アーマードコアEX 女レイヴンの日常は、血と硝煙と愛に満ち   作:外清内ダク

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02 ミッション:物資輸送車両護衛

 

 

 

[所属不明MT確認。機数5。戦闘モードに移行します]

 

 リンファは愛機ペンユウのコックピットの中で冷たい機械の声に耳を傾けていた。

 

 ACの頭部パーツには一応目のような形の視覚センサーが付いているが、別にそこでしか外界を確認できない訳ではない。

 こういう大型ロボットを操縦する場合、視界の広さは重要な条件になるのだ。

 従って、このペンユウも四方のセンサーによって三百六十度見渡すことができるようになっている。

 

 外は暗い。

 地下都市の中なのだからそれは当然だが、特にこの都市同士を繋ぐ地下幹線道路の中は明かりが乏しい。

 加えて道の脇の舗装されていない部分には大きな岩などの遮蔽物もあり、襲撃するには最適な場所である。

 

 三台の物資輸送車の前を先導していたリンファは、レーダーを確認しながら通信を開き、すぐ後ろの車に繋いだ。

 

「敵MTを確認しました。

 前方に三機、後方に二機。

 前方の敵を排除しますから、その隙に全速力で通り抜けてください。

 あとはこっちで片付けます」

 

 MT(マッスル・トレーサー)は、高度な大型ロボットの総称である。

 その中でも「コア」を中心として各部パーツを共通化したものはCMT(Cored MT)と呼ばれ、さらにその中で重武装がなされているものをAC(Armored Core)と呼ぶ。

 

 汎用性ではACの方が上だが、MTには目的に合わせて製造時から機体を特化できるという利点がある。

 侮ってかかれる相手ではない。

 

 ともかく、リンファの通信に答えたのは渋い中年男性の声だった。

『頼んだぞ。この試作品だけは何があっても失うわけにはいかんのだ』

 

 どうやら輸送しているのは何か研究途中の試作品のようだが、そんなことはこの際関係ない。

 が、相手の男の必死さは伝わってきたので、落ち着かせる意味も込めてリンファは答えた。

 

「お任せ下さい。そのためのレイヴンですから」

 

 この科白が功を奏したのか、輸送車の男はさっきより落ち着いた声で健闘を祈るとかなんとか言ってから通信を閉じた。

 

 ――さあ。

 リンファは操縦桿を握り直した。

 ――ここからが本番だ。

 

 リンファの愛機ペンユウは中量二足タイプ。

 右手には新しく買ったマシンガン、左手には以前から使っているレーザーブレード、左肩にはエリィ特製のレーザーキャノンを装備し、右肩のレーダーで索敵することも忘れない。

 

 レーザーキャノンは特製と言ったが、これは不法投棄されていた不良品を拾ってきて改造したものである。

 三連誘導砲身を使用した強力な兵器を、随所を強化プラスチックで軽量化することで通常の半分程度の重量にしている。

 ペンユウ最大の火器だが、無理な改造が祟って五発も発射するとオーバーヒートして整備が必要になるのが難点である。

 

 全身をワインレッドに塗装された巨人……ペンユウは、リンファの操作に素早く反応して右手のマシンガンを構えた。

 

 ギャンッ!

 ブースターを噴かせて、一気に加速する。

 さすがは超大出力ブースター、前方の三機のMTとの距離は一気に縮まった。

 

「それで隠れてるつもり!?」

 

 木陰に身を潜めていた敵の一機を、マシンガンの掃射で薙ぎ払う。

 あまり装甲が硬いMTではないのか、数発で完全に沈黙した。

 

 慌てたのは敵の方だ。

 完全な不意打ちをするはずだったが、逆に一瞬で仲間が倒されてしまった。

 まともに浮き足立ち、てんでばらばらに隠れ場所から躍り出る。

 

「甘い!」

 

 左右に一機ずついるMTを、それぞれブレードの一撃とレーザーキャノンで片付け、輸送車に合図を送る。

 

「今のうちに、早く!」

『恩に着るよ!』

 

 輸送車は意外と速いスピードでペンユウの横をすり抜けて行った。

 あとは、挟み撃ちにするつもりで後ろから来ている二機を倒せば作戦終了である。

 

 リンファはもう一度ブースターを噴かした。

 

 敵までの距離はおよそ三百メートル。

 レーダーによると、二機が固まって動いているようである。

 あまりにも愚かな行動だった。

 これでは、まとめて片付けてくれと言っているようなものだ。

 

 当然、リンファはペンユウにレーザーキャノンを構えさせた。

 狙いを定め、撃つ!

