アーマードコアEX 女レイヴンの日常は、血と硝煙と愛に満ち   作:外清内ダク

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04 ミッション:巨大兵器撃破

 

 

 

 ヴァンッ!

 

 もはや音とも呼べない。

 たとえようのない空気の震えが、ついさっきまでペンユウとワームウッドのいた空間を突き抜ける。

 同時に闇を切り裂く、巨大な光の束。

 

 まさか、レーザーブレード!?

 しかし、それにしては巨大すぎる。

 まるで樹齢が何百年にもなる大木のような大きさである。

 

 ペンユウは光の束が飛来した方向を見上げた。

 月明かりを背景にして、そのシルエットが浮かび上がる。

 

『これは……!』

 

 エリィの悲痛な呻きが聞こえてきた。

 

『オムニシャンス・インダストリー製、強襲用超大型八足MT「ドレッドノート」!』

 

『MTだと!?

 冗談はよせ、あんな馬鹿でかいMTがいてたまるか!』

 

 外見から判断すると、ドレッドノートの身長は軽くACの三倍。

 さらに全長も40メートル近くある。

 見た目には四足タイプのACを巨大にしたような感じだが、その足は八本。

 そして、メインユニットには機銃やら大砲やらミサイルポッドやらがこれ見よがしにつきまくっている。

 

 まさに、巨大な蜘蛛。

 

「来るっ!」

 

 ゴバァウッ!

 

 ドレッドノートの大砲が火を噴き、グレネード弾を発射する。

 地面に着弾し、巻き起こる大爆発。

 間一髪ペンユウ達は難を逃れたが、その時ドレッドノートが一本の足を高らかに掲げた!

 

 ギュゴウッ!

 

 またしても響き渡る轟音!

 振り上げられた足の先から、巨木のような光の束が生まれ出る!

 

 超大出力レーザーブレード!

 おそらく全ての足にあれが備え付けられているに違いない。

 

 こういう巨大兵器にとって、一番おそろしいのはACやMTにへばり付かれることだ。

 それを防ぐために全方位攻撃できるレーザーブレードを装備しているのだ。

 そして、機体の移動は残りの足にまかせればいい。

 

 ともかく、あんなものを食らったら一撃で蒸発してしまう!

 

 ペンユウのブースターが全力で炎を噴き出す。

 その足下をレーザーブレードがかすめ、通り過ぎていった。

 そのまま上空へ飛び上がり、真下に向かってマシンガンを乱射する。

 

 キキュインッ!

 

「効かない!?」

 

 弾丸は確かに命中した。

 しかし、ドレッドノートの装甲に弾かれ、あらぬ方向へと撒き散らされる。

 

 なんという装甲……

 あれでは、グレネードをぶち込んでもほとんど平気なのではないだろうか。

 

 呆然とするリンファの目に、発射されるミサイルの姿が映った。

 地面に対して垂直に打ち出され、真っ直ぐペンユウの方に向かってくる!

 

 ガガガガガッ!

 

 横手から飛来した弾丸が、ミサイルを全て撃ち落とした。

 絶妙なタイミングでのヨシュアのサポートである。

 

『足の付け根を狙え!

 この手の兵器の弱点だ!』

 

「了解っ!」

 

 さすがに、四足ACを極めたヨシュアである。

 いくらドレッドノートが巨大と言っても、基本的な構造自体は四足ACや四足MTと変わらないはず。

 自分の弱点は、自分が一番よく知っている、ということである。

 

 言葉通り、ワームウッドのレーザーキャノンが一本の足の付け根を貫く。

 関節部分は装甲が薄くて当然。

 あっけなく、足は本体から千切れて地面に転がった。

 

 それだけでも振動と砂煙が巻き起こる。

 さすがの巨大さである。

 

 この調子なら、勝てる。

 リンファがそう思った次の瞬間!

 

 ドレッドノートが、残り七本の足のうち三本を一斉に振り上げた!

 

 ヴァヂュオオッ!

 

 振動が耳ではなく直接脳にまで響き渡る!

 ドレッドノートの三本の足から、同時にレーザーブレードが発生した!

 

「うっそおおおおおおっ!」

 

『化け物めッ!』

 

 おそらく、機体を支えるには八本の足のうち四本を地に付けていれば十分なのだろう。

 そして残りの四本は攻撃に使えるというわけである。

 

 ……などと、冷静に分析している場合ではない。

 四方八方から迫り来るブレードをかろうじてかわすペンユウとワームウッド。

 しかも、その隙間からは機銃やミサイルも飛んでくる。

 これではいつか当たってしまう!

