カオスな4人衆!?最強のSランク武偵を目指せ‼   作:サバ缶みそ味

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 気づいたらもう8月下旬‥‥夏休みの終わりが近づいて来ましたね。
 旅行して帰ったら、まだ夏休みの宿題が終わっていない事に気付きました。
 ええ、見つかったんですよ。終わったと思ったら鞄の中に他の宿題が‥‥



94話

「ささ、遠慮なく入って‼私の奢りだからさ!」

 

 ヤンは上機嫌でステーキハウスへと入っていく。ヤンに続いてカズキとタクトはウキウキ気分で入っていった。

 

「やったー‼ステーキなんて素敵!」

「うへー、たっくんのクソギャグが冴えるぜーっ!」

 

 ここにケイスケがいたら彼らにゲンコツを入れて止めていただろう。しかしツッコミ役もストッパー役のケイスケがいないので誰も止めることができない。ナオトは無言のまま、大統領のマイケルは苦笑いしつつ後に続いてステーキハウスへと入っていった。

 店内は木製のカウンターに、フロアにはあちこちに木製の丸いテーブルが置かれ、どこか西部チックな内装であるが客が1人もおらず閑散としていた。店員か店長でさえいるのかどうか疑うほど静かで店は繁盛しているのかどうか疑わしいものであった。しかしヤンは常連なのか、全く気にせずにカウンター席に座る。

 

「はーい、店長!暇そうだから遊びに来たわよー!」

 

 元気よく大きな声でキッチンへ手を振るが返事は来ない。それでもヤンは鼻歌を唄いながらテーブルに置かれてある古めかしメニューを開き選んでいた。

 

「私、ここでバイトしてるから気にしなくていいわよ。店長、もといフランクさんは暇つぶしでこのお店を経営してるし」

 

 だからそこまで遠慮なしに寛いでいるわけだとカズキ達は納得した。

 

「そのフランクフルトさんってなんで世界最強のジャーナリストなの?」

 

 ずっと気になっていたのか、タクトは不思議そうに首を傾げながらヤンに尋ねた。ヤンは待ってましたと言わんばかりにニッコリとする。

 

「フランク・ウェスト。通称、『戦うジャーナリスト』または『人型凡庸決戦兵器』。戦場の真っただ中を駆けるのはどの戦場ジャーナリストでは当たり前だけど、あの人は敵地のど真ん中で大暴れしながらあれやこれやと撮影するの。それに、犯罪組織に潜入して大暴れしてするのよ。あの人はイ・ウーや藍幇、数多の組織の情報を簡単に集めちゃうの」

 

「その人、やべーな!」

 

「やべーどころじゃないわよ?噂じゃガムテープさえあれば武器を何でも作るとか、オレンジジュースを飲めばどんな怪我だって完治するとか」

 

「その人ヤバすぎるだろ!?」

 

規格外のような話にカズキ達は驚きを隠せないでいた。そんな人物が味方になれるのならどれだけ心強いか。どんな超人なのかとカズキとタクトは期待の眼差しで目を輝かせていた。そんな彼らに気にもせずヤンは注文を決めたのかメニュー表を片付けた。

 

「店長ー!私はいつのもやつねー!」

「じゃあ俺もいつものやつ!」

「そんじゃ俺もいつものやつ!」

「お前等常連じゃないだろ」

 

 ナオトはジト目でツッコミを入れる。すると閑散としてひと気のなかった厨房から物音がし、どかどかと板が軋む音を響かせながらカウンター席へと近づいてきた。

 

「ったく、今日は客が来ないからさっさと店をたたもうかと思っていたのによ…」

 

 厨房からやってきたのはしわくちゃの白いシャツを着た、渋い顔をした男性だった。やや無愛想に見えるが体格は逞しく、かなりのタフガイだと伺える。寝起きだったのか男性は欠伸をしながらしかめっ面でヤンにデコピンをした。

 

「あと店長って呼ぶな。これは副業で、本職はジャーナリストだ」

「そうかしら?最近は焼肉屋の店長の方が儲かってない?」

「給料減らすぞ」

 

 「そんなー」と愚痴をこぼすヤンに男性は無視して調理にも取り掛からずドカッと椅子に腰かける。カズキ達はポカンとしていたが、気づいたヤンが男性の方を指さす。

 

「紹介するわ。この人が世界最強のジャーナリスト、フランク・ウェストよ」

 

 このやさぐれた中年が世界最強のジャーナリストかとカズキ達はキョトンとした。そんな彼らにフランクはちらりと視線を合わせる。

 

