思ったら、意外とお茶目な奴だな!」
いや、お前達が踏み台にしたのだとセーラはツッコミを入れる。何とか作戦は成功したものの、ここで長居するつもりはない。このままのんびりしているとすぐに追いつかれてしまう。カズキはカツェに手錠をかけておんぶをする。
「よし!このまま逃げ切るぞ‼」
いざこの城から脱出しようと動き出そうとした時、天井からアヌビス像が次々と降りて来た。パトラが追いかけて来た。ケイスケが扉を蹴り開け、セーラを先頭にカズキ達は大急ぎで通路へと出る。
「逃がすな!殺せ‼」
「拷問にかけてなぶり殺してやる‼」
魔女連隊の兵士達が怒声を飛ばしながら追いかけてくる。相手も遠慮なく撃ってくるのでカズキ達は必死に走り続けた。
「カズキ様‼こちらです‼」
そんな時、メイド服を着て潜入していたリサが手を振っているのが見えた。カズキ達はすかさずリサの方へと駆けていく。
「神父様が車をご用意しております、急ぎ合流しましょう!」
「やっとかよ。もう追いかけられるのは嫌だぜ」
「さっすが神父‼用意がいいぜー‼」
逃走用の車が用意されて待っていることにカズキ達は俄然やる気が出て来た。そんなカズキ達を追いかけているパトラはリサに向けて不敵な笑みを見せる。
「ふん!お主もこの喧しい4人組の仲間ぢゃったとはな…だが今更お主が来ても無駄ぢゃぞ?」
「いいえ…少し
リサがにっこりとパトラに微笑み返す。するとドタドタと何処からか何かがこちらに向かってくる音が響いてきた。何が来るのかカズキ達がキョトンとしていると階段から、窓から、野良猫の群れが一斉に駆け出してきた。犬耳をぴょこりと生やしたリサは合図する様に指をさす。
「さあ猫の皆さん、お願いします!」
「わ、ちょ、来るなぁぁぁぁっ!?」
これだけの猫の群れにパトラもアヌビス像達も手を出せなかった。押し戻されるアヌビス像に押され魔女連隊もすし詰め状態になり身動きが出来ず、猫たちの群れにのまれていく。
「すっげえ、猫まみれだー」
「さすが百獣の王」
カズキ達に褒められてリサは生えた尻尾をふりふりとする。ノイエアーネンエルベ城内に駆け込んできた猫たちの足止めのおかげで魔女連隊はカズキ達を追いかけることができなかった。城外へと出たカズキ達は神父が待っているであろうトラックが停められている場所へ向かった。
トラックの周りには魔女連隊の兵士達が倒れていた。おそらく逃がさないようにトラックを始末しておこうとしていたのだろう。そうはさせないとジョージ神父に返り討ちにされていた。ジョージ神父はあらかた片付いていて待っていたようで、カズキ達の姿が見えるとにこやかに手を振る。
「やあ、逃げ場は既に確保しているよ。このまま退くとしようか」
これジョージ神父に全部任せた方が早かったんじゃないかとケイスケとセーラはしかめっ面でジョージ神父を睨む。カズキ達はコンテナに乗り込み、トラックは飛ばしてノイエアーネンエルベ城を背にして去っていった。
「…まったくもってしてやられたわね…」
猫まみれになっている指令室にてイヴィリタは遠くへと去っていくトラックを睨み付けていた。魔女連隊の兵士達は猫を追い出すことで手一杯だ。猫を射殺して片付ければ早いのだが城にあふれるくらいにいるのだから死骸の山を作ってしまっては怪しまれる。先程から静刃達に連絡をとろうとしているのだが、一向に連絡も取れていない。セーラと静刃達は裏切ったのか、それとも既に神父の手中だったのか。
「彼らの目的はさっぱりだわ‥‥」
静刃達を駒にして、この宿営地に来たというのならば、なぜ襲撃もせずに、他の眷属へ攻撃もせずにただ魔女連隊の連隊長であるカツェを攫っただけだったのか、使い魔であるカラスのエドガーも連れて行かず、このまま追いかけてくれとでも言うような逃走にイヴィリタは疑問と不審でいっぱいだった。
「まるで私達の矛先を師団とは別の方向へ向けさせるようね…エドガー、カツェの追跡をして頂戴」
イヴィリタは窓を開けてカツェの使い魔であるカラスのエドガーを外へ放った。エドガーは羽ばたき、カツェを攫った連中の跡を追いかけていった。
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カツェは目を覚ました。気が付けば毛布を掛けられて横になっており、両手には手錠をかけられていた。見回すと中はコンテナの中だろうか天井にはLEDの電球が明るい光を照らしながら吊らされていた。
「…目が覚めた?」
ふと声が聞こえたので視線を向けるとセーラと静刃がいた。二人とも心配していないようで、カツェは舌打ちをして睨み付けた。
「けっ、セーラだけじゃなくてお前ら傭兵も裏切り者ってか」
「俺達はあの神父に無理矢理雇われただけだ」
静刃はむすっとした表情でセーラを見据える。結局静刃達もあの騒がしい4人組に負けて無理やりやられたのだろうと判断した。これからどうなるのか、このまま拷問されるのか、それともナチスが大っ嫌いな連中に引き渡されるのかそんなことを考えていると、カズキがひょっこりやってきた。
「お、元気になったみたいだな!えーと…カツ・コバヤシ?」
「だからカツェ・グラッセ」
「俺の時といい、カツェの時といい、わざと人の名前を間違えてんのか?」
