カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 いろんなものがごっちゃになってる感が半端ない…イタリアだし、シカタナイネ‼(オイ


 原作という原作を殴り壊してます。


61話

「よし、じゃあ一から整理していくぞ」

 

 ローマ郊外から北へ離れた場所にある湖が見える町、ブラッチャーノ。中世の雰囲気を醸し出すその静かな町の片隅にある少し立派な一軒家のカツェのプライベートの隠れ家にて、カズキ達は一息入れて状況を整理しようとしていた。

 

 カツェと共にワトソンも状況を整理しようとしていたのだが、肝心のカズキとナオトは自分の家かのように寛いでいた。

 

「すげえ‼ソファーがふかふかなんですけどー‼」

「冷蔵庫にお酒が‥‥チーズもある」

 

「おおい!?何呑気に寛いでんだよ!?」

 

 ソファーで寝転がっているカズキと冷蔵庫を漁っているナオトを止めて、真面目にやるように注意した。もう一度、状況を整理し直していく。カズキ達が言うには、イタリアに着くや否やバチカンから枢機卿の一人がカズキ達に襲われたというウソの情報をローマ武偵校に知らせ、逮捕しようとしていたという。話を聞いたワトソンは首を傾げる。

 

「バチカンがそんな嘘を…それはおかしい。師団ではそんな情報は伝わってすらないよ」

「はっ、相変わらず師団はやる事が遅れてんなぁ」

 

 横で貶していくカツェにワトソンはムッとして睨み返す。

 

「ふーん、じゃあ眷属はどうなんだい?君達こそ良からぬことを企んでいるんじゃないのかい?」

「ふざけんじゃねえよ。こっちはただ、バチカンの動きが怪しいという話を聞いたから偵察に来たんだ」

 

 言葉に怒りを込めて睨むカツェにワトソンはふーんと呟いてニヤニヤしだす。

 

「へー、じゃあカズキ達のところに来たのは偶々なんだねぇ?」

「あ、あ、当たり前だろ!別に後を付けてきたわけじゃねえんだからな!」

 

「二人の話を聞いてると、なんかバカチンが怪しというわけか…」

「「バチカンね」」

 

 チーズを食べながらドヤ顔して間違えるカズキにカツェとワトソンは呆れるように即ツッコミを入れる。ワトソンは一度咳払いをして話をまとめる。

 

「つまり…この件はバチカンが一つ絡んでいる。ナオト、カズキ、やっぱり今回は一度イタリアを離れてキンジ達がいるフランスの師団の方へ避難した方がいいかもしれない」

 

「いや…ワトソン、師団はやめた方がいい。今の様に眷属も師団にもつかずに無所属を保たせた方がカズキ達だけじゃない、お前の為だ」

 

 頑なに師団につくことを否定するカツェにワトソンは疑問の眼差しで見つめる。

 

「カツェ…何故眷属の君がカズキ達だけじゃなくて、僕にまで肩入れするんだい?」

「それはバチカンが‥‥」

 

 カツェは言いかけたところで何かの気配に気づいたかのようにガタリと立ち上がり、身を隠す様に窓を覗いた。突然の事でカズキ達は驚く。

 

「か、カツェ?どした?」

「おいおい嘘だろ…!?ここはあたしだけしか知らない場所だってのに、もう師団のシスター共が来やがった!」

 

カツェは焦りだした。何故自分しか知らない場所をこうも突き止めることができたのか。窓からコッソリ覗き込むとシスターだけでなく、黒のトレンチコートを着たリバティーメイソンの連中も加わって取り囲んでいるようだ。

 

「ああくそっ‼折角カズキ達に会えたんだから少しぐらいゆっくりさせてくれっての‼」

 

「カツェ、何時でも動けるぜ!」

 

 舌打ちするカツェにカズキとナオトは既に迷彩柄のボディーアーマーを身に着け、カズキはTRG-42を、ナオトはAK47を用意していた。このまま籠城か、それともくぐり抜けて別の場所へ逃げるか。4人は少し考えるが答えはすぐに出た。

 

「おい、ワトソン。少し離れた所の車庫に車があるんだが…お前、車飛ばせるか?」

「…勿論。入り口の方は細工したからすぐには出てこないハズ。裏口から(ry」

 

