カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼ 作:サバ缶みそ味
「
リサはベランダから東京の夜景を眺めて感動していた。あの後、カズキ達は放課後の活動はせずに速効に家へ帰りリサを東京の街中へ連れてって行った。人混みの多さに、コンビニエンスストアに、あらゆるお店に感動し、目を輝かせていた。
「この国はキレイで…素敵な国ですね」
目をキラキラと輝かせ感動しているリサにカズキ達は少々苦笑いをした。サービスやおもてなし、礼節、清潔といった日本文化は素晴らしいものと感じているのだが、リサの目の前にいる野郎4人は少々汚いと実感している。
「よし、我が家にリサちゃんが来たということで何か食べに行こう!焼肉にしようぜ‼」
「たっくん、ナイスアイディア‼ピザが食べたいぜー‼」
「‥‥リサは何が食べたい?」
焼肉がいい、ピザがいいとギャーギャーと喚いているカズキとタクトをそのままにしてケイスケとナオトはリサに聞いた。リサは目をぱちくりして首を傾げていた。
「夕餉ですか?それでしたらリサが作りますよ?」
「マジで!?ピザ作ってくれるの!?じゃあマルゲリry」
「お前には聞いてないし黙ってろ。今日はお祝いということで外食だ、遠慮しなくていいんだぞ?」
ケイスケは作ってくれと懇願するカズキの口を塞ぐ。リサはというと照れながら少しモジモジしていた。
「で、でしたら…に、日本ならではの料理を食べてみたいです」
「それじゃあ…寿司で決まりだな」
「ヨッシャー‼スッシ食いねー♪」
「ケイスケ太っ腹‼回らない方だよな!」
「あ゛ぁ?」
ケイスケに睨まれたカズキは蛇に睨まれた蛙のように畏縮した。寿司食いねぇとタクトは歌いながら『回る』『回らない』寿司とは何かとキョトンとしているリサを連れてすでに車庫に向かっているナオトに続く。皆で回転寿司屋に向かったのだが、そこでも案の定チェーンコンベアで流れている小皿に載った寿司に目を輝かせて『モーイ』を連発した。
__
あれから数日が経過し、リサも日本文化にいくつか間違った知識を持っていたがここでの生活に慣れてきたようだ。彼らが驚いたのは彼女の料理の上手さだけではなく、買い物上手だということだった。騒がしい4人がいつも無駄なものを買って多く費やしていた食費が彼女のおかげで物凄く下がったのだ。おかげで何かとアンバランスだった4人の生活も健康的になったという。一方で料理上手ということでタクトが料理ではライバル視していることもちらほら。
また、看護と薬剤師の技術も少々あるということで、武偵高校のケイスケの医務室にいるときはケイスケの手伝いや助手もやっているとのことだ。『ケイスケが美女の助手を雇った』という噂が広まり、仮病と称してリサを拝めようとやってくる男子共にはケイスケの破壊級足つぼマッサージや般若のお面を付けて威圧し追い出していた。最初の頃はビクビクとしていたリサだったが今はもう笑顔で明るく元気になり、4人の癒し系マスコットキャラとなっていた。
そんなのほほんとした日々が過ぎたある朝の事、朝早く起きたナオトは眠たそうにしながらも門前にあるポストに入っているだろう新聞を取りに出た。ポストを覗きいつものように新聞を取ろうとした時、新聞紙以外にも何か入っていることに気づいた。手を伸ばして取ってみるとしっかり封をされた何かと分厚い茶封筒だった。誰宛てかと調べていると端っこに『byジョージ』と書かれていた。あれから連絡しても応答がなく、教会に行ってもいなかったあのジョージ神父からの物だとわかったナオトは一気に眠気が覚めて急いで皆の下へ戻った。
「おい‼神父から何か届いたぞ‼」
のんびりと朝食をとっていたカズキ達は食べるのやめて驚いた。カズキ達はナオトの持つ分厚い茶封筒を見る。
「マジでか!?ジョージ神父からなのか!?」
