僕ー相良零次は遠足などの学校行事が大嫌いだ。
その理由はただ単に人との関わり方が分からないからだ。
こんなことを小学生が思うのは間違いだと思う。
だけど、僕は昔から他の人とは違っていた……らしい。
両親の話では他の子より異常なほど大人しいそうだ。
当時の僕はそのことに関して何も思わなかった。
「れいじくん?」
「どうしたの?さくら」
「そんなにさくらといっしょにえんそくいきたくないの?」
「……いや、えんそくというぎょうじそのものがきらいなんだよ」
「そうなの?」
「うん」
僕は何時の間にか隣にいた少女ー相良さくらにそう言う。
僕とさくらの間に血の繋がりは無い。
僕は養子だ。
何でも霧の魔物が現れた場所で発見されたらしい。
らしいというのもそのことを僕は育て親の会話を盗み聞きしたからだ。
僕がさくらの分まで遠足の準備をし終わるとお母さんが僕とさくらを呼びに来た。
「いこうか、さくら」
「うん!」
遠足の日当日さくらが風邪をひいた。
……正直に言って事項自得だと思う。
なんせ春にも関わらず水風呂に入って急いでお湯を沸かして今度は逆上せて、それで今度は冷房をつけっぱにして挙げ句の果てにお腹を丸出しにしていた。
逆にこれで風邪をひかない人はいないと思う。
「うぅーえんそくいきたかったー!」
「かぜをひくさくらがわるい」
「……こうなったられいじくん!おみやげもってきてね!」
「はいはい」
お母さんに行ってきますと言って学校に行く。
いつも思うけど遠足の日にわざわざ学校に行って行ってきます!という意味がわからない。
学校に着くと何人かが楽しみにしていた。
……こんなのの、何が楽しいんだろ?
そう思いながら自分の班のところに行く。
この時の僕は知らなかった。
今日の朝の行ってきますが僕とお母さんの最後の会話になることを。
遠足から帰る途中でそれは起こった。
僕らの学校がある町に霧の魔物が現れた。
被害は深刻で行方不明者及び死傷者が多い。
僕らはすぐに先生の誘導に従い大人しくしていた。
何時間か経つと先生に連れられて学校の体育館に移動した。
しばらく経つと親が来て避難していた僕らを迎えに来ていた。
同じ班の人どころか他のクラスの人たちも迎えが来て帰っていった。
しばらく本を読んで待っていると入り口の扉が開く。
僕はそっちをちらっと見る。
そこに居たのは白い着物を着た男の人だった。
「君が、相良零次君……かな?」
「そうですけど」
「一緒に、来てくれないかな?」
「……分かりました」
普通なら怪しい人にはついていかないけど今はそんなことを言ってられない。
迎えの来ない親、その代わりに来たこの人。
そして、さっきから見えるその人と同じ年齢の人たち。
その多くの人たちは僕の方を見て泣きそうな顔をしていた。
しばらくついて行って到着したのは病院だった。
中に入りしばらく進んでいくとイスに座って泣いているさくらを見つけた。
それだけで僕はだいたい理解できた。
僕はさくらの隣に座ると連れてきてくれた男の人に「僕とさくらはどうなるんですか?」と聞いた。
すると男の人は驚いた顔をしながら僕がだいたい予想していたことを言った。「君のお母さんは亡くなった」って。
僕はその言葉を聞いて悲しいとは思ったけど涙は流れなかった。
いや、流せなかった。
隣でさくらが声をなるべく出さないように泣いていたから。
「……れいじくん……おかあさんは?」
「……いないよ」
「……どうして……いないの?」
「しんじゃったから」
「……なんで!さくらが……さくらがかぜをひいたから?さくらがおかあさんにわがままをいったから?!」
「ちがうよ」
「……じゃあなんで!さくらだけ……さくらだけ……」
「……あの、ほかにもなにかあるんですよね?」
そう僕が言うと男の人は辛そうな顔をしながら言った。
「……ああ、君の妹は……魔法使いに覚醒したんだ。だから、……魔法学園の方に転向してもらわないといけないんだ」
「……まだここにさくらがいるってことはさくらがわがままをいってここにとどまっているからですよね?」
「……ああ、君と離れたくないそうだ」
そう男の人は僕の顔を見ずに言った。
確かに今のさくらは精神的にまいってる。
それなのに唯一になってしまった家族のもとから離すというのは精神的にも辛いだろう。
僕はさくらの方を見る。
さくらは相変わらず泣いていて僕の服の袖を掴んで離さない。
ーそういえば確か。
僕はバッグの中に入っていたネックレスをさくらに渡す。
「……これは?」
「あげる」
「……えっ?」
「これあげる。ほら、もうひとつはいってたからこれでおそろい」
「……どうして?」
「こうしてればいつもみたいにいっしょにいるきがするとおもうから」
「……れいじくん……ありがとう」
僕はさくらの声を聞いてから病院の外に行こうとする。
すると後ろからさくらの声が聞こえてきた。
「……れいじくん!ぜったいに!またあおうね!!」
「はいはい。それまでにひとりでおきれるようにね」
そう言うとさくらはれいじくんのばかぁ!!と言った。
その声は先ほどまでの涙声じゃなくて何時もの彼女の声だった。
病院の外に出ると僕の他にも孤児になった人たちがたくさんいた。
僕もそこに行く。
しばらくするとバスが来た。
それに乗ろうとしたら先ほどの男の人が僕を呼び止めた。
「なにか、ようですか?」
「いや、ただ聞いておきたいことがあってな」
「聞いておきたいこと?」
「君の名前だよ」
「しってるはずでは?」
「本人の口から聞きたいのさ」
「相良零次」
「そうかなら零次君君の妹は俺たちが責任を持って預かるよ」
「そうですか」
そう言うと男の人の頭を後ろから来た女の人が叩いた。
「何をしているんですか」
「何ってそりゃ」
「まだやることは残っているのでこっちに来て下さい」
「ちょっ!?まだ俺の名前を言って」
「良いですから!!」
男の人が女の人に首根っこを掴まれてそのまま遠くの方にあるバスの方へ引きずられていく。
それを見てから僕はバスに乗った。