Deathberry and Deathgame Re:turns   作:目の熊

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お読みいただきありがとうございます。

三十五話です。

宜しくお願い致します。





Episode 35. With friends

 三月初旬。

 

 統一デュエル・トーナメント開始から、今日でだいたい半月が経過した。

 

 めったやたらと人数が多いせいで予選に時間がかかっちまって、つい最近やっとベスト8が決まったトコだ。俺の他に残ってる知り合いは、キリト、サクヤ、ユウキの三人。次の試合で俺が勝てば、準決でキリトと当たる可能性がある。前回優勝者が準々決勝負け、なんつー腑抜けた結果に終わるとも思えねえし、多分そうなんだろ。

 

「……次の試合は明後日で、準決は一週間後か。地味になげーな、このトーナメント」

 

 思わずボヤくと、横から紅茶のカップを差し出された。提供元は、俺の横で行儀悪く体育座りしながらジャンクフード食ってるリーナだ。言っても聞かねえから何も言わねーけど、ホントよく親父さんたちに矯正されなかったなコイツ。

 

 

 俺たちが今いるのは、クソ忌々しいあの鉄の城の複製……じゃなくて、イグドラシル・シティのはずれに買った小っこいプレイヤーホームだ。素材は煉瓦で、部屋は二十畳くらいの部屋が一つと簡易キッチンだけ。安かった分簡素なモンだが、SAOと違ってココに泊まる必要はない。単なる俺らの休憩場所だ。

 

 備え付けの暖炉の前に置かれた三人掛けソファに腰掛け、紅茶を啜りながらふと考える。確かにトーナメントに参加はしてるが、それ以外の時間は別にログインしてる必要はねえハズだ。仮想世界の戦闘にも、これまでの予選の中ですっかり慣れたし、()()()と会うにしても現実で事足りる。

 なのにトーナメント参加以降、ほとんど毎日ログインしちまってる気がする。我ながら「なにやってンだか」と思うが、いつまでも茅場のことをウダウダ引きずってんのもなんかカッコわりぃな、とも最近は思ったりしてる。横にいるコイツは露程も気にしてねえみたいだし。

 

「…………一護、おつかれ?」

 

 今まで無言でメシ食ってたリーナが、食うのをやめて問いかけてきた。口元にケチャップが付いてるのを指差してやりつつ、首を横に振って否定する。

 

「いや、別に疲れちゃいねーよ。そう見えるか?」

「今、小さくため息吐いてた」

「そうか?」

 

 指先でケチャップをぬぐいながらコクリと頷くリーナ。さっきガラにもなくクラーいこと考えてたせいで、無意識に出ちまったのか。それとも、久々の連続ダイブが地味に疲労をタメる原因にでもなってんのか。

 

 ……とか考えてたら、いきなり両膝の上に何かが乗っかった感触がした。

 さっきまで食ってたホットドッグの欠片を手放したリーナが、両手を俺の膝の上につき、身を乗り出して俺の顔を覗き込んでいた。最近やっと見慣れた白いネコミミが左右にぴこぴこと揺れる。

 

「なんだよ。俺の顔にケチャップはついてねえぞ」

「ため息吐くと幸せが逃げる。もっと笑うべき」

「前半分はそうかもしんねーけど、後ろは却下だ」

「その眉間の皺軽減の助けになるかもしれないのに」

「余計なお世話だっつの。つか顔近ぇよ」

 

 俺の鼻先十センチくらいのとこで喋ってる白髪ネコミミの頭を掴み、ぐいっと押し戻す。

 

 ぞんざいに扱われたってのに、リーナは機嫌良さそうに「……一護、照れてる」と仄かな笑みと共に素直に身を引いた。頭の上のネコミミもくりくりと盛んに動いてる。

 

「お前さ、そのデカい耳どうやって動かしてんだ? 人間のカラダにはねえ部位だろ」

「感情をシステムが読み取って勝手に動かしてる。けど練習すれば自分の意識だけでも動かせるって領主さまが言ってた。羽根と同じ要領」

「あぁ、そういやそうか」

「……さわりたい?」

「別に」

「もう少し逡巡してくれてもいいのに」

「うっせーな。俺はンなシュミねーんだよ」

 

