カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 ドイツ編も無事終わり、次のステップへのプロローグになります。
 うまくいくといいなぁ…(遠い目)


58話

 日本に帰国したカズキ達の日常は騒がしくとも平凡な日々を過ごした。大晦日を過ごし、その翌日の元旦。カズキとタクトはテーブルに置かれているものを見て目を輝かせていた。

 

「おぉ…マジモンのおせちだ…‼」

「すげえよ‼すっげえうまそう!」

 

 目の前にある三つの重箱に敷き詰められている田作りや煮しめ、栗きんとんや黒豆、ブリの照り焼き、数の子等々豪華絢爛な料理に二人は目を輝かせ涎を垂らしていた。べた褒めするカズキ達に対しリサが照れながら微笑んでいた。

 

「うふふ、ケイスケ様と一緒に作ったんですよ。喜んでいただけてリサは嬉しいです」

「リサがいてくれたおかげで今年はまともな正月を過ごせそうだ」

 

「おせちぐらいで大袈裟な…」

 

 ほっと一息ついて安心しているケイスケの横で大晦日の夜に泊まり込みに来たセーラがジト目で大喜びしているカズキとタクトを見つめる。そんなセーラにケイスケはため息をつく。

 

「ちなみに去年の元旦は…スライムみたいな餅を食わされ、カズキとタクトのバカが肉ばかりのおせちを作って全員胃もたれを起こしてたからな?」

「‥‥なんかごめん」

 

 ケイスケが遠い目をしていたので去年がどれだけ大変な目にあったのかが話を聞いただけで想像がつく。しかも肉料理だけのおせちなんて思い浮かべるだけでも胃もたれが起きそうになる。

 

「うまい」

「おおい‼ナオト‼お前先に伊達巻を食うなよ‼」

「俺の栗きんとんは取らせはせんぞー‼」

 

 いつの間にかナオト、カズキ、タクトがおせちの取り合いをしており熾烈な争いが勃発していた。リサの手作りということもあって我先にと伊達巻、煮しめ、栗きんとんを独り占めしようとしていたのだった。

 

「お前等、新年早々みっともねえぞ!」

「醜い争い…」

 

 新年もまた騒がしくなるだろうとセーラは肩を竦めてため息をつく。最初はこの騒がしい4人組に嫌々ついて来ていたのだったが、次第に楽しく感じてしまっている自分がいる。

 次は何時何処で彼らが混沌とした騒動を巻き起こし、巻き込まれるのか、セーラは苦笑いして初めて食べるおせち料理に箸を取った。

 

「ところでケイスケ、今年はお年玉はくれるの?」

「あ゛ぁ?たっくん、寝言は寝て言え」

 

__

 

「香港での藍幇討伐、大儀であった」

 

 都内にある緋川神社の拝殿の奥の座にて、狐耳の少女こと玉藻はキンジ達『バスカビール』のメンバーとワトソンに伝えた。キンジ達は香港にて藍幇と戦いで孫悟空の猴や諸葛静幻に勝ち、藍幇は師団についたのだった。玉藻はふわふわした狐の尻尾をふりふりしながら話を続けた。

 

「これでアジア圏の方は師団が有利に進んでいる。じゃが、欧州の方は未だに混戦じょうたいでの、陣地を奪われたり奪ったりと泥沼化しておるようじゃ」

 

「それにリバティーメイソンからの連絡で、眷属側に『妖刕』、『魔剱』と呼ばれる強力な傭兵がついて師団は苦戦をしているんだ」

「かなめが言っていた二人の傭兵か…」

 

 玉藻に付け加えたワトソンの話にキンジは低くつぶやいて頷く。香港で勝利を取った後、妹のかなめから電話があり、眷属の情報を聞いた。

 欧州には魔女連隊と呼ばれるナチス残党の能力者集団にパトラ率いるイ・ウー主戦派に、その二人の傭兵がついて眷属が有利に進んでいるという。アリアは次なる敵に備えて情報を整理するために玉藻とワトソンに尋ねた。