「ヤン、いつもの喧しい妹と友達はどうした?新しいチームでも結成したのか?」

「妹と友達はヨーロッパにいるわ。今は大統領誘拐事件の捜査をしにわざわざ日本から来た武偵と一緒に共同戦線しているの」

「で、情報欲しさに俺の所に来たっていう訳か‥‥」

 

 事情を把握したフランクはムスッとしてそっぽを向いた。

 

「他を当たりな」

「えーっ!?なんでよ‼」

「機嫌が悪い。どうせ大統領誘拐事件なぞドッキリに決まってんだろ」

 

 フランクのやる気のなさにカズキとタクトは段々と目の輝きが小さくなってきた。本当に世界最強のジャーナリストなのかと目を疑ってしまう。不貞腐れているフランクにヤンは何か気づいたのかニヤリとした。

 

「‥‥もしかして、ネタをジーサードにとられたから不貞腐れてるでしょ?」

 

 茶化してくるヤンにフランクはピクリと反応しつつそっぽを向く。どうやら図星のようだ。

 

「ジーサードにとられたってどういう事?」

「実はね、フランクさんはエリア51にアメリカ軍が『イロカネ』っていう謎の未確認物質を隠しているっていうネタを聞いて、真実を解き明かすためにエリア51へ行こうとしてたのだけど‥‥ジーサードに先を越されちゃったみたいなの」

 

 その言葉に反応したようで、フランクはしかめっ面をさらに歪ませ声を荒げて憤りだした。

 

「こちとら『イロカネ』探しにかなりの年季と年月を掛けたんだぞ!魔女連隊やイ・ウーのアジト、ウルス、鬼の国に忍び込んで、やっと手に入れたネタがあの若造にこうもあっさり抜かされるなんて俺の苦労が水の泡だ‼何度殺されそうになったことか!?」

「でも、いつもの様に大暴れして脱出してるじゃん」

 

 荒ぶるフランクにヤンはニヤニヤしながら頬杖をついた。

 

「それに…新しいネタならあるじゃない」

「だから大統領誘拐事件にはのらねえぞ。帰れ帰れ」

「ままま、日本から来た武偵の話でも聞いてもいいじゃない?」

 

 ヤンは不貞腐れているフランを宥めつつカズキに自己紹介を促す。ようやく出番が来たかと待ちかねたかのようにカズキとタクトはテンションを上げて立ち上がった。

 

「この俺が情熱のサイコパス、A型の吹雪カズキだぜ‼」

「そして俺が古に伝わりし、毎朝フルーツヨーグルトを食べている真紅の稲妻、菊池タクトだーっ‼」

「江尾ナオト」

 

「日本の武偵ってのは個性的な連中なのか‥‥ん?キクチ‥‥?」

 

 カズキ達の個性の殴り合いの自己紹介にフランクは呆れていたが、菊池という名前を聞いて何か思い当たったようで今までしかめっ面だった顔が興味を示したかのように真剣な顔つきに変わった。

 

「菊池ってもしや‥‥あの菊池財閥の女社長、菊池更子の息子か?」

「そうだけど?」

 

 頷くタクトにフランクは目を鋭くする。だらけきった様子が消え、何かネタを掴んだのかフランクはニヤリとした。

 

「菊池財閥の息子が大統領誘拐事件の捜査か…ヨーロッパの裏の情勢に関与し続けた菊池財閥が遂にアメリカまで干渉してくるかもしれん…これはネタになるぞ」

「えっ?タクトって意外と凄かったの?」

 

 今度はヤンが状況に追いついておらず一人キョトンとしていた。スゴイと言われ、タクトはドヤ顔をしながら胸を張っているが本人を褒めているわけでないとカズキとナオトはただ黙って見守っていた。

 

「裏の情勢とのパイプライン、武器商、ありとあらゆるコネと力を持つ化け物、菊池更子の息子だ。この親子は何をやらかすかわからん。こいつが大統領誘拐事件に関わっているとなるとこれは大物の予感だ‼」

「なんというか‥‥博打みたいね」

「それじゃあ、協力してくれるの?」

 

 協力をしてくれそうな雰囲気を醸し出しているようで、タクトはさり気なく尋ねたがフランクは頷いた。

 

「ああ…その代わり、条件がある」

「いいよ‼」

「たっくん‼だから早いってば!」

 

 即答するタクトに最後まで話を聞けとカズキが小突く。

 

「協力する代わりに…この一件のネタは俺のものであることと、報酬をお前さんの母親に請求させてくれ」

「うわー、がめついわねー」

 

 がめつい要求にヤンは呆れながら横目でカズキ達にどうするか伺う。協力するとなれば頼りになるのかもしれないが、場合によっては面倒な取引である。全ての流れはタクトにかかっており、カズキとナオトはまじまじとタクトを見つめた。