 ケイゴあたりは好きそうだけどな。あと意外と砕蜂が食いつくか……いや、アイツの執着先は夜一さんだけだったか。もし仮想世界(こっち)に呼んだらどうなるか、意外とコッチのデジタル文化にもとっとと順応しそうな気がすんな。卍解ミサイルとかいうメカメカしいブツだし。剣八とか京楽さんは、ウッカリするとあっちこっちでマナー違反しまくって強制退場くらいそうだ。

 

 ……とか益体も無いこと考えてた俺だったが、そういや一つ訊くことがあったかとリーナに向き直り、

 

「リーナ、今日はどっか行くとか言い出さねーのな。ここ一週間くらい、トーナメントの試合が終わる度にアチコチ行きたがってたじゃねえか」

 

 俺が久々の仮想空間での戦闘勘を取り戻した頃からこっち、リーナは暇さえあれば俺に「あそこに行きたい」「今日はここに行く」と言い、イグドラシル・シティ内外や新アインクラッド内を観光していた。

 それ自体はそこそこ楽しかったし、リーナの食い物レーダーに引っかかった露店のメシも旨かった。が、トーナメントの初日で変に悪目立ちしたせいか、たまに指差されたり写真撮られたりされたのがけっこうウザかった。昔、中学時代に街中歩いてた時によくあった「てめえ馬芝中のクロサキだな!!」的なカラみよりはマシっちゃマシだが、居心地はよくねえ。だから見世物はイヤだったんだ。

 

「今日は休養日。毎日お出かけは流石に疲れる、精神的に。それに……」

 

 リーナはそこで一度言葉を切り、ソファーの背もたれに腕をかけているせいで空いている俺の左脇に、体育座りのまま寄り添って、

 

「……こうやってると、あの浮島のコテージで過ごした日々を思い出せるから、なんだか落ち着く」

 

 俺を見上げ、穏やかな表情でそう言った。

 

「けどよ、向こうに居た時って心底はくつろげなかったろ。少なくとも俺は、いつも頭のどっか片隅でゲームクリアのことがチラついてた」

「ん、それは私も同じ。けど、ただ何をするわけでもなく、あの大きなソファーに並んで座って、おやつ食べたりお喋りしたりお昼寝したりしたあの時間は、心の底からはリラックスできなくても心を癒してくれてたような、そんな気がする」

 

 ゆったりと身体を前後に揺らしながら、リーナの声が静かに響く。

 

「現実世界は本当にハイテクの塊。家電は全部システムが管理してくれてて、室温やセキュリティは無数のセンサーで自動化されてる。外に出ればAI制御の車両が交通インフラを常に最適化してるし、学校の読み書きはタブレット端末とキーボード……すごく便利で早いけど、せかせかしてて、息が詰まりそうになるときがあった。

 でも、あの家は違った。仮想世界も同じ「便利で早い」テクノロジーの結晶のはず。なのに、あの家にいる間だけは、時間がゆっくり流れてるような、そんな気がしてた。

 ポリゴンの集まりでしかないはずのクッションも、味覚信号でしかない食材アイテムも、全部に温かみがあった。つらい戦闘をたくさん乗り越えて、疲れ果てて帰っても、あの場所だけはずっと時間の流れが穏やかで、あったかくて……だから、一護はイヤかもしれないけど、私はあの家の空気が好きで、だからこうやって思い出せて……とても、うれしい」

 

 相変わらずの無表情で、けどリーナはホントに嬉しそうにしていた。あの死と隣り合わせの二年、コイツはその負の部分だけじゃなく正の部分もちゃんと大事にしてんだなってことが伝わってきた。それを見てるとやっぱ、解決から一年以上経って未だに茅場がどうたら家族の迷惑がこうたら言って、VRMMOを毛嫌いしてても仕方ねえように思える。

 

 それに、別にあっちでの生活が全部イヤな思い出ってワケじゃない。俺にとってもあの浮島の上にあったコテージは特別だった。リーナみてえな繊細な理由じゃねえけど。

 