「イエーイ‼最後のガラスをぶち破るぜぇー‼」

「だからお前が先に出るなって」

 

 裏口から出ようとワトソンが言い終える前にカズキとナオトが窓をぶち破って飛び出していった。まさかの行動にカツェとワトソンはギョッとする。

 

「「そっち!?」」

 

 庭の芝生へナオトが転がり出ると武装していたシスター達は身構える。ナオトをカバーするようにカズキは狙いを定めてシスター達の持っている盾と剣を撃ち落としていく。カズキの狙撃にシスター達は盾を構えて集まりだし弾丸を防ごうと防御態勢に入って近づいてきた。ナオトはそれを待っていたかのようにスタングレネードのピンを抜いてアンダースローで投げ込んだ。盾の隙間へと転がり込んだスタングレネードはシスター達の足下で衝撃音と閃光を響かせた。

 

「ここから一気に突っ走るぞ‼」

 

「はっ!ざまあみろ‼カズキ達をただの武偵と甘く見たら痛い目みるぜ‼」

 

 ナオトの掛け声にカズキ達は外へと駆け出る。カツェは目と耳を抑えてのた打ち回るシスター達に中指を突き立ててついて行った。先程の衝撃音を皮切りにシスターだけでなくリバティーメイソンの連中も追いかけてきた。

 迷路のような小道を駆けていくと角から黒のトレンチコートを着た男が3人、飛び出す様に襲い掛かる。どの男もSIG SAUER P226を引き抜き撃ってきた。飛んでくる弾丸を躱す様にナオトは身を屈めてAK47で撃ち、ナオトに近づいた男はワトソンに投げ倒された。

 

「ごめん…‼後で事情は話すから!」

 

 ワトソンは気を失った男性に謝り、駆けて行った。事情をすぐにでも話したいが止まるわけにはいかない。後ろからの追跡から逃れつつ、正面から現れてくる相手はカズキとナオトが支援しながらごり押していった。カツェの案内であともう少しのところで車庫へと着く。しかし、カツェはもうすぐの所で歩みを止めた。

 

「どうりであたし達の隠れてる場所を突き止めたわけか…」

 

 カツェは苦虫を噛み潰したような顔をして車庫の前で待ち構えているシスター達に睨み付けた。その中で白銀の大剣を構えているシスターがカツェを待っていたかのように睨み返す。

 

「やっと炙り出ましたね…汚れた眷属、カツェ・グラッセ」

「はっ、てめえの幸運であたしらを見つけたってことか。メーヤ・ロマーノ」

 

 メーヤと呼ばれたシスターは大剣を片手で勢い良く振って剣先をカツェに向けた。

 

「よくもまあ眷属のゴミ虫がのけのけとイタリアに潜んでるなんていい度胸してますね。バチカンの指示でイタリア全土の眷属の拠点を虱潰しに探りましたが…こんな所で隠れていたとは」

 

 

「ねえワトソン。あのシスター、めっちゃ毒を吐くんだけど?」

「め、メーヤは戦闘になると人が変わったかのように怖くなるみたいだよ?」

 

 一見お淑やかに見えるのにここまで口が悪いシスターにカズキとナオトは引き気味だった。一方でメーヤの話を聞いたカツェはピクリと反応した。

 

「やっぱりそういう事か…」

 

「どういう事を察したか分かりませんが、貴女達はここでお縄につき、裁きを受けてもらいましょう」

 

「ん?ちょっと待って、『達』ってもしかして俺達も!?」

 

 まさか自分達も標的にされていることにカズキはギョッとする。そんなカズキに対しメーヤは頷いて答えた。

 

「貴方達は遠山さんのご親友とお聞きしましたが…眷属と手を組み、師団のジャンヌを誘拐した容疑があります。貴方達も拘束した後、バチカンへ送ります」

 

 ん!?、とカズキとナオトは目を丸くして驚いた。バチカンの枢機卿を襲った容疑に続いて、ジャンヌが誘拐されたという全く身に覚えのない容疑が追加されていた。さすがのワトソンも身も蓋もない事態に慌ててメーヤを止める。

 

「ま、待ってくれメーヤ‼ナオト達は今日イタリアに着いたばっかりだ‼枢機卿を襲うどころかジャンヌを誘拐するなんてありえない‼」

 