「待ってたぜオイ‼」
「おい、ちゃんと中身を調べたのか?」
カズキとタクトは喜んでいたが。ケイスケは警戒して聞いた。木箱を渡されたとき、中にはリサが入っていたことには気づいていなかったがあの後謎の武装集団が襲って来たあの時をケイスケは忘れていなかった。もしかしたらジョージ神父の名を騙って爆弾か何かを送り込んできたのかもしれない。
「じゃ、見るわ」
「おおい!?」
そんなケイスケの考えにお構いなくナオトは茶封筒の封を開けた。ケイスケはぎょっとしてリサと一緒にテーブルの下へ隠れる。しかし、何も起こらなかったのでどうやら爆弾でもないことにケイスケは安堵した
「ぷぷぷー、ケイスケなにびびってんだー?」
とっさに隠れたケイスケにカズキはニヤニヤと笑う。カズキはその直後にケイスケのアイアンクローの餌食となった。カズキの悲鳴の中、ナオトが茶封筒の中を覗いて取り出したのは透明のケースに入ったDVDのディスクだった。
「…DVD?」
「とりあえず見てみようぜ‼D・V・D!D・V・D‼」
何かとリズムに乗ってはしゃぐタクトに急かされてナオトは茶封筒に入っていたディスクをDVDプレイヤーに入れてテレビをつけた。テレビの画面はしばらく砂嵐のままだったが、突然パッと映像が変わった。映っていたのは綺麗な砂浜と海をバックにビーチチェアでくつろいでいたハイビスカス柄の白いアロハシャツと赤いアロハズボンを身に着けたジョージ神父だった。しかも片手に青いカクテルを持って愉悦に浸っている。
『お、映ったようだな。やあナオト、皆。元気にしているかい?』
「どこのホームビデオだよ!?というかあのクソ神父なに寛いでいやがんだ‼」
「すっげえ‼ビーチだ、常夏のバカンスでしょ‼」
ケイスケの怒りの怒声とタクトの興味津々の喜びの声をよそにジョージ神父は話を続けていた。
『私は今、タヒチ島で寛いでいるよ。たまには息抜きをしないとね…ところで、リサと一緒に過ごしているかい?』
「なんと…ジョージ神父はお見通しのようですね」
「ああ、もうびっくりだわ」
まさにジョージ神父の予想が的中していることにカズキとリサは驚く。その後はやたらとジョージ神父のタヒチの高いホテルででる料理や海がきれいだとか自慢話が続いた。すぐにでもテレビを消してDVDを破壊してやろうとしているケイスケを抑えていた時だった。
『…さて話を変えようか。このDVDが届いてきたのなら君たちも警戒してくれ』
ジョージ神父が真剣な眼差しに変わったことに気づいた4人は動きを止めて真剣に映像の方に集中した。ジョージ神父がこんな表情になったということは何かヤバイことなのだろうと察していた。
『まずは私がこの島にいる理由だ。『物騒な連中』から君たちにリサを預っていることを知られないためにデコイを使って引き離そうとしていたんだ。途中まで上手くいっていたんだが、バレてしまってね』
映しているカメラが苦笑いしているジョージ神父の場所から右へ動く。そこには焦げ焦げに焼けていたリサと同じくらいの身長のある人形があった。本物に似ているというぐらいよくできていた人形だった。カメラがジョージ神父の方へ戻る。
『リサの話を聞いているなら『物騒な連中』のことはわかるだろう』
カズキ達は木箱を渡されたときに突然襲って来たあの集団を思い出した。そしてリサがどこから来たのかどうして日本に来たかその理由を話した時も思い出す。
「『イ・ウー』…」
4人は同じ単語を口にこぼす。超人的な戦闘集団が集う秘密結社みたいなもの。犯罪組織だということならあの時襲って来た連中も『イ・ウー』なのだろうか。4人は疑問に思いながらも映像を見続ける。
『たぶんリサが話をしてくれているのなら、『イ・ウー』であっているよ。リサを狙っているのは『ジャック・ランタン』と呼ばれる『イ・ウー』から抜け出した裏切り者を殺す『始末屋』だ』
「ジャンボ・ラーメン?」