 

「その『妖刕』と『魔剱』はどんな奴なの?」

「話によると『妖刕』は男で刀や銃を扱い、遠山のように強力な格闘技を使う武人じゃ。もう一方の『魔剱』は女で未知なる最新魔術を使い、相手の能力を打ち消す遠距離型の術を使ってくるようじゃ」

 

「それはまずいね…理子も見たことも聞いたこともないよ」

 

 理子は気まずそうに頷く。理子の言う通り、キンジもアリアもあまり良くない事態だと理解した。情報通の理子も師団の誰もその二人組の存在も知らない。つまりは何をしてくるのか読めないし分からない相手だということだ。下手にかかれば返り討ちに合い全滅し兼ねないの。

 

 玉藻はさらに話を続けた。欧州では先に述べた通り、陣地の奪い合いになって混戦している。どちらかと言えば師団が苦戦しており、援軍を要請している状態だ。

 バスカビール全員で行きたいが、眷属は薄手になった日本やアジア圏へ侵攻する恐れがある。そこで玉藻の作戦として、少数で欧州へ行き派手に暴れて眷属を強力なままの極東へと誘い込む『ランペイジ・デコイ』を取ることにした。その作戦にアリアも賛同しているようでキンジをちらりと見つめる。

 

「それだったら大きな釣り針がいいわね…」

「おい、なんで俺の方を見る」

「あはっ!きーくんなら皆飛び掛って来るね!」

 

 まさかのキンジを欧州に行かせてカツェ、パトラ、その他の敵を釣り上げるという無茶苦茶な作戦になってしまった。キンジ本人は嫌がっていたが、白雪もレキも玉藻もそれがいいと頷き強制になった。ワトソンはただ苦笑いして見つめていた。アリアは胸を張って自信満々に頷く。

 

「よし!これなら欧州も難なく行けそうだわ‼」

 

「あ…それともう一つ、厄介な奴等がおったわ」

 

 そんなアリアの出鼻をくじくように玉藻は思い出したかのようにポンと手を叩きた。『厄介な奴等』と聞いてまさかとキンジとアリアと理子は嫌な予感がよぎった。

 

「お主等が香港にいた間、もう一つ…『イクシオン』と『ジョージ神父』という未だに無所属でありながら欧州で混沌を巻き起こした連中がおった」

「またあいつらかよ…」

「あのバカ共…今度は何をやらかしたのよ」

 

 アリアは項垂れ、キンジはため息をついた。自分達と同じくこの戦役に参加した、騒がしい連中がいたことを思い出した。玉藻も彼らの分析には困っていたようで苦笑いして話を進める。

 

「彼奴等はただ鍋をしていたおかしい連中かと思いきや…その『魔剱』と『妖刕』に勝ち、さらには魔女連隊の宿営地とされるノイエアーネンエルベ城へと襲撃したようじゃ」

 

「「「あのバカ達ならやりかねない」」」

 

 キンジとアリア、理子は声を揃えて即答した。武偵なのかと疑うハチャメチャな戦い方、武偵法ギリギリアウトな銃器を使ったりと別の意味でひどい。玉藻も頭を抱えているようで困ったように頷く。

 

「あの連中は結局何がしたかったのか、よく分からなん。じゃが…その連中と戦った後の眷属の行動が奇妙での」

「奇妙?どういうことだ?」

 

 首を傾げるキンジにワトソンが答えた。

 

「各地の師団の拠点を占領していた魔女連隊が急遽撤退してドイツへと集まったんだ。その後は自分達の拠点だけを奪還、防衛したりと守りに固まって魔女連隊の動きが静かになっていったんだ。それに続くかのように各地の眷属達もあまり攻めなくなった」

 

