カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼ 作:サバ缶みそ味
少しお砂糖成分もあるです…
「昨日までゾンビと戦ってたのがウソみてえなくらい静かだな」
「…ドイツに何日かいたのにゾンビしか印象に残ってない」
ゾンビとの戦いが終わり、ドイツ旅行最終日の夜。フランクフルト市内にあるホテルのレストランでカズキ達は談笑していた。カズキ達は笑いながら話していたが、ケイスケだけ納得いかないようでムスッとしていた。そんなケイスケにタクトはニヤニヤしながら宥める。
「ケイスケ、すっごく不満そうだなー」
「いや不満でいっぱいだっつーの」
ケイスケは不満イッパイな顔をしてぶっきらぼうに答えた。あの後、ジョージ神父がヘリで迎えに来て、にこやかに「ご苦労様」と言ってきたことに対しケイスケは殴りかかろとしていたがリサが嬉し泣きしながら迎えて来てくれたのでうやむやに終わったのだった。
そしてイヴィリタ長官率いる魔女連隊とパトラを含めたイ・ウー主戦派の連中が合流し、カツェとセーラ、静刃は達とはその場で別れたのだった。
これだけ大きな騒ぎだったのに翌日の新聞には全く載っておらず、
「結局はあの神父に振り回されただけだろ?」
あの神父に任せておけば片付く事だったはず。冬休み期間を利用した修学旅行Ⅱはゾンビ退治に全振りされて費やされたということだった。しかしカズキ達はそんなことは全く気にしていないようで逆に満足しているようだった。
「まぁそうカッカするなってケイスケ。ゾンビ退治なんてめったに経験しない事だったし、終わり良ければ総て良しだぜ?」
「カズキ様のおっしゃる通りです。皆様がこうご無事にいることでリサは嬉しいのですから」
「はぁ…まあそういう事にしておくか。神父にはたっぷりと報酬を請求してやる」
ケイスケは軽くため息をついて苦笑いをし、食事を続けた。この後タクトが調子に乗ってソーセージを食べすぎて胃もたれを起こした。
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「そんじゃ明日なー」
「…たっくん、明日まで胃もたれ治しとけよ?」
「あ゛ー…俺は無敵だぁ…」
「ったく、無茶しやがって」
タクトはリサとケイスケに担がれ部屋へと入っていった。最終日に泊まるホテルはそれぞれの個室で寝ることになっていた。カズキはナオトと別れて部屋へと入り、すぐさまベッドの上で大の字になる。これまでドタバタしていたり走り続けていたりしたので疲労感で一杯だった。
「うへぁー…ずっと叫んで走りまくってたもんなー。疲労感がマジパネェ」
大の字で寝ていると眠気が一気に押し寄せてきた。今日は早めに寝ようと決めた時、ドアのノックの音が聞こえた。ナオトかケイスケかが来たのだろうか、カズキは眠たそうにしながらも起き上がりドアのロックを外して開けた。ドアを開けると、そこにはナオトでもケイスケでもなく、魔女連隊の連隊長であるカツェがいた。ハーケンクロイツのマークがついた眼帯ではなくお花のマークに変わっており、ハーケンクロイツの腕章も外していた。
「およ?カツェじゃん、どしたの?」
「…よっ。ちょ、ちょっと話をしてもいいか?」
カツェは少しぎこちなさそうにしながらも微笑んだ。丁度時間もあるし構わないとカズキは頷いてカツェを部屋にいれた。カズキはそのままベッドに座るが、カツェもその隣に座った。何やらもじもじしているようでカズキは首をかしげる。
「…えっと、そうだ。まずはイヴィリタ長官から言伝だ。『お前達には大きな借りができた。いつかこの借りは返す』ってさ。正直今回のゾンビ騒動はお前達がいなかったら眷属もろとも大きな被害になっていたかもしれなかった。眷属の代表として感謝するぜ」
「いやはは…なんか照れますなー!」
カズキは照れ笑いしながら頭を掻く。そんなカズキにカツェは苦笑いしつつ、少し真剣な眼差しで見つめた。
「なあ、あの時…どうしてあたしを助けようとしたんだ?」
「どのとき?」
素で首を傾げて即答したカズキにカツェはずっこけそうになった。
「あの時だっての!ゾンビに足を掴まれて、死を覚悟したあたしを助けた時だ!あたしは魔女連隊で、テロリストだぞ。いつお前の寝首を掻くかわからないんだぞ?」
「あー…あの時ねー」
カズキは納得して、眉間にしわを寄せて腕を組み、唸りながらしばらく深く考えていた。深く考えていたようだがケロッとした顔をしてニッと笑って答えた。
「助けたいって思ったからかなー。それに俺達ソウルメイトには敵味方関係ねえぜ」
単純な答えを述べてニシシと笑っているカズキにカツェはポカンとしていたがふっと笑って頷いた。
