カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 よくよく考えるたら日本だけじゃなくドイツ、アメリカ、イギリス、そしてイタリアと…キンちゃんさん色んなところでフラグを建てまくってるよ…プレイボーイや‼


74話

 メヌエットを捜査に協力してもらうため、カズキ達はメヌエットのガードマン兼執事を務めることになった。主な作業としては、埃がかぶった部屋や玄関の清掃、庭園の手入れ、タイムズやエクスプレスといった高級紙(ブロード)大衆紙(タブロイド)の記事を切り取ってスクラップを作成したりと、メイドの仕事をリサが熟していった。特にリサが作成したスクラップをメヌエットは気に入り、精油パイプを片手に興味深く読みだした。

 

「ここ最近、殆どの記事は霧の事ばかりで退屈だったのよ」

 

 そう呟きながら読んでいる間にリサは車椅子の横についてメヌエットの髪を梳いていく。かなり器用な手つきで髪を梳くのでメヌエットはかなり満足したようだ。

 

「いい手つきね。これから毎朝お願いするわ」

 

 お昼になれば栄養のバランスを考えたメニューやら食後のデザートにはプディングなどリサの作る料理にもメヌエットは満足していた。

 

「って、貴方達何もしてないじゃないの…」

 

 リサのメイドとしてのスキルにはメヌエットは予想以上の良い結果であったが、自分の横でまるで居候の様に寛いでいるカズキ達は何もしていなかった。これまでの間、カズキとタクトは庭園で『マクロスごっこ』をし、ケイスケはリサが切り取り終えた新聞を読みふけっており、ほとんどリサがやっている状況だった。カズキはその事にはまったく詫びずにドヤ顔で答える。

 

「イクシオンの96%はリサだからな」

「いやそれじゃダメでしょ…というかあと一人は何処行ってるのよ」

 

 メヌエットは呆れながらため息をつく。しかもこの昼食の場にナオトの姿が無かった。そんな話をしているとナオトがムスッとした表情で食堂へと戻ってきた。

 

「昼にしてるなら呼んでくれよ…」

「ナオト、お前何処に行ってたんだよ‼メヌエットちゃんがプンスカだぞ!」

「いや私は怒ってないんだけど」

 

「で、ナオトは何してたんだ?」

「門番」

 

 ケイスケの問いにナオトは少し拗ねたように即答した。一応ガードマンとして務めてもらっており、アリアや政府の要人が来たとしても何時でも門前払いできるよう門番を務めていた。そこまでは頼んでなかったが、一応理解してやったナオトにメヌエットは納得したように頷く。一方で納得していない者もいるようで、カズキとタクトはプンスカしながら文句を垂らす。

 

「お前ずるいぞ‼何1人だけ真面目にやってる感だしてんだ!」

「ナオト!抜け駆けは卑怯だぞ!」

 

「なんで俺は怒られなきゃいけないんだ?」

「お前らもナオトを見習って真面目にやれ?」

「それ半日ずっと新聞を読みふけっていた人の言うセリフじゃないと思うのだけど」

 

 メヌエットはケイスケにツッコミを入れる。完全にツッコミどころが多い連中で彼らに任せて本当に大丈夫なのかと不安になってきた。というよりもリサがいるだけでそちらが有利だと言うのに何故プラスをマイナスにしてプラマイゼロにしてしまうのか行動がかみ合わない4人組に呆れていた。

 

__

 

 翌日、4人も少しは真面目になったのか、午後のティータイムにはケイスケが紅茶の代わりにハーブティーを用意してきた。

 

「ハーブティー?私は香りが強いのが嫌いなのだけど」

 

 メヌエットは訝しげにムスッとするが、逆にケイスケはしかめっ面でぶっきらぼうにハーブティーを注いで押し付けてきた。

 

「アイブライトのハーブティーだ。無愛想なメイドから聞いたが新聞や本の他にもパソコンで夜更かししてるんだってな。目の疲れにも効くし飲め」

「ヨーロッパでは古くから視力の低下の対策として使われてるし、その他にも集中力と記憶力も高める効果もある。健康に気をかけてるので一応良しとしましょう…」

 

 上から目線だけれどもケイスケの対応と答えには丸を付けてあげた。情報を取り入れ、生活サイクルを確認。少しでも改善していこうという判断にメヌエットは少し微笑む。

 

