カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼ 作:サバ缶みそ味
イタリア編スタート
イタリアは映画やアニメや小説と色んな作品の舞台になってますね…
59話
「神父から手紙?」
ノイエアーネンエルベ城にて静刃は突然やって来たセーラから手紙を受け取った。静刃達は戸惑っていたが手紙を持ってきたセーラ自身も困っていた。
「神父が私にお前達以外に見せないように渡してくれと頼まれた」
「神父には雲外鏡を要求しておるのに、一体どういうことだ?」
貘は憮然としてため息をつき手紙を受け取った。あの騒がしい4人組の考えていることも読めないが神父も何を考えているのかさっぱりだ。
取引で雲外鏡が渡され、すぐにでも元いた時代に帰るつもりだったのに、また先延ばしされそうだと静刃とアリスベルは心配になった。
「‥‥これはどういうことだ?」
手紙の封を開けて書かれている内容を読んだ貘が更に目を尖らせた。一体何が書かれていたのか静刃とアリスベルもその手紙に目を通した。
「『誰にも気付かれないようにローマへ向かえ』…?」
「このままイタリアへ行けと…神父は何を考えているのでしょうか?」
他に陸路での手配はするしか書かれておらず、神父の無茶苦茶な頼みに静刃達は困惑した。魔女連隊や眷属、そして同じ獣人であり、『胡蝶の魔女』と呼ばれたクエスに気付かれないようにイタリアへ行く理由が分からなかった。ローマと聞いてセーラはピクリと反応する。
「確かたっくん達がイタリアのローマ武偵校に短期研修としてやって来る」
「つまり…イタリアでひと悶着あるってわけか」
またあのバカ達を中心に何かが起こるということであり、自分達は彼らを助けにいくことだろう。しかしなぜ突然イタリアへ行けと頼んできたのか考えていると、さっきから酒を飲んでへべれけになっていた鵺がゲラゲラと牙を見せながら笑う。
「ケケケ…隠密に動けってことだじょ。【十四の銀河】絡みとなりゃ下手すりゃ第三次世界大戦が勃発する代物だからなぁ」
「【十四の銀河】…?あの時ブラックウッドが言っていたことか。鵺は知っているのか?」
その【十四の銀河】とは何か静刃もアリスベルも知らなかった。そんな二人に鵺は悪そうな笑みをする。
「獣人も喉から手が出るほどのやばい神器だじょ。貘、知っているくせに教えないというのはお主もワルよのぅ」
ニヤニヤと見ている鵺に貘は図星かのように睨み返した。獣人達も知っているということはかなり有名な物なのだろうと静刃は読み取った。
「二人に教えなかったのは、静刃とアリスベルを巻き込んでいけないと考えていただけだ。だが…神父の頼み事は実行するしかないな…」
貘は自分なりに静刃とアリスベルをこの危険な代物に関わらせないようにと考えていたが、こうなってしまった以上、隠しきれないと判断し神父の手紙の通りにやるしかないと決めた。躊躇い気味の貘に対し鵺はノリノリのようで酒瓶の酒を一気飲みしてにやりと笑う。
「それじゃあ、善は急げ。さっさとローマへと向かうじょ!」
「…やっぱり私もやるのか」
セーラも手紙の内容を知ってしまったからにはやらなくてはならない状況になったとため息をついた。すぐに出発だと急かす鵺に静刃とアリスベルもこの先の事に不安でいっぱいだった。
「今度は何に巻き込まれるんだっての…」
再びあの4人組の騒動に巻き込まれることに静刃は頭を抱えた。
カズキ達がローマに訪れる3日前の出来事であった。
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飛行機が飛び立つ音が響き、地中海の海がすぐに見えるイタリアのフィウミチーノ空港。その到着ロビーに喧しい声が響き渡る。
「すぽおおおおんっ‼」
「うるせえよ!」
喧しく叫ぶノリノリのタクトにケイスケが小突く。これはあくまで旅行ではない、短い期間だがローマ武偵校に留学するのだから気を引き締めてもらいたいとケイスケは注意しようとした。
「ケイスケ‼俺はピザが食べたい‼」
「ローマの休日…」
カズキは既に食い気に満ち溢れているし、ナオトはたぶん名所にでも行きたいようで、それぞれ考えている事がバラバラな事にケイスケはため息をついて呆れた。
「あのな、先にローマ武偵校に行って挨拶しに行くんだっての」
「じゃあそれが終わったらピザだな!」
「トレビの泉にも行きたい」
「そんな事よりナポリタン食おうぜ‼」