「ワトソンさん…私はバチカンの代表戦士。それに私の能力もあってバチカンの枢機卿のご命令は疑わずにただ信じてやるのみです」

 

 メーヤはワトソンに申し訳なさそうに返す。メーヤの能力は戦運が良くなる事。被弾も怪我もすることなく幸運に護られている。しかし、欠点は仲間を疑うことで能力の効果が薄れてるということ。たとえ上からの命令には嘘っぱちだと感じても信じてやるしかないのだ。

 

「さあワトソンさん、お二人に手錠を。私は因縁の怨敵、カツェを相手します」

 

 メーヤは殺気をカツェに向け、じりじりと大剣を構えて近づいてきた。ワトソンはどうすべきか悩んでいたが、意を決して、煙幕手榴弾をメーヤめがけて投げた。

 

「メーヤ、ごめん!」

「なっ!?」

 

 煙幕が勢いよく巻き上がり、大剣をカツェめがけて振り下ろそうとしていたメーヤは怯んだ。まさか師団で仲間であるワトソンが敵を庇うような事をするとは思いもしていなかったのか突然の事でメーヤ達も動けないでいた。

 

「こっちへ逃げよう!」

 

 ワトソンの合図にカズキ達は車庫とは別の方向へと逃げ出していった。車があるか、逃げる手段はあるかというよりも、今はメーヤから逃げることが先決だった。

 

「おのれ…まさか同胞を洗脳するとは‼汚い、さすが眷属汚い‼カツェ、貴女だけは首吊り磔獄門にしてやるわ‼」

 

「おいあれ絶対にシスターじゃねえって‼」

「アマゾネス…!」

 

 お淑やかに見えるシスターとは思えないほどの怒号を飛ばすメーヤにカズキとナオトは青ざめる。絶対に捕まりたくない、その一心で走り続けた。

 

「へへ…ワトソン、助かったぜ」

「もう‼これで僕も裏切り者だ…‼一つ提案なんだけど…師団、眷属と関係なしに手を組まないかい?」

 

 ワトソンの提案にカツェはニッとして頷いた。

 

「ああ勿論だ!それに…今回で誰が眷属と師団の争いを泥沼化しやがってんのか分かったぜ」

「僕もやっと分かったよ。眷属に師団の情報を流している裏切り者を」

 

 二人の話にカズキとナオトは入ってこなかった。それよりも鬼の様な勢いで追いかけてきているメーヤを食い止めようと精一杯だった。カツェとワトソンは頷いて答えた。

 

「バチカンが裏切り者だ」

「そうだね…師団に眷属の情報を、眷属に師団の情報を流して戦局を長引かせた」

 

 このヨーロッパでの戦役はバチカンが裏で手を引いていた。両陣営に情報を流して戦況を弄り、泥沼化させどちらかが倒れても被害が出ないように保険をかけていたのだった。また、師団と眷属が共倒れしても影響が出ないようにバチカンのひとり勝ちできるように手引きをしていた。

 

「でもどうしてバチカンが両陣営に叩かれかねないのにこんな事を…?」

「やっぱ【十四の銀河】が関係しているんだろ」

 

 ワトソンは初めて聞く名前に首を傾げる。【十四の銀河】とは何か聞こうとしていたが、カズキが焦るように喚きだした。

 

「ちょ、あのメロンパン、弾が当たらないんですけど!?」

「メロンパンの加護か…‼」

「今のメーヤは戦運で弾丸が当たらないんだ‼」

 

 幸運で護られているメーヤには弾は当たらない。重厚な大剣をしょって物凄い勢いで追いかけてきている様はまさにシスターの皮を被った鬼。

 

「カツェ、メロンパンの加護はどうやったら消えるんだ!?」

「メロンパンじゃねえって‼さすがにあの幸運を打ち消すのはあたしでも難しいぞ…」

 

 そんなナオトとカツェの会話を聞いたカズキは何か閃いたのかポンと手を叩く。

 

「そうだ…いい事思いついた!」

「お前の閃きには碌な事がない」

 

 ナオトにダメだしされてカズキはうるせえとプンスカと返しながらポーチから黄緑色の液体が入った小瓶を取り出した。

 