「多分だけどよ、それはきっと、俺らが俺『ら』だったからじゃねーのか」

「私たちが、私『たち』だったから……?」

「そ。お前、昔言ってたじゃねーか。『ご飯は一人で食べるより、二人で食べた方が美味しい』って。要はそういうことだろ。

 リーナがいなかったら、俺はマジでクリアのことしか考えてねーような日々を送ってたと思うし、メシもそんなに旨くなかったはずだ。スキル値的な問題じゃなく、感覚的な問題でな。おめーがいてくれたからこそ、メシは旨かったし昼寝は気持ち良かったんだと、俺はそう思う。

 ……だからよ、俺らが揃ってれば多分どこだって『時間の流れが穏やか』な場所にできるんじゃねーか? 命のかかってねえ今なら、本当に力を抜けるような場所も、きっと作れんだろ」

 

 ……そうだ。二人だったから、あの場所は特別に成り得たんだ。

 

 俺の力の根幹は「仲間を護る」こと。

 

 護る人が近くにいてくれることで真価が発揮できるし、精神も安定する。その役目を担ってたのがリーナだったってコトだ。一緒に日常を過ごす仲間がいたからこそ、あそこは俺たちの「家」になってたんだろう。でなきゃ、キリトみてーにずっと宿屋暮らししてたと思うしな……、

 

「……って、オイ。お前人が話してンのにナニやってんだコラ。俺の脇腹削る気かよ」

 

 リーナが話の途中から、俺の脇ッ腹に頭を押し付けドリルみてーにゴリゴリとやり始めた。なにをしたいのかサッパリだがこのままやらせとくのも鬱陶しい。俺の掌よりデカいネコミミを掴み、ぐいっと引っ張って引き剥がす。

 

「ッたく、何がしてーンだよお前は。珍しくマジメに喋った時に限って、ちょっかいかけてジャマしやがって」

「ち、ちがう。妨害したかったわけじゃなくて、その…………」

「なんだよ。言い訳ならキッチリ言えっつの」

「……なんだか嬉しくて……て、照れる」

 

 少し顔を赤らめて、リーナが視線を彷徨わせつつ小声で答えた。照れるとか自白してるだけあって、感情が隠しきれてねえ。口の端っこが明らかに緩んでるし、耳とシッポが分かりやすくピクピク反応してやがる。

 

 けど別にフツーっつーか、ホントのコト言っただけじゃねーか。なにを今更照れてんだ。それとも、ルキアとか井上とかチャドとか、ウチの仲間内で散々言ってたせーで俺の方がマヒってんのか。

 

「……じゃ、じゃあまずは、この小さな家を『時間の流れが穏やか』な場所にしていきたい。一日中二人で引き籠っておやつ食べてれば、きっとすぐにできる」

「アホ言え、ンなことやってる場合か。おめー来週期末テストじゃねーか。勉強してんのかよ」

「無論、ちゃんとしてる……国語以外」

「国語もやれ。前の学期で国語で十段階中三取って、おふくろさんに怒られたんじゃねーのか」

「だって現代文はともかく、古典が意味不明すぎてやる気が起きない。どうしてウン百年前の言葉を学習しなきゃいけないの? 修めたところで使い道なんてないのに」

「おめーが言っても仕方ねえし、御託を抜かしても成績は上がんねーだろ。詩乃はキッチリ苦手科目もやってたぞ。アイツを見習え」

「…………むぅ」

 

 心底イヤそうな顔をするリーナだったが、ヘタに赤点とったらマジでシャレになんねーんだ、諦めてやれとしか言いようがねえ。薬学部受ける時も、古典が免除される場合とそうじゃねェ場合がある。志望校が後者だったら不合格必至だ。

 

「文句言ってねーでキリキリやれ。お前の場合、理科と数学は偏差七十越えてんだ。社会と英語も上がってきてる。下地はあンだから大人しく勉強しろよ」

「……一護、手伝って」

「自力でやって詰まったらな」

「詩乃には付きっきりで教えてるくせに」

「アイツのは半分仕事だ。放置しとくわけにいくかよ」

「じゃあ私も雇う」

「従業員権限で却下」

「……一護のいけず」

 