明らかにローマ武偵校に挨拶しに行くのを二の次としか考えていないことがみえみえである。1人はイタリアンではないのだが。長い空の旅の事もあって疲れているだろう、ケイスケはやれやれと肩を竦める。
「しょうがねえな。明日から授業だからな、そこは弁えろよ?リサ、案内を頼む」
「はい、空港からローマまではシャトルバス、ローカル線、直通列車があります。時間を気にせずゆったりと景色を眺めたいのでしたらシャトルバスがいいですね」
「よし、それで決まり!バスターミナルまで全速前進だ‼」
そう乗り出すや否やタクトははしゃぎながら駆け出していった。迷子になるから先に行くなとカズキとナオトがタクトを止めようとする。一応、イタリアに行くまでの間にリサのパーフェクトイタリア語教室のおかげである程度は理解できるようになった。リサがいなければ4人全員でボディランゲージのままだっただろう。
「ほんとリサがいてくれて助かった…」
「うふふ、ケイスケ様達のお力になれて何よりです」
「ケイスケー‼ナオトとたっくんが迷子になったー‼」
目を離すとこれである。ケイスケはなんですぐにこうなるのか、怒号を飛ばしながらナオトとタクトを探し出した。結局、空港から出てバスターミナルに着くまで30分以上かかった。
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空港からローマまで40分、カズキ達は車窓から見えるローマの街並みを堪能しつつテルミニ駅へ。更にバスに乗り換えでローマ郊外にあるジョルジオーネへ向かい、緑の多い敷地にある平たいビルに見えるローマ武偵校へと辿り着いた。リサ以外の4人組は想像以上のボロさの武偵校に口をあんぐりと開けていた。
「め、名門の割には…ふ、風情があるな!」
「カズキ、下手に褒めなくていいんだぞ。昔からあるんだ、老朽化してもおかしくねえよ」
「持ち味を活かせ‼」
「…たっくん、使い方間違ってる」
あまりもの古さにカズキ達は戸惑いつつも、荷物を持ってローマ武偵校へと向かった。ここの担当の教師に挨拶をして、武偵校内にある寮へと泊まる。これだけ古いのだから寮も相当古いだろうなとカズキ達は苦笑いしながら歩いていたが、正門が見えてきたところで歩みが止めた。
正門前には大人数の黒い制服を着た武偵校の生徒が待っていた。イタリアの武偵校では黒の制服を着るのが通常だが、これだけの数でいると少し威圧感を感じる。しかも生徒たちは皆険しい顔をしており、明らかに出迎えムードではないことにカズキ達は察した。その中でタイトな黒制服を着た縦ロールの少女がにこりとカズキ達に微笑む。
「貴方達が日本から来た武偵…『イクシオン』のメンバーですわね?初めまして、ローマ武偵装備科のロゼッタですわ」
「うわっすげえドリル」
「カズキ。あのドリル頭、天元突破できそうじゃね?」
第一印象から殴り込むように見ているカズキとタクトの発言にロゼッタは眉間にピキリと青筋を浮かべる。ロゼッタは咳払いをしてカズキ達に敵意を込めた笑顔を見せた。
「ローマ武偵校へようこそ、とお迎えをしたいところですが‥‥貴方達を逮捕いたしますわ」
「「「「…は?」」」」
突然の逮捕宣言にカズキ達はキョトンとしていた。何か悪い事したわけでもないのに、彼女含め彼女の周りの強襲科であろう所謂イケメン男子達も逮捕する気満々のようだ。ジョークではない事に気付いたケイスケは焦りだす。
「おい、待てよ!俺達何もしてねえぞ!?」
「おほほほ、理解しなくてもよろしくてよ?ローマ武偵校にバチカンから、貴方達を逮捕するよう要請がありましたの。何やら、枢機卿の1人を殺害未遂したとか」
「…俺らさっき来たばっかりなんだけど!?」
あり得ないことにナオトもぎょっとしていた。さっきイタリアに来たばっかりなのに身に覚えもない罪に問われ、しかも武偵に狙われるとは思いもしなかった。ドリル頭と言われて頭にきたのか、ロゼッタ達は聞く耳を持たないようだ。
「貴方達の言い訳は逮捕してバチカンへ引き渡す間に聞きますわ…」
「ケイスケ…これ、やばくない?」
「やばいってレベルじゃねーよ‼いいか…ことは荒げないように逃げ(ry」
「武器よさらばっ!」
「たっくん、それダメだろ!?」
ケイスケが言い終える寸前に、ナオトが制止する前にタクトは鞄からフラッシュ・バンを取り出し、ロゼッタ達に向けて投げた。閃光と衝撃が響き、不意を突かれたロゼッタ達は怯んだ。こうなってしまってはもう誤解は解けない。カズキ達は回れ右をして走り出した。
「だから荒げるなっていってんだろがクズ‼」