 

「た、たっくん、よーく考えるんだぞ?」

「下手したらヤバイ額を請求されるかもしれない」

 

 タクトは二人に急かされながら、腕を組んで低く唸って考え込んだ。どんな答えが返ってくるのか皆が注目している中でタクトはゆっくりと口を開く。

 

「うーん、ここはどうしようかなー‥‥大統領はどう思う?」

 

「「‥‥は?」」

 

 まさかの答えにヤンとフランクはポカンと口を開け、カズキとナオトはやっちまったと頭を抱えた。

 

「だ、大統領…?え?もしかして隣に座ってる奴ってもしかして…」

「うん、大統領。味方になってくれるんだからフェアじゃないとね!」

 

 またしても即答するタクトにヤンとフランクはギョッとした。変装したままずっと黙って見守っていたマイケルはため息をついてカツラを取った。

 

「黙っててすまないな…色々と事情があって変装をしていた」

「ええええっ!?うそ!?本物の大統領!?」

「いや、ちょ、これって本当にドッキリなのか!?」

 

 驚愕する二人に大統領は副大統領が命を狙っていたこと、『N』という組織が関与していること、その連中のせいでジーサードが嵌められたこと、攫われている途中でカズキ達に助けられたこと、そして今も尚追跡されている身であること全てを話した。全てを聞いたフランクは肩を竦めて苦笑いをした。

 

「こいつは…本当にヤバイ一件だな…」

「フランクさん、報酬とか諦めたら?こっちの方が一枚上手よ?」

 

 ヤンがニヤニヤしながら茶化し、フランクは仕方なしに頷いたが様子は楽しそうにしていた。

 

「『N』とくりゃぁこれは大スクープになりそうだぜ‥‥!」

「『イロカネ』とやらはいいの?」

「そりゃお前、使い道の分からん物体を巡って争う連中とその間に水面下で膨大化する強力な組織、ネタになるとすれば後者だ」

 

 こうしちゃいられないとフランクはドタバタと厨房から出て棚の中からカメラやらフィルムやらを取り出していく。フランクは黒いジャケットを羽織り、カメラを手に持つ。

 

「準備はいいか!ファンタスティックな一枚を撮りに行くぞ‼」

「「ファンタスティーック‼」」

 

 ノリノリなフランクに続くかのようにカズキとタクトはテンションを上げていく。ナオトは結局ステーキを食べないのかとがっかりしていた。そんなカズキ達にヤンはニシシと笑って頷いた。

 

「楽しくなりそうだし、力を貸すわよ!いいチームになりそうね!」

 

 楽しそうに笑うヤンの言葉にカズキ達は「あっ」と口をこぼした。3人は肝心な事をすっかりと忘れていた。

 

「そういえば‥‥ケイスケ達の事すっかり忘れてた」

「け、結構時間が経ってる‥‥」

 

 ナオトは腕時計の時間を見ながら、カズキは携帯のメールボックスに溜まっていた何通ものケイスケからのメールを見ながら青ざめる。約束の30分から時間が経過していた。恐らく、ケイスケは鬼の形相で帰りを待っているだろう。

 

「いやだー‼死にたくない‼死にたくなーい!」

 

 タクトの叫びは虚しく店内に響く。

 

__

 

 

「あんのバカ共が‥‥‼」

 

 案の定、ケイスケは鬼の形相でカズキ達の帰りを待っていた。約束の時間からもう既に数時間が経過していた。いくら待っても帰ってこないし、連絡も来ない。何かあったのではないかとリサは不安そうにしているのだが、ケイスケはあの3人は道に迷ったか、時間を忘れて道草を食ってるに違いないと確信していた。

 

「あー‥‥や、やっぱあたしがついときゃよかったか…?」

 

 怒りのオーラが漂っているケイスケにカツェは何とか宥めようとさり気なく話しかけるが、ケイスケの怒りは収まらなかった。

 

「あいつら戻ってきたらしばく。大統領以外しばく」

 

 これで50回目の『しばく』と言うセリフにカツェはもうケイスケの怒りを沈ませることができないとため息をついた。そんな怒れるケイスケにリサは心配そうに尋ねた。

 

「もしかしたらカズキ様達は何かトラブルに巻き込まれたのかもしれません‥‥カズキ様達を探しに行きましょう」

 

 寧ろカズキ達は巻き込まれたよりもトラブルを引き起こす側ではないのかとカツェは内心ツッコミを入れるが、ケイスケは唸りながら考え込む。

 

