アーマードコアEX 女レイヴンの日常は、血と硝煙と愛に満ち 作:外清内ダク
地下都市にも夜は訪れる。
淡く煌めく街灯、建物の中から零れてくる灯り、通り過ぎていく車のヘッドライト。
いくつもの光が交錯し、夜を彩っていく。
リンファ達は、レストランから夜の地下都市へと出た。
さっきの料理の後味と、美しい夜景、そして忍び寄る冷気。
リンファは遠くを見つめた。
いい気分だった。
ヨシュアに連れられて来たこのレストラン……
最高級というわけではないが、それなりに評判が良く、同時に値段も張る店である。
確かに、味は大したものだった。
大通りへ通じる小道を歩く。
エリィが小さく身震いをした。
ジャケットの裏側に手を入れ、ごそごそと探る。
「あ~、わすれものしちゃった~。
ちょっとまってて~」
エリィは慌ててきびすを返すと、またレストランに入っていった。
ヨシュアの前だからって別に隠すことはないだろうに……
リンファはエリィの後ろ姿を見て、微笑みを浮かべた。
しばらくじっと地下都市の天井を眺めていたが、やがてリンファは口を開いた。
「何たくらんでんの」
ヨシュアはコートの内ポケットから煙草を取り出すと、それに火を付けた。
口から吐き出された紫煙が、街灯の光を受けて輝く。
「何のことかな」
リンファはヨシュアの目の前まで近付いた。
しばらく見つめ合ったあと、彼の口から煙草をつまみ取る。
「何も企んでなくて、あんたが奢ったりするわけないでしょ」
投げ捨てられた煙草が無為に煙をたなびかせた。
ヨシュアの表情は動かなかった。
「僕をどんな目で見てたんだよ」
肩をすくめると、リンファは後ろに振り返った。
小さな背中がヨシュアの目の前で小さくゆれる。
「さては、あたしに惚れたか?」
「ああ」
……………
思わずリンファは沈黙した。
冗談……のはずだ。
自分の言葉も、ヨシュアの言葉も。
「嘘……」
「さぁな」
頭が真っ白になった。
何? これは何?
何を言ってるの?
わからない?
いや、わかる。わかるけど……
じゃあ、だとしたら、これは何?
わからない……
無意味な言葉が次々と浮かんでは消え、頭の中を埋め尽くしていく。
こんな変な気分は初めてだった。
熱い。体が熱い。
どうしよう、きっと自分の顔は耳まで真っ赤になっているに違いない。
そのとき、ヨシュアの顔があることに気付いた。
そう、今まではそこにヨシュアがいることすら忘れてしまっていたのだ。
何も見えなかった目が、何も聞こえなかった耳が、少しずつ感覚を取り戻していく。
ヨシュアの顔が妙に大きく見えた。
しかし次の瞬間には塵のように小さくなった。
ようやく取り戻した感覚は、激しく歪んでいた。
一体どうしろというのだ。どう答えろというのだ。この言葉に。
呆然としているのか、或いは恍惚としているのか、自分自身でも分からなかったが、その硬直をうち破ったのは、用を済まして戻ってきたエリィだった。
「えへへ~、おまたせぇ~。
はれ? どしたのりんふぁちゃん」
その時リンファのできたのは、適当に笑いを返してごまかすことだけだった。
*
『話が違うんじゃないのか』
電波に乗って聞こえてきたのは、ヨシュアの声だった。
ここは地上幹線道路8号線の、地下都市『ヴォルカニクス』ゲート。
ここから、道路はしばらく川沿いを走り、六時間ほどで地下都市アイザック・シティに到着する。
途中では森のど真ん中を通っている部分もあり、襲撃には非常に適した道路である。
しかも、時間は夜。
輸送車に乗っているのは社長だそうだが、どうにも杜撰な移動計画である。
しかしまあ、レイヴンは与えられた仕事をこなすだけだ。
難しい任務だが、その分報酬も破格。
その点には、ヨシュアもリンファも異存はなかった。
それより気になるのは、ここにリンファ達以外のACが二体、護衛に参加しているということである。
ペンユウのコックピットに座って、リンファは外を見遣った。
隣にはヨシュアのAC『ワームウッド』が、青いボディを輝かせて立っている。
前には護衛する輸送車、及び通信を補助するためのアンテナ車が並ぶ。
問題はさらにその前方である。
見知らぬACが二体、一行を先導している。
一体は逆間接タイプ、もう一体は標準的な二足タイプである。
コンピューターの情報に照合したところ、水色で塗装された逆間接ACは『ティー・ブレイク』、どす黒い二足ACは『プロペラント』という名前らしい。
聞いたことのない名だ。
『別に、護衛が君たち二人だけだと言った覚えはない。
いいじゃないか、味方は多い方が』
「どうだかね……」
アンテナ車に乗っている、カトー・ラテックスの男の言葉に、リンファはひとりごちた。
もちろん、通信機はオフにしてある。
無用ないざこざは御免である。
『ふん、こんな連中、役に立つかどうか分かったもんじゃありませんぜ。
オレ達に任せてくれりゃいいのに、ヤマザキさんも人が悪い』
むっかあああああっ!
