カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 アメリカってほんと広大ですよねー‥‥アリゾナ、ニューメキシコ、ニューヨークまでの道のりが物凄く長い長い。
 うん、これ数か月もかかるかも‥‥(白目


90話

 ワシントンD.Cにあるアメリカ大統領の居住であり、政権の中枢であるホワイトハウス。そのホワイトハウスの中にある国賓の晩餐会以外で非公式の夕食会に使われるファミリーダイニングルームにて、黒のスーツを着た髭の濃ゆい男性ことアメリカ副大統領であるリチャード・フランプは緊張の表情でじっと座っていた。

 

 本来ならば大統領がいなければならないのだが、大統領が誘拐されたという前代未聞の事件が起きており、今は大統領の代理として副大統領が指揮を執っている。しかし、リチャード・フランプにとってこれはどうでもいいことであった。

 

 それもそのはず、リチャード・フランプはこの事件の首謀者である。しかしそれも今はリチャード・フランプにとってどうでもよかった。テーブルに並べられている豪勢な料理にも手を付けず、目の前に座って静かに食事をしている黒い軍服を着た、水色のツインテールのした少女をじっと見つめていた。

 

「…そう怯えるな。折角の料理が台無しであろう、()()大統領殿?」

 

 少女は静かにくすりと笑うとリチャード・フランプは背中にぞくりと冷や汗をかき、引きつった笑顔で返す。

 

「は、はは…これは失礼いたしました、ネモ提督。世界で最高のシェフ達が作りましたこのディナーにご満足いただけて光栄でございます」

 

 ネモ――ノーチラスこと『N』と呼ばれた国際テロ組織の筆頭である少女。ただ海軍のコスプレをしているというわけでなく、彼女から感じる殺気と覇気にリチャード・フランプは押し殺されそうになりながらも必死に堪えていた。『N』は本気になれば国をも亡ぼすほどの恐ろしい組織だと聞く。目の前にいる少女が、ネモがまさに恐怖そのものであった。

 

「う~ん…ボク的にはお子様ランチが良かったなー」

 

 そのネモの隣の席に座っているぼさぼさ髪の白衣の男、ジキル博士はつまんなそうにフォアグラをフォークで何度も突き刺しながら食べていた。

 

「黙れ」

「もー、ネモったらいけずー」

 

 スッパリと切り捨てるように言い放つネモにジキル博士は無邪気な子供の様にケラケラと笑う。そんな軽いやり取りでも静かに殺気を放つネモにリチャード・フランプは引きつった笑顔のまま耐えていた。

 

「…して、次期大統領殿。首尾の方はうまくいっているのか?」

 

 ネモがちらりとリチャードの方へと視線を向けた。遂に本題が来たかとリチャードはごくりと生唾を飲んだ。そして営業スマイルかのようにニッコリとして答える。

 

「ええ、計画は順調に進んでおります。トレンチ…いや、アイアンブリゲイドはロスアラモス機関にてすでに完成してあります」

「仕事は速いな…」

「お褒めいただき誠にありがとうございます。全てはネモ提督が授かってくださった知恵と『アレ』のおかげです」

「あとそれと僕の兵士たちのおかげでしょ?」

 

 副大統領の定型文のような言葉にネモはフンと鼻で返し、自己アピールしてくるジキル博士を無視して赤ワインを飲んだ。

 

「異能者共を駆逐し、アメリカに根付いた腐った思想を根絶やしにし、今一度アメリカを我々の思想に従順なる国家へと造り直す‥‥その為にはこの国をもう一度最強の国家へと成らねばならん。長い道のりになるだろうが、これには次期大統領殿、お前がカギだ」

 

 蛙を射殺す勢いで睨む蛇のように、ネモは鋭い目つきでリチャードを見つめる。重いプレッシャーと恐怖が伸し掛かりながらもリチャードは必死に堪え、へつらいの笑みを見せて頷いた。

 

「百も承知でございます…その計画を成功する為には障害になる現大統領、マイケル・セガールの排除、そしてジーサードのような反乱分子の処分ですな」

 

 マイケル・セガールは『N』の思想とは真反対の存在であり、リチャードにとって邪魔な存在であった。そしてジーサードのような連中もいずれはこちらの思惑に気付き、阻止をしてくるはずなので邪魔な存在であった。けれども、今回はタイミングが良かった。あちらがエリア51で何かをしていたおかげで気づかれずに実行ができた。マイケル・セガールを不意打ちで重傷を負わせ、大統領を誘拐及び殺害未遂でジーサードをアメリカ全土に指名手配することができた。

