カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 デッドプール2が制作されることに歓喜。ローガンやももう間もなく始まるし、スパイダーマンも楽しみ…マーベル作品がどんどん映像化していって嬉しい(コナミ感


84話

 ブロフェルドは少し苛立っていた。こちらは大勢の部隊で国会議事堂へと攻めたてようとしているのに、その入り口の手前にいるたった一人の神父相手に苦戦を強いられていたのだった。

 

「何を手こずっている。掃射して射殺せ」

 

 ブロフェルドの静かな苛立ち声に焦る様にビクリと反応するように部下達は神父を標的に一斉に掃射をした。ジョージ神父は細身の剣で全ての弾丸を切り落とす。

 

 両手に持っていた計6本の剣は切り終えた後、耐えきれずに刀身が折れて落ちる。ジョージ神父の足下にはいくつもの折れた剣が落ちていた。

 

「‥‥」

 

 ジョージ神父は両手に持っている柄だけ剣を投げ捨て、拳を構えた。もう剣のストックが底を尽きたのだろう。これでこちらに抵抗する術が減ったことにブロフェルドはほくそ笑む。

 

「よもや拳だけで守り切るというのかね?」

「…言ったはずだ。私はあくまで時間稼ぎにしかすぎないと」

「時間稼ぎ?面白い事を言う。私が何も考えずにこの国会議事堂を襲撃すると思っているか?」

 

 ブロフェルドはワルサーPPKの銃口を向けて不敵に笑う。

 

「武偵局、警察、諜報機関に多くの戦闘員を向かわせ足止めをしている。そしてこの濃霧にブラックウッドの魔術、この場へ来るものは誰一人もおらん」

 

 ブロフェルドはワルサーPPKを引き金を引き撃った。ジョージ神父はその弾丸を躱してブロフェルドの懐まで迫り拳を放った。しかしその拳はブロフェルドの片手に止められ、ブロフェルドは目で周りへ合図すると部下達は神父に向けて一斉に撃った。ジョージ神父は後ろへ下がり再び拳を構える。拳では防ぐことができないため体に掠り傷ができていた。

 

「孤立無援とはまさにこの事だな。マイクロフトよ、そろそろ引導を渡してもらおうか」

 

 ブロフェルドは片手を上げて合図をした。彼の後ろからM60を構えた部下が数人彼の前へと出て構えた。ハチの巣にされるというのにジョージ神父はそれでも尚愉悦の笑みを見せた。

 

「‥‥何がおかしい」

「何度も言わせないでもらいたい。私はあくまで時間稼ぎだ」

 

 決して揺らがないジョージ神父の愉悦の笑みにブロフェルドは訝しげに睨み考え込む。ジョージ神父は警察も、武偵も、そして他の諜報機関の援軍を待っていない。だとすれば一体何を待っているのか。

 

 そんな事を考えていると、遠くから激しいエンジン音が響いてきた。ブロフェルドも彼の部下達も銃を降ろして音のなる方へと振り向く。濃霧で見えないが、その音は次第にこちらへと近づいてくる。

 

 一体何かと目を凝らすと、二つのライトの光が見えてきた。その光はエンジン音と共に近づき、それが何かとブロフェルドが気づいた頃には濃霧の中からFV603サラセンがこちらに向かって突っ込んできた。ブロフェルド達は慌てて突進してくるサラセンを躱し、サラセンは急ブレーキをかけ、国会議事堂の入口へダイレクトアタックする前に止まった。

 

「凛先輩もこいつらと同じぐらい運転メッチャクチャじゃないですか!?」

 

「仕方ないでしょ!?このおバカ達が急げ急げと急かすんだから!」

 

 ハッチが開いて出てきたのはギャーギャーと喧しく騒ぐアリアと凛だった。後方の扉からはカズキ達が勢いよく出てきたが、タクトだけは顔面蒼白だった。

 

「おりゃーっ‼間に合ったぞー‼」

「こっからぶちのめしていくぞ」

「あれ?たっくんは?」

 

「あ、あのっ、タクト様が遠坂様の運転で吐きそうになってます!」

「もうだめ、マジ吐く…カズキ、俺達友達だよな?」

「…たっくん、折角の登場が台無し」

 

 戻す5秒前のタクトにギャーギャーと喚くカズキ達を無視してサイオンはグロッグ18Cをブロフェルドへと向けて睨んだ。

 