「でも良薬は口に苦しと言えども私は苦いのは嫌よ」

「もう少し待っとけって。ナオトがシュークリームを作って持ってくるから。てか飲め」

 

 ドクターのお告げだと強要してきた。ここでああだこうだ言っても面倒なのでメヌエットはハーブティーを飲もうとしたが、どたどたと騒がしい足音を立ててタクトとカズキとナオトが部屋に入ってきた。突然の事でメヌエットは飲んでいたハーブティーを思わず吹きそうになる。

 

「ちょ、もう少し落ち着いて入って来なさい!」

「さすがはナオト。今日からお前はシュークリーム大臣だ!」

「これから毎日シュークリームを作ろうぜ‼」

「つまみ食いはダメだと言ってるだろ!」

 

 シュークリームを山積みにした大皿を片手にナオトはむしゃむしゃとシュークリームを頬張るタクトとカズキを追いかけ、メヌエットの周りをグルグルと走り回る。いくら言っても止まらない二人にメヌエットはあわわとティーカップ片手に焦っていた。

 

「オイコラ。主人が困ってんだろ」

 

 ケイスケが逃げ回る二人にゲンコツを入れて事なきを得た。焦っていたメヌエットは咳払いをしてシュークリームを取って食べた。思った以上の出来にメヌエットは満足そうに頷く。

 

「悪くないわ。これからも午後のティータイムにはこのシュークリームを頼むわね」

「シュークリーム食べたい大臣のご命令だ。頑張れよナオト!」

 

 何気なくつまみ食いしているタクトに背中を叩かれた。ナオトはマジかよと少し面倒くさそうに呟く。

 

「それで、午前中はマクロスごっことやらで遊んでた貴方達は何もしてないのだけど?」

 

 メヌエットはジト目でシュークリームを食べている二人を見つめる。あれからこの二人は庭園ではしゃぐわ、一階に展示している化石や骨格標本に目を輝かせていたりとずっと遊んでばかりであった。そう言われるとカズキは少し悩んだように考え込む。

 

「うーん…じゃあスーパームーン音頭とかどうですかね?」

「はあ?」

 

 聞いたこともない言葉にメヌエットは眉を顰める。カズキは歌と踊りが得意だと言っており、ライオンキングのような急に歌いだすのか、またはた歌手の様にテノールで歌うのかと考えていたのだが、曲名を聞いて明らかに嫌な予感がする。

 

「…ど、どんなのか見せてもらうかしら」

 

 本当はやめてと断ろうとしたがカズキのよく分からない自信に満ちた眼差しに負け、仕方なしに見ることにした。するとカズキはドヤ顔で荒ぶる鷹のようなポーズをして歌い踊りだした。

 

「スーパームーン!スーパームーン‼俺と、お前はスーパームーン‼」

 

 メヌエットはポカーンと口を開けたまま呆気にとられた。声は張りがあって良いのだが、キレッキレのよく分からない踊りと歌詞で打ち消された。言うなれば不思議な踊り、理解ができない謎の舞だった。

 

「満月若しくは新月と、楕円軌道による月の地球への最接近が重なって月が大きく見えることで、中々会えない遠距離恋愛をしているカップルを例え、数少ない再会を喜ぶ歌なのだろうと推理…というかそうであってほしいと願ったのだけど想像の斜め下をいったわね」

「ねえメヌエットちゃん、外で遊ばない?」

 

 タクトは何気なくメヌエットに声を掛けた。というよりも未だに「スーパームーン‼」と叫びながら踊っているカズキを完全にスルーしており、メヌエットもとりあえず見なかったことにしようとした。

 

「嫌よ。外の空気はキライです。しかも濃霧だしもっと嫌だわ」

「そんなこと言うなよー。子供はツチノコ元気な子っていうし」

 

 嫌がるメヌエットにタクトは構わず車椅子を押す。それを言うなら「子供は風の子だ」とツッコミを入れて文句を言うが、完全に人の話を聞いていないようでメヌエットは焦りだす。

 

「だから嫌だと言ってるじゃないですか!?それに私は車椅子だし…ケイスケ、貴方も止めなさい!」

「この部屋は埃っぽい。空気も淀んでるし体に悪い。気分転換に外へ出るとけ」

 