「ほんと…お前らしい答えだな…」
その後何故か顔を赤らめてもじもじとしているカツェにカズキは首を傾げた。そしてカツェは腹を括ったような顔をしてカズキを見つめた。
「き、決めたぞ…‼か、カズキ、お前少し目をつぶれ!」
突然のことでカズキはハテナと不思議な顔をする。
「え?なぜ?」
「い、いいから‼つべこべ言わず早くしろ!」
カツェは顔を赤くしてプンスカと怒り出す。仕方ないとカズキは目をつぶった。サングラス越しなのでカツェには分からなかったようでぐぬぬと唸っていた。
「ちゃ、ちゃんと目をつぶったんだろうな?」
「ほいほーい、ちゃんと閉じてますよー。それで一体何を…」
何をするのかと聞こうとした時、頬に柔らかな感触が当たった。何事かとカズキは目を開けると顔を赤くしたカツェが頬に口づけをしていたのが見えた。カツェの顔がカズキの頬から離れるとカツェはより顔を赤くして見つめる。
「こ、これは盟約の契りだからな!あたしは…お、お前を使い魔にする‼」
「」
カツェは制服の胸元を全開にしカズキに抱き着こうとした。
「す、すぐに終わる話だからな…‼それに…」
「」
カツェは少し寂しそうにしながらも、少し嬉しそうな声をかけた。
「それに…家訓にもあるんだ。命を助けてくれた相手と、む、結ばれろって…だからお前を…」
「」
覚悟を決めて顔を近づけようとした時、やっとカズキの異変に気付いた。カズキは終始無言でしかも無表情になって固まっていたのだった。
「」
「…か、カズキ?」
何も言わないカズキにカツェは焦りながらも身体をつつく。するとカズキは大木の様に後ろへと倒れた。まるで冷凍マグロのようにカチカチで微動だにしなかった。その様子にカツェはぎょっとして驚いた。
「き、気絶してる…!?お前どんだけうぶなんだよ!?」
気絶してしまったカズキにカツェは呆れてため息をついた。制服のボタンを閉じ、苦笑いして立ち上がる。
「まったく、お前っていう奴は…ま、いっか。本命はまたいつか、な…」
カツェはニッと笑って部屋を出て行った。
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「なあケイスケ、昨日の事全く覚えてないんだけど?」
「それはカズキだからな」
「空っぽだもんな」
「あーたま空っぽの方が夢つめこめるー♪」
フランクフルト空港にてカズキ達は他愛ない会話をしていた。カズキは昨晩、カツェが部屋に入って来て仲良く話しをしたその後の事が全く思い出せなかった。なんか軽く馬鹿にされているようだとカズキは少しムッとするがまあいいやと開き直った。
「やあお待たせ」
カズキ達の下に大きなキャリーバッグを引いたジョージ神父が同じくキャリーバッグを引いているセーラとその後ろからついて来ている静刃達とともにやって来た。タクトは大喜びで手を振って尋ねた。
「神父もセーラちゃんも同じ便で帰るんですね!」
「ようやくドイツ教会に報告し終えたからね。用事も済んだし帰るところさ」
「私は神父に雇われている身だけども、眷属からお前達の目付け役としてついてくるだけだ」
「とか言って、俺達と鍋したいんだろー?」
カズキとタクトはニヤニヤとセーラを小突くが「なぜに鍋?」とムスッとした顔をしてプイっとそっぽを向く。
「リサのブロッコリーを使った料理を食べたいんじゃ…」
「‥‥ち、違う」
セーラはナオトの問いに間を開けて答えた。ごくりと生唾を飲んでいたので間違いないだろう。
「おい、図星じゃねえか」
「うふふ。セーラ様、日本に戻ったらうんと用意しますね!」
「こ、こら。お前も悪乗りするな」
あたふたとするセーラにジョージ神父までもがにこやかに笑う。そんなジョージ神父に貘がちらりと横目で見つめて尋ねた。
「神父よ、取引の件は忘れていないな?他の者までも巻き込んでまでやったのだから、今度はお前が答える番だ」
「安心したまえ。雲外鏡は必ず渡そう。引き渡しは来月でも構わないかい?」
「すぐに欲しいのですが…眷属の方はまだ立て直していないようで私達も手伝わなければなりませんし、いいですよね?」
アリスベルは静刃と貘の方に目を合わせて伺う。魔女連隊がゾンビを相手している間に各地で師団の襲撃があったという。その小競り合いを終わらせるため、自分達もあちこちで動かかなければならないようだ。静刃は首を縦に振って頷く。
「帰れるならそれでも構わない…やっとこいつらとおさらばできるぜ。次ぎ出会う時は敵かもしれないな」
「ええっ!?ウソだと言ってよバーニィ‼」
「静刃、そんなこと言うなよ‼俺達ソウルメイトじゃないか!」