 

「これまで不備なく順調に進んでおります。後は大統領を殺害し、遺体及び死亡をアメリカ全土に公表。そして罪を被ったジーサードを公の前で逮捕、処分をすれば…」

「そうだね。ジーサードは僕が捕えてるし、後は大統領の死亡報告さえくればすぐに始末できるよ」

 

 カチャカチャとフォークとナイフを音を立てながら行儀悪く食事をしているジキル博士がケラケラと笑う。

 

「あいつ、仲間を盾にして逃げればいいのにさ。仲間を逃がして自ら戦ったんだぜ?バカだよねー‼」

「小粒はほっとけばいい…さて、次期大統領殿。こちらは既に舞台を用意してある。あとはお前次第だ」

 

 ネモは静かに、そして副大統領ではなくその先を見つめているかのように見つめてきた。リチャードはごくりと息を飲むが、落ち着いて頷いた。今は順調に進んでいる。障害は何もないはずだ。

 

「ええ、もう間もなくです。今頃私の部下が大統領を始末し、大統領の死亡を報告に来るはずです」

 

 もう間もなく。もう間もなくで自分が大統領のイスに座ることができる。リチャードは喜びと希望の表情でその報告を待った。

 

 すると、タイミングよくファミリーダイニングルームの扉にノックの音が鳴り、黒のスーツを着たサングラスをかけた男が入ってきた。いそいそとリチャードの方へと足を速める。部下が大統領を始末したと報告に来る。リチャードは期待の笑みで部下を見る。

 

「し、失礼します、副大統領。じ、実は‥‥」

 

 そう緊張することはない。リチャードは落ち着きながら、大統領の始末の報告を部下の耳打ちを通して聞いた。

 

「‥‥‥‥は?」

 

 しかし、部下から伝わった内容を聞いたリチャードは耳を疑った。部下を睨み付けて確認をした。

 

「それは‥‥本当か?」

「え、ええ…」

 

 リチャードは目を丸くしてパクパクと口を開かせる。それは本当だとしたら非常にまずい。目の前にいるネモを完全に機嫌を損ねさせてしまう。

 

「どうした、次期大統領殿?ちゃんと報告を聞いたのだろう?」

 

 案の定、ネモがこちらを見て尋ねてきた。リチャードは冷や汗を流しながら、何とかして誤魔化そうとした。

 

「い、いえ、ネモ提督、た、多少の問題がありますが…事はすぐに順調に進みまry」

「多少の問題…だと?正直に話せ。まさか私を誤魔化そうとしているわけではないだろうな?」

 

 ネモの視線が鋭くなった。この女に噓やあやふやな答えや誤魔化そうなんてしたら間違いなく殺されるだろう。静かに食事を続けているネモにリチャードは部下から聞いたことを全て話した。

 

「じ、実は‥‥大統領を始末するはずだったんですが‥‥そ、その大統領が姿を消しまして」

 

 言い終わった途端にテーブルにガツンと大きな音が響いた。ネモがフォークで思い切りステーキを突き刺したのだった。ビクリとしたリチャードは恐る恐るネモの方へ視線を向けた。

 

「ほう?面白い事を言うな、()()()()殿()。遺体を晒すはずの大統領が姿を消すとは、実に滑稽な話だな?」

 

 口は笑っていたが目は完全に笑っていなかった。その眼は完全に怒りと苛立ちを見せていた。もう隠し事はできない。リチャードは恐怖に押されながらも口を開いた。

 

「し、始末するところを…何処からやって来た変な連中に邪魔をされました。恐らく今現在大統領は存命で、こちらへ向かっているかと‥‥」

 

 その瞬間、この一室に殺気が一気に広がった。押しつぶされそうなくらいの恐怖が伸し掛かり、リチャードは震え上がった。ネモはこの事を聞いて静かに怒っていた。そしてその隣にいるジキル博士は腹を抱えて笑っていた。

 

「ほらねー‼やっぱり彼らなんだよ、ネモ‼『可能を不可能にする女(ディスエネイブル)』がもう『バカ4人組』に足下掬われてやんのー‼」

 

 ネモはこちらに向けて馬鹿にするように嘲笑うジキル博士をキッと睨み付けた。その瞬間、ジキル博士が壁へと吹っ飛ばされた。リチャードの目からは吹っ飛ばされたのではなくジキル博士がその場から一瞬にして遠くへとテレポートされたかのように見えた。

