アーマードコアEX 女レイヴンの日常は、血と硝煙と愛に満ち   作:外清内ダク

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09 真相

 

 

 

 

 動きが、止まった。

 

 司は目を見開いた。

 既に涙で一杯になっていた瞳で、その光景を凝視していた。

 

 ペンユウが、きびすを返したのだ。

 一歩。また一歩。

 赤い巨人は遠ざかっていく。

 

 姿が見えなくなって、やがて音も聞こえなくなって、そのうち司はわからなくなった。

 何もわからなかった。

 

 わかることはたった一つだけだった。

 それは、あの赤いACがここにはもういないということだけだった。

 

 行ってしまった。とどめを刺さずに。

 

 司はしばらく呆然としていた。

 それは一瞬のことだったのか。

 それとも永劫のごとく永い時間だったのか。

 今更確かめる術は残されていない。

 

 やがて、司は自分で自分を抱きしめた。

 熱い。

 体が熱かった。

 生きている。

 生き残った。

 

 やっとわかった。

 そんな気がした。

 生き残ること。それがどういうことなのか。

 護ること。

 それが本当はどういうことなのか。

 

 やっと、わかった。

 

 

   *

 

 

 司は後ろ手にドアを閉めた。

 その表情はいつになく沈んでいる。

 我が家に、アヤメの待つ住処に帰ってきたのに。

 

 アヤメは彼の様子がおかしいのをすぐに察知した。

 パソコンの前の椅子から立ち上がり、心配そうに司を見つめている。

 

 司はうつむいて、目を合わせようとはしなかった。

 そのまま奥に進んで、二階へ上がる階段を上ろうとした。

 

 その腕を、アヤメがつかんだ。

 

 気持ちが伝わってきた。

 アヤメの心が伝わってきた。

 司には、それが耐えられなかった。

 

 何も言うまい。

 そう思っていた。

 

 でも言わずにいられなかった。

 司は振り返り、暗く荒んだ瞳でアヤメを見つめた。

 

「お前がやったのか」

 

 司はアヤメの胸ぐらをひっつかんだ。

 そのまま乱暴にアヤメを押して、壁に叩き付ける。

 

 苦しそうにアヤメが呻いた。

 しかし彼女は抵抗しようとはしなかった。

 抵抗できる立場ではないことは、彼女が一番良く知っていたのだ。

 

「お前がやったんだな!?

 あれは全部お前なんだな!?

 敵に情報を流したのも!

 マスターランカーをけしかけたのも!!」

 

 ――そう――

 

 全てアヤメ……別名ハッカー『アイリス』の仕業だった。

 そもそも、今回の依頼自体が偽物……アヤメの手によって作られたものである。

 

 そもそも、同じ企業から立て続けに依頼が来た時点でおかしかったのだ。

 そしてさっき調べると……依頼主は、そんな依頼は知らないという。

 嘘をついているようには思えなかった。

 そんなことをすれば、司と依頼主の関係は完全に絶たれる。

 それは向こうにとっても都合が悪いはずだ。

 

 ならば。彼の知る限り、大企業やネストのデータまで簡単に改竄できるような腕のいいハッカーは、一人しかいない。

 

「なんでだよ……答えろよ、アヤメッ!」

 

 司はアヤメをつかんだ腕を振り回した。

 

 アヤメは目を閉じた。

 そしてじっと耐えた。

 

 悪いのはわかっていた。

 でも、彼女がしなければならなかった。

 わかってくれる。

 司はきっとわかってくれる。

 アヤメはそう信じていた。

 

 やがて疲れたのか、やりきれなくなったのか……

 司はうつむくと、アヤメから手を放した。

 背を向け、元のように階段に向かって歩き出した。

 

 無駄なのだ。今更アヤメに何をしたって……もはや戻ってはこない。

 ずたずたに引き裂かれた、彼のちっぽけなプライドは。

 

 司の足が、階段の最初の一段にかかった。

 

「……ツ……カ…サ……」

 

 司は顔を上げた。

 声は背中からかかった。

 

 振り返る?

 怖かった。後ろを見るのが怖かった。

 それを見た瞬間、それを確認した瞬間、自分が不要になるような気がした。

 自分はどこにもいない、死者になるような気がした。

 

 それでも、振り返らないわけにはいかなかった。

 そして彼は見た。

 ゆっくりと開く。

 アヤメの口が、喉が、舌が、少しずつ、一つずつ、言葉を紡ぐのを。

 

「ツカ……サ……」

 

 聞こえた。

 はっきりと。

 アヤメがしゃべったのだ。

 

 司はアヤメを抱きしめた。

 自然と両目から涙がこぼれてきた。

 よりいっそう、司は腕に力を込めた。

 

 涙は止まらなかった。

 

「ごめん……ごめん、アヤメ……」

 

 かすれる声で、司はかろうじて言葉を紡ぎだした。

 今度は自分が話せなくなりそうだった。

 でもそれでもいいのかもしれない。そんな気がした。

 

「ありがとう……わかったから……

 ……俺、ちゃんと全部わかったから……」

 

 アヤメは嬉しそうに司の言葉を聞いていた。

 そしてその胸に顔をうずめ、小さく呟いた。

 司の言葉を真似して、「ごめん」と。そして「ありがとう」と。

 

 月光が、二人を包み込んで優しくきらめいた。

 

 

 

THE END.




次回予告


R「南海の楽園、リゾート地下都市“コートデパール”!」

E「お~」

R「青い海原! 白い雲! まばゆい太陽! 疑似だけどっ!」

E「おお~お」

R「てなわけで!
 シリーズ中盤のテコ入れエピソードと言えばやっぱりコレ!
 水着回よーっ!!」

E「わーい! 海だー!」

J「楽しそうだな、お前ら……」

R「なによ、ノリわるい」

E「よにな、ワリのるい」

J「何が面白いんだ、海なんか」

R「ンなこと言ってないであんたも脱ぎなさいよ。
 その真っ白けの貧相な体、ちったあ日焼けでもしたらどうなの?」

J「別にいいだろ。お前しか見る奴いないんだから」

R「あっ……
 そう、だね……やめてよ、こんなとこで……」

E「やっべー! 爆破してー!!

 次回、

アーマードコアEX 第8話
『エボニー・コンツェルト』


 というわけで、次回リンファちゃんたちは爆発しまーす!
 おーたーのーしーみーにー♪
 それではまたー!」

R&J「なんか不穏なこと言わなかった!?」
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