 師団の領域へと侵攻していた眷属が急遽攻めるのをやめて大人しくなったということだ。まるで師団を相手しないかのように何かに備えて守りに徹しているという。

 これで敵地へといつでも行けるとアリアも玉藻も気にしていないようで、こうなったのはあの4人組と神父が関連していると玉藻は唸る。ずっと静かに聞いていたレキが初めて口を開いた。

 

「つまり…眷属はカズキさん達と関わって何かを知った、ということでしょうか?」

「れきゅの言う通りだね。真相はカズくんよりも、あの『ジョージ神父』という人が握っていると思うんだ」

 

 レキの意見に理子は頷く。キンジもアリアも勘付いたように、カズキ達のブレーンであるジョージ神父が真相を握っている。なぜ未だに無所属を貫き通りしているのか、なぜ欧州へと向かったのか、全てがわかるはずだ。

 

「キンジ…私、あの神父に初めて会った時、昔どこかで会っているような気がしたの」

「アリア…」

 

 キンジは少し不安そうにしているアリアを見つめた。アリアの直感はよく当たる。アリアがこう言うなら、過去でアリアはその神父に会っているということである。キンジもこの戦役に関わっている身として、同じ武偵としてカズキ達に関わろうと決心した。

 

「兎に角…カズキ達を問い詰めるべきだな」

「キンちゃん、それはちょっと難しいかも…」

 

 キンジの意見に白雪が申し訳なさそうに述べた。

 

「カズキ君達は口を割りそうにないし…それに菊池財閥がそうさせないと思うの」

 

 菊池財閥は星伽と並ぶ日本で有力な存在。白雪の話によると最近は世界各地にも足を伸ばしていき星伽よりも大きくなっていくという。無理に問い詰めたら菊池財閥が何してくるか分からない。そしてワトソンも続けて述べる。

 

「それに菊池財閥だけじゃない…遠山と同じようにカズキ達も他に仲間が増えている。リバティーメイソンにも彼らに大きな借りがあるし、無理に手を出すべきじゃないと思うんだ」

「ワトソンの言う通りじゃの。師団からは奴等は眷属と繋がりがあるやもしれんと警戒しておる」

 

 玉藻までもが言うようにキンジは仕方なしとカズキ達を問い詰めるのをやめた。もし敵として戦うことになってしまったら…容赦なく装甲車で突っ込んで来たり、手榴弾や銃弾の雨霰、バラバラながらもごり押していくので相手にしたくない。とりあえずこのバカ達の話はそこまでにしておこう。

 

「玉藻、話が変わるんだが‥‥」

 

 キンジは玉藻に藍幇の戦いで勝ち取った、緋緋色金の殻金を渡した。いち早く、眷属たちが持っている色金を取り戻し、世界を巻き起こすこの戦いを終わらせアリアを救いたいと願っていた。

 

___

 

 

「…ってことをカツェから聞いた」

 

 おせちを食べながら、セーラはカツェから聞いた【十四の銀河】と4つの秘宝のことを話した。セーラの話を聞いたケイスケとリサは驚愕しながら頷いていた。

 

「そういう事か…これで何となくわかった」

「まさかそんな恐ろしいものがあるなんて‥‥」

 

 

「うーん、数の子おいちーっ!」

「ああっ!?ナオト、俺が最後に食べようと思っていた海老を取りやがったな!?」

「取らないたっくんが悪い…」

 

 残りの3人は全く話を聞いていないようで未だにおせち料理を堪能していた。本当にぶれないなとセーラは呆れていた。

 

「…たっくん、人の話を聞いてた?」

「勿論‼田作りは美味しいって話だろ?」

 

 ドヤ顔するタクトにケイスケは無言のゲンコツを入れた。やっぱりそうだろうなとセーラは頭を抱えてため息をつく。無論、カズキもナオトも人の話は聞いていなかったようで、ナオトは海老を食べながら尋ねる。

 

「それで…その二十四の瞳がなんだって?」

「いや違うぞナオト。十五の夜だろ」

「【十四の銀河】な。神父はそれを探しているってことだ」

 