 

「あいたたた…ジョークに本気で手を出すなんて君らしくないなぁ、ネモ?」

「次は無いぞ、ジキル博士」

 

 一体何が起きていたのか、リチャードは目をぱちくりしていた。今のがネモの能力だったのかもしれない。ネモはため息をついて席を立った。

 

「さて‥‥副大統領殿、次に何をするか分かっているな?これ以上、私の機嫌を損ねさせないでもらいたい」

「ひゃ、百も承知でございます…‼」

「では、期待をしているぞ‥‥」

 

 ネモはそう言い捨てると翻して出て行った。それに続くようにジキル博士がこちらに「ばいばーい♪」と無邪気な笑顔で手を振ってから出て行った。静寂になった一室にリチャードは立ち尽していた。はっとしたリチャードはすぐさま隣にいる報告してきた部下の方へ睨み付けた。

 

「何をしている。さっさと探せ‼アメリカ全土に大統領を捜索せよと伝えろ‼CIAやFBI、軍を使ってでも探し出せ‼公にはジーサードとその部下達が大統領を拉致監禁していると報道するんだ‼」

「で、ですが副大統領、ジーサードの件ですが‥‥市民や一部の軍も『彼がその様な事をするわけがない』と反発しておりますが…」

「そんな事なぞどうでもいい‼疑うなら証拠をでっち上げさせろ!それでも反発するなら黙らせるんだ‼」

 

 リチャードは響き渡るほどの怒号を飛ばし、部下はいそいそと部屋から出て行った。やっと自分だけになったところで荒々しくテーブルを叩いた。

 

「このアメリカを導くのは理想でも、優しさでも、ヒーローでもない‼力だ。有無を言わせぬ圧倒的な力なのだ…‼」

 

 リチャードは額縁に飾られているマイケル・セガールの写真をずっと睨み付けていた。

___

 

「へー、本当に大統領だったんだねー」

 

 タクトはシェイクを啜りながら呑気に頷いていた。カズキ達は大統領であるマイケル・セガールを殺そうとしていたスーツの男達が乗っていたトヨタランドクルーザーで飛ばし、自分達がいたアリゾナ州を通り抜けてニューメキシコ州にあるケマードという小さな町へと入り、安っぽいカフェで一時休息をとっていた。

 

「もう、大統領なら大統領だと早く言ってよねー」

「だからさっきからずっと言ってただろ…というか恐れ多いすぎだし」

 

 大統領の前であるにも関わらず平然としているタクト達の様子にカツェは勇敢なのかただ無知なのかと呆れていた。マイケルはズラを付けて周りに自分が大統領であることを隠すために変装をしていた。しかしその大統領の変装にケイスケはジト目でカズキを睨む。

 

「いくら大統領を隠すためだというけどよ、もっとまともな変装は無かったのかよ?これじゃラーメンみたいな頭じゃねえか」

 

 カズキが大統領に渡したカツラはなんだか縮れ麺を頭につけた様な金髪のカツラだった。

 

「いいじゃねえか。なんかラーメン壱号っぽくね?」

「…ラーメン食べたくなってきた」

「俺、塩ラーメンがいい‼」

「お前ら、完全に大統領を馬鹿にしてるよな?」

 

 大統領をラーメン呼ばわりしているのは恐らく過去でも未来でも世界中でこいつ等だけだろうとカツェは遠い眼差しで見ていた。そんなカズキ達にマイケルは楽しそうに笑う。

 

「ははは、君達といると昔見ていた『フルハウス』を思い出すな。賑やかでいいじゃないか」

 

 本当に大統領には申し訳ないと、カツェはため息をついた。そんな楽しそうにしつつコーヒーを飲んでいるマイケルにリサは心配そうに見つめる。

 

「あの…お怪我はもう大丈夫ですか?あれほどの重傷だったのですが…」

「ああ、私はこんな怪我はすぐに治るさ。それにリサとケイスケの手当のおかげでもう心配はいらない」

「大統領って一体…」

 

 カズキ達の行動力や緊張の無さには驚くが、大統領の身体能力もおかしいのではと思いつつカツェは早速本題に入ることにした。

 

「副大統領が『N』と手を組んで陰謀してんのはマジなんだな?」

「ああ…リチャードはネモという『N』の一員と手を組み、私を陥れた。そしてジーサードに無実の罪を着せ、彼を抹殺しようとしている」

 