「ブロフェルド。今度こそお前を捕え、父とお前の因縁を終わらせる」

「エルンスト・スタヴロ・ブロフェルド!貴方を逮捕するわ!」

 

 アリアも2丁のガバメントを構えてブロフェルドを睨む。ブロフェルドは目を丸くして見ていたが、くくくと低く笑いだした。

 

「そうかそうか、こいつらが待っていた援軍とやらか‥‥私をなめているのか…‼」

 

 殺気を込めて睨むブロフェルドにカズキは鼻で笑った。

 

「へっ!なめているのなら舐めてやるぜ‼ペロペローっ」

 

「奴を殺せ」

 

「お前何変に挑発してんだよ!?」

 

 ブロフェルドの標的がサイオンからカズキに変わり、変に挑発するカズキをカツェはツッコミを入れカズキが襲われる前にブロフェルドへと水の弾幕を飛ばした。ブロフェルドの周りにいた部下達には直撃するがブロフェルドには当たらなかった。サイオンが飛んでいる水の弾幕を縫うように駆けてブロフェルドへと拳を放った。目にも見えない速い拳をブロフェルドは余裕綽々で受け止めた。

 

「その程度の力で、私を下せると思ったか?」

「やってみせる…‼」

 

「よし、サイオンを援護するぞ!」

「行くぞケイスケ―っ‼俺達の実力をあなばるな!」

 

 サイオンを援護しようとカズキとケイスケはサイオンを狙おうとする外野に向けて撃つ。一方ナオトは未だにタクトが出しゃばってこないので気になってサラセンの陰を覗き込む。

 

「あー…やばい、これはマジでヤバイ。俺の喉のとこらへんがラグナロクしてる」

「た、タクト様、落ち着いてください。まずは一度一呼吸を」

 

 戻す寸前なのかそうでないのか吐き気を催しているタクトをリサが介抱していた。これぐらいよくしゃべるのですぐに元気になるだろうとナオトは自己完結で頷いた。

 

「どうしてこう、大事な場面の出鼻を崩すのか…」

 

 タクトとリサが狙われないように弓を射ながら守っているセーラは半ば呆れ気味にため息をついた。

 

「くそっ、敵数が多い!」

「ナオトー‼援護してくれー‼」

 

 カズキの情けない叫びにナオトはやれやれとため息をついてポーチからMK3手榴弾とスタングレネードのピンを引き抜いた。

 

「手榴弾投げ放題ー‥‥」

 

 そう言ってナオトは投げ込んだ。二つのグレネードは敵陣へと転がり衝撃を飛ばすが、カズキとケイスケ、カツェ、アリアまでもが巻き込まれそうになった。

 

「おいいいっ!?ナオトー‼投げるなら投げるって言えや!?」

「あぶねえだろ!?俺達も巻き込むつもりかバカ野郎!」

 

「ちゃんと言ったぞ。『手榴弾投げ放題ー』って」

「それで分かるかよ!?というかこれでよくチームを組めたな!?」

「もう…‼このバカ達と組むと胃が痛む事ばかりだわ…!」

 

 ギャーギャーとナオトへの文句を言うが、ナオトはなんで怒られてるのかと首を傾げていた。一方、サイオンとブロフェルドはお互い拳を受けることなく激しい攻防を繰り広げていた。サイオンは目にも止まらぬ速さで拳を振るうがブロフェルドには当たることなく、ブロフェルドは不敵な笑みを見せていた。

 

「まったく同じものだな。お前の格闘はジェームズボンドとまったく同じ動きをしているぞ!」

「っ!?」

 

 サイオンの左拳を受け止めるとブロフェルドは鳩尾へと拳を叩き込む。前倒れになるサイオンの顔面に膝蹴りを入れ、怯んだ隙にワルサーPPKの銃口を向けた。

 

「させるかっ!」

 

 そこへ肘、手首、手の甲、指からカードナイフのような刃物を出したワトソンがブロフェルドへと飛び掛った。腕を鞭のように振るうがブロフェルドはチラ見しただけでひらりと躱す。

 

「…ブラックウッドはどうやらホームズしか目が無いらしい。蚊帳の外で気の毒だな、ワトソン卿」

 