「え?イタリア版逃走中じゃないの?」
「どこが!?マジでガチだぞあれ‼」
「というかどうするんだ!?」
「と、兎に角、日本大使館へ逃げましょう!」
リサの提案に頷き、カズキ達は一目散に駆け出す。閃光と衝撃に怯み後れを取ったロゼッタはギリギリと歯軋りをして怒りだす。
「舐めた真似を…‼お前達、お行きなさい!」
ロゼッタの取り巻きであろう黒の制服を着た男子達は彼女にアピールしたいと我先にカズキ達を追いかけだす。残ったロゼッタは同じく正門に残った自分より身長が低い少女に軽蔑の視線を向けた。
「あら?ベレッタお姉様、もうSランク武偵じゃないのにおいでなさったの」
「…別に。バチカンの枢機卿を襲った連中の顔を見に来ただけよ」
装備科で元Sランク武偵であるベレッタ・ベレッタは無関心に返す。ベレッタは春季に車輌科へ転科、Eランク武偵として移るのであった。ベレッタはロゼッタとあまり話す気はないのか、フンと鼻で返す。
「ロゼッタ、あんなマヌケ面の連中に殺害未遂ができると思うの?」
「やですわぁお姉様。人間見た目に反して何を考えているのか分からないのですよ」
「ふーん…別にいいけど」
ベレッタは興味ないように踵を返して学園へと戻っていった。ベレッタにとってあの連中ことはどうでもいい、今は奨学金でサポートしている遠山キンジに留年フラグが立っていることに危機感を感じていた。奨学金付与を自社のベレッタ社に進言したのも自分であり、留年してしまったら社内の立場が危うくなる。
「あのブタ…留年したらとっちめてやる…‼」
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「あいつらどこまでも追いかけてきやがる‼」
「こんなにしつこいなんて、マスタング大佐かよ‼」
ケイスケとタクトはうんざりと悪態をつく。ローマの街中をカズキ達は必死に走っていた。逃げているカズキ達を捕まえようとローマ武偵校の生徒達が追いかけている。あちらの方が地理に勝っておりこのままだと挟み撃ちにされるか追いつかれて捕まってしまう。
「次の角を曲がって逃げよう!」
「角って幾つもあるけどどっち!?」
「んな事言わなくても分かるだろ‼せーので曲がるぞ‼」
「せーのっ‼」
ナオトの合図で角を曲がろうとしたが、カズキとナオトは左へ、ケイスケとリサは右へ、そしてタクトは真っ直ぐとバラバラに分かれてしまった。
「えええっ!?なんで!?」
「もう戻れない‼カズキ、兎に角逃げるぞ‼」
案の定、ここでもバラバラなことにカズキは苦笑いしながら驚き、ナオトはやむを得ないと走り続けた。
「あんのバカ共‼やっぱりこうなるのかよ‼」
「け、ケイスケ様‼必ずカズキ様達とは合流できます!今は逃げる事を第一にしましょう!」
リサに宥められながら、ケイスケは怒りながら走って行く。リサの言う通り今は安全な場所へと逃げるしかない。そうすれば必ずカズキ達と合流できるとケイスケは言い聞かせながら駆けていく。
「うおおおお‼お前等、俺についてこい‼」
タクトは後ろを顧みず、寧ろカズキ達とはぐれたことには全く気付いていないようで、ただひたすら真っ直ぐ走り続けていた。
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「くそっ…めんどくさい連中だぜ‼」
ケイスケは舌打ちして追いかけてきている武偵の生徒達に悪態をつく。ケイスケはついて来ているリサの方を見る。リサは少し疲れているようで、疲れを見せまいと何とか走ってついて来ている。ドイツのゾンビ戦の時といい、自分は長距離を走り慣れているがリサは慣れていない。
このままだと大使館に着く前にお縄についてしまう。まずいとケイスケは焦るが、まだ手は一つ残っている。
「理子に教えてもらったが…一か八かやるしかねえ!」
ケイスケは鞄から癇癪玉を取り出してやけくそ気味に後ろへ投げつける。青や赤、黄色といった玉が追いかけてきている生徒が踏んで大きな破裂音を響かせる。生徒が驚いて怯んだ隙にケイスケはリサを姫抱っこして人混みの多い道へと駆けだす。
「ケイスケ様!?」
リサは突然の事に焦って目を丸くするがケイスケは構わず走る。屋台や市場で観光客で賑わう中を駆け、花屋に目を付けたケイスケは突然止まる。
「こ、これいくら!?」
ケイスケは流暢なイタリア語で話して白いバラの花束を買おうとしており、どうするのかリサはきょとんとしていた。値段を聞いたケイスケは支払う。
「釣りはいらない‼…リサ、これを持って!」