 

 ペンユウは頭上から振り下ろされたブレードを、横に飛んでかわした。

 しかし足は途中で向きを変え、ペンユウの逃げた軌跡を追ってくる!

 

 ――これは!?

 

 マシンガンを足に向けて撃つ。

 ダメージはないだろうが、衝撃で足の動きが一瞬止まる。

 その間に、ペンユウはその場を離れて難を逃れた。

 

 これは、もしかしたらいけるかもしれない!

 

 思い立ったが吉日、リンファは通信を開いて叫んだ。

 

「ヨシュア! 合図したら死ぬ気で攻撃して!」

 

『……了解』

 

 この作戦には危険が伴う。

 しかし、決まればカタがつく!

 

 ……と。その時、ペンユウがバランスを崩した。

 倒れはしないものの、一瞬動きが鈍る。

 

 そこを見逃すはずもない。

 すかさずドレッドノートのブレードが横手からペンユウを襲った。

 

 慌ててブースターをふかし、逃げまどうペンユウ。

 しかし足はその後を執拗に追い続ける。

 

 ――今だ!

 

 ペンユウが地を蹴って飛び上がった。

 しかし、レーザーブレードもその後を追う!

 

「必殺! リンファキィィィィィィィック!」

 

 グァシュッ!

 

 なんとペンユウは、下から追ってきたドレッドノートの足を蹴り飛ばした!

 足は軌道をずらされ、あらぬ方向に曲がっていく。

 

 その方向にあるのは……ドレッドノートの足、二本!

 

 ギュゴウアアアアッ!

 

 もうもうと立ちこめる金属の焼ける臭い。

 

 ドレッドノートは、自分の足を自分のレーザーブレードで灼き斬っていた。

 それも二本。

 

 当然バランスを崩し、巨体が地に崩れ落ちる。

 リンファが叫んだのはその後だった。

 

「今よ、ヨシュア!」

 

 叫びに応えるようにワームウッドはありったけのキャノンの弾丸を発射した。

 爆発に継ぐ爆発。

 紅蓮の炎が、巨大なドレッドノートのボディを灼き尽くしていく!

 

 そして……煙が収まったあとの残っていたのは、完全に動かなくなったドレッドノートの残骸だけだった。

 

 

  *

 

 

『ひ、非常事態です!』

 

 通信相手の男は慌てた様子でまくしたてた。

 

『立った今入った連絡で……

 陽動部隊のカットラス及びドレッドノート……

 ぜ、全滅です』

 

 なんだ、そんなことか。

 

 彼は全く落ち着き払ったものだった。

 そんなこと、部隊編成をしたときからわかりきっていたことだ。

 しかしまあ、常識の世界で生きている人間には驚くべきことなのだろう。

 

「問題はない。メインはこちらだ。

 ……予定通り行う」

 

『は……了解……しまし』

 

 相手の男が全て言い終える前に彼は通信を閉じた。

 

 うるさいのだ、いちいち。

 これから素晴らしいショーが始まるというのに。

 騒ぎ立てるのはマナー違反、である。

 

 これはいくつかスイッチを操作した。

 起動する。彼の乗る、このACが。

 

 そう、彼が座っているのはコックピットのシートだった。

 周りにはレバーやらスイッチやらモニターやらが所狭しと並んでいる。

 

 この機体の名称は、彼が付けた。

 素晴らしい名前だと自負している。

 聖書にもある。ヨハネによる福音書、第一章、1―3節。

 

《初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった。

 この言は初めに神と共にあった。

 すべてのものは、これによってできた。

 できたもののうち、一つとしてこれによらないものはなかった》

 

 別に神や聖書を信じているわけではない。

 しかし、この言葉には奇妙な説得力があった。

 万物の本質は言葉である……

 それは言葉を持つ唯一の生物である人間を、優位に立たせようとする考えでもある。

 

 しかしある意味ではこれは真実だ。

 付けられた以上、名前はすでに記号の域を脱してしまうのだ。

 名前が、それ自体になってしまうのである。

 

 だから彼もこの機体に名前をつけた。

 頭を捻って、普段あまり使わない言葉を吟味した。

 そして付けた名前がこれだ。

 

 五十年間、人類が地下で暮らすはめになった元凶。

 人が背負う、史上最悪の重荷。

 彼の理想を実現する機体としては、もっとも適した名前。

 

 即ち、

 H―P『大破壊――ホロコースト』。

 

 

 

 

つづく。

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