 これで神父の目的が分かった。しかし、その世界を覆すほど恐ろしい力を持つ秘宝を何に使うのか、それが分からなかった。自分達を利用して悪用するのか真相を問わねばならない。もし悪用するのならば自分達の手で止めなければならないとケイスケは焦りを感じていた。

 

 その時、インターホンが鳴った。一体誰かとモニターを覗くと、ジョージ神父がニコニコしながら手を振っているのが映っていた。焦りをさらに増やすかのような事態に、ケイスケとセーラは冷や汗をかいた。そんな事情も知らないタクトははしゃぎながらジョージ神父を迎え入れた。

 

「やあ、皆。新年あけましておめでとう」

「「あけおめーっ‼」」

「神父様、新年あけましておめでとうございます」

 

 愉悦な笑顔で挨拶するジョージ神父にタクトとカズキはノリノリで、リサは礼儀正しく挨拶をする。一方でケイスケとセーラは警戒する様に見つめ、ナオトは無言で煮しめを食べ続ける。そんなケイスケ達の視線に気づいたジョージ神父は察したようで軽く微笑んだ。

 

「そろそろ話そうかと思っていたけど、どうやら既に話を聞いたみたいだね…」

 

「というか一体何が目的なんだ?なんで俺達を利用するんだ?」

 

 にこやかにしている神父にケイスケは敵意を込めて睨み付ける。ここまで怒っているケイスケにカズキ達は緊迫し、カズキがケイスケを宥める。

 

「…少し話が長くなるが、構わないかい?」

 

 ジョージ神父が真剣な眼差しでカズキ達に尋ねた。これまでにない真剣さにカズキ達も緊張して頷く。

 

「【十四の銀河】は悪用されれば世界が混沌に呑まれ戦乱の世が延々と続く。それらの存在とその事に気付いた私と弟のシャーロックは【十四の銀河】を誰の手に渡らせないように破壊することを決めたんだ」

「それって元から神父達の手にあったの?」

 

 タクトの素朴な疑問にジョージ神父は首を横に振る。

 

「いや…その当時は世界を暗黒時代へと戻し、世界に戦火を広げさせようとした男、モリアーティー教授が【十四の銀河】を使って企んでいたんだ。シャーロックは死闘の末、モリアーティーに打ち勝ち【十四の銀河】を破壊することができた」

「あれ?それならもうハッピーエンドじゃね?」

「馬鹿、まだ残りの4つの秘宝があるじゃねえか」

 

 首を傾げるカズキにケイスケが小突く。ジョージ神父は頷いて話を続けた。

 

「私もシャーロックもその4つの秘宝の存在に気付いたのは第一次世界大戦後のことだ。私は神父として、弟はイ・ウーのリーダーとして世界各地を転々し…誰にも見つからないように封印をし、これで終わったと思っていた…しかし何者かの手によって【十四の銀河】は復元され、4つの秘宝の封印が解かれてしまっていたんだ。世界の裏側で暗躍し再び世界を混沌へと貶めようとされている」

 

「神父様はそれらを探しながら世界各地を旅していたのですね…」

「それで、なんで俺達に探させようとしているんだ?」

 

 ケイスケがようやく核心へと問い詰めると、ジョージ神父はややすまなさそうに笑って答えた。

 

「私とシャーロックの条理予知でね…無限の可能性を秘めていると言われている君達でなければ【十四の銀河】は封印できない、と推理されたんだ」

「推理ってアバウトすぎるだろ…」

「無限の可能性って…やっぱりこの漆黒の堕天使はすげえんだな‼」

 

 ケイスケが呆れている横でタクトはドヤ顔でポーズをとっていた。無限の可能性どころか、中二病の塊と思われる自分達でそんな大それたことができるのか、ケイスケは不安だった。そんなケイスケの不安をよそにカズキは目を輝かせて頷いていた。

 