プロペラントのパイロットの言葉に、リンファは髪を逆立てた。
よくいるのだ、自分の実力も省みずに大口を叩く奴が。
何も言わないところを見ると、ヨシュアも相当とさかに来ているようである。
あいつは腹が立つと無口になる習性がある。
『安心してください、ヤマザキさん。
後ろの二人が足を引っ張っても、私たちがちゃんと護ってみせますよ』
またまたむかぁああああっ!
今度はティー・ブレイクのパイロットである。
二人揃って似たタイプらしい。
しかも、さっきからヤマザキヤマザキとやけに馴れ馴れしい所を見ると、知り合いのツテで雇われたようだ。
全く、コネに頼る奴の科白でもない。
しかし、こんな所で仲間割れ(仲間だとはこれっぽっちも思っていないが)していても仕方ない。
とにかく依頼をこなすことが先決である。
……ガ……ザァッ……
その時、通信にノイズが混ざった。
電波障害だろうか。訝しがりながら通信機を調整する。
『も~しも~し、きっこえますかぁ~』
「エリィ?」
聞こえてきたのは意外にもエリィの声だった。
アイザック・シティの住処で留守番しているはずなのだが。
「どうしたの、エリィ。今どこ?」
『おうちだよぉ。
あのね、そのちかくにアンテナしゃがあったから、はっきんぐしてわりこんだのぉ』
げ。
全く、一体何をしているのやら。
依頼主の通信系統にハッキングするとは、下手をすると契約抹消どころかその場で撃ち殺されかねない。
『丁度いい。今回はエリィにナビを頼むか』
どうやら、ヨシュアの方にも通信は回っていたようである。
まあ、バレさえしなければ問題はないわけだが。
「そうね。じゃあ、お願い」
『あいあ~い、りょ~か~い』
声が途切れるのと同時に大量のデータがペンユウのコンピューターになだれ込む。
付近の詳細な地形図が表示され、さらに襲撃に適したポイントとそこへ到着する時刻がラインアップされる。
その数たるや、軽く三十を越える。
さすがはエリィ……僅かな時間だというのに、驚くべき情報量である。
これなら今回は楽な仕事になりそうだ。
丁度、おあつらえ向きにアンテナ車から声がかかった。
『よし、こちらの準備は完了した。出発するぞ』
「了解」
つづく。
今回登場したAC
■プロペラント
機体名 プロペラント
パイロット コール・ブラック
HEAD HD-08-DISH
CORE XCA-00
ARMS AN-101
LEGS AN-1001
BOOSTER B-VR-33
FCS QX-AF
GENERATOR GBG-10000
BACK UNIT R RXA-77
BACK UNIT L WM-S60/4
ARM UNIT R WG-HG512
ARM UNIT L LS-99-MOONLIGHT
OPTION SP-CND-K, SP-S/SCR, SP-E/SCR
●COLOR
GENERAL BASE(16,16,16) OPTION(25,25,25) DETAIL(12,12,8) JOINT(8,6,4)
●備考
50万コームで組んだ機体だったような気がする。
■ティー・ブレイク
機体名 ティー・ブレイク
パイロット カモミール
HEAD HD-ZERO
CORE XCA-00
ARMS AN-201
LEGS LB-4401A
BOOSTER B-T001
FCS QX-AF
GENERATOR GRD-RX5
BACK UNIT R WM-X15-EX
BACK UNIT L WR-S50
ARM UNIT R WG-MG500
ARM UNIT L LS-99-MOONLIGHT
OPTION SP-CND-K, SP-S/SCR, SP-E/SCR
●COLOR
REDDISH DUST/STRANGE
●備考
これも50万コームで組んだような。