 ひらりと体を回して回避した勢いでワトソンの腹へと勢いよく蹴りを入れて蹴とばした。

 

「うぅっ…‼」

「ワトソン!このっ、風穴開けてやるわ‼」

 

 アリアはブロフェルドへと2丁のガバメントで撃った。しかし彼女の撃った弾丸はブロフェルドに当たることは無かった。ブロフェルドは静かにワルサーPPKを連射しアリアが撃った弾丸を弾き飛ばす。自分が撃った弾で弾かせたとわかったアリアは驚愕した。キンジがやる飛んできた弾丸に向けて撃って弾かせる技、銃弾撃ちをブロフェルドが容易くしてきたことに驚きを隠せなかった。

 

「こんな隠し芸みたいな技に驚いては困る。何年、ジェームズボンドと死闘を繰り広げてきたことか」

 

 肩を竦めるブロフェルドは弾倉を交換させてリロードし、アリアへと狙いをつけて撃った。

 

「おらーっ‼盾ガード‼」

「そっから離れやがれ‼」

 

 アリアへと飛んでくる弾丸を防弾シールドを用意していたカズキが防ぎ、カズキの後ろからケイスケがM4で狙いをつけて撃つ。ブロフェルドは不敵に笑って後ろへと下がった。

 

「あ、あんた達…借りとか作らないからね!」

「え?カニ?カニは美味しいよな!」

「そういう話をしてないわよ‼」

 

 頼りになるのか、それともただのバカなのか、アリアはプンスカと文句を言った。今回はキンジがいない分、自分がやらなければならない。この喧しい連中は頼りになるかどうか分からないが、ここで弱音を吐くつもりはない。アリアは気を引き締めてガバメントをリロードする。

 

「私の銃だけじゃ力不足。フォロー頼んだわよ!」

 

「任せな!援護するのに評定はある俺達だからな。なあケイスケ!」

「初耳なんだけど?」

 

 サイオンに加え、カズキ達がブロフェルドと戦っている間、弱音どころか別のものを吐きそうになっているタクトは必死にリバースするのを耐えていた。

 

「くっ…この数じゃ宝石の残りが持つかどうか分からないわね…ってあんたまだそこにいたの!?」

 

 魔力を込めた宝石を使って戦っていた凛は未だにリバースしかけているタクトに気付いてツッコミを入れた。タクトはプルプルと震えながらもドヤ顔をした。

 

「ふっ…ヒーローは遅れてやって来るもんだぜ」

「吐き掛けのヒーローとかごめんだわ」

「でももう大丈夫!リサのくれた吐き気止めのおかげで元気ハツラツ!ジョージ神父、凛先輩!ここから俺のだいでんどん返しを見せてやるぜ!」

「それを言うなら大どんでん返しでしょ」

「ふふふ、期待しているよ」

 

 リサに手当を受けているジョージ神父はにこやかに笑う。ふんすと張りきったタクトはM16を持って突撃していった。

 

「うおーっ‼筆頭デスナイトのお出ましじゃーっ‼」

 

 タクトは奮戦して撃つが、ものの数秒で敵に囲まれてしまった。タクトを援護するようにセーラが弓で射て、ナオトがAK47を、ワトソンがP226で撃ってタクトを救出する。

 

「たっくん、無茶しすぎ」

「しっかりしろよ、筆頭デスナイト」

「こ、こっからが俺の見どころさ!ってそういえば王子は?」

 

 ふとタクトはハワード王子のことを思い出してキョロキョロとあたりを見まわした。王子はサラセンの陰で身をひそめて隠れていた。王子に狙いをつけて向かっている敵はジャックがたった一人で只管戦っていた。タクトは駆けて王子を立ち上がらせた。

 

「王子!そんな所で引きこもっている場合じゃないですぜ!」

 

「ば、バカを申すな!余は立場がある身!このような危険な戦いは下々の者に任せればよかろう!」

 

 頑なに戦わないと言う王子にタクトはキョトンとするが、ハワード王子は話を続ける。

 

「そ、それにここはサイオンとジャックに任せればよかろう?お前達もおるのだから余の出る幕ではなry」

 

 王子が言い終わる前にナオトが王子に向けて頭突きをかました。突然の事にセーラもワトソンもギョッとし、受けたハワード王子本人も言葉が出なかった。ただ、ナオトの様子にタクトは気づいていた。

 

