西暦2200年。国境はなくなり、世界は飛躍的な発展と進歩により、平均寿命は90歳を越えようとしていた。
その背景には、化学薬品や医療の進歩が関わっていた。
後に伝説となる薬師《佐渡天徳(さわたり てんとく)》の遺した言葉【薬品の効能を知るには、まずは投与すべし】が浸透し、様々な薬が売り出されるようになる。
当たり前だが人道的でないし、もっとも危険な行為であるがこの言葉が闊歩し薬の製作にあたる業界ではとても有名な言葉である。薬品投与に使用される動物実験はウサギやネズミに行い、観察、効果が顕著になった所で次の動物へ次の段階へと進化させていった。
佐渡薬師の作った最高傑作の医薬品【リグルース】と呼ばれるその薬は認知症をも治療対象とし、あらゆる臓器の若性化…つまり、若返らせられる効果を持つ。現代病と呼ばれる生活習慣病や結核、癌細胞のついた臓器を癌細胞の発生前に“戻し”それらを“強化”させ、安定させる…そんな神の奇跡から作り出された薬…佐渡薬師は名誉医学賞間違いなしとまで言われ、一部地域では神格化までされていた。
だが、ある時事故が起きた。
実験薬を投与した動物の脱走…
【リグルース】の実験段階での事故が明るみになったのだ。
動物自体は即座に見つかり、保護されたが、その動物にはノミや蚊に刺された跡が発見された。
蚊やノミの死骸は他の小動物の栄養となり、排泄物となり、世に放たれ、それを糧とする虫や別の小動物に感染。
異常発達を遂げていた。
西暦2230年、初の豪蟲が現れる。
豪蟲の体長は3m、重さ250kg。
その形は蚊に模したものだったという。
旧アマゾン川流域で発見された豪蟲は死骸であり、連日UMA騒動が起こり世界は正体不明な巨大な生物に夢中になる。
蚊に模した生物からは【リグルース】が検出されたが異様な点を科学者は発見する。
死の寸前で心肺停止前に状態が戻り、外骨格は強化され、その重みに耐え切れず、関節部や内臓等のズレや傷つきがみられたが、【リグルース】はその傷ついた内臓や関節をも戻し、強化していったと考えられた。
力尽きた理由としては【リグルース】の限界。【リグルース】が成長しきってしまったため、成長した後の寿命を迎え、死を戻すことなくそのまま死亡したと考えられた。
この事実が佐渡薬師を窮地に立たせ、【リグルース】の研究データ共々行方をくらませる。
西暦2235年、豪蟲の侵略行為が始まる
世界各地で一斉に豪蟲が同時発生するとともに、世界侵攻を開始。
それにより、世界人口のおよそ5割が死滅する。
その侵略行為はとてつもなく効率的であった。
地中を巣とし、庭とする豪蟲の進行により軍部各所は地に埋もれ、あとは作業であった。
通信は麻痺し、交通網も正常には作動せず、救える命さえ見捨てる他ない非道な日々を人々は強いられた。
西暦2236年、駆除師現る。
軍を成した豪蟲が急激に数を減らし、駆除師と名乗る10人の集団が現れる。
彼等は何匹もの豪蟲を倒し、豪蟲の外殻、硬度や恐るべき切れ味、頑丈さを誇る腕や鎌を剥ぎ、それを使用した武器で豪蟲を狩り、生き延びた集団だった。
西暦2238年現在、豪蟲の数は三年前の数の3割を下回るまで減少。
10人の駆除師を筆頭に人類は再び繁栄を始める。
「豪蟲と人類の生存競争は始まったばかりというわけだ。」
静かな教室に先生の声がこだまする。
現在、絶賛授業中。社会の時間である。
西暦2415年8月社会の先生が言うように現在、世界のトップは10人の駆除師によって、再び繁栄を始めている。
豪蟲は数を減らし、脅威ではあるが、【侵攻】が行われる以外では特に目にしないようになった。
「一部を除いてはだけどな。」
先生は重くそう告げ、白いチョークで黒板に書き足す。
《要塞都市オオムカデ》
《侵略国家スズメバチ》
《衛生王都コックローチ》
《包囲都市タランチュラ》
《生物国家ラット》
《土壌王都オオミミズ》
「代表される豪蟲の国や都市、王都だ。かつては沖縄と呼ばれていた島並びにハワイやマダガスカルなどといった島を代表とする島国では、以上で書き出した代表の豪蟲の原種名で記される。今では人は住んでいない。豪蟲の巣だ。」
人間にも限界はある。
化け物と呼ばれる駆除師10人だが、あくまでそれは人の中での話だ。
豪蟲の中の化け物にはかなわない。
「現在、日本の制度も変わり、特に危険区域内での法は無効。人権も豪蟲の一件以降は軽くなったものだ…」
キーンコーンカーンコーン…
チャイムが鳴る…授業終了の合図だ。
「では、皆ごきげんよう。また明日な。」
先生は軽く手を振り、教室を後にした。
「ま、今は今で楽しいんだけどなぁ。」
つい口にしてしまう。
昔からすれば今は不憫で仕方ない。
世間は口を揃えてそんな事を言う。
真の平和をみつけ、国境はなくなり、言語は統一された。だが、未だに指定区域というものは存在し、旧国名は廃れず、残っている。価値観の相違から国同士の仲もギクシャクしている。
「また難しい事でも考えてるのか?」
と、思考を巡らせていたところに声がかかる。友人の【稲垣草太(いながき そうた)】だ。
「いや、難しい事でもない。俺が頭悪いの知ってるだろ。」
ちなみに俺の名前は【神谷悟(かみや さとる)】17歳だ。ちなみに成績は中の下。自慢はできない。
高校生というのは背伸び大好きな青春の日々を送る事を望む厨二病の成熟期だと俺は思う。持論だ。
「なんだ、ただこじらせてただけか。」
そう言われると間違えではないが、腹が立つ。
「まぁこじらせてたとしても、この高校にいるって事は相当なこじらせ方をした馬鹿か何かだな。」
稲垣の言葉は正しい。
普通なら俺たちの通うこの学校には入学しない…
俺たちの通う学校は普通じゃない。
対豪蟲を想定した戦闘訓練。
座学よりも身体を動かす総合訓練学が多い。
そして何より、最も普通ではないのが入学の儀式…人権の剥奪と身体能力向上の人体改造(改造といえど、ある薬品を注射するだけだ)。
一通りの座学ももちろん行われる。それも進学校並か、それを凌ぐエキスパート並だ。
それが何を意味するのか…
「…普通は入らんだろうな、駆除師専門の養成学校なんてな。」
《年間死亡確率50%》
この数字が何を意味するのか…それは年間での駆除師全体の死亡確率を表している。
新人のほとんどが死亡し、一年乗り切れば熟練とまで言われている所以だ。
では、冷静に考えてそんな危険な職に我が子を送るであろうか?