 ケイスケまでも外へ出ろと言い、咄嗟にナオトの方へ視線を向けるが理解をしてないようで、ナオトは親指を突き立て『いいね!』のサインを送っていた。カズキは…まだスーパームーン音頭を踊っているので見なかったことにした。4人の行動にメヌエットは遂に折れ、渋った様子でタクトをジト目で睨んだ。

 

「私は歩けない足です。外へ連れて遊ぼうと言っても何も面白くありませんよ?」

「だいじょーぶ!俺達がいるもん」

「はあ…まあ貴方達なら少しは退屈はしないでしょうがね。肩掛けとひざ掛けを用意しなさい」

 

 メヌエットは皮肉を込めて頬を膨らませそっぽを向いた。肩掛けとひざ掛けを掛けさせタクトは鼻歌交じりにメヌエットの車椅子を押していく。簡易エレベーターを降り、庭園へと出た。ハーブ園もある広い中庭は白い霧につつまれ薄っすらとしていた。まだ寒い中庭で白い吐息を出してメヌエットはタクトに視線を向ける。

 

「で、ここで何をするのかしら?ボール遊び?それともテニス?」

「うーん…ジェットストリームアタックごっこ」

「はあ?」

 

 スーパームーン音頭に続いてまたよく分からない言葉に更に眉をひそめた。一体何をするのか考えているとタクトが車椅子を速く押し進めだした。

 

「マッシュ、オルテガ、メロンパンナ。ジェットストリームアタックをかけるぜ‼」

「いや、ちょ、なんでメロンパンナ!?そ、その前に飛ばし過ぎですわ…‼」

 

 色々とツッコミたいところなのだが、遂にはタクトが全速力で駆けて行き、今まで車椅子でここまで速く駆けたことが無かったのでメヌエットは慌てだす。要はこの庭の中で走り回るだけということ。先ほどカズキとタクトがやってたマクロスごっこと変わりない。そう冷静でいたいのだがあまりの速さに冷静でいられなかった。

 

「も、もう少しスピードを緩めなさい!」

「ダメダメ!サラマンダーより速くしなきゃ‼」

 

 もう何を言っているのか、タクトが何を考えているのか推理すらできなかった。ジェットストリームアタックごっこをやって5分経過した。ようやくスピードが落ちて来てゆっくりと車椅子を押していった。

 

「ふーっ!どうだった?」

 

 タクトは息を切らさずにこやかに尋ねる。一方のメヌエットは息が上がっており、落ち着いてから少しやつれ気味に苦笑いをした。

 

「はあ…人生で初めてこんなに速く駆けられたのには驚きましたわ…走るってこういう事なのね」

 

 自分の足はもう歩く事も走る事もできず、車椅子で押さなければ進むことはできない。まさかこんな日に『走る』という事を体感するとは思いもしなかった。彼は自分の『障害』に同情することなく、普通の人と同じように見てくれているのか、タクトが何を考えているのか推理しながらメヌエットは大きく息を吐く。

 

「…たまには外の空気を吸うのも悪くはないわね。霧がかかっていなかったらよかったのに…」

「大丈夫大丈夫!霧はいつか晴れるさ!」

「ふふ…止まない雨はない、か。少し疲れたわ…今度はゴリ押しで駆けないようにね」

 

 ポジティブに笑うタクトにメヌエットはクスリと笑っい、車椅子を押して中へと入っていった。今度は少しまともな遊びをしてほしいと考えていると玄関の方から喧しい声が響いてきた。その声の一つは聞き覚えのあるアニメ調の高い声が混ざっていた。メヌエットはこっそりと玄関の方を覗き込んだ。

 

__

 

「だからなんであんた達がメヌのところにいるのよ!?」

「俺達はメヌエットちゃんに忍び寄るお姉ちゃんの魔の手から守るガードマンだぜ!」

「だーかーら‼その経緯を聞いているって言ってるでしょ!?」

 

 玄関にはアリアが苛立ちながら門番となっているカズキとケイスケと言い争っていた。アリアが何度も喧しく言っても暖簾に腕押しのようで、カズキがどや顔で「ガードマンだ!」と一点張りだった。声を荒げているアリアにケイスケはぶっきらぼうに答えた。

 