「確かに買い出しの最中に武偵がちらほらといたな…もう包囲網が広がっているかもしれないし、あのバカ共は武偵に絡まれて追われているかもしれねえな。しゃあない、探しに行くか」

 

 少しケイスケの怒りを和らげたことにやはりリサがいて良かったとカツェはほっと安堵する。どちらにしろ、カズキ達はしばかれる運命は避ける事は出来ないが、今は彼らの状況を確かめるべきだとケイスケは考えつつ重い腰を上げた。

 ひと気のない所で車を停めて彼らの帰りを待っていても他の連中に見つかるのも時間の問題だ。なるべく早くカズキ達を見つけ、目的地であるオクラホマ州へと向かわかなければならない。

 バカ3人を見つけたらどうしばいてやろうかケイスケは考えていたが、その刹那にリサの鼻がピクンと動きリサが何かの臭いを察知したことに気付いた。

 

「ケイスケ様、伏せてください‼」

 

 リサが焦りながらケイスケを押し倒した。突然の事にケイスケは焦るが、倒れる二人の上を球状の緑色の物体が通過するのが見えた。その液体はそのまま飛んでいき、クライスラー・プロウラーリムジンに直撃した。その物体はトマトが潰れるような音を立てて緑色の液体を車に撒き散らすと、液体がかかった部分がシュワシュワと音を立てながら溶けだした。

 

「おいマジかよ…溶けてやがる!?」

 

 溶けている部分を見ながらケイスケは戦慄した。もしも自分達に当たっていたらと考えるが想像をしたくないと首を横に振る。

 

「気をつけてください!あれは有毒性のある酸性液です…!」

 

 リサは鼻をつまみながら液体の危険性を説明する。ケイスケにとってはそこまで臭いはしないが、リサにとってはかなりの異臭なのだろう。

 

「ちっ、ただの追っかけじゃなさそうだな!」

 

 カツェはルガーP08を構えて辺りを見回す。先ほどの液体をどこから飛ばして来たのか警戒した。その時、薄暗い所から太く先端が鋭いワイヤーがこちらに向かって飛んできた。カツェはすかさず躱し、先端が鋭いワイヤーは壁を貫き穴を開けた。いきなりの急襲を避けたことに冷や汗をかきながら安堵する。

 

「カツェ様、上です‼」

 

 リサの呼びかけにカツェは上を見上げる。頭上から顔を隠すほどのガスマスクをつけた小柄で黒いコートを着た男が鋭い刃物の付いた鉤爪を振り上げて落ちてきた。カツェは慌てて滑り込むように躱した。

 

「あぶねえなこの野郎‼」

 

 カツェが怒りまかせにルガーP08で撃つ。小柄の男は嘲笑いながら素早い動き後ろへと下がった。

 

「ケッ‥‥女なら容易くヤレると思ったんだがなぁ」

 

 小柄の男は枯れた様な声でケラケラと不気味に笑いだす。それが合図かの様に薄暗い所から小柄の男と同じようなガスマスクを付け、コートを着た猫背の男が姿を現す。その男の両腕には太く先端が鋭いワイヤーが巻きついていた。

 

「侮るなよ、ジョッキー…タンク、チャージャー、ハンター、フリッピーを倒した連中だ。手を抜くと返り討ちに合う」

 

 聞き覚え名前にまかさとケイスケは反応する。先ほどの急襲とか見た目からして、FBIやCIAとは違う追跡者であることは確定的に明らかだ。

 そうしているうちに今度はケイスケ達の退路を遮るかのように小柄の男と猫背の男と同じようなガスマスクを付けてコートを着た背の高くひょろい体形の男が姿を現した。

 

「4人揃えば手を焼くと博士がおっしゃていました‥‥確実に、残酷に、手早く始末をしましょう」

 

 『博士』と言う言葉にケイスケは確信する。思い浮かぶ人物と言えば一人しか思いつかない。あのへらへらと笑う子供のようなむかつく野郎だ。

 

「お前等…ジキル博士の人間兵器か…!」

 

「そうさ!オレはコードネーム『ジョッキー』!」

「同じく、コードネーム『スモーカー』‥‥」

「そして私はコードネーム『スピッター』。ジキル博士の命により逃亡している大統領の始末、その協力者の抹殺をしに来ました」

 

 ケイスケは舌打ちをした。FBIやCIAだけじゃない、大統領の後を追っているのはジキル博士のように命を狙っている連中もいることに気を付けなければと考えるべきだったと。

 

 

 

 

 

 




 ようやくN、ジキル博士の手先のご登場。L4Dよりジョッキー、スピッター、スモーカー、地味にライフを削ってくる厄介者三銃士を連れてきたよ!
 

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