 

 ……結局、リーナが古典の勉強を渋々ながら受諾したのは、そっから三十分も経ってからのことだった。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 決めたとなれば早速勉強、と言い、リーナはログアウトしていった。

 

 マジで古典苦手なアイツが自力で何日もつのか分かんねーが、一度決めたらいけるところまでキッチリやる奴のことだ。案外自力でなんとかしちまうかもな。

 

「……さて、リーナも帰ったことだし、俺も帰るか」

 

 そう独りごち、テーブルの上を片そうと立ち上がった瞬間、外から爆発音みてえな轟音が響いてきた。しかもかなり近くだ。一瞬敵襲かと思ったんだが、今いるのは圏内だ。強襲かけてもウチからパクれるものはねえ。

 

 正体に想像を巡らせながら、立てかけてあった天鎖斬月を片手に家を飛び出した。夕闇に包まれつつあるイグドラシル・シティの家々の灯りが星みたいに輝く光景が目に飛び込んでくる。

 そこから視線を左右に巡らせると、右奥の林の方から砂塵が立ち上ってるのが見えた。マジでなんかが爆発したのか、それともそこそこの重量があるモンが落っこちてきたのか。なんにせよ、その原因を確認し解かねーと。

 

 圏内とはいえ、一応それなりに警戒しながら距離を詰めていく。月牙の射程は二十メートル強。残月・過月はそれより四、五メートル長い。今の位置から撃っても煙の元に届くはずだ。なんか飛び出して来たらソッコー撃墜してやる。

 

 ……とか内心息巻いてた俺だったが、

 

 

「――痛てて。やー、失敗しっぱい……音速舞踏しながら高速百八十度ターン、いけると思ったんだけどなぁ…………」

 

 

 出てきたヤツを見てアッサリ警戒心が解けちまった。

 

 黒紫色の長髪にチュニック。身軽に動く小柄な体躯と朗らかな口調。

 

「……高速移動中に向き変えるとか、アホかお前。慣性の法則ってモンを知らねーのかよ。ユウキ」

 

 ボヤきにツッコみをいれてやると、闖入者ユウキはこっちを見、どんぐり眼をまんまるに見開いて見せた。

 

「およ、一護だ。いやー、ハズかしいとこ見られちゃったか……ところで、()()の法則ってナニ? スキルが完成(コンプリート)されるまでの規則性のこと?」

「……頭打ってボケてんのか、お前」

「シツレイだな。ボクは無傷ですよー」

 

 ふんっ、と胸を張って見せるユウキ。どうも素で言ってるらしい。天然か。

 

「そう言う一護はなんでこんなところに一人でいるのさ」

「俺らのホームがココだからだ。中でグダグダしてたら外からものっそい音が聞こえてきて、出てきたらお前が地面に突っ込んだ後だったっつーワケ」

「ありゃ、それはお騒がせしました」

「初めて会ったときも、お前すげー勢いで突っ込んできたよな。突っ込み癖でもあんのかよ」

「んー、そうかも?」

「いやそこは否定しとけよ」

 

 リーナとは違うベクトルでマイペースなやつだ。嫌いじゃねーが、なんかやりにくさを感じながら辺りを見渡す。コイツは多種族系六人ギルド《スリーピング・ナイツ》のリーダー、てっきり仲間も一緒に飛んでたのかと思って探してみたんだが、どこにも見当たらない。

 

「お前、一人で飛んでたのか?」

「うん。他の皆はちょっと用事があって、今はボク一人。一護は?」

「俺もだ。さっきまでリーナがいたんだが、アイツは期末の勉強があるってことで帰ってった」

「あ、そう言えばアスナも言ってた。期末テストが近いからしばらくログインできないかもって……あれ? 一護にはないの?」

「俺にはねーよ。この前大学受験終わったばっかで、春から医大生だってこの前現実世界で言ったろーが」

 

 この前アスナが肩にカメラ乗っけて空座町に遊びに来たときに、ユウキとカメラ越しに会話をしてる。確かほんの四日前くらいのことだったはずだが、どうもすっかり忘却の彼方らしい。