答えは否
そんな偏屈な考えを持つ親はいないに等しい。いや、いることにはいるが、助成金欲しさが理由の者がほとんどだろう。
この学校は言うなれば若者を買う施設と同義なのだ。
では、何故その若者の入学が多いのか、理由は簡潔である。
孤児の増加…一般の外出には様々な危険が付き物なのだ。
一般道路での豪蟲の襲撃など日常茶飯事である。
豪蟲の進行により、多くの住居や大型の工場なども襲撃され、親を亡くす子供が単純に増加したのだ。
逆もまた然り。守るべき者を守れず自分一人生き残ってしまったと嘆く大人も現れる。そういった人々の行き着く先は仇である【豪蟲】の駆除に行きつく。
豪蟲のいない世を求め、刺し違えても殺すという意志を込めて。
「まぁ俺達だけじゃないしな…この施設まがいな学校には普通に俺らよか歳のいってる大人も逆に年端もいかない子供も生徒として扱ってる。大学と変わらんな。」
「違いねぇわ。」
何気ない会話…と思うが会話だけ何気ないだけだ。
先程も説明したように此処は対豪蟲の養成学校《旧日本支部対豪蟲養成学校北》が正式名称だ。
確かに学校名も何気なくはないだろう。
それ以外に最も目につく点…それは、全員が武装している点である。
教室にいるにも関わらず、皆腰にはそれぞれ得意な武具をこしらえている。
服に至ってもそうだ、武具にあった機動性やら戦闘に特化した防御性の高いものとまちまち、もちろん俺や稲垣も装備して授業にでている。
教師に至っても例外なく装備は厳重。
それは何故か…
ビーーッ!ビーーッ!ビーーッ!
突然、警鐘気が鳴り響き、学校内で騒いでいた生徒全員が静まり返る。
「悟…どうやら出てきたみたいだ。」
稲垣の静かな声が聞こえる。
警鐘気が鳴る…これが何を意味するのか、此処の生徒なら誰もが理解している。
豪蟲の【侵攻】。
【侵攻】とは、俺たち人の居住区に豪蟲が発生した時に発令されるいわば非常事態。
何故このようなことが起きるのか、その答え…豪蟲対策はパトロールを行う駆除師が精一杯の防御手段だからだ。
機械類は使えない。豪蟲にはその機械類を取り込み、力を蓄える種がいるからだ。では、どう立ち向かうのか…パトロール隊員の殆どが熟練の駆除師で構成されている。
彼等は豪蟲を発見したのち、手の甲に取り付けられた緊急のアラームを鳴らすスイッチを押す。
すると、近場の養成学校に連絡が届き、応援が来るまで総力戦を行う。倒せるものはその場を持って倒す。これが豪蟲の【侵攻】に対する手立てである。
「位置は…学校から300m北だよ!十分目視できる位置にいると思う!」
クラスメイトの女性が声を上げる。
稲垣は装備の安全装置を外し、二階である教室の窓から飛び降りる。
着地の瞬間、稲垣の足元に風が巻き起こり、着地する。
それを合図に俺も窓から飛び出す。
「稲垣君、神谷君に続きたまえ!遠距離型、超遠距離型は屋上へ、近距離型は先輩(パトロール)の援護!支援型は中距離を保ちつつ負傷者の治療に当たってくれ!」
後ろで委員長が指示を飛ばす声が聞こえた。後方支援は十分期待出来そうだ。
ドドオオォォッ!!
学校から250m離れた場所のビルが倒壊し始めた。どうやら豪蟲はこちらに向かっているようだ。
「おい、神谷に稲垣、怪我すんなよ。」
支援班の男子が俺と稲垣に冗談交じりに話しかける。
「支援遠慮なく頼らせてもらうからへばんなよ!」
「支援班がスタミナ切れするかよ!」
こちらも負けじと支援班を茶化す。
何時も見ている風景だ。
「悟、戦闘態勢とったら救助地点突っ込むぞ!」
稲垣からの戦闘準備警告。
これも何度も見た風景だ。
ただ、いつもと違うのは大抵が豪蟲だ。
「とっくに出来てるっての!」
戦闘可能な態勢をとり、俺と稲垣は走り出した。
はい、私です。
こんなことしてないで早く次の話を投下しろと言われそうな勢いで新作ポンポン出してますが、頭がパンクしそうなほど妄想が…
今作は今までのギャグとはジャンルが違い、バトルものとなっています。
毛色が違いますよね、私の場合シリアスもシリアルとなってしまいがちなのであまり期待できるものではないかもですが、ギャグの面では変わらず私スタイルでいけるかと思います。