「な、ナオト!?王子になんてことを…!?」

「やっば‥‥ナオトがキレた!」

 

 今のナオトはフルジップのパーカーで顔が隠れて見えないし、明らかにキレているという雰囲気さえも窺えない。驚く王子にナオトはホルスターからFN5-7を引き抜いて王子に押し付けた。

 

「誰かがやるからやらなくていいじゃない…人生には自分でやらなきゃいけない事がある。それが今」

 

 ナオトの威圧に押され何も言えない王子に更に話を進める。

 

「どんなに危険な事でも逃げないで立ち向かわなきゃいけない。それに、意味のない戦いなんてない。ジャックのために、サイオンのために…この国の危機を救うためにやるんだ」

 

 そう告げ終わるとナオトは奮戦しているジャックの援護へと向かって駆け出していった。何も言えなかった王子は辺りを見回す。傷つきながらもブロフェルドの因縁を終わらせるために戦うサイオン、そのサイオンを手助けしているカズキとケイスケとアリア、国会議事堂へと入らせまいと必死に護って戦っているジョージ神父や凛やカツェ。自分よりも幼いジャックも戦っているというのに何もできていない自分に悔しさが募り押し付けられた拳銃を強く握った。

 

「余は…余は…!」

 

 確かに銃の扱いはできるが、こんな戦いなんて経験したことがない。恐怖と焦りに竦む王子の肩をタクトはポンと叩いた。王子は振り向くとタクトはニシシと笑った。

 

「そうビビることは無いぜ。俺がいるさ!なんたって俺達ソウルメイトだもんな!」

「タクト…!」

 

 タクトに勇気づけられ王子の震えは止まった。タクトはリロードをして前へ進む。

 

「護衛は任せろ!せーので駆けるぞ」

「うむ…いつでもよい‼」

 

 タクトはせーのすらも言わずに駆け出す。言わないのかよと王子はツッコミを入れタクトに続いて駆け出した。

 

__

 

 サイオンは息を荒げながら地に膝をつき、ブロフェルドを睨む。傷ひとつついていないブロフェルドは低く笑う。

 

「滑稽だな、サイオン。お前もジェームズボンドと同じように愚かで甘い」

 

 サイオンは無言のままキッとブロフェルドを睨んだままだった。ブロフェルドはゆっくりと近づいてワルサーPPKのリロードをする。その瞬間にサイオンはブロフェルドへと一気に迫り、左手のブローを放った。衝撃音が響き渡るが、サイオンの左手のブローは届かなかった。ブロフェルドは不敵に笑みながら片手で受け止めており、サイオンの左肩へワルサーPPKを撃った。

 

「同じだ…ジェームズボンドはその亜音速の左手の拳で私を下した。同じ手をくらうと思っているのか?」

 

 倒れるサイオンにブロフェルドは再びワルサーPPKの銃口を向ける。

 

「うらーっ‼やらせてたまるかーっ‼」

 

 カズキ達がサイオンを助けようと駆けるが、ブロフェルドが目で合図し部下達に阻まれた。

 

「くそっ‼そこをどきやがれコノヤロー‼」

「このままじゃサイオンが危ないわ!」

 

 ケイスケもアリアも必死に撃つが、その壁は厚い。ブロフェルドはほくそ笑んでゆっくりと引き金を引いていく。

 

「ボンドは胸を撃ってもすぐに立ち上がるからな…頭を撃ち抜かせもらう。お別れだ、007」

 

「うおおおおおおっ‼ちょっと待ったーっ‼」

 

 引き金を引く寸前、ブロフェルドに向かってタクトが突っ込んできた。タクトの後ろにはハワード王子もついて来ていた。タクトがM16で周りを片付け、ハワード王子はブロフェルドへとFN5-7を構えた。まさか王子自らが飛び込んできたことにブロフェルドは目を丸くしていた。

 

「サイオン‼お前はこんな所で死んではならん!」

 

 王子は引き金を引き、放たれたFN5-7の弾丸はブロフェルドへと向かって飛んでいく。しかしブロフェルドは顔ギリギリのところを掠めて躱した。顔に赤い線のような傷を負いながらもブロフェルドはワルサーPPKの銃口を王子の方へと向けた。

 

「王子自らとは恐れ入った。だが、むやみやたらに突っ込むのは蛮勇のすることだ」

 