 

 ……ゴォ……ン……

 手応えあり。

 どうやら仕留めたようだ。

 これで作戦は完了。

 あとは家に帰って報酬を受け取って、シャワーを浴びて寝るだけである。

 

 ほっと息を吐くと、リンファは操縦席のシートに身を投げ出した。

 

「ふぅ、楽な仕事ね。

 装甲板ににも傷一つついてない。ちょっとつまんなかったかな」

『それなら僕の相手を頼めるかな』

 

 突如として入ってきた通信に、リンファは弾かれるように飛び起きた。

 この声、聞き覚えがある。

 

 レーダーに反応は……ない。

 ペンユウが装備しているレーダーはかなりの広範囲を索敵できるが、通信の相手はその外にいるらしい。

 

「残念だけど、姿を見せてくれないと相手にしようがないの。

 わかる? 泥棒さん」

『憶えていてくれたとは光栄だな。

 それじゃあ、リクエストに応えるとしようか』

 

 通信は、そこで途切れた。

 

 間違いない。

 相手はヨシュアとか名乗ったあのレイヴン……『ワームウッド』。

 ただの泥棒でないことは確かだが、一体何の用があるというのか……

 

「まさか……あたしに惚れたか?」

『それはない』

 

 通信……開きっぱなしでやんの……

 

 独り言のつもりでいった冗談に他人からつっこまれるというのは、想像以上に恥ずかしいものである。

 思わずリンファは赤面した。

 

 が、それも束の間。

 突然、レーダーの端に赤い点が現れた!

 

[AC確認。機数1。所属不明]

「ンなこたァわかってんのよっ!」

 

 思わずコンピューターに当たり散らすリンファ。

 それでもレーダーの反応を確認することは忘れない。

 

 速い。

 かなりの高速で移動し続けている。

 おそらく相手は四足ACだろう。でなければ超軽量二足だ。

 

 レーダーによると、そろそろ射程圏内に入る。

 リンファはペンユウを動かし、岩陰に隠れた。

 

 相手もレーダーを装備している以上、完全に身を隠すことはできないが、遮蔽の役には立つ。

 十分に引きつけてからマシンガンで蜂の巣にする予定だ。

 

 そして……ついに距離二十メートル程度まで近付いた!

 適当に狙いを定め、岩陰から躍り出る!

 

「そこっ……に、いない!?」

 

 距離的には見えていなければならないのに、何処にもACの姿はない。

 相手を捜そうとしたその瞬間、リンファは背筋に悪寒を感じ、その場から飛び退いた。

 

 ガガガガガッ!

 無数の弾丸がさっきまでペンユウが立っていた場所をえぐり取る。

 一瞬遅れて、そこに青いACが着地した。

 

 青い、蜘蛛のような四足AC。

 ガトリングガンが内蔵された武器腕。

 これがヨシュアのACらしい。

 

 どうやらさっきは、リンファがレーダーから目を離し、岩陰から飛び出すまでの一瞬の隙に空中へ飛び上がったらしい。

 こちらの行動が完璧に読まれている。

 

 おまけに今撃ってきたガトリングガンは、リンファにとって自分で使うには大好きだが相手にするのは勘弁してもらいたい武器の一つだ。

 

「今度こそ!」

 

 急いで向きを直し、リンファはトリガーを引いた。

 敵のACに向かって高速連射のエネルギー弾が容赦なく飛んでいく!

 

 しかしそれも、回避行動を取った敵の装甲板をかするだけに終わった。

 敵ながら、四足ACならではのスピードを見事に生かした戦い方だ。

 

『どうした? 当たらないぞ』

「うっさいっ! いちいち話かけんなっ!」

 

 叫びながら、今度はブレードを一閃する。

 敵の『ワームウッド』は空中に飛び上がってこれをかわす。

 

 リンファの予想通りに。

 

「ワームウッド破れたりぃっ!」

 

 大破壊の遙か以前に地上の日本にいたという、サムライなるものの口調を真似しつつ、リンファはペンユウを空に舞わせた。

 超高出力だけあって、あっという間にペンユウはワームウッドを追いつめた。

 

 その肩に準備されているのは、強力なレーザーキャノン!