セーラと静刃に一声にツッコまれてカズキはてへへーと苦笑いをする。カズキはカツェにフレンドリーに近づくがカツェはカズキの指に噛みつくかの勢いで睨み付けて威嚇する。
「私を拷問にかける気か?私は何をされても口を割るつもりは無いぜ?」
「えっ?」
カズキが思わずキョトンとするのでカツェも思わず「えっ?」と返してしまった。強気で構えていたのにまさかの変化球に戸惑ってしまう。
「えーと…ごーもんにごー、モーン」
「「「…‥‥」」」
カズキが何を言っているのか、意味の分からない糞ギャグにカツェだけではなくセーラも静刃も沈黙してしまい、コンテナ内に沈黙が続く。
「カズキ、それ面白いな!」
「うるせー‼言おうと思って言った事じゃねえんだよ‼」
顔を覗かせてきたナオトのツッコミが鶴の一声で、何とか場を流すことができた。
「カズキ、カツェを連れて来て。ジョージ神父が待ってる」
「今連れてく所だから待ってろ‼」
ナオトに急かされカズキは渋々とカツェを外に連れて行こうとするが、先ほどの威嚇が聞いていたのか少し身構えているようで、カツェは呆れながらため息をつく。
「指とか嚙み千切らねえから、さっさとしてくれよ」
カズキ達の様子を見て、どうやら拷問にかける気は全くないと判断したカツェは抵抗せずにカズキについて行く。外はデュッセルドルフからかなり離れた場所の様で、高い丘のような場所だった。もう真夜中の様で暗く、冬の寒さが身に染みた。外には静刃だけではなくアリスベルや貘、そして鵺もおり、その先にはジョージ神父がにこやかにしてカツェを待っていた。
「初めまして。君を強引に連れてきてしまったことを先に詫びておこう」
「…あれだけ暴れて私を連れ去るってのはどういうつもりなんだ?あのバカ共は私を拷問にすらかける気もねえ見たいだし、何を企んでやがる?」
にこやかにしているジョージ神父に対し、カツェは敵意剝き出しで睨み付ける。しかし全く効果がないのか笑みを崩さずジョージ神父は話を続ける。
「そうだね…率直に言うと君にも協力をして欲しい事があるんだ」
「協力?テロか?それならこんな事をしても無駄だぞ。私を人質にとっても魔女連隊はお前の言う事は聞きやしねえぜ?」
神父の企みは一体何なのか、カツェは神父の腹の中を探ろうとしていた。神父のポーカーフェイスは崩す様子もなく、ただひたすらにこやかにしており何を考えているのか分からなかった。
「神父ー‼昨日よりもすっごい増えてるよ‼」
「やべえぞ。数が増えててより不気味だ」
そんな時、茂みからタクトとケイスケがあたふたとしながら戻ってきた。一体何のことかカツェは首を傾げていたが、カズキがカツェに双眼鏡を渡した。
「すこし、ドイツ内で厄介な事が起きていてね。どうしても君達眷属の力も必要なんだ」
「こっから南東側にいる」
ナオトの付け足した説明を聞いてカツェはその方角に双眼鏡を使って覗き込む。何か人の形をしたものが沢山いてゆっくりと進んでいる。ピントと倍率を合わせて見ていくと、ドイツ兵の軍服を着たゾンビの群れだった。カツェは思わず双眼鏡を落とし、わなわなと震わせる。
「おい…あれは何だ?」
「ブラックウッドという魔術師が『レリック』を使った術式で呼び起こした死人…第二次世界大戦時で死んでいった兵士達をゾンビにしたようだね」
カツェはキッとジョージ神父に睨み付ける。その様子は魔女ではなく、軍人のようだった。
「あれは…何処へ向かっているんだ?」
「方角からすれば…ベルリンへと向かっていると思うね。ゾンビを止めないとベルリンだけじゃない、眷属や師団、ドイツ、いやヨーロッパ中がゾンビの被害に遭うだろう」
このまま数を増やし続けるゾンビを止めるには『レリック』を取り戻すしかない。そのためには自分達だけじゃなく、他の協力も必要である。カツェは舌打ちしてジョージ神父を睨み付ける。
「お前の様な腹の底が見えない奴のことだ。私の事も調べがついてるだろうな…そのブラックウッドとかいう空気を読めない馬鹿野郎とその馬鹿野郎が呼び起こしたゾンビの始末、少なくとも私は手を貸してやる」
協力してくれる、と聞いたカズキとタクトは喜んで駆けつけようとしたが、カツェは「その代わり!」と付け足して話を続ける。
「宿営地を滅茶苦茶にして、私を攫ってきたんだ。それなりの報酬を用意しやがれ!」
「…勿論、報酬として用意はしておこう。君の協力、感謝するよ」
結局崩すことなく愉悦な笑みを続ける神父に対し、カツェはふんと鼻で返してそっぽを向こうとしたが大喜びで手を握ってくるカズキとタクトに動揺する。
「よっしゃー‼魔女っ子サリーちゃんが加わればゾンビなんかこわくねえぜ‼」
「エクスペクトパトローナムだ‼もう何も怖くない!」
「…たっくん、それフラグ」
「ゾンビ相手とか嫌だからな。お前等前衛しろよ?」
「こ、こいつら…本当に大丈夫なのか?」
これからゾンビ退治と元凶を追跡するというのに呑気にしている4人組を見てカツェは不安と心配でいっぱいだった。
少しグダグダになっておりますが…カツェとの取引については少しマイルドに。
ナチ大っ嫌いな方々がいたりと、結構シビアな所ですが、こちらでは少し優し目にしております…
次回からやっとゾンビ退治に専念できそうな気がする…