「つまり…俺達が勇者ってことだな‼たっくん、ナオト、ケイスケ‼俺達でその中二病をどうにかしようぜ‼」

「まずはお前の頭をどうにかしろや」

 

 突然やる気満々になっているカズキにケイスケはチョップを入れる。下手したら世界が大戦争を勃発、今までにない危険なものに自分達が巻き込まれる恐れがある。

 

「神父がここに来たってことはその一つの在処が分かったの?」

「なっ!?ナオトお前もかよ!?」

 

 さっきからおせちを食べて話を聞いていなさそうなナオトがカズキと同じくらいやる気を溢れさせて訪ねていたことにケイスケは焦って驚く。ジョージ神父は頷いて話す。

 

「そうだね…イタリア、バチカンに4つの秘宝の一つ【究極魔法・グランドクロス】が隠されているとシャーロックから聞いた。私はイタリアへ向かう前に君達に伝えに行こうと思っていたんだ」

 

 4つの秘宝の一つがイタリア、バチカンにある。しかしカズキ達は修学旅行Ⅱは修了しておりどうにかして向かうことができない。今回ばかりは行く手がないことに悔しい半分、複雑な心境であった。それでもタクトは諦めていないようで神父に伝える。

 

「神父‼俺達が何とかして行けるようにするから少し待ってくれませんか!」

「たっくん、お前もマジでやる気かよ…」

 

 結局、自分以外やる気に満ちていることにケイスケは呆気にとられる。そんなケイスケにタクトはノリノリで頷く。

 

「だって世界を救うかもしれねんだぜ?なんかかっこいいじゃん‼」

「ケイスケ、俺達じゃなきゃできないんなら、俺達でやるしかないだろ!」

「誰かがやらなきゃ取り返しのつかない事になりそうだしな」

 

 タクトは兎も角、カズキやナオトまでもが言い出しケイスケはどうするか悩んだ。ちらりと見ればリサもヤル気満々のようで、セーラは同情の眼差しでこちらを見ている。お前も巻き込まれるんじゃね?と思いつつケイスケはヤッケになって頷く。

 

「畜生。やってやるよ‼どうせほっといても巻き込まれるんならこっちからやってやる‼」

 

 俺の平凡を返せとケイスケは怒りながらのることにした。そんなカズキ達を見つめながらジョージ神父は微笑んだ。

 

「…ありがとう。君達を全力でサポートしよう」

 

「セーラ様、私達もカズキ様達を支えてあげましょ」

「結局こうなると思った…」

 

 絶対にやろうというリサとは反対にセーラはこうなることは予想していて、仕方ないとため息をついた。

 

___

 

 冬休み終了間近である武偵校にてカズキ達は校長室へと向かっていた。なんでも急遽蘭豹先生や綴先生から電話があり『至急、武偵校に来るように』と言われやって来たのだった。苦笑いしている綴先生と不機嫌気味な蘭豹先生に教務科の5階にある校長室へと連れてこられた。

 

「緑松校長、失礼します。綴です。『イクシオン』の5名を連れてきました」

「はい、はい。どうぞ」

 

 中年男性の声に続いて綴先生がドアを開けてカズキ達を校長室へ入れた。カズキ達は緑松校長に会うのはリサの件以来で、どんな男性だったかは覚えていなかった。緑松校長はにこやかにカズキ達を迎える。

 

「まずはおめでとう。君達『イクシオン』には二つ名がつけられました」

「二つ名‼もしかして『情熱のサイコパス』とかですか!」

「そんな物騒なもんつくか」

 

 わくわくするカズキに蘭豹先生はげんこつを入れる。というよりもなんでそんなものが思いつくのか、緑松校長は苦笑いして話を続ける。

 

「君達にはチーム1つで『混沌(カオス)』という二つ名を。『(エネイブル)』という二つ名がついた遠山キンジ君に続き、正式開校時から5年、在学中の国際武偵連盟による認定は当校の歴史上15人目。2年次では3人目の快挙です」