「わけ合って今はメヌエットのガードマンをやってる。お前やイギリス政府の連中を追い払うように言われてるからな、という訳で帰れ」

「いや答えになってないわよ!こっちだってメヌに用事があって来てるんだから‼」

 

 色金についてメヌエットは何かしらの情報を持っている。アリアは自身を取り込もうとして来る緋緋神をどうにかする為、メヌエットに会いにロンドンへ来たのだった。しかし、霧の事件でそれどころじゃない状況にもなっているし、更にはカズキ達に阻まれるとは思いもしなかった。カズキはプンスカしながら文句を言い、ケイスケは腕を組んで強めに威圧してきた。

 

「姉が妹をよそに野郎とイチャコラしているのが悪いんだぞー!俺だってイチャコラしたいのに!リア充爆発しろ!」

「メヌエットは今、お前に会いたくないんだとよ。日を改めて来い。てかそんだけセレブならちゃんと真面目に治療費払え」

「半分よく分からないんだけど!?と言うよりも何でメヌのいいなりになってるのよ」

 

 アリアは呆れながら尋ねた。こっちとしてはキンジがアメリカに行っている間にメヌから情報を手に入れたかった。ここはうまく言いくるめてやろうとしたのだが、カズキはドヤ顔で答えた。

 

「そんなこと言うなよ!メヌエットちゃんとはソウルメイトだ!」

「そ、ソウルメイト?」

「おら、こっちだって忙しいんだ。集金も新聞の勧誘もお断りだ。帰れ帰れ!さもないと未払い分の治療費を請求するぞ」

 

 ケイスケとカズキがずいずいと押してきた。さすがのアリアも2人のよく分からない威圧に押されてしまい、ぐぬぬと悔しそうに睨む。

 

「う、うるさいわね!今日の所はこれぐらいにしてあげるわ!今度は力ずくでも押しかけるんだから‼」

 

 アリアはプンスカと踵を返して出て行った。カズキとケイスケはしてやったりと満足そうに一息つく。

 

「どうだ!俺とケイスケの連携ガードは!」

「ちっ…今度来たときは請求書を押し付けてやる」

 

「‥‥」

 

 メヌエットはこっそりと一部始終を見ていた。相手を力でもなく、口舌でもなく、ごり押しで追い払ったことに驚かされた。まさかあの姉であるアリアを追い払えるとは思いもしなかった。

 

 しかし『ソウルメイト』という気になる言葉が引っかかった。リサにソウルメイトとは何か聞いていたが、リサは言葉通り『魂の友』、彼らが言うにはサイキョー絆で結ばれた宇宙ヤバイ程の友であると話した。メヌエットは大きく息を吐く。今、『親友』と呼べる人間は1人もいない。どうせ彼らも自分に認められるための口実だろうとメヌエットは考えていた。

 

「‥‥どうせ、彼らも嫌になるわ」

 

 自分と釣り合うわけがない…自分が持っている知性のせいですぐに嫌になるかもしれない。メヌエットは静かにその場を後にした。

 

___

 

「で、何で今日は入り口の前で突っ立ってるんだよ?」

 

 ケイスケはため息をついて愚痴をこぼした。この日、ケイスケ達4人はずっと入り口の前で立っていた。家事全般はリサがやってくれるだろうが、入り口前でずっと待ちぼうけの状態であった。そんな面倒くさそうにしているケイスケにカズキはドヤ顔で答える。

 

「昨日、アリアが押しかけて来ただろ?また来るかもしれないから今度は万全の態勢で待ち構えてやるのさ!」

「二人ぐらいで何とかなるのにさ…」

 

 ナオトが渋々呟くとカズキはそれは違うと言い出す。

 

「何言ってんだ。よく言うだろ?三人寄ればもんじゃの知恵って」

「文殊な。てかそれはお前を除いての場合か?」

 

 ケイスケは的確にツッコミを入れる。確かにアリアは一度追い払ってもしつこくやってくるに違いない。4人で力を合わせて行けば何とかなるかもしれないが結局ゴリ押しになるだろう。

 

「みんな、そう言っている間に来たぜ!」

 

 タクトがワクワクしながら指をさす。濃霧を抜けてやって来たのは金色のホイールのついた空色の車、イギリスの高級車であるベントレー・アルナージだった。その車はカズキ達の前に停車をする。目の前の高級車にカズキとタクトはポカンとした。