 ワルサーPPKの銃口をサイオンから王子へと変えた僅かの隙をサイオンは見逃さなかった。その瞬間に目にも止まらぬ速さで動いたサイオンと彼が放った右手のブローがブロフェルドの体に直撃した。どうやらブロフェルドさえも捉えることができなかったようで動揺していた。

 

「ぐ…なんだ…何だ今の速さは…!?」

 

 動揺するブロフェルドに対し、サイオンは口に血を拭って身だしなみを整えた。

 

「ブロフェルド…お前はただ知らなかっただけだ。父も、私も本当は()()()()

 

 ブロフェルドに静かに近づくサイオンからはこれまでにない程の殺気を感じられた。

 

「世界中の全員に、ハンデを与えていた。だが…貴様が王子へ危害を加えるのならば、ハンデはもういらないだろう」

「ハンデだと…!?ジェームズボンドさえもこの私に手加減をしていたというのか‼ふざけるな!」

 

 激昂したブロフェルドはワルサーPPKを何度も撃った。サイオンは一気にブロフェルドの懐へと迫る。ブロフェルドは左の速い拳を放つが、サイオンはひらりと躱した。

 

「…終わりだ、ブロフェルド」

 

 サイオンは亜音速ともいえる程の速さの右手の鉄拳を放った。漫画の様な衝撃音が響いたと同時にブロフェルドは轢かれた蛙のような声を上げて前のめりに倒れた。それでもサイオンは加減をしたようで、ブロフェルドは体が動けなくても乾いた声を出してサイオンを睨んだ。

 

「何故私を殺さない…!」

 

「…私の父は、一度も人を殺さなかった男に敗れた。そのプライドもあるが…お前は沢山の人を殺した。私や父の手で下すの簡単だが、それではお前の罪は消えない。お前は裁かれるのが一番だ」

「このまま逮捕だーっ‼」

 

 タクトは倒れているブロフェルドに手錠をかけた。サイオンは大きく息を吐くと王子に大きく頭を下げた。

 

「殿下、申し訳ございません。このような醜態をさらし、殿下が出るようなことになってしまい…」

「よい。こ、こ奴らの戦いぶりを見て余も戦いたくなっただけだ‥‥サイオン、見事であったぞ」

 

 サイオンは目を丸くしたが、すぐにふっと笑った。

 

「よっしゃ、まずはデープの頭領を捕えたぜ!」

「あんた達のボスは捕えたわ!このまま大人しく…」

 

 ブロフェルドが捕えられたにも拘らずスペクターの戦闘員たちは銃を降ろすことなくカズキ達への攻撃をやめることは無かった。

 

「えええっ!?ボスを倒したら終わりじゃないのかよ!?」

「くそっ!やっぱあのM字ハゲを倒さなきゃいけねえってか!」

 

 ブラックウッドは【極限宝貝・エクリプス】を持っている。ブラックウッドを倒さない限り、この戦いは終わらない。アリアは舌打ちしてガバメントを敵へと向ける。

 

「あんた達‼さっさとブラックウッドを止めに行きなさい!」

 

「アリア、ここはいいのか?」

 

 ケイスケは気になって尋ねる。先に行ったとしてもブラックウッドはどこにいるのか分からない。ここはブロフェルドに問い詰めてこの場を片付けて行くべきではないかと。しかしアリアは早く行けと言わんばかりに声を荒げる。

 

「ブラックウッドが曾お爺様への復讐を望んでいるのなら、あいつはロンドンブリッジにいるわ!」

 

「ロンドンブリッジ?なして?」

 

「曾お爺様がブラックウッドと最後に戦った場所よ。メヌを救えるのはあんた達しかいないし、この騒動を止めるのもあんた達がやらなきゃいけないのよ‼わかったらさっさと行って!」

 

「よーし、任せとけ!カズキ、ナオト、ケイスケ‼俺に続けーっ!」

「たっくん!ロンドンブリッジはこっち‼」

「アリア、キンジにカッコイイところ見せたかったって後から文句を言うなよ?」

「…そっちも無理をしないで」

 

 カズキ達はロンドンブリッジへ向かって濃霧の中を駆けだしていった。カズキ達を見送ったアリアはカズキ達を追いかけようとしている戦闘員に向けてガバメントを撃った。

 