ケイスケは買った花束を渡して再びリサを姫抱っこして駆け出す。ケイスケはキョロキョロしながら走っており、屋台に目を付けて駆けこんだ。
「すみません!追われているんです、助けてください!」
ケイスケは再びイタリア語で助けを求めた。コック帽を被った黒髪の女性はいきなり助けを求められて一瞬驚いていたが、リサを姫抱っこしているケイスケをマジマジと見つめてフーンとニヤニヤしだした。
「青春だねぇ…いいっスよ‼こっちに隠れるといいっス!」
ノリでOKを貰えて屋台の中へと隠れることができた。その数分後にドタドタと武偵校の生徒が追いかけてきたようで「何処に行った」とか「くまなく探せ!」と騒がしく荒げる声が聞こえてきた。そうして足音が次第に遠くなっていき聞こえなくなった。
「…もう大丈夫っスよ」
うまく撒けたと女性はにこやかにケイスケに声を掛ける。理子が教えてくれた『イタリアの人はノリがいい』ということは眉唾物だったが、うまくノリで難を逃れたでケイスケはほっと一安心して息を吐く。
「リサ…取りあえず、見つからないように宿に泊まって状況を整理するぞ」
「それがいいかもしれませんね…」
今は安全な場所まで逃げて、どうしてこうなったのか調べていかなければならない。ケイスケは匿ってくれた女性にありがとうございますとお辞儀をした。
「ま、助け合いってことで!そうだ、うちの名物、鉄板ナポリタンでも食っていきなよ‼お熱いお二人にお似合いっスよー!」
「‥‥なんてこった」
ケイスケはポカンとしていた。まさかあれほどイタリアでナポリタンを食べたいと言っていたタクトより先にイタリアでナポリタンを食べる羽目になるとは思いもしなかった。
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「ナオト、ここやばなーい!?」
「狭い道なら大丈夫かなって思ったけど…ここどこ!?」
適当に道を走るカズキ、方向音痴のナオトが合わさり道に迷ってしまい、気づけば狭い路地へと駆けていた。地理を理解していない二人は慌てふためきながら駆けていく。入り組んだ道をあっちこっちと曲がって進んで行けば行くほどここが何処だか分からなくなっていく。
「ナオト‼これって綾小路じゃん!」
「袋小路だろ。もう進むしかないって‼」
そこは冷静にツッコむんだとカズキは感心していたのだが、それは束の間、後ろから追いかけてきている武偵の生徒だけでなく、前方からも追いかけてきているのが見えた。
「こ、これって挟み撃ちじゃん!?どうするんだナオト‼」
「こうなったら…もう力づくでやるしかない…‼」
相手は恐らく強襲科の生徒、格闘ができるナオトは覚悟を決めて拳を構えたが、近接は得意じゃないカズキは焦っていた。
その時、路地のマンホールから勢いよく水流が噴き出した。まるで意思でもあるかのように水流がうねり出し、後方から追いかけていた武偵の生徒達を勢いよく押し流していく。
今度は前方から迫ってきている武偵の生徒達の頭上から発煙手榴弾が幾つも落ちてきた。巻き上がる何色もの煙はどうやら催涙ガスのようで武偵の生徒達は「目が、目がぁぁぁ!?」と喚いていた。
上から煙、下から水と突然起きたことにカズキとナオトはポカンとしていたが、上からトレンチコートを着てお面を付けた見覚えのある人物と黒のとんがり帽子に軍服とお面とこちらもお見覚えのある人物が降りて来た。
「「こっちだ‼」」
その二人はカズキとナオトの手を取って走り出す。入り組んだ道を駆けていき、ひと気のいない空き家へと隠れた。追いかけてくる気配がないようで何とか逃れたことにカズキとナオトは安堵し、助けてくれた人物に視線を向ける。
「い、いや~、助かったぜ、カツェ‼」
「…ワトソン、助かった」
カズキとナオトは笑って助けてくれた人物の名を言って感謝を述べた。一方、カズキ達を助けたカツェとワトソンはお面を外した後、お互い敵意剝き出しで睨み合っていた。
「魔女連隊のカツェ・グラッセ…眷属の命令かい?ナオト達を危険な目に遭わすなんて…」
「はっ、リバティーメイソンのエル・ワトソンか…おい、師団は頭沸いてんのか?カズキ達をどうするつもりだ?」
まさかの師団と眷属のご対面のようで、一触即発の状態だったのだが、カズキとナオトはのほほんとしていた。
「二人とも仲いいんだな!」
「「違う‼」」
色んなものがごっちゃになってより混沌となっていきそう…これもドイツ編より長くなりそうな気がする(白目
パスタはナポリタンが好きです(コナミ感)