 

「なあ、これ…ちがくね?」

「ケイスケが金払えって言うからアリアがいっちょセレブっぽく来たんじゃないの?」

 

 そんな馬鹿なと言おうとしている間に、車の扉が開いた。そこから白いスーツを着こなし、空色のマフラーを軽く掛けた金髪碧眼の姿勢正しい男が出てきた。完全にアリアじゃないと4人はポカーンとしていた。

 

「まったく…この辺りも濃霧がかかって嫌になる」

 

 第一声が皮肉かつ嫌味を言いだしたところから、4人はムッとしだした。男は一歩前に出てカズキ達に視線を向けた。

 

「ふむ…珍妙な連中だな。余はメヌエットに用事があって来た。そこをどいてもらうか?」

「ヤダ‼」

 

 高級車からして政府の要人であろうという事でタクトは即答して断った。男はきょとんとしたが、やれやれと肩を竦めた。

 

「やれやれ…見たところ異国から来た平民のようだが、余とお前達とは天地の差だぞ?」

「お前は何を言っているんだ。人類皆平等だぜ?」

「というか会って早々偉そうだな」

 

 少し苛立ちながらカズキとケイスケは言い返すが、男はふんと鼻で笑った。

 

「どうやら余を一体何者かを話せなば分からぬようだな。余はクリーブランドのry」

「分かってるさ!カレーうどんの使者でしょ‼」

 

 突然思い出したかのように言い出したタクトに男はずっこけそうになった。

 

「か、カレーうどん…?と言うよりも余の話を遮るな!」

「何言ってんだぜ‼白のスーツをする男はカレーのシミを一つもつけることなくカレーうどんを啜れる証‼」

「確かにたっくんの言うとおりだ…!こいつカレーうどん好きそう!」

 

 タクトに便乗してカズキもその男に肩を組んだ。

 

「なっ…貴様、その汚い手で余に触れるな!」

「立派にマフラーまでしちゃって…こいつ、絶対にカレーうどんをこぼさずに食える自信がありそうだ。ナオト、すぐにカレーうどん作って食わせてやれ」 

「こ、こらっ…‼やめないかっ‼」

 

 ケイスケも皮肉たっぷり込めて男が掛けているマフラーを引っ張る。タクトとカズキが男の腕を掴んで逃げ出さないようにし、ナオトは玄関に入ってすぐに戻ってきた。片手にはシュークリームを持ってる。

 

「昨日のクリームたっぷり入ったシュークリームならあった」

「それでもいっか。おい!白のスーツを着ているならこぼすことなくシュークリームを食べやがれ‼」

 

 カズキがシュークリームを受け取り、必死にもがいて逃げようとする男の口にシュークリームを押し付けようとしていた。

 

 その時、すぐ近くで一台のポルシェが止まり、ワトソンが車から降りて来た。

 

「やあ皆、そっちの方は順調…って、何やってんだい!?」

 

 ワトソンはカズキ達の今の状況を見るや否や物凄く驚愕しだした。そんなワトソンに対しカズキ達はきょとんとする。

 

「何って…この白スーツ野郎にカレーうどんの試練を与えてるんだ」

「シュークリームだけど白スーツ野郎にやってもらうんだぜ!」

 

「す、すぐにやめるんだ‼そしてすぐに頭を下げるんだ‼」

 

 ワトソンはその男を見て声を震わせて慌てだす。一体どういうことか理解をしていない4人はハテナと首を傾げた。分ってない4人にしびれを切らしたワトソンは声を荒げて話した。

 

「この御方はクリーヴランド公・ハワード王子であらせられるんだぞっ‼」

 

 クリーヴランド公とはイギリスの侯爵の一つであり、貴族である。ましてやイギリス国の王子にこんなことをしているのは大問題になりかねない。

 

「やっと立場を理解できたようだな…早くその汚い手をのけ給え」

 

 ハワード王子はやっと理解してもらえたと思い、早く退けるよう言ったのだが、4人は未だに理解していなかった。

 

「「「「で?」」」」

 

 全く理解していないということにハワード王子もワトソンもずっこけた。




イギリス国の王子対アボカド王国の王子(嘘)

スーパームーン音頭…ええ、動画にもありますが…少し悲しくなります…(視線を逸らす

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