「悪いけど、あのバカ達の邪魔をするなら風穴開けてやるわよ!」

「いいのか?お前も行きたかったんじゃないのか?」

「‥‥ついて行っていいのか分からないけど」

 

 アリアの背後から襲い掛かろうとした敵達にカツェが水の弾幕を飛ばし、セーラは風を放って吹っ飛ばした。そんなカツェにアリアは苦笑いをした。

 

「私じゃあのバカ4人のビックリおっかない行動にはついて行けれないわよ」

「まあ…確かにその気持ちは分からなくもねえな」

「それには同感する」

 

 アリアにつられ、カツェもセーラも苦笑いをした。

 

「…だが、彼らの手助けにはなるはずだ」

 

 そんな彼女たちの下へジョージ神父がやってきた。ジョージ神父は襲い掛かって来る戦闘員の攻撃をひらりとかわして掌底を当てたり、蹴りや拳を入れて倒していく。先ほどまで手加減をしていたかのように、今は圧倒的な力で次々に倒していっていた。

 

「し、神父。貴方は一体‥‥」

「アリア…君に弟、シャーロックが迷惑をかけてすまないね」

「弟…シャーロック…ってもしかして貴方は‥‥!?」

 

 まさか目の前にいるジョージ神父がシャーロック・ホームズの兄、マイクロフト・ホームズだと気づいたアリアは驚愕した。パクパクと口を開けて慌てふためくアリアにジョージ神父はにっこりと笑う。

 

「私からも迷惑をかける事になるが‥‥彼らの手助けをしてくれないだろうか」

 

 

 ジョージ神父とアリアのやり取りを見ていたジャックはカズキ達が駆けて行った方向を見た後、カズキ達を追いかけようと霧の中へと駆けて行った。その様子を見ていた王子は不安がよぎった。

 

「ジャック‥‥‼もしや‥‥」

「…殿下、ここは私が守ります。殿下はジャックの下へとお行きください」

「サイオン‥‥すまぬ!」

 

 ハワード王子は単身で霧の中へと駆けて行った。

 

__

 

 カズキ達はロンドンブリッジへと只管濃霧の中を駆けて行った。国会議事堂からロンドンブリッジまではそう遠くないと思っていたが、ひたすら走っているで遠く感じた。

 

「くそーっ!まだ見えねえのか!」

「なんか遠い気がするー!」

「お前等グダグダ文句言ってないで急げや」

「‥‥サラセンに乗って行けば早く着いたんじゃね?」

 

 ナオトの呟きに3人は「あ」と口をこぼし、ジト目でナオトを睨んだ。

 

「ナオトー!お前それははやく言っとけ?」

「ほんとにさ。お前ってほんとおっちょこちょいだな!」

「お前そこは空気読んで流しとけよ」

 

「なんで俺は怒らてんだ?」

 

 ナオトは文句を言おうとしたが止めた。彼らの行く先に見える人影が見えた。その辺りだけが霧が薄くなってきたようで、全貌が見えた。

 

「‥‥」

 

 伊藤マキリはカズキ達が来るのを待っていたかのように立っていた。カズキ達の気配に気づくと静かに顔を上げ氷のような瞳でカズキ達を見つめた。

 

「‥‥本当に貴方達は私達の障害となるようのなら、私の手で排除させてもらいます」

 

「佐藤マキリ‥‥‼」

「伊藤だよバカ」

 

 早速人の名前を間違えるカズキにケイスケはツッコミを入れた。カズキ達は武器を構えて警戒する。未だに彼女から放たれる見えない何かの正体は分かっていない。しかしカズキ達は負ける気がしていなかった。

 

「どんな技をしてくるかまだ分かってないけど…俺達4人のチームワークにかかれば怖くないぜ‼俺達の合言葉は‥‥」

 

 

「ズットモ‼」

「現金ヨコセ」

「あん肝あん肝あん肝…」

「もうバラバラじゃねえか」

 

 揃わないチームの合言葉にケイスケは呆れてツッコム。マキリは本当に彼らは障害になるのかすら分からなくなってきた。




ブラックウッドが登場する『シャーロックホームズ』では恐らく国会議事堂のすぐ近くの橋で決闘をしていたと思うけど、ここではロンドンブリッジで戦ったということで。
19世紀にロンドンブリッジはあったっけかな…知識不足ですみません。


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