 

 立ち話もなんだし、とりあえずユウキを家に上げる。せまっこい、何の面白みもねえ一部屋だけの造りだが、ユウキは興味津々って感じで室内を見ていく。それを横目に、俺はとっ散らかった机の上を片付け、余った菓子をパッケージングしてストレージに放り込んでいく。今度リーナが来たときのおやつになるし……、

 

「……ユウキ」

「ギクッ」

「コソコソ勝手に菓子食うな。せめて一言くらい言えっつの」

「ご、ごめんなさーい」

 

 俺の後ろに置いてあったクッキーをつまみ食いしようとした犯人は、軽い謝罪の言葉と共に頬をかいた。いたずら好きな子供じゃねんだし、素直に言やいいのによ。

 

「リーナがいなくて助かったな。いたら圏内でもぶち殺されるぞ」

「……食べ物の恨みは恐ろしい、ってヤツだね」

「慣性の法則は分かんねえのに、そういう言葉は知ってんのな」

「まぁね。こう見えてボク、読書家なんだよ」

「そーか。んじゃ、今度っから理科の参考書でも読んどけ」

「うっ……理科苦手」

 

 本当にいやそうに顔をしかめるユウキ。マイペースだが、リーナと違って表情がころころ変わる。

 

 時間が時間だからガッツリしたのは出せないが、一応客は客だ。常備してある紅茶とマフィンを皿に開けて出すと、ユウキは顔を綻ばせてかぶりついた。

 

「もう夕飯前の時間なんだし、あんま食い過ぎんなよ」

「ふぁーい!」

 

 ……マフィンを口に詰め込みまくった面で挙手されても説得力ねーな。

 

「んぐ……ぷはぁっ。おいしいね、これ! どこで売ってたやつ?」

「俺の自作だ。リーナに強請られて作った」

「うぇ!? 一護料理スキル上げてるの!?」

「その人相で、って言いてえんだろ? アスナも同じリアクションしやがったからな」

「い、いやあそんなことは、ない、よ……?」

「最後に疑問符つけんな!」

 

 フツーに肯定されるよりキツいじゃねーか。

 

 ごめんなさーい、と気があるんだかないんだか分かんねー感じの返事を寄越し、ユウキはまた菓子を食べる。美味そうに食ってくれるのはありがてぇが、ぶっちゃけそんな大したモンでもねえと思う。どっかの病院に入院してるってのは聞いてるが、そこの普段の病院食が口に合わねえのか。

 

「……あ、そうだ!」

 

 突然何かを閃いたように、ユウキが声をあげる。晩飯食えなくなると遊子に雷落とされちまうから紅茶だけ飲んでた俺は、カップ片手に唐突に立ち上がった小柄な女子を半眼で見やった。

 

「ねえ一護、明日時間ある?」

「あ? ……まあ、あるっちゃあるけど、なんだよ」

「実はね、今日と明日、《スリーピング・ナイツ》の皆が検査でログインできないんだ。アスナたちもさっき言ってたテスト勉強で忙しいだろうし、ボクは一人っきりなの」

「そういやお前ら、全員どっかの静養用VR空間で知り合ったとか何とか言ってたな。高校生連中もしばらくは長時間のログインは出来ねーだろ」

「そう。だから一護、その間にお願いがあるんだけど……」

 

 ユウキはそこで少し言い淀み、紅茶のカップを両手持ちにしながら上目使いにコッチを見て、

 

 

「……ここと別のVR空間で、お料理教えてくれないかな?」

 

 

 意外な頼みを俺に投げかけてきた。

 

 

 

 

 

 




感想やご指摘等頂けますと、筆者が欣喜雀躍狂喜乱舞致します。
非ログインユーザー様も大歓迎です。

一護はユウキが不治の病とは知りません。どこかの病院に長期入院してて、同じ境遇の連中で固まったのがスリーピング・ナイツ。これくらいの認識です。

次回はまさかのお料理回……とまでは行きませんが、ユウキと一護の日常を書いていきます。


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