「くらえ!今年のおみくじで凶を引いた男の『ゲロ瓶』攻撃‼」

 

 カズキはやけくそ気味に小瓶を投げた。小瓶は石の床に当たるが割れることなくバンドし、近づいてきたメーヤの目の前で小瓶が割れて緑色の煙が巻き上がる。

 

「これは…くぅっ!?臭いが…卑怯な…‼」

 

 目に染みる煙と鼻が曲がりそうな異臭にメーヤは怯んで足が止まった。メーヤを足止めできたことにカツェは驚き喜びあがる。

 

「すげえじゃねえか!あの幸運鬼畜シスターを足止めできるなんてな‼」

「どうだすげえだろ!今年運がない俺の力によって…えー…巡ってくる幸運が逆流してメーヤにふりかかって世界がすご(ry」

「まとめから言ってよ!?」

 

 うまくまとまっておらずしどろもどろになっているカズキにワトソンはツッコミを入れる。どういいたいのか分からないがメーヤを止めたことは大きい。このまま別の場所へと逃げようとするが、リバティーメイソンの連中に取り囲まれてしまった。

 

「またかよ…‼ナオト、フラッシュはまだある?」

「…もう無い。弾数も少なくなって来たし、ごり押しでいくか?」

 

 シスター達から撒くのにフラッシュバンは使い果たした。ここからは力づくで切り抜けるしかないが、相手は暗器も駆使するリバティーメイソン。容易に抜け出すことは難しい。

 

「…ここは僕が足止めをする。カズキ達はその隙に…‼」

 

 ワトソンが自らを囮にしてカズキ達を逃そうと前へ出た。どのくらい時間を稼げるか、どうやって逃がすかワトソンは焦りながら考えた。

 

 その時、リバティーメイソンの連中の背後からふわりと何かが投げられたのが見えた。弧を描いて宙を飛んでいるのはフラッシュバンだとナオト達はすぐに気づいた。

 

Duck(ふせろ)‼」

 

 何処からか大声で合図が聞こえ、カズキ達は咄嗟に目をつぶり、耳を塞いだ。一瞬で強烈な閃光が起こり、取り囲んでいたリバティーメイソンの連中は怯んだ。

 

 一体何が起きたのかカズキは恐る恐る目を開けると、上下男性用のスーツを着た金髪のツインテールで褐色肌の女性がたった一人でウィンチェスターM1897で撃つわ、殴るわ蹴るわで意を突かれた男たちを次々に撃ち倒していっていた。

 

「…貴方達が『カズキ』と『ナオト』ね。こっちよ、ついて来て」

 

 女性はカズキとナオトを見て、先導しようとしていた。なぜ彼らの名前を知っているのか、カツェとワトソンは疑いの眼差しで見ていた。

 

「よっしゃ‼藁にも津軽海峡だ‼」

「それを言うなら藁にも縋る」

 

 カズキとナオトは全く疑いもせず、その女性について行こうとしていた。彼らの言うようにあっちにもこっちにも追手ばかりで今は藁にも縋りたい状況だ。

 

「大丈夫…『神父』の依頼で貴方達を助けに来たわ」

 

 神父というワードにピクリと反応する。彼らと関係する神父はただ一人、ジョージ神父しかいない。ここは一か八かで信じてついて行くしかない。ワトソンもカツェも目を合わせて頷き、女性の後に続いて行った。ついて行った先には白いバンが停車しており、女性は運転席の窓にノックをした。

 

「フェルミさん、彼らを救出したわ」

 

 バンの乗車席のロックが解除されドアが開くと、女性はすぐさま乗り出す。

 

「さあ乗って‼もたもたしてると追手がくるわよ‼」

 

 カズキ達は安物のバーゲンセールかのように勢いよく駆けてバンに乗り込む。全員が乗り終わるとバンはスピードを上げてその場から離れた。何とか追ってを振り撒いたことにカズキ達はほっと安堵の息をつく。

 

「な、なんとか助かったー…助かったぜ。えーと…」

 

 名前を聞いていなかったためカズキはどう答えようか戸惑っていたが、女性は先ほどの冷静に戦っていたのが嘘のようにフレンドリーに微笑んだ。

 

「トリエラよ。いつ手助けしようか見てたけども、ハチャメチャな戦い方をするのね」

「よく言われる…」

 