「カボチャだってつってんだろ」
どう聞いたらそう間違えるのかケイスケはカズキにツッコミを入れる。
『『イ・ウー』は裏切り者には厳しい連中もいるという。その理由として『司法取引』があげられる』
司法取引。簡潔に言うと逮捕された被告人が捜査、裁判に協力することで求刑の減刑や罪状の取下げが為される制度のこと。捜査を協力し晴れて自由、その代り公安とかから監視の目もあるが社会復帰できるということだ。
「…何かとヤバイ連中がいる『イ・ウー』の誰かが捕まって、司法取引をするということなら…」
ナオトはその後は黙った。捜査で共犯者や他の仲間のことをしゃべれば世紀の大検挙。ぞろぞろとお縄につくだろう。
『自分たちの情報をバラされるのを恐れている奴がわんさかといる。『始末屋』は司法取引した者や抜け出した者を執拗に追いかけて追い詰めて殺していく…勿論、リサも標的だ』
リサはジョージ神父の話を聞いていて震えていた。ジョージ神父はリサを守るために自ら囮となって引き寄せていたということだった。しかし、デコイだとバレてしまったということは…4人の背に冷たい汗が流れる。
『『始末屋』は日本へと戻っていったよ。私は急いで戻るのだが…ナオト、カズキくん、タクトくん、ケイスケくん。リサを奴らから守ってやってくれ、これが新しい依頼だよ』
突然のジョージ神父の依頼に4人は頷くこともせず黙ったままだった。どうすればいいのか戸惑っていた。悪の組織に追われる美しい女性をダンディなエージェントが悪の組織から守るというよくあるアクション映画みたいなことが起きていることに実感がないからだ。
『君たちならできることを期待している…それじゃあ失礼するよ。あ、言い忘れてたけどこの映像が終わったら自動的に壊れるから』
「じゃあねー」と愉悦な笑顔で手を振って映像がぷつっと切れて黒い画面に戻った。そしてDVDプレイヤーからバチッと火花が散る音がして焦げた臭いがリビングに広がる。
「なんてことしやがる‼」
「ひぅっ!?ご、ごめんなさい‼リサの…リサのせいでこんなことに…‼」
突然声を荒げて怒るカズキにビクッとしてリサは何度も頭を下げた。それでもカズキは怒りが収まらないのかプンスカと焦げた臭いを出すDVDプレイヤーを取り出す。
「このDVDプレイヤー、結構高かったんだぞ‼」
「え?えっ?」
「…カズキは大事なDVDプレイヤーが壊されて怒ってる。リサには怒ってないよ」
ナオトがフォローを入れる。ナオト達もリサには怒っていないことを話してリサを落ち着かせる。しかし、それでも問題は残っている。
「それでどうするんだよ?」
ケイスケの質問にカズキは深く頷く。これから何処かから襲ってくるであろう敵からどうするか、一同深く悩んでいた。
「リサを守る!」
「たっくん、言うのは簡単だが…相手は殺しに慣れている連中だぞ?」
ケイスケの言うことに一理ある。『始末屋』は裏切り者を殺してきた腕のある殺し屋だ。そう簡単に守ることができるのだろうか。そんなケイスケの意見に顔を上げたカズキは答える。
「油断はしねえけど…俺達、今までSランクやAランクをやってきただろ?リサを守って敵のもうこんを切り抜けて逮捕、俺達ならできるはずだぜ?」
「…猛攻な。ジョージ神父がいない今、俺達がやらなきゃいけない」
「ナオトの言う通り!いつやるの?今でしょ‼」
タクトの言うことはひとまず置いといて、リサを守れるのは今は自分たちしかいない、自分たちがやらなきゃならない。ケイスケはため息をついて首を縦に振る。
「やるしかないな。ま、もしもの事があれば他のSランク武偵に協力を仰げるしな」
「さっすがケイスケ、そうこなくっちゃな‼」
「…今までよりももっと警戒しなくちゃ」
「リサ‼このソウルメイトで一目置く俺達に任せろ‼」
『イ・ウー』に狙われるかもしれないのに、それでも守ると決断して笑顔を見せる4人にリサはポロポロと涙を流し、何度も頭を下げた。