驚いて静刃に言い寄るタクトとカズキに静刃は項垂れる。この先もこの喧しい連中と仲良くなってしまうのかもしれない。正直胃が痛くなるので願わくばあんまり関わりたくない、それが静刃の切実な願いだった。そんな崩れゆく静刃の願いをよそに鵺はニッと歯を見せて笑う。
「にっししし…お前達とドンパチやった方が楽しかったじょ。また仲良く暴れような!」
そう話しているうちに帰りの便の時間が近づいてきた。カズキ達は武装職従事者専用の出国ゲートに向かい、タクトは静刃達に向けて笑って手を振った。
「それじゃみんな、ばぁぁぁい‼」
「本当に賑やかすぎる人達ですね…」
「ああ、正直あんまり相手にしたくねえ…」
アリスベルと静刃はそんな喧しい連中に向けて笑って見送った。
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「カツェ、今回は本当にご苦労だったわね」
宿営地であるノイエアーネンエルベ城の司令室にてイヴィリタはカツェを労った。カツェは照れながらも微笑んで頷く。
「本当にあの者たちには色々とやられましたね…」
「そうね。でも、満更でもなさそうね」
イヴィリタはクスッと笑ってカツェを見据える。虚を突かれたカツェは顔を赤くして慌てふためく。
「…まあ、貴女があれを使い魔にするつもりだし、これ以上は不問にするわ」
「えっ、あっ、あ、ありがとうございます」
赤裸々なカツェにイヴィリタはふっと笑った後、本題に移ることにした。
「今回の騒動の主犯…ブラックウッド。あの男には必ずけじめをつけてやらなくてはね…」
「はい…祖国を守るために戦った兵たちを死人に変え、操ったあの者の罪は重い」
イヴィリタも今回の件は不意打ちだった。ブラックウッドという過去でイギリス全土を騒がせた魔術師が存命で、しかも自分達が知らない術などを使ってドイツをゾンビで溢れさせようとしたことに驚きを隠せなかった。
「しかし…あの男の目的は何だったの…?」
それでもブラックウッドの目的が分からなかった。眷属と師団の戦役を邪魔をするつもりだったのか、それとも色金をまとめて奪うつもりだったのか、本心が読めなかった。
「カツェ…あの者が何か言っていなかったかしら?」
「そういえば…変わったこと言っていました。『色金』とは別に…確か、『【十四の銀河】がある限り我々は敗れることはない』と」
その言葉を聞いたイヴィリタは目を見開いて驚愕した。
「【十四の銀河】…!?」
「い、イヴィリタ様…!?その【十四の銀河】を知っているんですか!?」
深刻な剣幕で考え込んだイヴィリタにカツェはギョッとして焦りだした。イヴィリタはブツブツと呟くが真剣な表情でカツェを見る。
「まさか本当に存在するなんて…かつて魔女連隊の始祖、ヒムラー長官や私の曾祖母である戦乱の魔女イルメリア・イステルが探し求めた、世界を覆す秘宝よ」
「そ、それは相当なものなのですか…!?」
かなり深刻に考え込むイヴィリタにカツェはおどおどしながら尋ねた。
「そうね…眷属と師団が『色金』で争っている場合じゃない程、かなり重要の代物よ。【十四の銀河】は手に入れるだけで世界を思い通りにさせる力があると言われているわ」
色金よりもやばい代物だと聞いたカツェは戦慄する。そんなものが存在しているなんて知らなかった。イヴィリタはさらに話を続ける。
「【十四の銀河】は他にも4つの秘宝があるの。【究極魔法・グランドクロス】、【最強装備・ラグナロク】、【極限宝具・エクリプス】、【終焉兵器・ビッグバン】…どれも一つあるだけで国に混沌を巻き起こす代物と言われているわ」
すこし中二病っぽい名前がついた物だがイヴィリタ長官がかなり焦っているようで、どれも色金並みの代物だということが伺えた。
「これでブラックウッドだけでなく、あの神父の行動がわかった…あの神父は【十四の銀河】と4つの秘宝を探している。これらの存在が明らかになった以上、戦役どころじゃなくなるわね…」
イヴィリタは椅子に深く腰掛け大きく息を吐いた。これはかなり深刻な事なのだとカツェも生唾を飲んだ。
「あの…イヴィリタ様。どうして【十四の銀河】のことをご存知なのですか…?」
「子供の頃、祖母が私に曾祖母から聞かされたことをよく話していたのよ…【十四の銀河】と4つの秘宝の話は耳に胼胝ができるぐらい聞かされたわ。その秘宝が揃うと凄いことが起こるってね」
「す、凄いこと…?」
一体何が起こるというのか、世界の終わりでも起こるのかカツェは緊張して伺う。イヴィリタはやや苦笑いして答えた。
「曾祖母曰く、『宇宙ヤバイ』って」
カツェは盛大にずっこけた。
フラグは押し倒すもの
カツェさんはめげずに何度もトライするようで…
今回の【十四の銀河】と4つの秘宝はM.S.〇.planetという曲と本が元ネタです
歌詞も、本の物語も中二病っぽくて好きです