 初対面なのに和気藹々としだした雰囲気にカツェは戸惑いながらも尋ねた。

 

「というか神父の依頼ってなんだ…?」

「ジョージ神父からは貴方達を無事に救出した後、私達の『教会』へ案内するよう頼まれてるの。まあこの一件は利害の一致で取引したんだけど」

「利害の一致…?」

 

 ワトソンは首を傾げる。彼女が何者か、何故ジョージ神父の依頼を受けたのか、更に気になる事が増えたのだが、カズキとナオトは全く気にしていなかった。

 

 

「私達、元『社会福祉公社』との戦いで壊滅した五共和国派(パダーニャ)の生き残りがバチカンに潜んでいたこと、そしてその頭目、シディアスという男が裏で引いてるってこと。その男を止めるために協力しているの」

 

 

___

 

 

「結局、嘘の情報を流してもシスター達はおろか武偵すら彼らを捕えることはできなかった、と?」

 

 バチカンのカトリック教会の総本山である、サン・ピエトロ大聖堂にある一室にて白の法衣を着た白髪の男性は椅子に深く腰掛けて、近くにいるブロンドのロングヘアーに白のヴェールをかけた女性、ローレッタを見つめる。ローレッタはその男から静かに伝わる威圧と恐怖に押されつつも深く頭を下げた。

 

「も、申し訳ございませんシディアス卿…メーヤを使いに出してもまさか逃げられるなんて…」

 

 ビクビクと震えているローレッタにシディアスは深くため息をつく。

 

「仕方ない…師団もローマ武偵校も彼らを甘く見ていた。それで流しておこう。公には出さず、貴女達は師団の連中を利用して追跡しなさい」

 

「か、畏まりました。師団にはあの遠山キンジもいます。彼らを利用して必ず捕えてみせます」

 

 ローレッタはもう一度頭を深く下げて部屋から出て行った。シディアスはやれやれとため息をつく。師団と眷属に情報を流しつつ両陣営を共倒れさせようと企んでいたが、無所属であるジョージ神父とその武偵にバチカンに隠してある『秘宝』の存在に気付かれた。

 

 そこであの手この手を使って彼らを排除していこうとしていたが、眷属は頑なに動かず、師団は思いのほか役に立たない。仕舞にはバラバラに分かれて追跡を混乱させようとしている。このままでは埒が明かない。その時、自分の周りにひらひらと蝶が飛んできた。

 

「…クエスか、何か用かね?」

 

 シディアスは部屋の隅にいつの間にかいたウェーブのかかったブラウンの髪をした、赤いドレスを着たおっとりとした雰囲気のある女性に視線を向ける。

 

「随分と楽しそうな事をしてるわねぇ。私には地味な仕事を押し付けるくせに、面白くないわ」

 

 クエスはおっとりと微笑みながら、シディアスに近づくがべったりとくっつかず距離を取り、それ以上は近づかなかった。

 

「『胡蝶の魔女』である君も私が持っている『秘宝』が欲しいのだろう?」

「そうね…でも迂闊に近づけば返り討ちに合うからやめておくわ」

 

 クスクスと微笑むクエスにシディアスはじろりと威圧を込めた視線で見つめた。

 

「クエス、魔力はちゃんと回収しているのかな?」

「勿論。今回は銀氷の魔女、ジャンヌダルクの魔力も奪えて大漁よ」 

 

 クエスの答えにシディアスは深くほくそ笑んだ。やっとまともな成果を聞くことができて満足して頷く。

 

「もうすぐだ。魔力をかき集め、この『秘宝』を使えば…‼バチカンは光に包まれ、私の手中になるのだ…」

 

「そ、楽しそうで何よりね」

 

 低く唸るように笑うシディアスにクエスはおっとりとした様子で軽く返す。シディアスは深く腰掛けて次の手を考えた。

 

「師団はもう役に立たん…モールと五共和国派の残党を使わせるか…」




 出そうか出さまいかで悩んでいたけども…やりました。
 IFとしてもし彼女が新トリノ原発で(1期生の)彼女だけ生存してたら…という感じで
 原作ファンの皆様、すみません

 あとなんでシディアス!?と感じた方は

 ローマ  シス  で検索‼

 

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