「皆さん…本当に、ありがとうございます…」
「んもー、リサは涙もろいなー‼」
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武偵高校の生徒であり、『イ・ウー』の一員である峰理子はほくそ笑んだ。バスに爆弾を仕掛け、UZIを付けた車も用意でき準備は完了。後は明日の早朝、実行するだけ。遠山キンジのアパートに侵入して時計も遅らせたし明日はどうやってアリアと挑んでくるか楽しみだ。自分はただ高みの見物をするだけ、そう思うとにやけが止まらない。そう思いながら真夜中の帰路について女子寮の駐車場にピンクのトゥデイを駐めた。
「ずいぶんと呑気にしているじゃないか、クソガキ」
聞き覚えのある低い声にビクリと反応し、とっさにワルサーを引き抜き銃口を向けて振り向いた。駐車場の屋根にハロウィンに出てくる恐ろしい顔にくりぬかれたカボチャの形をした赤いマスクをつけた黒いコートを着た人物がヤンキー座りして理子を見下ろしていた。
「『ランタン』…あんた、何しに来たのよ…」
理子は苦虫を噛み潰したような顔をしてランタンを睨む。表情が見えないランタンは低い笑い声を発しながら動こうとしなかった。『イ・ウー』の裏切り者を殺す『始末屋』、幹部さえ、子供さえ、『始末屋』の仲間でさえ躊躇いなく殺していくことから『イ・ウー』でも恐れられている。そんな連中がなぜ日本にいるのか、理子は気にしていた。
「そう汚い顔をするな。我々は『裏切り者』を始末しに来ただけだ」
「裏切り者…?私達はそんなつもりは…‼」
理子は無いと言い切ろうとしたが後ろからカチリと金属音がした。ちらりと見ればランタンと同じカボチャの形をした青いメットを被った男と同じく緑のメットを被った男がサイレンサーのついた拳銃を向けていた。ランタンは「Humm」と低く唸る
「…そういえばてめえは『ブラド』からひたすら逃げたがっていたなぁ?」
理子はその言葉を聞いてビクリとし目を見開いていたが、殺してやろうと言わんばかりにランタンを睨み付ける。
「お前には関係ない…っ‼」
「
ランタンはさっと左手を上げた。理子に銃口を向けていた二人は銃を下す。ひとまず警戒を解かれた理子はほっと一息入れる。
「で、どこの『裏切り者』を始末するの?」
「てめえに答える義理はない…が、これには答えてもらう」
ランタンは懐から4枚の写真を理子の方へ落とす。写っている写真を見てぎょっとした。写真に写っていたのは吹雪カズキ、菊池タクト、天露ケイスケ、江尾ナオト、理子が自分たちには関わりはないだろうと高を括っていた喧しい4人組だった。写真に写っている慌ただしそうにしている姿を見ると見ているだけで五月蠅そうに感じた。
「このガキ共の名前と知っていることを全て話せ」
理子は彼らの名前と
「分かった…我々は『裏切り者』と協力者を始末する。てめえのやることには邪魔はしない、勝手にしてろ」
「そうしてよ。理子にはやらなきゃいけないことがあるんだから。巻き込まないでくれる?」
理子は皮肉交じりで睨む、ランタンはそんなことには気にはせず踵を返して暗闇へと去っていった。理子の後ろにいたランタンの部下もいつの間にかいなくなっていた。静寂な夜に戻った理子は警戒を解いて背伸びをした。
「それにしても…」
理子は地面に落ちたままのあの4人組の写真を拾い、苦笑いして見つめる。あの4人ならいつかやりそうだなー、なんて思っていたらまさか本当になるとは思ってもいなかった。
「一体なにして『イ・ウー』に狙われるようなことになってんのよ…ま、理子には関係ないからいっか」
ジャック・オ・ランタン。
ハロウィンでおなじみカボチャさんですが、昔はカボチャではなくてカブを使っていたようですね。調べてみると…カブの顔こわっ!?めっちゃ怖い‼