 

「皆様…本当に凄いです!」

「なんかすごいもんが付いちまったな…」

「えー、俺は武偵界に君臨せし真紅の稲妻スーパー堕天使フォーエバーがよかったなー」

「というか、キンジすごくね?」

 

 二つ名が付いたという事にバラバラの反応に綴先生も蘭豹先生もやれやれと肩を竦める。緑松校長は一度軽く咳払いをして話を続けた。

 

「それともう一つ…ここから先は君達の進路に関わる話です」

 

 先程の明るい様子から一変し、真剣な様子へと変わった緑松校長にカズキ達はビシリと固まって姿勢を正した。

 

「君達の評価は…バラバラでありながらもやることはキチンとやる。やり方は多少やり過ぎなところもあります。外交面ではドイツ、アメリカから君達を肯定的に見ているようで、そこそこ良い所ですね」

 

 一応褒められているようなのでカズキ達はほっと一安心しているようだがそれは束の間、緑松校長は苦笑いしてカズキ達を見つめる。

 

「外交、内部の方は問題ないのですが…単位の方があまりよろしくありませんね。ケイスケ君とリサさんはどうにかなりそうですが、このままだと折角のチームがバラバラになってしまいますよ」

 

 外交や内部に関しては菊池財閥やジョージ神父らがバックアップしておりどうにかなるが、単位の方は自分達がどうにかしないと解決できない。というより単位が取れない理由なら嫌というほど思い浮かべれる。

 

「それに…修学旅行Ⅱのレポートは出しましたか?」

「「「あっ…」」」

「おおい!?忘れてんじゃねえよ!?」

 

 修学旅行と言えども授業の一環なのでレポートの提出は単位を稼ぐのなら必須だ。それをカズキとタクト、ナオトはすっかり忘れていた。マジかよとケイスケだけでなく蘭豹先生も綴先生も頭を抱えていた。ケイスケもリサもレポートを書いて提出していたが、ドイツでゾンビしか印象に残っていなかったから書くのに一苦労した。

 

「それでは単位を落としてしまいますね…こちらとしても折角二つ名が付いた君達を留年させるわけにはいきません。そこで、君達には一つ提案があります」

 

 緑松校長はカズキ達に一枚の資料を渡した。資料には『海外短期研修について』と書かれていた。一体どういうことなのかカズキ達は首を傾げる。

 

「簡単に言えば数週間程度の留学を行ってもらいます。海外の武偵校に行き、授業を受けて頂くだけで単位を取れますのでカズキ達の留年は免れることができますよ」

 

「すげえよたっくん‼俺らやっぱり海外デビューも夢じゃないぜ‼」

「校長先生‼俺、世界的スターになる!」

「たっくん、それジャンルが違う」

 

 一応緑松校長の救済措置なんだけどな、とケイスケは興奮するカズキとタクトとナオトを宥める。

 

「喜んでくれて何よりです。尚、行先は…中国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスそしてイタリアの6つの国のどれか一つの武偵校に行ってもらいます」

 

 緑松校長の話を聞いてケイスケは「あっ」と口をこぼす。ケイスケの嫌な予感は的中してしまい、カズキ達は声を揃えて即答した。

 

「「「イタリアでお願いします‼」」」

 

「ふふふ、元気がよろしい事で。では、ローマ武偵校に連絡を入れておきますね」

 

 にこやかにしている緑松校長と声をあげて大喜びしているカズキ達をよそにケイスケはやっぱりこうなるんだとため息をついた。




 
 次はイタリアへ…『ダヴィンチコード』や『天使と悪魔』『インフェルノ』を読み直さなきゃ(使命感)
 原作の緋弾のアリアの方はなんかモリアーティー教授がなんか生きてるみたいな事を話してますが、こちらの物語はモラン大佐のこともあって、ここではモリアーティー教授は死んでいる事にします。ややこしくなりそうなのですみません

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