アーマードコアEX 女レイヴンの日常は、血と硝煙と愛に満ち 作:外清内ダク
一つの弾丸は脇腹を貫いた。
もう一つの弾丸は心臓を貫いた。
立ち上がる。
腐っていない、生きた人間が。
黒いコート。
金色の髪。
青い瞳。
ワームウッド。
それは、弟だった。
ヨシュアは荒い息を吐きながら、足下に転がる死体に目を遣った。
ナターシャ。最後の歌……
子供の頃、彼女が歌って聴かせてくれた子守歌。
理屈はどうだか知らない。
だが、あれはナターシャが見せた幻影だ。
大きく息を吸い込み、吐く。
終わった。
何もかも。
5年間――いや、人間が生まれてからずっと存在し続けてきた呪縛が。
ワームウッドの呪縛が、今ようやく解き放たれたのだ。
――父さん。
ヨシュアは今は亡き父を思い起こした。
――意味はあるのか。
一歩、足を踏み出す。
ドアへ向かって。
撃たれた左腕を押さえて。
一歩ずつ、歩く。
――本当に、そこに意味はあるのか。
目が霞んだ。
世界が揺らぐ。
暗転する。
光と闇が入れ替わる。
ふっと背筋に冷たいものが走るようだった。
俺は倒れているのか。
ヨシュアがそれを理解するのには多少の時間がかかった。
俺は、死ぬのか。
倒れながらヨシュアは考えた。
それも悪くない。
もう何もかも、終わったのだから。
自分が生きている理由も無くなったのだから。
やっと楽になれる。
死ねばきっと、苦しい事なんて無くなる。
辛い事なんてなくなる。
ああ、だんだん意識が遠のいてきた。
目の前が白く明るくなってきた。
そうか。
これでようやく――
とさっ。
柔らかくて暖かいものが体に触れた。
死神?
いや、何か変だ。
ヨシュアは残った力を込めて、瞼を開いた。
自分は倒れてはいなかった。
抱き留められていたのだ。
一人の、女に。
「ばか。無茶しすぎよ」
リンファ。
どうして、こんな所に。
それは彼にはわからなかった。
娼婦が恋敵に依頼した、なんてことは頭の隅にも浮かばなかったのだ。
ただ、一つだけわかることがあった。
新しい理由が、ここにある。
「……余計な……ことを……」
それが、今の彼にできる最大の強がりだった。
リンファが肩に腕をまわす。
彼女に支えられながら、ヨシュアはゆっくりと足を踏み出した。
まだ、歩ける。
二人は寄り添い、部屋の出口へと歩いていった。
一歩一歩、確かめるように。
きっと、確かめているのは床や足の具合ではないだろう。
ドアまでたどり着いたとき、ヨシュアはふと足を止めた。
肩越しに振り返る。
微動だにしない死体。
ヨシュアはそれに向かって微笑んだ。
そして告げた。
心の中で、最後の別れの言葉を。
――おやすみ、姉さん。
THE END.
暗い部屋にいくつもの光が点る。
そこにいたのは二人だけだった。
一人は女で、もう一人は男。
女は椅子に座って、目の前のモニターを眺めていた。
モニターには、人の脳を模したコンピューター・グラフィックが描き出されている。
「社長が死んだよ」
その背後に立つ男が、口を開いた。
モニターの放つ光に照らし出されて、彼の顔が映し出された。
細かなしわが目立つ。
髪も既に白いものが混ざり始めている。
そろそろ、中年や壮年を通り越して老年に入ろうかという男だ。
「損害は?」
女が尋ねる。
高く澄んだ、そして無邪気な声。
子供の声のようにも聞こえた。
「ミゼラーベル一匹と、イミタティオーン一機。
全く問題ない」
ぴっ。
女の前のモニターが、別の画像を映しだした。
それは無数の正方形が並ぶだけの、実にシンプルな画像だった。
ほとんどの正方形は青く光っているが、ごく一部だけは赤い輝きを放っている。
そして、画面の端に居座る「98%」の文字。
「こっちもそろそろ終わる。
プルスの調整さえ済めばいつだって、だ」
女の声は狭い部屋の中に響き渡った。
彼女の髪が揺れる。
鮮やかな漆黒の髪が。
そして女は笑った。
声はあげない。
唇を吊り上げて、まるで悪魔のように。
やがて世界を襲う災悪。
その種が芽を出し始めていることを、人々はまだ――
知らない。
To be continued.
次回予告
R「てなわけで!
次こそ正真正銘の最終回!
あたしたちの最後の闘いよ!」
J「更新速度が速いからあっという間だったなァ」
E「メタいですねー! あはははは」
J「で、どうだ? 完結にあたって感想は」
R「んー、まあ正直、今更あたしらの出番じゃないだろって思ってたんだけどさ。
実際こうしてやってみると……
やっぱ、久々にみんなと会えて楽しかったわ!」
E「エリィもエリィも~!!」
J「まあな」
R「あ、こいつはクールぶってるだけなんで気にしないよーに」
J「お前なァ……」
R「過去を振り返るって、ちょっと嫌だよね。
時代が変われば、忘れられていくものもある。
昔の自分の姿なんて、恥ずかしくって見てらんないこともある。
でも、あたしは過去を否定はしない。
あれもこれもみーんなひっくるめてホントのあたし。
あたしは何度でも戻ってくる!
だからさよならは言わないわ。
いつか会いましょ!
どこか別の戦場で、生まれ変わったあたしたちとねっ!
次回、
『緋色の瞳のラグ・ドール』
てなわけで、行くわよみんな!」
R&J&E「それでは、また!!」