 

『馬鹿な!?

 そんなものを地面で支えず撃とうなどと……』

「できちゃうのよ、それが!」

 

 ゴバァッ!

 砲身が火を噴き、四足ACワームウッドを吹き飛ばした!

 

 同時に天地がひっくり返るかのような反動がペンユウとその中のリンファを襲い、ワームウッドとは逆方向に吹き飛んで地面に叩き付けられた。

 

「ちょっち……無理あるけどね……」

 

 通常、二足歩行のACがキャノン型の兵器を使用するには、地面に片膝をついて安定させなければならない。

 さもないと発射時の衝撃で撃った方もダメージを受けてしまうのである。

 

 しかしながら、超人的な操縦技術で反動を逃がすことができれば、理論上は立ったまま、或いは空中でもキャノン砲を発射できるはずなのだ。

 

 リンファは今、それをやろうとして失敗したわけである。

 かなりペンユウがダメージを受けてしまった。おそらく歩くのが精一杯、というところだろう。

 

「あ~あ……またエリィに怒られちゃうよ……」

『他に心配することはないのか?』

 

 リンファは耳を疑った。あの直撃を受けていながら、装甲が薄いことで有名な四足ACが無事でいるというのか?

 

 彼女の疑問を裏付けるかのように、闇を切り裂き、青い蜘蛛が姿を現した。

 その動きに鈍りは見られない。

 それでもやはりダメージはあったようで、所々装甲が剥げ落ちている。

 

「お互い、満身創痍ってとこね。

 ……そっちは機関部が生きてるみたいだけど」

 

『君のACのデータは全て得ているからな。

 発射のタイミング、弾速、その他諸々のデータをな。

 完全回避は無理だったが、なんとか身をそらす程度のことはできたよ。

 これで、僕が泥棒じゃないことがわかったかな?』

 

「なるほど……立派なデータ泥棒ってわけね」

『口の減らない女だな。

 どうせ、もうまともに動くこともできないだろう。

 そこで僕の仕事ぶりを見ているといい』

 

「……仕事?」

 

 リンファの問いには答えず、ヨシュアはワームウッドを動かして道の向こうに消えて行った。

 

「あの方向は……まさか、輸送車!?」

 

 間違いない。

 ヨシュアのACはさっき輸送車が逃げた方向へ行った。

 もしも奴の狙いが輸送車の破壊か奪取だったとすれば……

 

 リンファは口の端をつり上げ、ほくそ笑んだ。

 

 

 

 

つづく。




今回登場したAC

■ペンユウ
機体名 朋友(ペンユウ)
パイロット 道嶺華(タオ・リンファ)
HEAD HD-H10
CORE XXL-DO
ARMS AN-25
LEGS LN-1001B
BOOSTER B-PT000
FCS FBMB-18X
GENERATOR GBG-XR
BACK UNIT R RZ-Fw2
BACK UNIT L WC-IR24
ARM UNIT R WG-MG500/E
ARM UNIT L LS-99-MOONLIGHT
OPTION SP-S/SCR, SP-E/SCR, SP-ABS/Re
●COLOR
NIGHT SHIFT/BLOOD STRUCTURE
●備考
 基準違反、強化人間仕様。かっこいいことのみを目的として作りました。

■ワームウッド
機体名 ワームウッド
パイロット ヨシュア
HEAD HD-H10
CORE XCL-01
ARMS AW-GT2000
LEGS LF-TR-0
BOOSTER B-T001
FCS FBMB-18X
GENERATOR GBX-XL
BACK UNIT R RZ-Fw2
BACK UNIT L WC-01QL
ARM UNIT R -
ARM UNIT L -
OPTION SP-ABS, SP-SAP, SP-CND-K, SP-S/SCR, SP-E/SCR, SP-EH, SP-E+, SP-DEtq
●COLOR
GENERAL BASE(15,15,32)、OPTION(15,15,15)、DETAIL(15,15,32)、JOINT(32,32,32)
HEAD OPTION(15,15,32)
ARMS OPTION(15,15,32)
LEGS OPTION(15,15,32)
●備考
 当時は腕ガトリング最強と信じていた。
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