「つまり、あんたを殺したということでジーサードに罪を着せてアメリカをその副大統領とネモとか言う奴が乗っ取ろうとしているわけか」

「カモとかいうやつ、随分とせこい奴だな!」

「カモじゃなくてネモな」

 

 カツェが納得して頷き、カズキの間違いをケイスケが静かにツッコミを入れる。

 

「ですがどうして今になってこのような事を…?」

 

「全てはネモが仕組んだ計画だ。全ての準備を終え、計画を実行に移したんだ…」

「そのネギとかいうやつって何者なの?」

「ネギじゃなくてネモな」

 

 ケイスケが静かにタクトにツッコミを入れ、ナオトが言い出す前にケイスケはナオトの口を押える。

 

「『N』と言う組織の筆頭であり、提督と呼ばれている。彼女がその組織の幹部であるのは間違いないだろう…」

「じゃあ、ネモは計画を立てて何をしようとしているんだ…?」

 

「ナオト‼そこは真面目にするんじゃなくてボケろよ‼」

「そうだぞー、天然にも程々しくてなんか神々しいぞ」

「その理屈はおかしいだろ」

 

 ケイスケはカズキとタクトにツッコミを入れて大統領に話を続けてもらった。

 

「このアメリカにいる異能者達の抹殺、この国の軍紀、秩序、人権、平和を崩壊させ、この国を再び大戦へと戻そうとしている」

 

 その言葉にカツェとリサは引きつった。つまりはアメリカの国を戦争国家へと変えさせ、この国を台頭に世界中を世界大戦へと巻き込ませるつもりだ。もしそうなると過去の大戦以上の血が多く流れるだろう。

 

「第参次世界大戦でも起こさせようとしやがるのか…?」

「今ではそれに向けた兵器を開発、大量生産しようとしている…このままだと奴らを止める事ができなくなる」

 

「つまり‥‥どういうことだってばよ、ケイスケ?」

「ああ?あれだ、大変な事になるってことだ」

「大惨事にしようとしてるってわけだな!わからん‼」

「‥‥止めなきゃいけないってことか?」

 

 重要な意味を理解していない4人組にカツェとリサは盛大にこけてしまった。彼らに難しい話は何となく苦手だったと思いだした。

 

「まあうん…その、そうなるとは思ってたけどさ…」

「なんーだ。カツェ、簡単な事じゃねえか!俺達で大統領を護衛して、その大福大統領とネモとかいう奴をとっちめてやろうぜ‼」

 

 いつも通りに元気よく笑って立ち上がるカズキに続き、タクト達も立ち上がる。

 

「イギリスでもできたんだ。俺達なら不可能はねえぜ‼フォーメーション守ってナイトでいこうぜ‼」

「難しい事は俺達には分かんねえよ。大統領と一緒に戦えばいいんだろ?」

「‥‥やるからには頑張る」

 

 自信満々な4人組にカツェはポカンとしたが、その通りだとニッと笑った。

 

「お前等らしいぜ…大統領、ってなわけだ。突発的だけどあたし達が力を貸すぜ」

「り、リサもお供いたします‼」

 

 やる気満々なカズキ達にマイケルは口を開けて驚いていたが、満足した笑みを見せて頷いた。

 

「ありがとう…‼君達は勇敢な戦士のようだな…‼」

 

「じゃあ大統領、こっからどうしようか?お供しやすぜ‼」

「ホワイトハウスに一直線だぜ‼」

「馬鹿、まずはジーサードの救出が先だろ」

 

 ギャーギャーと騒ぐカズキ達にカツェが一先ずカズキ達を落ち着かせてる。ここから先は副大統領やネモ達の追手が襲ってくるかもしれない。慎重に進まなければならないが、彼らじゃ難しいだろうとそんな気がしていた。

 

「そうだな‥‥まずはオクラホマ州へ行こう。そこには私の旧友がいる。彼なら力を貸して共に戦ってくれるだろう」

 

 オクラホマ州へ向かうならニューメキシコを通り、テキサスを通過する。今回は長い旅、長い戦いになるだろう。しかし、カズキ達はそんな事は気にもせず張り切っていた。

 

「さあやるぜ‼打倒ネギ‼」

「ネモつってんだろうがハゲ‼」




 色んな俳優に色んな映画作品に色んなヒーロー…アメリカは本当に色んなネタの宝庫ですね(遠い目)
 今度は誰を出そうかなー…

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